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41日目:待望の後輩さん!

「じゃあ働き者のナツさんの幸運にあやかって、最後の魔力お願いします!」

 にこにこの如月くんが差し出したのは、きらきらつやつやの卵。たっぷりと魔力を蓄えた卵は、あとほんのちょっと魔力を込めれば生まれそう。

「さっきプリンさんにもお願いしたんですよ。俺の魔力が一番多いので、契約には影響ないですよね?」

「うん、契約主の魔力の割合が一番高ければOKのはず。如月くんが孵さなくていいの?」

「俺は朝一番で魔力込めました! ちょっと足りなくて。でも今日会いたいので!」

 テトもー! テトもあいたいのー!

 にゃあにゃあ言いながら、僕の隣のテトさんも卵に肉球をぺとっと。うむ、それではテトと一緒に最後の魔力を注ぎましょう!


「最後僕の魔力でいいの? イオくんは?」

「俺の幸運は寝てる」

 おやすみー?

「テトさん、比喩表現だよ。まあでもお休みならば仕方ない……!」

 っていうか魔力注いだからって幸運が渡せるわけではないんだけどね。よし、テト、一緒に魔力こめようねー、いっせーの!

 てやー!

 んにゃー! と気合を入れるテトに合わせて卵に魔力を注ぐと、卵はいつかのテトの時のようにぱーっと強い光を放った。その状態で慌てて如月くんに戻す。

「この光が収まったら卵にぴしっとヒビが入って、生まれるんだよ!」

「おおおお!? だ、大丈夫っすかね、がんばれー!」

 思いの外オロオロしている如月くんがひしっと卵を抱きしめ、プリンさんとピーちゃんはなんか温かいまなざしでそれを見ている。僕とテトはそわそわで、イオくんは……一見冷静に見えるけどちょっとそわそわしてるのがわかります、お見通しだ!


 やがて光が収まって、卵にぴしぴしと亀裂が入っていく。テトが楽しみ過ぎてひしっと如月くんの横にくっついた。

 がーんばれー♪

 応援も忘れないのでえらいと思います。

 しばらくすると、卵の殻を押し上げて、待望のニューフェイスがぴょこっと顔を出す。「きゅっ!」と小さな声を上げながら。

「おお!」

 毛玉だ! ちっちゃい! いや待ってテトも最初は確か小さかったはず……!

「赤茶色の……狐さん……?」

「フェネックじゃねえかな、狐ではあるけど、耳がでかいし」

「フェネック……?」

 なんでイオくんって何でも知ってるのかな? と思いつつ横で急いで検索検索……へー、砂漠に住んでる狐の一種なんだ。なんか一般的にイメージされる狐とちょっと違うんだね。かわいい。写真だと白っぽい感じだけど、この子は赤が強い赤茶だ。

「<鑑定>してもいいかしら?」

 目を輝かせて尋ねるプリンさんに、如月くんは「もちろんどうぞ!」と答えて手のひらに載ってきたちっちゃい狐を僕達の方に向ける。手乗りだあ……! ちんまい狐さんが、プリンさん、ピーちゃん、テト、僕、とそのまま普通に視線を向けて、最後にイオくんを見てビクッとした。……あ、イオくん一人だけ魔力注いでないじゃんそう言えば。


「だ、大丈夫だよ、イオくん優しいから。ちょっと圧が強いかもしれないけど、良い人だから怖がらないでね!」

 あっ、イオくん最近すっかりテトが馴れ合ってくれるから、動物に怖がられる体質だってことを忘れてたなこれ。地味にショック受けてる顔だあ……テト、ちょっとイオくんにすりすりしてきて。

 いいよー! イオげんきだすのー。テトのことなでるといいのー。

「……」

 イオくん、無言でテトを撫でている。癒やされなさい……。

 その間に、僕も<心眼>を使わせてもらって……。へー、サンフェネックっていうんだ。太陽の申し子、常にぽかぽかあったかくて共寝に最適……契約主に太陽の加護を授ける。

「加護を授けるとか神様では?」

「いやいやいやいや。あ、この太陽の加護っていうのは、火属性がちょっとだけ強くなるらしいです」

「いいじゃん!」

 如月くんは魔法剣士なので属性強化は腐らない。それに、この子が火属性を強化してくれるなら、ヒューマンの種族専用スキルで火以外の属性を選んで2属性強化できるし、かなり良いじゃん。

「かわいいわー! すごく小さいのね、大きくなるかしら?」

「猫くらいの大きさにはなるらしいです、小型なんですね。あー、どうしよう名前……!」


 何かと迷いやすい如月くん、今回も名前で迷っている様子。めっちゃ分かる、名前思い浮かばないよね。サンフェネックだから……太陽関係の単語からとるのが無難かな?

「そのままサンだと流石に単純過ぎますよね。えーっと、なんかアイデアありますか?」

「そうねえ、私だったらコンちゃん……さっき「きゅ」って鳴いてたかしら。じゃあ、きゅーちゃん!」

 最初にプリンさんがそう言って場を和ませてくれる。鳴き声を真似されたことに気づいたらしい狐さんは、「きゅ?」と首をかしげた。かわいい。

 テトはねー、しあわせななまえがいいとおもうのー。くりかりんごかなー?

「それはテトが食べたいものかな……?」

 むむ。じゃあねー、マロンー!

「マロンがいいの? それは結構かわいいかも」

 テト、なかなかネーミングセンスあるかもしれない。それに、ペットに食べ物の名前をつけるのってあるあるだもんね。テトももう少しで餅とか大福になるところだったのだ。

「イオくん何か思いつく?」

「太陽を各国語検索する。ソレイユとかソルとかか?」

 イオくんはテトのときもやったように、太陽をいろんな国の言葉に訳してくれる。如月くんはそれに興味を持ったようで、他の翻訳を色々と見ていく。


 やがてピンとくる単語が見つかったようで、ぱっと顔を上げた如月くんは、小さい狐さんに向けてこう言った。

「君の名前はシャルだよ」

「きゅっ!」

 心得た! とでも言うように声を上げる狐さん……シャル。如月くんも色々迷ったみたいだけど、そうやって名付けが終わるとすごく「シャル」って感じに見えるから不思議だなあ。

「テト、シャルっていうんだって」

 シャルー? テトだよー、よろしくなのー。

 早速アピールに言ったテトさん、にゃにゃーっと色々話しかけている。そこにピーちゃんも加わって、鳥と猫と狐のわちゃわちゃ対談……え、かわいいな? びっくりするほどかわいいな??

「シャルか。何からとった名前なんだ?」

「フランス語の熱って意味を持つシャルールから取りました。火属性強化してくれるって言うし、火関係の単語でもいいかなと」

「かわいい名前でいいと思います!」

 そんなことを話している間にも、隣から聞こえてくる会話が超可愛い。


 きさらぎはなでるのじょうずなのー。いっぱいなでてもらうといいのー!

「ピーチャンモナデラレルノスキヨ! シアワセナキモチヨー!」

「きゅ! きゅきゅっ」

 じまんのけなみなのー! ナツがブラッシングしてくれるんだよー。

「きゅー♪」

「ナッチャンオテイレジョウーズネ! プリンチャンモオテイレジョーズヨ!」

 ピーちゃんせんぱいのはねぴかぴかー。

「きゅきゅー」


 ちょっとドヤア……ってしてるピーちゃんも超かわいいんだけど、テトの毛並みに前足をぽすぽすしているシャルもかなりかわいい。ふふ、手触りがよいでしょうとも、僕が毎日寝る前に頑張ってブラッシングしているからね……!

 あ、家のテトが一番かわいいよ、もちろんだよ!

「めっちゃかわいいですね契約獣……」

 噛み締める如月くんである。ふふ、それは世界の真理なのだよ如月くん。

「それより如月、シャル生まれたんだから、管理局行く前に契約獣屋だぞ。ホーム買わねえと」

「そうでした。うーん、俺はストラップにして、ベルトに付けましょうかね……」

 如月くんはテトの頭の上にぽすっとシャルを置いて、きょとんとするシャルに「契約獣屋さんに行くから、そこにいて」と言い聞かせた。面倒見の良いお兄さんの姿である。リアルでもお兄ちゃんな如月くんなので、なんというか安定感を感じるね。

 ピーちゃんはプリンさんの肩へ、テトはシャルを乗せたまま僕の右側へ、いつもの定位置である。まだまだ時間は朝8時、マーチャさんとメルバさんは……お店にいるね、よかった!

「じゃあ、先に契約獣屋さんへ。付き合わせちゃって申し訳ないですけど、行きましょう!」


 トラベラーズギルドと契約獣屋さんは近いので、移動はすぐに終わる。ちまっとしたシャルはテトの毛に埋もれるように伏せて身を隠していた。外はちょっと怖いらしい。

 テトは毛量が多いので、実際ちっちゃいシャルが伏せちゃうと全然見えないんだよね。小声で「おそとこわくないのー。たのしいこといっぱーい♪」「きゅぅ」なんてお話してるの、和んでしまう。あまりにも癒し系である。

 無事に契約獣屋さんの中に入ると、マーチャさんが穏やかに出迎えてくれて、テトの頭の上でシャルがしゃきっと背筋を伸ばした。

「きゅ!」

「あら、生まれたのね。珍しい子を引き当てたわねえ」

 おっとりとそんなことを言いながら、僕達に椅子を勧めるマーチャさん。ゴーラは海の街で水の気配が強いから、あんまり火に関係するような契約獣は生まれてこないんだって。太陽を名前に持つサンフェネックは、マーチャさんが契約獣屋さんになってから初めて遭遇する子だという。


「珍しさでいうならば、スカイランナーとは良い勝負よ。ロクトやハチヤの契約獣屋さんになら、いた事があるかしら?」

「そう言えばテトを見せた時、サンガの契約獣屋さんが珍しいって言ってたような?」

 何しろ翼を授かりし猫だからね、当然である。まあでも、珍しいとか珍しくないとかよりも、大事なのは気が合うかってところだ。一緒に居て楽しい子が一番なのである。その点で、やはり僕にはテトが至高なのだ。

「シャル、おいで」

「きゅ!」

 如月くんが手を伸ばしたところに、シャルが身軽にひょいっと飛び乗って、肩の上まで移動しておすましする。ピーちゃんの真似をしたのかもしれない。ちまい体に大きな耳がアンバランスで、それがまたかわいいのである。

「最初はホームね。その子は本来砂漠に生きる子だから、砂地がある方が良いわ。広さはそんなにいらないけど、狭い隠れ家を作ってあげると喜ぶわよ」

 マーチャさんのアドバイスを受けながら、ホームの仕様を選ぶ如月くん。テトのは走り回れるくらい大きな草原にしたんだったかな? 結局テトはほとんどホームに居ないけど。


 きさらぎなにいろかなー?

 わくわくのテトさんは、カラフルなホーム石に視線が釘付けである。テトは僕のために紫選んでくれたんだもんねー? 気が利く賢い猫でえらい。

「テトに選ばせたんですか、ナツさん。じゃあ、シャルも選ぶか?」

「きゅー!」

 如月くんに言われて張り切った様子のシャルは、並べられたホーム石に真剣なまなざしを向けている。如月くん、僕達に敬語つかいつつシャルにだけお兄さんになるのが……なんかとても良いですね。微笑ましいというか。お兄ちゃんって感じで。

「僕もお兄ちゃん欲しかったなあ」

「片方やろうか?」

「イオくんはお兄ちゃん大好きだから絶対くれないんだ、知ってる」

「ナツはすでに身内枠に片足突っ込んでるからなあ。今度晴兄って呼んでみ? 意外と喜ぶ」

「うーん、ちょっと勇気がいるよそれは」

 でもイオくんところは仲良し三兄弟なので遠慮しときます。一人っ子って気楽なところもあるけど、クラスメイトの兄弟あるある話とか聞く度に羨ましい。でも兄がいたらいたで、僕の甘えたに拍車がかかった気もするので、まあ今のままでいっか……。


 シャルは小さい足でてとてととホーム石の置いてある机の上を歩き回り、時々如月くんを見上げて、ふんふんと石の匂いを嗅いだりしつつ、最終的に赤と茶色で迷っているようだ。如月くんの髪色が緑だから、緑を選ぶかと思ったけど……そういえば如月くんの目の色は赤茶色だから、シャルと同じなんだね。なるほどなあ。

 色合いとしては赤と茶色の中間の色があればジャストだったかも。残念ながら色の変更は出来ないみたいなので、しばらく迷ってからシャルは赤い方の石を選んだ。

 シャルの毛並みが、赤の強い赤茶色だからだろう。

 てしっと赤い石に前足を置いて如月くんを振り仰ぐシャルは、「どう?」って感じに首を傾げる。その小さな後頭部を撫でつつ、如月くんのホーム石が決まったのであった。

「金具は金と銀があるわ。どちらがいいかしら?」

「うーん、シャルは金ですね。ストラップ用の金具を付けて下さい」

「ストラップね。それじゃあ、すぐに登録を済ませてしまいましょう。それから、大きくなるまではこの首輪よ」

 マーチャさんが差し出したのは、テトも付けてた伸縮性のある最初の首輪。契約獣屋さんのプレートは共通デザインみたいだ。テトの首輪にも付けてるけど、シャルのはテトのより小さいから、体の大きさでプレートが変わるのかも。


 首輪を首にかけてずり落としそうになっている小さいシャルに、如月くんは噛み締めるように呟いた。

「ナツさん、公式から契約獣に貢げるアイテムとか、発売しませんかね?」

「それ、僕も思った」

「私も常日頃思ってるわ」

 プリンさん、如月くんも。一緒に運営さんに要望メールだそうよ!


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― 新着の感想 ―
わーおめでとうございます!! ちっちゃなキツネ絶対可愛いー!!めちゃかわ!! これで如月君の親友さんの契約獣がたぬきになったら面白いなと思いました。次はどんな動物さんが来るか楽しみにしてます。
かわいいは増えるだけ! かわいいは足しても掛けても永久に増えるだけ! それが世の理、覆せない絶対! 間違いない事を改めて確認してしまった!
お待ちしておりました! ようこそテトの後輩くん(ちゃん?)シャル! フェネックでしたか。大きなお耳と大きな瞳がカワイイんですよね。如月くんもめろめろになるに違いない。もうなってるか。シチューがお待ちで…
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