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41日目:背中に竜背負ってるイケメン

 ゴーラの領主様というと、リゲルさんが面会してった人だよね?

「領主というと、パトウ家だったか」

 さらっと確認するように言うイオくんに、カパルさんは感心したような顔をした。

「良く覚えてるな。そうだ、現当主はカッツェ=パトウ。星の民にも色々いるが、パトウ家は数少ないエルフの家系だ。エンシェントエルフの血が入ってるわけじゃねえから、寿命がとんでもなく長いとかはないが、それでもヒューマンよりは長いからな。短気で能天気なゴーラにとっちゃ、熟考できる気の長い御仁ってのは貴重でな。パトウ家は、長きに渡ってゴーラじゃ唯一の頭脳派なんだよ」

「おお、エルフさん……」

 それ、リゲルさんが様子見に来た理由の一つかもなあ。エルフ同士のほうが話通じるだろうとか、そういう配慮ありそう。

「エルフの星の民って少ないんですか?」

「ナルバン王国は王家がヒューマンだからな。大半はヒューマン、残りがエルフと獣人って感じだ」

「フェアリーさんとかドワーフさんとかは……?」

「フェアリーを初めとする完全な妖精たちは面倒事を嫌うし、ドワーフや鬼人は自分たちの王国があるから、他国にゃ仕えんよ」

 へー、そういうのあるんだ。妖精類のみなさん……確かに自由だしお国に仕える貴族って感じはないか。エルフはたしか、半分人類だったもんね。


「カッツェ様は今……100歳超えたところだったか? 最近ヒューマンの奥さんもらってな、新婚で張り切ってる。それに……」

 カパルさんは非常に渋い顔をした。それからめっちゃ言いにくそうに口を開く。

「猫を撫でたいと」

「は?」

「あ?」

「え?」

「だから、でっかい白猫を連れたトラベラーだって知ってな。撫でたいんだと」

「あ、テトのファンの方でしたか……」

「妖精類だしな……」

 エルフは妖精類なので契約獣大好きなのは当然なのである。今なら生まれたてのシャルもついてくるとなれば、きっと大喜びしてくれるに違いない。

「もしやとてもマイペースな方……?」

「あー、いやなんというか。エンシェントエルフの熱心なファンなんだよ。だから、ほら、リゲル様がお前達のことを友人と言ったせいでな」

 興味を持たれてしまったと。リゲルさんはお父さんがエンシェントエルフで有名人らしいから、そりゃあ大注目だよねえ。


「まあ、行くのはいいけどな。場所は?」

「ああ、地図でいうと……」

 イオくんがあっさりと承諾したので、お任せしとこう。如月くんはなんか挙動不審だけどなんで?

「振る舞いに自信がないんですよ! ナツさんたち、リゲルさんの前だとすごく背筋伸びてて堂々としてましたけど、なんかスキルとかとってるんですか?」

「スキル……ああ。<上流作法>ってスキルかな? 如月くんも取得可能だと思うよ」

「マジっすか!」

 慌ててスキルを検索する如月くん、無事取得可能スキル一覧の中に<上流作法>を見つけたらしい。SPをしばらく睨んだあと、悔しそうな顔をしてスキルを取得している。またSPが枯渇しているようだね。

 僕とイオくんは発展スキルの<貴族儀礼>になってるけど、これ結構スキルレベル上がりやすいから、とっておいても損はしないと思うんだよ。

「ちなみにこれ発展スキルになると、<演奏>とか<歌唱>とかも出てくる」

「ええ……? 俺、歌はちょっと。でもギターとかあったら演奏はしてみたいですね」


 ちなみに、<演奏>は楽譜が読めるようになって、いろんな楽器を広く浅く弾けるようになるスキルらしい。何か楽器に特化することも出来て、<演奏>をとった後にその楽器をたくさん弾けば、<演奏>スキルのレベル10になってから<オカリナ>とか<縦笛>とかその楽器をより上手に弾けるスキルになる。

 なお、リアルで弾き慣れている楽器は、最初から特化スキルとして出現する。リアルでピアノを習ってる人は、<鍵盤楽器>というスキルが最初から取得可能だったとか。

 ……気になったから調べたよ。リアルで楽器なんか弾けないからね、楽に演奏できるようになるならちょっと興味あるじゃん? でもやっぱりリズム感だけはいかんともしがたいらしく……諦めました!

「作法なんて、普通に過ごしていたら必要ないスキルよねえ……」

「プリンさん、一応こちらのカパルさんも4等星だよ」

「……最初に言ってほしかったわ、私も取得できるかしら、そのスキル」

 プリンさんが慌ててスキル取得画面を開いているけれど、カパルさんはおおらかなので問題ないと思います。というか、ゴーラの星の民はおおらかって、カパルさん自身も言ってたよね。僕からすれば、イチヤでもサンガでも星の民はおおらかだったけどなあ。


「如月、都合つくか?」

「もちろんです、3等星に会うのは初めてなんで、緊張しますけど」

「俺達も領主は流石に初めて会うぞ。じゃあ、明日10時に領主館な」

「了解です!」

 予定はイオくんがまとめてくれたのでありがたいことです。そしてこれで終わりかと思ったら、次になんか箱を出される。

「これは乗組員の家族から、お前たちに礼だと」

「え、ありがとうございます」

 差し出されたら反射で受け取ってしまう僕である。遠慮なんかしない! わあいっと喜んでいると、イオくんがなんか微笑ましい感じに見てくるので保護者かよ……ってなる今日このごろ。

「くれるものはありがたく貰おうよ!」

「ナツだなと思う」

「俺、ナツさんのそういうところいいと思いますよ。何入ってるんですか?」

「いや何その他人事みたいな。僕達3人に対するお礼だよ!」


 いただいた箱をえいっと開けると、中にはいっていたのは……布かな? 取り出して広げてみると……シャツだね、これ。

「お、効果付きの服か。いいもんもらったな」

 カパルさんが言うように、どうやら普通の服じゃなくて、何か効果が付いている服っぽい。白いのと、黒いのと、緑色のシャツが、それぞれデザイン違いで入っていた。

 早速<心眼>してみると……。

「えっと、黒いのが打属性耐性、緑色のが斬属性耐性、白いのが突属性耐性だって」

「白いのナツな」

「白はナツさんですね」

「ア、ハイ」

 あっさり僕のものになった白いシャツは、耐久500で白シャツに銀糸の刺繍が入っている。モチーフは植物だから抵抗無く着れるけど、ちょっとびっくりするほど上品な感じだ。似合うかな……? と思いつつ早速装備を変えて……。

「……あ、ケープ着てるから全然何の問題もなかった」

 そういやシャツなんかほとんど見えないや。OK、ありがたくいただこう。


「後衛のナツに届くような攻撃は突属性くらいなもんだ。有用だぞ、ちゃんと着とけよ」

「はーい」

「如月どっちにする?」

「あー、打属性と斬属性は前衛やってたらどっちもめちゃくちゃ食らうやつですし、似合う方にしましょう」

 如月くんはそう言って、イオくんに黒を渡す。

 だよねー、イオくん今髪が青いから、青に緑の服って微妙なんだ。如月くんは髪が緑だから、なんか統一感出て似合う。

 イオくんのものになった黒いシャツは、シンプルに見えて背中に青い糸で竜の刺繍が入れてある、一步間違えると極道みたいな迫力の品である。まあ着るのがイオくんなのでどうせなんかしっくりきちゃうんだけれども。

 青い竜ということは、おそらくラメラさんモチーフなんだろうか。超かっこいい。この刺繍した人腕が良い職人さんなんだろうなあ。

 如月くんの手に渡った緑の服は、金の糸で伝統柄っぽいのが刺繍されている一番おとなしい感じのシャツだ。緑には金が合うねえ。

 

 全員その場で装備して、イオくんの背中めっちゃ派手ーと思っていたら、いつもの胸当てと群青色のマントが重ねられた。何そのマント、どこで買ったの?

「ラドンにもらった」

「騎士一直線してる……」

「いや騎士風マントじゃねえから。もうちょいカチッとしたのそのうち欲しい」

 確かに、言われてみると冒険者風マントって感じだね。そのマントしてると背中の刺繍が全く見えないのでなんか残念だけれども。

「<心眼>……風の抵抗を受けない……?」

「暴風に巻き込まれても平気だぞ」

 使い所もありそうだけど、まあ似合うからいいか。


「イオさんまじで騎士RPするんですか? あまりに似合いすぎてて死人が出そうですけど」

「不吉なこと言うな」

「アナトラじゃなかったらファンクラブ出来てましたよ、多分」

「あー……」

「あったねえ……」

「うわ、体験済みだった」

 イオくんはどこのゲームでも目立ってたから、なんか熱狂的な人たちはいたよね、どこにでも。そういう人たちってなんかいつの間にか勢力拡大してるから怖い。イオくんがかたっぱしからブラックリストにつっこんだせいで、余計神秘性がまして人気が出たまである。

「まあ、あれのお陰で変なのは全部弾けて今が快適なんだがな」

「イオくんRP結構上手だもんねー。切り替えたらすごいよ」

「俺はテトを守る騎士になる……! のは、もうちょい整えてからだな。今の状態だと中途半端で気分が乗らない」

「やはり白猫の騎士狙いでしたか」

「ナツを姫扱いしてもな……?」

「それはそう」

 僕は演技ドヘタ勢なので、ちゃんと守られ役をできる自信はないよ!


「さ、堅苦しい話はここまでだな。そのー、あの小さいのなんだが……」

「あ、撫でていいですよカパルさん。どうぞ」

「よっしゃ!」

 ということで、クエストの話はここまで。カパルさん、あんな筋骨隆々の強面さんなのに、めちゃめちゃとろけたお顔するねえ。いそいそと隣の部屋からミウちゃんを呼び寄せ、おもちゃの入った箱を引きずってくる。

「プリンさん、関係ない話に付き合わせてごめんね。あ、あの小さいのは倉庫で拾われたミウちゃんっていう普通の猫だよ」

「子猫なのね、かわいいわ!」

 目を輝かせるプリンさんは、早速ミウちゃんにご挨拶に向かった。ピーちゃんが「ピーチャンノホウガカワイイノヨー?!」ってプリンさんにアピールしてるけど、契約主さんの興味を引く存在への牽制かなー? プリンさんの髪をつんつんしているピーちゃん、焦ってるけどかわいいね。


 ナツおはなしおわったー? テトいいこでまってたのー!

「静かに待ててえらい! 撫でましょう」

 わーい♪

 家のテトさんも僕まっしぐらで来てくれるので心が満たされます。あー、やっぱりうちの子が一番かわいいとしみじみ思う。

 ナツおようふくちがうー?

「これさっきもらったんだよ。イオくんのも違うよ」

 イオのおようふくー。

「イオくん、後ろ見せてあげて。テトきっと好きだよ」

「おう」

 テトのためならだいたいなんでもしてくれそうなイオくんは、あっさりと装備を外して後ろの竜の刺繍を見せてくれた。案の定、ぱああっと目を輝かせたテトが「すてきー!」と高らかに鳴く。

 あおいろのりゅうだからラメラなのー? ちょっとにてないけど、とってもだいはくりょくなのー。かっこいいからにてなくてもゆるされるのー。ラメラのつよさがにじみでてるのー!

「ねー、これかっこいいよねー。素晴らしい職人仕事だよ」

 にゃにゃにゃっと褒め言葉を羅列するテトさん、イオくんの回りをくるくるまわりつつ、色んな角度から刺繍を見つめる。職人さんの手仕事、素晴らしいよね。


 ナツのはないのー? ルーチェいないー?

「僕の服にはいないよ」

 ざんねんー。でもきらきらしてるのきれいー。

 僕のケープに頭を突っ込んで背中を確認したテトさんは、僕の服には竜の刺繍がないので残念そう。でも、銀色の糸で飾り刺繍してあるのは気に入ったみたいだ。「おそできらきらー」とか言いつつすりすりしていた。

 むう。テトが喜ぶのなら、背中に刺繍してもらうのもやぶさかではないんだけど……。

 僕の知り合いに<刺繍>スキルのある人はいない……と思うんだよねえ。トラベラーショップが出てきたら、腕のいい人探してオーダーしてみるのはありかもしれない。

 テトのことだから、背中に猫を入れるほうが喜ぶかも? 

 覚えてたらいつかやろう。


「とりあえず、カパルさんが遊んでくれるみたいだから、テトもみんなと遊んでおいで」

 わかったー! ねこじゃらしはテトのものなのー、まけないのー!

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― 新着の感想 ―
あ、“撃”ってついてるけど、普通に打斬突か。 “刺”に変えるか、撃をつけないとかにしてほしいかも。 今回は文脈でわかるけど、単体で出てくると勘違いしそうです。
突撃耐性、テトロケット対策かと思ったら真面目に戦略的な理由だった
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