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6日目:一番乗り!


「できた!」

「プリンチャンデキタヨ!」

 僕が<魔操>の確認をしている間に、プリンさんが光の玉を生み出すことに成功していた。オレンジ色っぽい光は、<土魔法>の色かな? 多分プリンさんは<上級土魔法>持ちで、他の魔法はまだ上級になっていないと見た。

「うがー! どうやれば良いんですかナツさん!! なんかアドバイスください!」

 如月くんも苦戦してるけど、それ以上に苦戦してる人がすぐ隣にいるんだよねー。うーん、どうしようこれ。

「如月くんはとりあえず初心者の杖持ってたら、それ装備して魔力流そうとしてみて」

「ああ、杖か!」

「イオくんは……無理そうだね……?」

「わからん、全然わからん……!」

「だよね」

 そもそもイオくん、魔法スキル持ってないしなあ。魔法を使うときの感覚がわかんないと結構難しい気がする。普段僕が魔法でバフをかけてるだけだから、魔法をかけられたときになにか感覚があるならワンチャン……?


「プリンさん、僕になんか補助魔法かけてもらっていい?」

「え? よくわからないけど良いわよ、【パワーレイズ】」

 あ、夢の筋力10だ。

 いや、筋力はいらない子! 今はそれじゃなくて、さっきの感覚を……。

「んー? 補助魔法をかけられた時、魔力がざーっと体を駆け抜けていくような感覚はあるんだけど……これイオくんわかる?」

 魔力の流れそのものではないけど、あの体の表面を走っているのはたぶん魔力なんだろう。僕は普段、補助魔法かける側だから、かけられたのは初めてなんだけど。

「なんか風が吹き抜けるみたいな……?」

「そうそれ。それ多分魔力なんだよね。自分の体からその魔力を感じ取れれば行けると思うんだ」

「ええ? 難しいぞそれ。やってみるけど」

「ちょっとバフかけるから集中してみて」

 いくよー、と宣言してイオくんに【パワーレイズ】。いつになく真剣な表情でそれを受けるイオくん。

「トムスさんにもなにかかけますか?」

「お願いします!」

 ということなので、トムスさんには【クリーン】をかけてみる。多分この人もイオくんと同じで、魔法系スキルは持ってない人なんだろうなあ。

「ん、なんかわかるようなわからんような……? ナツ、もう一回なにか頼む」

「えーと、じゃあ、【ダークアイ】」

 闇魔法の【ダークアイ】は、暗いところでよく周辺が見えるようにする魔法だ。今は午前中だし特に暗いところじゃないからかけても意味はないけど、人にかける魔法だから魔力を感じるのには役立つはず。

「あ、分かった!」

 声を上げたのは如月くん。やっぱり魔法職を経験している人のほうが感覚をつかみやすいみたいだ。如月くんの生み出した光の玉は、きれいな白。ということはまだどの魔法も上級に届いてないってことかな。


「ふむ、3人クリアできたか。イオとトムスは引き続き魔力を掴むことに集中するとして、3人は手持ちの素材を何か用意してくれ。さっきの木材でもいい」

 テアルさんが言うので、僕は即座にトレントのドロップ品をインベントリから取り出す。プリンさんはロックタートルのドロップ品である頑丈な岩を、如月くんはトレントの葉の方を取り出した。

「<素材鑑定>をするには、先程感じ取った自分の魔力を素材に流し、流した魔力をそのまま自分の体に戻す必要がある。魔力でその素材の情報を読み取っている感じだな。魔力の玉を出せたなら、魔力を外へ流すことはできるだろうから、うまく戻せるかどうかが鍵になる」

 テアルさんはさっきの、魔力に色を付ける魔法を自分にかける。荷物から白い綿のようなものを取り出して、それを両手で持った。僕たちが見ていると、テアルさんの魔力が赤い色で右手から排出され、左手へと綿の隙間を縫うように通って行くのがわかる。その際、綿全体を通るように魔力が拡散しているのもわかった。

 やがてすべての魔力が左手へ戻っていく。そしてテアルさんは静かに言った。

「やってみなさい」

 ……テアルさん、教師には向かないのではないだろうか?

  こうだよ、はいどうぞ! ってさっきもそうだったな……。この人が学校の先生だったら、座学より実践メインの授業だろうなと容易に想像できるよ。


 さて、やってみるしかないか。

 とりあえず木材を両手で持って……さっき魔力で玉を出した時のように……。んん、引っかかった。えーと……こう……? あ、だめだ。手から木材に魔力が流れていかないな。基本的に魔力は体を巡っているわけだから、木材に流れないのは当然と言ったら当然なんだけど。

 テアルさんがやってみた時、何かヒントがあったかな? えーっと……ああ、もしかして指先かな? テアルさんは指先から赤い魔力を綿に流していたような気がする。ということは、持ち方をちょっと変えて、魔力を流すときは指先を意識して……。

 お、流れた! よしよし、そのまま木材の中を通って、左手へ……。

「……弾かれた!」

 あまりにもばっちーんと鉄壁に弾かれたので、悔しくて思わず声に出てしまった。如月くんも葉っぱを両手で持ったまま「んがあ!」と唸っている。プリンさんは……あ、岩持てないから別のにしたのか。バイトラビットの毛皮を両手で持って眉間に深いシワを刻んでいるなあ。


「……ナツさんも左まで行かないっすか?」

「行かないっすね……」

「プリンさんは……?」

「私も弾かれるわ」

 3人同時にため息をつく。とりあえず全員流すところまでは到達したっぽいね。

「んー、指先から流すでしょ。左手の指直前までは来るんだよ魔力。そこから先が行かない」

「俺も同じです。指先から出たから指先に戻すのかと思ったけど、弾かれました」

「なんとか右から流すところまでは行ったのよ。全員同じところで躓いたわね」

 うーん、何か見落としたかな? 右から魔力を流すところまでは合ってると思うんだけど。

 3人で顔を見合わせつつ、ああでもないこうでもないと色々アイデアを出してみるんだけど、テアルさんは面白そうに見ているだけでアドバイスはしてくれないみたいだ。これは、僕たちなら正解に行き着くだろうという信頼……だと思っておこう。学校にもいるよね、答えは自分で考えなさいっていうタイプの先生。そういう人たちは結構ギリギリまでヒントをくれないものなんだ。

 質問したら何か答えてくれるだろうけど、それはそれで悔しいので、もう少し自力で頑張りたい。

 うーん、でもだいぶ煮詰まっているので、匙を投げる前にちょっとだけ気分転換。


「イオくん、どう?」

「もう少し。……多分」

「もう一回なんかかける?」

「【クリーン】頼む」

 リクエスト頂いた【クリーン】をイオくんにかけて、隣で難しい顔をしているトムスさんにも「いりますか?」と聞いたら「お願いします」と頭を下げられたので、そちらには【ディフェンシブ】。【クリーン】は一瞬で終わるけど、【ディフェンシブ】は5分残るからそっちのほうが良くない? と思ったんだけど、イオくんはこの【クリーン】で何か掴んだっぽい。

「これで……どうだ!」

 という気合の入った声と一緒に、ぽんっと手の平に現れる光の玉!

「お、おお! さすがイオくん! 魔法スキル持ってないのに魔力の操作ができるとはさすが!」

「もっと捻くれた言い方してくれ!」

「イケメンは魔法も使えなきゃイケメン名乗れない決まりでもあるの? っていつもと逆パターン入れてきたよこの人!」

 ぎゃあぎゃあ言いながらも手をぱちぱち叩いていると、イオくんの手をじっと見ていたトムスさんも「なるほど、これだ!」となんとか成功した。え、2人共普通にすごいな……? これ僕で例えると前衛スキル何も持ってないのに居合切り成功レベルの偉業なんですけど。天才かな?


「おお、今日の生徒は優秀だな」

 と満足げなテアルさんが、イオくんとトムスさんに次の段階の説明を始める。それを横で一緒にもう一度聞きながら、テアルさんが素材に魔力を通すのをもう一度、じーっと見させてもらって……あ。

 もしかして魔力を通したときに一直線に反対側に送るのが良くないのかな。テアルさんは綿の隙間を縫うように全体的に魔力を流しているので……これを木材にも……。 んーと、魔力を拡散! 拡散して! 全体的に木材の隙間を縫うように……! 全体を網羅する!

 十分に素材を魔力に浸した後、そーっとその魔力を左側に……。

「……いけた!」

 通ったー! 弾かれる感じが消えて、そのまますんなりと左側に流れる魔力。

 これだったか! 木材にも十分魔力を通さないとだめなんだ、理解したぞ。


『特殊条件をクリアしたため、スキル<素材鑑定>を習得しました』


 そしてシステムアナウンスさんありがとう!

 一旦素材をおいて、自分のスキル一覧を見て、基本スキルの欄に<素材鑑定>を確認した。SP消費なしで覚えられるのって最高だな。じゃあ、ついでにSP5 で<敵鑑定>も取得しちゃって、っと。

『<上級鑑定><敵鑑定>を取得したため、<総合鑑定>に統合が可能です。統合しますか?』

 テキストメッセージ欄から「はい」をクリックすると、さらにメッセージが追加される。

『<上級鑑定>と<敵鑑定>を統合しました。2つのスキルは消滅し、新たに<総合鑑定>を取得しました。<総合鑑定>は消滅した2つのスキルの中間をとり、レベル2となります。さらに、<総合鑑定>に<素材鑑定>、<装飾品鑑定>、<年代鑑定>が統合できます。統合しますか?』

 おお、この辺全部まとめられるんだね。じゃあ「はい」っと。

『<総合鑑定>に<素材鑑定>、<装飾品鑑定>、<年代鑑定>を統合しました。3つのスキルは消滅し、<総合鑑定>に吸収されます。<総合鑑定>は消滅したスキルの中間をとり、レベル6となります』

 え、すごい!

 <装飾品鑑定>はレベル11だったし、<年代鑑定>もレベル10あったから、4つの平均値を取って……24÷4でレベル6になるのか。

 えっ、お得じゃないかなこれ? ここからまたスキルレベル上がるんでしょ、SPもらえるじゃん! まあ別々でももらえるけど、宝石や宝飾品鑑定を探さなくてもいつもの<鑑定>でレベル上がってくれるんだから、長い目で見るとお得じゃないかな。

 説明を確認すると、発展スキルの鑑定とつくスキルは全部<総合鑑定>に統合できるらしい。基本スキルはだめなんだって。統合した状態でトレントの木材に<鑑定>をかけると、いろんな項目が一気に出てきた。


 「綺麗な木材」品質★5、レベル10以上のトレントが落とした木材。美しい木目で家具に向いている。強度はそこまでない為、武器や住居には向かない。彫像などを作るには、他の方法で少し強度を上げる必要がある」

 鑑定情報を読み上げると、テアルさんが「おお」と感心の声を上げた。

「ナツが最初に<素材鑑定>を習得したようだな。統合したかね?」

「しました! ついでに鑑定系スキル全部統合しちゃいました、すごく便利!」

「そうだろう、統合すればするほど情報量が増える。個別に残す意味はあまりないが、もし次に新たな鑑定スキルを手に入れた時は、ある程度レベルを上げてから統合する事もできるから、そこは覚えておくといい」

「わかりました!」

 統合するとレベルの中央値を取られちゃうんだったね。正直、鑑定スキルならレベルが下がってもあんまり問題はないけど、攻撃系スキルとかはレベルが下がると困ることもあるだろうし、ものによっては考えよう。


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