41日目:サクッとクエスト終了……したかった
ちなみに、本気で契約獣に貢げる課金要素が出てきたら、僕よりイオくんが重課金します。
経済力の差ってやつだね。
「一通り買うだろ」
「出たよブルジョワ」
まあイオくんのお金なのでどう使ったってイオくんの自由だけれども。僕の契約獣にイオくんが貢ぐのはちょっとどうかと思うよ。僕だってあんまり高いのは無理だけど、テト課金できるならするし……とりあえずファッション用の可愛い首輪とか欲しいかもしれない、ねーテト?
シャルのくびわおおきいのー。
「あ、これはね、テトも小さい頃つけてたでしょ? 自動で伸縮するやつだから……このボタンを押すと自動でぴったりに調整されるんだよ」
なるほどー!
「きゅー!」
でっかい猫とちっさい狐さんが顔を寄せ合って「すごーい」って反応をしてくれるので、和むしかない。ピーちゃんは首輪付けてないから、不思議そうだね。
「ピーチャンノクビワナイノー?」
「戦闘用の契約獣にはないのよ。戦闘で邪魔になることもあるから」
プリンさんが言うには、戦闘用の契約獣さんは戦闘中に首輪が引っかかって首がぐえってなったりすると困るから、首輪は付けないんだそう。
もともと戦闘用じゃない契約獣さんたちに首輪をつけるのは、迷子防止が目的だから、召喚士がいつでも送還できちゃう戦闘用契約獣さんたちにはつける意味がないのだ。テトたちは契約主と離れちゃうと、自力でホームに戻れないのである。
「ピーチャンモオソロイシタカッタワー!」
「きゅ、きゅー?」
ピーちゃんせんぱいとおそろい……すてきだとおもうけど、ぐえってなっちゃうのはよくないのー。あんぜんだいいちなのー。
なんか和む会話をしている鳥と猫と狐。如月くんがめっちゃニコニコしてるからどうしたの? って聞いてみたら、
「シャルがテトのこと、テト先輩って呼んでるんっすよ」
とのことでした。かーわーいーいー!
ホーム登録を終えて、ホーム石をベルトに引っ掛けた如月くんは、そのまま契約獣用のケア用品をいくつか買い込んだ。僕もテト用のブラシとか、おもちゃとか買ってたので多少の助言はできる。お会計が終わったら、今日の予定をこなしに港へ行くんだけど……。
「必要なのはこんなもんですかね。シャル、外行くけどどうする?」
「……きゅぅ」
シャルは生まれたばかりなので、外がまだ怖いっぽいし、如月くんが意見を聞いてみると何か答えてホームに入っていった。
「人が多いところちょっと怖いみたいです。管理局行ったらまた出しますよ」
むむむー、まもってあげるのにー。
「ピーチャンモマモッテアゲルノニー」
テトとピーちゃんはもっとお話したかったみたいだけど、まあそれは後で時間を設けましょう。とりあえず先に用事を終わらせなくちゃ。
マーチャさんにご挨拶してから契約獣屋さんを出ると、港へ向かってギルド前通りを一気に下っていく。今日も良い天気で、太陽の光を反射する海はきらきらだ。気持ちの良い爽やかな風がざあっと吹き抜けていくのが、すごく海を感じさせて楽しくなる。
「それで、みんなのクエストってどんなものだったのかしら?」
「あ、実はきっかけはナツさんたちのお届けクエストで……」
「プリンさんも知ってるグロリアさんが起点のクエストだったんだよ、えっとね……」
坂を下っていく間、プリンさんに今回のクエストの内容をざっと説明していく。レースのヴェールを教会に届けたこと、そこで花婿さんが行方不明と聞いたこと、そして船の航路を確認させてもらって、海竜ラメラさんと会って、神獣メリカさまのところに行ったこと……。
だいぶ省略した説明だったけど、流れはわかってもらえたようだ。あ、リゲルさんのことは秘密にしておいたよ、星の民だからあんまり気軽に紹介しないほうが良いと思うし。
「へえ、人魚族に聖獣様に神獣様……って。すごいわねえ」
目を丸くするプリンさんは、純粋に驚いている様子だった。なんか怒涛のイベントラッシュだったからあんまり考えてなかったけど、やっぱりすごいよね。エクラさんのことは話してないから、真実はもっとすごいんだけれども。
「私も神獣様は何回か見たことあるけど、なんだか、こう、近寄りがたい感じがあるじゃない?」
「……えーと」
「そうですね、俺はありますよ。あの雰囲気の中で話しかけるのはちょっと難しいですよね」
如月くんは「俺は」を強めに言った。う、うむ。僕は全く感じないけどそういうのがあることは知ってる……! イオくんも頷いてるし!
しんじゅうさんきさくなのにねー?
「そうだよねー」
テトに全面的に同意する僕だけど、まあ自分が特殊なのは知っているので、何も言うまい。
港に入ると、まだ午前中なので結構人で賑わっている。これは確かに、シャルはホームに戻って正解だったかもしれない。小さい契約獣だと迷子になりそうな人混みもあるからねえ。
「プリンさん、こっちですよ」
先導する如月くんの後について、混み合う屋台ゾーンを抜けていく。港管理局は、港倉庫街とは反対方向だから、この屋台ゾーンさえ抜ければ人が減る……あれ、あんまり減らないな、なぜ。
「ああ、船から荷をおろしてるのか」
「さすがイオくん、疑問に思った瞬間に答えをくれる、なんて賢いんだ」
「おう敬え」
「イオくん様!」
「お前それ好きな!? やめろ笑う」
失礼な、真面目に敬ったのに。
まあなんかイオくんにウケるから、たまに思い出したように使う茶番だけど。
「ミナトニギヤカヨネー、ピーチャンスキヨー」
「ピーちゃんはフレンドリーだもんねえ。戦闘用の契約獣さんも、妖精類に囲まれるのかな?」
「ピーチャンダイニンキヨー!」
「やはりピーちゃんは大人気でしたか」
「もう、ピーちゃんってば」
笑いながらプリンさんが教えてくれたところに寄ると、召喚士の連れている契約獣は戦える子たちだから、テトみたいに握手会状態にはならないらしい。なぜなら戦える子ってあんまり全方位に好意的な子って少ないんだって。プリンさんのところも、人混み平気なのはピーちゃんだけだしね。
「遠巻きに熱い視線をもらうことが一番多いわね。ピーちゃんだから手を振ったりしてファンサービスできるけど、ガンちゃんとかハサくんとかだとストレスになってしまうから、街では出せないの」
「あー、なるほど」
個性が色々あるからね、テトは人に構われるのが好きな子で良かったなあ。
そんな話をしている間に、港管理局の前まで無事に到着。プリンさんは如月くんとパーティーをくんでいる状態なので、建物を確認できたようだ。
「このあたり、何回も通っているんだけど、こんな建物があったのね……」
と不思議そうな表情である。アナトラってフラグ立てないと入れない建物多いもんねえ。存在を知らないと現れないとかもあるし、宝石店の「エタンセル」みたいに、そもそも前提条件を満たしてないと入れないとかも。
街中の完璧な地図とか、作ろうと思ったらどのくらいかかるんだろうなあ。いやアプデ入る可能性もあるし、永遠に完成しないかも?
「おはようございます!」
と元気に挨拶しながら如月くんが管理局のドアを開ける。僕達も挨拶をしながらそれに続いた。出入り口近くの椅子に座っていた人影が、ぱっと顔を上げる。
「おはよう!」
椅子から飛び降りながら言ってくれたのは、もちろんセスくんだ。今日も仲良くカパルさんのお手伝いをしていたらしい。嬉しそうにテトに駆け寄ってきてくれるので、テトも「おはよー!」と挨拶しながらセスくんに擦り寄るのであった。仲良し。
「おう、お前らやっと来たのか、待ってたぞ」
一步遅れてから立ち上がったのはカパルさんである。相変わらず海の男! って感じだけど、なんか疲れてる感じはあるかも。あ、机の上に大量の書類が……はい、お忙しそうですね。
「カパルさん、お仕事お疲れ様です! こちら僕たちの友達のプリンさんです、今回のことには関わってないんですけど、一緒でも大丈夫ですか?」
「おう、まあ結果を知らせるだけだから構わんぞ、どうぞ」
「お邪魔します、私はプリンパフェ、こちらはピーちゃんです。私の名前は長いので、プリンかパフェで呼んで下さいね」
「おお、ここで働いてるカパルだ。ご丁寧にどうも」
先にプリンさん同席の許可をもらったところ、カパルさんの目はピーちゃんに釘付けである。この人、猫だけじゃなく可愛い生き物全般に弱いのか……と悟ったよね。
視線を感じたらしいピーちゃんは、愛想よく「ピーチャンヨー!」と自己紹介している。かわいい。如月くん、ここは畳み掛けよう! と視線を向けてみると、なんか苦笑された僕である。
「いいですけどね。シャル、出てくるか?」
「きゅ!」
如月くんの呼びかけに応じて、ホームからぴょんと出てきた小さな毛玉。地面に降り立つ前に如月くんにキャッチされてテトの頭の上に乗せられたシャルが、きょとんと周辺を見渡す。子猫のミウちゃんと同じくらい小さいかもしれないシャルは、カパルさんという初対面の人を発見して即座にテトの毛並みの中に隠れた。素早い。
「えっ、そ、その小さいのは……?」
「あ、俺の契約獣のシャルです。実は今朝生まれたばっかりで」
「おおお! 生まれたてかあ、かわいいもんだなあ……」
カパルさんのまなざしが完全に孫を見る目なんだよなあ。
小さいセスくんにはシャルが見えなかったみたいで、何のことかわかんないって顔で僕を見上げたので、それじゃあテトに乗せて見せてあげ……僕にセスくんを持ち上げるのは無理なので、イオくんお願いします!
「声に出せ?」
「イオくんは僕の心読めるからいいかなと……!」
などと文句を言いつつもひょいとセスくんを抱え上げて、テトの上にのせてあげるイオくんなのであった。ありがとうありがとう。
「セスくん、俺の契約獣のシャルだよ、仲良くしてやってね」
「わあ」
早速如月くんにシャルを紹介されて、セスくんの目も輝いた。シャルも小さい子供なら怖くないのか、恐る恐るセスくんを見上げている。「シャル、セスくんだよ」と如月くんが紹介したので、「きゅ」とご挨拶をするちっちゃい狐……かわいい。
「セスだよ。この子、猫……?」
「あ、狐だよ。猫とちょっと似てるけど」
「きゅ」
「そうなんだ」
フェネックって狐の中でも小さい種類だし、確かにパッと見て猫っぽいよね、わかる。でも狐はイヌ科って聞いたことがあるよ。
そーっと丁寧に小さいシャルを撫でるセスくんは、すごく嬉しそうだ。わかるよ、妖精類だからね。
微笑ましいシャルとセスくんの姿に先輩心をくすぐられたのか、ピーちゃんもテトの頭の上にやってきて、「ピーチャンモナデテイイノヨー」とか言っている。
圧倒的和み空間。
じゃあ、テトたちのことはセスくんにおまかせして、サクッとクエストを終わらせちゃいますか。
「カパルさん、混ざりたいのはわかるけど、先に僕達の要件終わらせてくださいな!」
両手を彷徨わせてわきわきしている挙動不審なカパルさんにそう言ってみると、「うお、べ、別にそんなんじゃねえよ!」とツンデレみたいなセリフが返ってきた。
「いやさっきからカパルの視線釘付けじゃねえか」
「いいですよカパルさん、こっちの用事が終わったら撫でても」
イオくんと如月くんの追撃を食らって、推定可愛いもの大好きカパルさんは、なんかダメージを受けたような顔をして頭を抱えるのであった。
「く、そうだな先に要件を。あー、まあ、なんというか……」
ぐぐぐ、と契約獣たちから視線を外し、カパルさんは近くのソファに僕達を誘う。大きなソファだったので、僕とイオくんと如月くんが並んで座って、プリンさんは横の一人掛け用の椅子に座った。僕達の向かいのソファの真ん中に堂々と座ったカパルさんは、手元の書類を見ながら要件を切り出したのだった。
「あー、とりあえず。イオとナツと如月、お前ら明日にでも、ゴーラの領主と会えないか」
「えっ」




