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5日目:続・キャンプ1日目の夜



「あー、でもブレファンは、ちょっと今新人お断りな空気になってて」

 如月くんはちょっと言いにくそうにそんなことを口にした。

「PKも結構幅効かせてるんで、すでに強くなってるプレイヤーに守ってもらわないときついんですよ。俺たちはそういうの知らずに始めたんでかなり狙われました」

「ああ……」

 前からなんかそういう、ちょっと排他的な空気はあった気がするな。でもああいうPVPも盛んなゲームって、多かれ少なかれ一見さんお断りな独特な雰囲気があるよね。

「繰り返されると慣れますけどね。でもなんかある日ふと、俺たちなんでこんな殺されながらゲームやってんのかな、って気持ちになって」

「わかる」

「もっと平和なゲームやりたい、って意見が一致したんで、アナトラに来たんですよね」

 割と僕らと近い理由かな。色々積みあがって一気に崩れたみたいな。

 ブレファンのプレイヤー人口もだんだん減ってきてるみたいだし、今後はアナトラみたいな、あんまり大勢と関わらなくてもできるゲームが増えてきたらいいなと思うけど。

 PVPは好きな人は本当に好きだからねー。やっぱり住み分けていくしかないか。


 わいわいと雑談していると、イオくんがようやくステータス画面から顔を上げた。

「やっぱ<風魔法>が欲しい」

「イオくんそれずっと考えてたの?」

「考えるだろー。SP5節約できるんだぜ」

 確かにSP5は大きい。イオくんの場合は【クリーン】が使えれば<料理>の後片づけが一瞬で終わるし。

「ナツも何か目を付けた講座あるか?」

「僕、この一番下にある、シークレットのやつ」

「賭けが過ぎるんだよなあ」

 限定とか今だけに弱い僕は、シークレット講座と言う、日によって何をやるかが変わる闇鍋ルーレットがめちゃくちゃ気になる。こういうのチャレンジしたくなるのって日本人だよなあ。

 ただ、この講座を受けるなら申し込んで教室にいって教師が来るまで、何をするのかわからない、というのがネックだ。もし受付の時点で今日の講座の内容が分かるなら、そこで受けるか辞めるか決められるんだけど。

「ま、どうせ無料だし。全然使わないスキルが来るかもしれないけど、それはそれでいいかなって」

 財布は痛まないからね! たとえ楽器や趣味スキルが来たところで損した気分にはならないでしょう。

「稀にかなりレアなスキルももらえるって書いてあるし」

「確かにそれは気になる。特殊スキルかもしれないしな」

「特殊スキル?」

 何それ? と顔を傾げた僕。そして「特殊スキル!」と身を乗り出したプリンさん。

「今掲示板で話題なのよ。一定の条件を満たしたときにだけ取れる特殊なスキルがあって、かなり有用だけどSPが重いって」

「ああ、あれですか、<スイッチ>」

「それよ!」

 如月くんもなんか知ってるっぽい。え、僕だけ知らないのそれ。ゲーム中に掲示板覗いてる暇無くない?


 困惑する僕に、「ナツに説明すると」とイオくんが軽く説明してくれる。

 なんでも、基本職全部マスターしてから二次職行ってやるぜ! っていう猛者がいて、その人が剣士と弓士をマスターしたところ、出てきたスキルが<スイッチ>なのだそうだ。

 これは、前衛職(剣士・槍士・拳士)と後衛職(魔法士・弓士・召喚士)を1つずつレベルMAXにして、それ以外の職に転職する前の間だけ取れて、パーティー内で前衛と後衛の位置を入れ替える、という瞬間移動的なスキルらしい。例えば剣士で前衛で戦い、HPが減ってやばい時に後衛職と<スイッチ>して逃げる、とか、後衛でじっくり大技のリキャストを貯めて、前衛と<スイッチ>して敵の間近からぶっ放すとか、色々と戦略の広がるレアスキル。

 ただしパーティー内でちゃんと声掛けしないと急にスイッチされる相手が困るよ、というスキルで、なんと取得するならSP15もかかるとか。


「へー、それは確かにうまく使えたらかなり強そうだけど、SP15かあ」

「基本スキルが白文字、固定スキルが青文字、発展スキルが黄色文字で、特殊スキルが赤文字だ。まさか<スイッチ>だけが特殊スキルなわけがないだろう、ということで、今攻略班が躍起になって他の特殊スキルを探してる」

「なるほど」

 僕が悠長に感心していると、如月くんが「今掲示板その話で持ち切りっすよ」と続けた。僕って乗り遅れているなあ。

「じゃあ、こまめにステータス見て行かないとねー」

 取得可能スキルの一覧なんて、新しくスキルをとる時しか見てないなあ。あ、そういえば<水魔法>がレベルMAXになったから、<上級水魔法>取らなきゃ。

 と言うわけで取得可能スキル一覧を開いたけど、赤文字のスキルは当然ない。ですよね。知ってた。さくっと<上級水魔法>だけ取得しよう。


「ナツ、ステータス画面のクエストタブ見てみ?」

「うん? ……あ、移動クエストってひとくくりなんだ、これ」

 イオくんに促されてクエストのタブを見ると、知らない間に「移動クエスト」と言うのが増えていて進行中になっている。サンガ到着までキャンプ泊が残り2泊で、クリアしたクエストの数に応じて報酬が変わるものらしい。個別のクエスト毎にちょっとしたクリア報酬もあり、と。

「これしかもグループ受注になってますね。受注メンバーとして全員の名前が入ってます」

 如月くんも自分のステータス画面を確認して言う。プリンさんも同じ画面を確認して、

「もう5つもクエストクリアしてるの? 私何かやった覚え無いのに」

 と驚いている。

 えーと、これまでにクリアしたクエストは、「道に迷わないために」「子守は重労働」「美味しい料理で和やかに」「人生の悩み事」「馬に安らぎを」の5つ。それぞれクリアした人の名前もあるけど、最初の2つが僕、料理がイオくん、悩み事が如月君で、馬がプリンさんになっていた。


「すでに達成率40%超えてますね」

「あら、馬さんの世話を手伝ったことがクエストになってたのね……」

 どうやら最初にお札を渡したことで「道に迷わないために」がクリアになっている。多分これは、誰かが御者さんとパーティーを組んでもクリアなんだろう。報酬はサンガ到着後になっている。

 キヌタくんのお世話は多分クエストだろうなーと思ってたけど、やっぱりクエストだった。報酬が講座受講券。

「あの美味しいポテトサラダとレシピ、クエスト報酬だったのね……!」

「俺サンガのショップカードもらいました」

 へー、報酬も色々だ。

「料理クエストの報酬が森の食えるキノコの情報だったんだよ。で、多分明日、もっと大きなクエストがあるぞ。魔物の襲来とか」

「イオくんなんでそんなことわかるの? 運営なの?」

「いやいや。クエスト画面にスケジュール載ってるだろ? キャンプで睡眠とったら朝7時に起床、朝食後出発だけど、昼までスキップできないってそこに書いてある」

「ホントだ!」

「ほんとだわ!」

「うわマジか」

「その昼間の時間、ただ無駄に馬車に揺られるとは思わないんだよな。だから魔物の襲撃とか何らかのイベントがあると予測してる」

 なるほどー。さすがイオくん、探偵になれるなこれは。


 スケジュールは確かに載ってたけど、ちゃんと見ないと見逃がしちゃいそうな感じに折りたたまれていた。

 これによると、明日は昼までスキップ不可で、午後はスキップOKで、夜またキャンプ。明後日は昼までスキップで、午後はスキップ不可、夜キャンプが終わったら昼までにサンガ着で、午前中のスキップはOKだけど、景色が良いのでぜひ見てね !って感じのコメントがついている。


「これを見ると、明日の午前中と明後日の午後には何かイベントがあるんだね。で、最終日はあの崖を上っていくから景色が良いよ、って宣伝があると」

 延々馬車に揺られるのもなんだかなーって感じだけど、ちょいちょい時間を飛ばしながらイベントをこなすって言うのもなんか忙しないなあ。

「とりあえず、今日はもう終わりってことよね? もう夜飛ばしちゃいましょう」

 とプリンさんが提案するので、僕たちもそれに同意する。一応キャンプ地でも生産とかはできるけど、作業場の方がやりやすいし、キャンプ地でわざわざお守り作る意味もないからね。


 それじゃ、また明日。


***

*ここまでのステータス


ナツ プレイヤーレベル12 上級魔法士レベル4

HP:150 MP:410

筋力:5 物理防御力:15 魔力:41 魔法防御力:30 

俊敏:10 器用:18 幸運:31

残りPP:2

■基本スキル

<土魔法>レベル5 【サンドアロー】【サンドウォーク】【サンドウォール】

<風魔法>レベル5 【ウィンドアロー】【クリーン】【ウィンドウォール】

<闇魔法>レベル3 【ダークアロー】【ダークアイ】

<光魔法>レベル3 【ライトアロー】【ライト】

<魔術式>レベル9 <節制>レベル5 <瞑想>レベル2 <魔法操作>レベル3 <ヘイト低下(小)>レベル5 <魔力ブーストⅠ>レベル2

■発展スキル

<上級水魔法>レベル1 【ウォーターアロー】【アクアクリエイト】【アクアウォール】【アクアヒール】【アクアレイン】【ディフェンシブ】/ 【アクアランス】【ミスト】

<上級火魔法>レベル2 【ファイアアロー】【イグニッション】【ファイアウォール】【パワーレイズ】【ファイアレイン】【ファイアヒール】 / 【ファイアランス】

<MP回復量増Ⅱ>レベル3 <上級彫刻>レベル3 【フリードロー】【インスピレーション】

<識別感知>レベル3 <罠感知>レベル2 <上級鑑定>レベル3  <装飾品鑑定>レベル11 <年代鑑定>レベル10

■固定スキル

<ヘイト軽減Ⅰ>敵からのヘイト20%軽減

<MP軽減Ⅰ>使用MP20%軽減

残りSP:46

アクセサリ:「食のお守り」 お腹が空いているとき、素早く動けるようになる。満腹の時、魔法防御力が上がる。(4日目/7日)

「最大HP上昇のお守り」所有者の最大HPを上昇させるお守り。最大HP上昇20%(150→180) 

「身体保護のお守り」体に作用するすべての状態異常を無効化する。 8/8

「-」

装備:白刺繍のシャツ 白のチノパン フォレストスパイダーのケープ ワイルドホースのブーツ 

武器:魔法杖ユーグ

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