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6日目:明日の予定は


「っしゃあ!」

 とイオくんが雄叫びを上げてガッツポーズをした。如月くんが成功してから30分遅れくらいで<素材鑑定>をゲットしたこのイケメン、さては天才ですね。知ってた。

「さすがイオくん、できないことが少ない!」

 拍手しつつ褒めた僕に「ナツのその絶妙な褒め言葉何?」と返されたわけですが、素直に褒めてるんだからドヤ顔しといていいよ。

「イオさんお疲れです、魔法スキルゼロってマジですか」

「マジだな」

「うわあゲームスキルが高い。なんか流石ですね」

 僕につられてぱちぱち拍手していた如月くんは、すでにイオくんのイオくんたる所以を理解しつつあるらしい。そうだよこの人、だいたいなんでもできるし何かあっても大半なんとかするからね! すごくえらいよ!

「流石に疲れた。<総合鑑定>取ったら寝るか」

「あ、待ってイオくん。プリンさんも待ってるから寝る前にちょっと話きいてー」

「おう、そういやさっきなんか話し込んでたな。ちょい待て、珈琲出してやる」

「カフェイン……!」

「リアルじゃねえから」

 あ、確かに。

 僕は夜に珈琲飲むと目が冴えちゃってだめだけど、イオくんは夜でもお構いなくぐびぐび飲んでるからとてもカフェインに強い。最近は僕がイオくんの家に遊びに行くと夜はココアを出してくれるので、本当に気遣いのできる友人だなあと思うよ。

「イオくんいつもありがとう」

「いや何だいきなり。ほらナツはカフェオレな」

「イオくんは優しさで出来てるのかな?? ありがとう!」

 ちなみにイオくんは甘い飲み物はほぼ飲まない。だからココアやカフェオレは僕とかお兄さんたち用なんだよね、全くこれだからイケメンは! 心までイケメン!

 イオくんのお兄さんたちは、僕も会ったことあるけど結構甘党だから気が合う。特に一番上の晴臣さん、好きなケーキがことごとく被ってて固い握手をしてしまうほどだった。イオくんはそこから、僕には晴臣さんと同じものを出しとけばいいんだなと学んだっぽい。大正解です。


 さて、トラベラーだけで集まったところで、さっきのトレントの話を共有しないと。

 イオくんが如月くんとプリンさんにも珈琲を配って……プリンさんは自前の牛乳をちょっと加えて、如月くんはブラックでそのまま……テーブルで一息つく。トムスさんはもう少し授業を頑張るみたいだけど、あと一息って感じだから今日中にはマスターできそうだね。

 そういえばプリンさんがお菓子の話してたから、差し入れとして妖精のドーナツで買い込んだオールドファッションを人数分出した。チョコかかってるやつは僕のなので勘弁してもらいたい。

「ドーナツ! 素晴らしいわね!」

 案の定、プリンさんは大喜びだ。

「実はこれ、イチヤで買えます」

「えっ、どこで!? あ、住人さんに聞かないと行けない空白地ね」

「その通り!」

 もう少し真面目に探索すればよかったわ、とちょっと残念そうにしているプリンさん。如月くんたちはギルド裏通りには行けたみたいだから、「これ買おうか迷ったんですよ」と言っていた。ドーナツは美味しいので買っておけば良かったと思うよ!


「それで、さっきジンガさんに聞いたんだけどね。トレントの習性と巣の話」

「巣?」

「あ、もしかして連続クエストか」

 イオくんが早速何か気づいている。まあ僕たち付き合いが長いからね、決して心読まれたわけではないはず、今回ばかりは。

 僕はさっきジンガさんに聞いたトレントの話と、今日のトレントが群れの一員だった可能性が高いことを説明する。巣穴の話で全員がなんとなく理解したみたいだ。

「……なるほど。つまり明日の午後はトレントとの連戦、あるいは集団戦になる可能性が高い、ってことですよね」

 如月くんがまとめてくれた。そうそう、そういうことです。今日は危なげなく勝てたけど、なかなか攻撃がダイナミックだったし、集団でこられるとちょっとしんどそうじゃない?

「イオくん今日戦った感じどうだった?」

「強いは強いけど、3匹までならなんとかなるかな。それ以上だともう一枚盾が欲しい」

「あ、それなら明日はうちのガンちゃんを出すわ。カメレオンみたいな子なんだけど、カチカチの防御タイプよ」

「おお! 初めて会う子だね」

「とっても恥ずかしがり屋さんでね。戦闘中は大丈夫なんだけど、交流とかおしゃべりとかは苦手なのよガンちゃん。ピーちゃんはそういうの大好きだから、戦闘以外で呼ぶときはピーちゃんにしているの」

 なるほど。今日はイオくんの1枚盾で問題無かったからね。あ、そういえばプリンさんに聞きたかったんだった。

「プリンさんて上級召喚士?」

「転職してからすぐ馬車に乗ったから、レベル1だけど召喚弓士ってことになってるわ。召喚士は召喚石の欠片っていうのを集めて召喚をしたり、契約獣の能力アップに使ったりするの」

 プリンさんが説明してくれたところによると、召喚石でできることは以下の通り。

 1:召喚石1個で契約獣のステータスを上げる。これは上限がある。

 2:召喚石3個で契約獣と契約できる枠を一つ増やす。

 3:召喚石5個で契約獣のレベルを1つ上げる。

 4:召喚石10個で新しい契約獣を呼べる。

 というわけで、召喚石をたくさん使わないといけないんだけど、これはレベルアップや召喚士用のクエストのクリア、転職、召喚獣との親密度が上がった時など、入手手段も結構色々あるらしい。

 知らない職業、興味深いなあ。

 正直、魔法士と召喚士って全然別ゲーをやっている感じになるんじゃないかな?


「俺は魔法士経由の魔法双剣士だから、小器用に色々できるけど一撃は重くないんですよね」

「如月は今日と同じで遊撃でいいだろう。明日はできれば魔法も使ってくれ」

「ああ、了解です。<風魔法>は俺レベル4ですけど、もうちょいでレベル上がるはずなんで」

「僕は<風魔法>レベル6!」

 僕も一応宣言しておく。

「ナツくんは魔力が強すぎるもの。同じ【ウィンドアロー】でも、正直私の1.5倍のダメージを出してたわよ。ちなみに私の<風魔法>はレベル5」

 ピーちゃんが<風魔法>得意だから上がってないのよね、とプリンさん。確かに、ピーちゃんの<風魔法>すごかったなあ。あのサイクロンみたいなの、僕もいずれできるようになるんだろうか。……魔法名は【グルグル】じゃないと思うけど、万が一【グルグル】だったらどうしよう。無詠唱とかスキルあるかな……。

 ちなみに攻撃魔法はアロー系、ランス系、レイン系があるけど、レインがつくのはファイアとアクアだけで、ウィンドとアースにはラッシュがつく。イメージの問題なのかなあ。

「ナツさん、魔力いくつですか?」

「今は41……杖で+10だから51だね」

「たっか! 俺の約2倍以上ありますね!?」

 如月くんの魔力は24らしい。バランス型のヒューマンだから、多少は自動で魔力も振られているんだろうけど、魔法剣士だとステータス振り分けめちゃくちゃ迷いそうだね。器用も俊敏も欲しいだろうし、幸運は捨てられるとしてもPP足りないだろうなあ。


「とりあえず、明日はトレントの群れが出てくると思って準備しておくしかないな。朝飯食ったらまたスキップ入るだろうから、御者側に座るプリンと如月は【ウィンドウォール】を張れるようにしといてくれ。いきなり襲われた時に御者を守って欲しい。人質を取られたら戦いにくい」

「わかったわ」

「えーっとちょっとまってください。レベル上げに【クリーン】かけてきます」

 如月くんは立ち上がってキャンプ場や馬車に向けて【クリーン】をかけまくった。ちなみに、攻撃やバフを伴わない【クリーン】や【イグニッション】などの生活を便利にするような魔法は、クールタイムが殆どないから連発できる。

 7・8回も【クリーン】をかけ終わると、戻ってきた如月くんは、

「レベル5になったんで【ウィンドウォール】張れます」

 と胸を張った。そういえばウォール系魔法はレベル5で出てくるんだったね。

「如月くんえらい!」

 褒められるときに褒めるのは僕のモットーなのでとりあえず言葉にしておく。その力で御者さんを守るのは任せよう。

「全員ポーションの用意は大丈夫か?」

「俺は多めに買ってあるんで大丈夫です、クールタイム中回復欲しい時は声かけるんでヒール頼みます。俺<水魔法>レベル5なんで……。」

「私もポーションを使い切ることはないと思うわ。【アクアヒール】は使えるけど回復量が50~80くらいだから、あんまり当てにしないでね。他のヒール系魔法は<土魔法>の【リフレッシュ】しかないの」

 プリンさんの言う【リフレッシュ】は、<土魔法>レベルMAXで覚える状態異常回復だ。成功率7割という微妙な低さだけど、一応クールタイムが短めなので連発すればなんとか使えるレベルらしい。序盤の状態異常回復は手段が限られているから、僕もお守りを作れてなかったら<土魔法>優先で上げてたと思う。

 4属性魔法は、土魔法だけアースヒールがなくてかわりにこのリフレッシュが入っている。【アクアヒール】が単体回復、【ファイアヒール】がリジェネ、【ウィンドヒール】が全体小回復だ。

「僕は【アクアヒール】の回復量は100~150くらい。リジェネは前衛に臨機応変にかけるね。あとは戦っている最中に<風魔法>レベルが上がればワンチャン全体小回復の【ウィンドヒール】を覚えられるけど、<風魔法>は今日上がったばっかりだから難しいかも」

「あー、基本ないものと思って動こう。後衛は前衛のHP見て必要ならポーション投げてくれ」

「了解」

「わかったわ」

 イオくんは特に盾だから回復まで手が回らないだろうし、HPポーションも僕が多めに持って使うほうがいいかな? その辺はスキップ前にイオくんと話しておこう。


「じゃあ、トレントに襲われたらウォールで御者を守る。事前に接近に気づけるようなら馬車を止めてもらって俺たちで討伐に出ることも考える。<総合鑑定>取ってるなら敵の情報もわかるし、ナツは<識別感知>でトレントの巣を探す」

「了解。<感知>も<総合感知>あるのかな?」

「それ俺も気になったから調べたんだが、<感知>は3系統しかないから全部とってもマップが統合されるだけで、スキルとしては統合されないらしい」

 へー。イオくん本当になんでも知ってるなあ。

「イオくんはなんでも調べててすごい」

「敬ってくれ」

「とてもえらい」

「うむ」

 イオくんは満足そうに頷いた。

 まあイオくんはいつも頑張っているのでドヤ顔は基本的に許されるのである。

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