40日目:種族専用スキル
僕とイオくんのプレヤーレベルは18なので、あと2つ上がって20になったら「種族専用スキル」というのを取得可能になる。
種族によって、異なる3つのスキルがあって、なんとすべてSP1で取れるスキルなのである。ただ、種族によって違うスキルなので、目指す方向によっては有用だったりそうでもなかったり。もちろん他の種族の人は絶対取れないから、できればキャラメイク前にチェックしといたほうがいいって掲示板では言われてる。
僕もちゃんとキャラメイク前にチェックはしたよ。まあ正直そんなこと関係無しに、魔法使いやすそうってだけでエルフ選んだけど。
エルフの種族専用スキルは、前評判がよくないというか……あまり使えなさそう、って言われてるんだよね。もうプレイヤーレベル20に到達して取得した人がいたら、もしかして評判変わってるかもだけど。
エルフが獲得できる種族専用スキルは、以下の3つ。
<植物親和性> 植物に関する技能のすべてが強化される。
<可能性の発芽> 確率が設定されている技能において、その確率の成功率が上がる。
<魔才開花> 魔法スキルの基礎威力を上げる。
事前の評価としては、一番下のやつだけ使えそう、他のは……うーん? って感じ。そもそも植物に関するっていうのがよくわかんないし、確率は裏切るからねえ……。
魔法スキルの基礎威力っていうのは、例えば攻撃魔法を撃った時、そのダメージ量は毎回一定ではなくて、50~100の間でランダムなダメージになる、みたいな幅があって。その最低値を引き上げて70~100に狭めるのが、基礎威力を上げるってことだ。より安定したダメージを与えられるようになるから、戦力的には確かに強化に繋がるけど、すごく欲しいスキルかっていうとそうでもないという……。上限が上がるっていうんなら大喜びで取得したと思う。
SP1だから取る予定だけどね!
ちなみにイオくんのヒューマンで取れる種族専用スキルはこんな感じ。
<◯属性強化> 火・水・土・風の4属性の内、1つを選んでその属性の威力を少し強化する。
<二連攻撃> このスキルを発動した直後、使った攻撃アーツは連続で2回発動する。消費MP20。
<第一印象> 初対面の住人・聖獣・神獣等から良い印象を持たれやすくなる。
一番上のは、属性を選択するとその属性がスキル名の◯のところに入る。
上2つは強そう……というより、使いやすそうというか。腐らなさそう、と前から評判。ただまあこれも、似たようなことができるスキルが他にあったりして、別に必須というほどでもないかも……という評価だ。
そして一番下のはこのゲームに限っては絶対に有用。何しろアナトラは住人さんとの交流推奨ゲームだからね、良い印象を持ってもらうほうが良いに決まっている。
よって、他に類似スキルが発見されて無くてこのゲーム特有の、一番下のスキルが現時点では一番評価されてる感じ。
必須だろ、ってレベルのスキルは、今のところどの種族にもない……と思う。
ただ他のスキル取るよりもお得に取得できるし、効果量も多めなんじゃないかな。今判明しているのは3種類だけだけど、今後プレイヤーレベルを上げていったら、またどこかのタイミングで種族スキルに追加があるかもしれないし、今後にも注目って感じだね。
「もしかしてみなさんが言ってるのって、<植物親和性>スキルのことですか?」
<樹魔法>に関係ありそうなのってそのくらいだよね? と思って口にしてみると、フェアリーさんたちは一斉に頷いた。
「私たちフェアリー族も植物との親和性は多少高いけど、エルフほどじゃないものねー。フェアリー族の種族専用スキルは魔法と飛行と俊敏を強化するだけで面白くないし」
「強いんだけどそれだけって感じ。それに比べてエルフのスキルは面白いよ。<植物親和性>は植物に関わる全てに効果が及ぶから、<樹魔法>もかなり強化されるよ」
「草木の言葉が何となく分かるようになったりするし」
「良い状態の木材とかの目利きもできるようになりますよ」
お、おお……?
すごく多岐にわたるスキルなんだな。カテゴリが広いから、その分たくさんのものに影響するってことか。草木の言葉……は、グランさんの密林でなんとなくそれっぽい体験したかも? ツリーハウスの大木がなんか男前なこと言ってそうな感じだった。あの感覚がもうちょい明確になるって感じかな。
「なるほど。エルフって森の人だもんなあ……」
しみじみと呟くと、フェアリーさんたちは何を今更って顔をした。
「フェアリーはどっちかって言うと花との親和性だもの、森はエルフよ」
「そうそう。<樹魔法>なんてエルフのための魔法みたいなものだから。使わないともったいない」
「参考になります!」
使いづらい魔法だと思ってたけど、そう聞いちゃったらレベルを上げざるを得ない。頑張って使おう。決意を新たにこぶしを握りしめていると、トゥルゥさんがすいっと寄ってきて、
「ダイヤモンドも確保しといてくださいね!」
と一言。
あ、はい。杖の強化用宝石……!
「ダイヤモンドって?」
「あ、イオくんに言ってなかったっけ。ユーグくんの次の強化に必要でして……」
「贅沢な杖だな」
苦笑するイオくんであった。そうだね、お金だいぶかかるやつだよ。だがしかし、ユーグくんが優秀なので仕方がないのだ、必要経費……!
ユーグせんぱいのほうせき、テトえらんであげるねー。
「ありがとうテト。僕と一緒に選ぼうね」
いっしょー♪
ごろにゃんと膝に懐くテトさんを撫でつつ、まあでも宝石はすぐでなくても大丈夫。次の強化条件もクリアしてないしね。
「<植物親和性>が「強化される」って表記なのに対し、ヒューマンの<属性強化>は「少し強化する」って表記なんだよな。これかなり差があるんじゃないか?」
とインテリなことを言い出すイオくんだけど、4属性と植物オンリーだったら汎用性がまるで違うんだよイオくん……。
「使い所がね……」
「ナツ何か属性特化するか?」
「うーん、<光魔法>は上げようと思ってたんだけど、<樹魔法>上げてもいいなあ」
次の転職先の候補に、魔法2つ選んで特化させて他はそこそこ上げる、みたいなのがあったはず。何かと使い勝手が良い<風魔法>を上げようと思ってたんだけど、フェアリーさんたちにあれだけ<樹魔法>プッシュされると揺れるよね。
「いんじゃないか? ここでフェアリーたちに勧められたのも何かの縁だろ」
「それもあるね」
このゲーム、住人さんがオススメするものは本当に良いものが多いからね。
わいわいと楽しい夕食を終えて、まだまだ飲むというフェアリーさんたちに別れを告げ、僕達はギルドへ向かう。寝る前に生産して、リアルで昼休憩をとって、明日はプリンさんと再会しつつテトの後輩と対面予定。遭難クエストの後始末も付けなきゃなあ。プリンさんには申し訳ないけど、ちょっと付き合ってもらおう。
実は、リアル明日はイオくんは家の用事で夜までログイン出来ないのだ。イオくんはご両親とめちゃくちゃ折り合いが悪いから、家に呼び出されると毎回ストレス溜めて戻って来る。そうなると明日の夜は戦いたいだろうし、フィールド確定。
ちなみに一心不乱に餃子包んだのもストレス発散のためと思われる。どんだけ嫌なんだイオくん。
で、僕一人でログインしてもいいけど、そろそろ実家に顔出さないとお母さんに怒られるので、僕も明日は実家に顔を出しに行く予定。
空のタッパーをたくさん持っていくと、お母さんが張り切って料理を詰めてくれるのでありがたいのである。なんなら手作りお菓子が入る。市販のケーキやプリンも大好きだけど、お母さんの作る手作りマフィンは僕としては甘い物の原点って感じなのでリクエストするんだ。
ギルドに入って受付に向かい、作業場のレンタルをしようとすると、受付のお姉さんは僕を見てぱっと微笑んでくれた。おや? と思っていると、先に声をかけられる。
「今朝はお守りをありがとうございました! 素晴らしいお守りでしたので、すぐに売り切れてしまいまして……」
「あ、癒やしのお守りですか。追加納品します?」
「是非お願い出来ますでしょうか! あと、イチヤから素晴らしい腰痛のお守りを作るトラベラーさんがいらっしゃると聞いているのですが、もしや……?」
「僕ですね……?」
ええ……あの棒人間こんなところにまで噂になってるの……? 若干引きつる頬を押さえつつ。少しの間葛藤する。なんであんな棒人間に住人さんが喜ぶ効果付いちゃったんだ。
でもきらきらと期待の眼差しを向けてくれる受付のおねえさん(狐獣人さん)を見ると……っ! くっ、多少の羞恥心は投げ捨てよう!
「10個ずつくらいでいいですか? ちょっと【コピー】しちゃいますね……」
「ありがとうございますっ!」
今まで僕が作ったもので、一番人を喜ばせているのって腰痛のお守りである気がしてきた。★3のお札も……売っちゃおうかな。
そっと差し出した「腰痛のお札」。
受付のお姉さんは目を輝かせて「きゃあああっ!」と黄色い悲鳴をあげてくださりました。げ、解せぬ……っ!
「そして良い稼ぎになるという……」
「そろそろ宿泊まりに行くか? パワーアップ付けてフィールドいこうぜ」
「それもいいねえ」
ゴーラの宿って坂の上の方に集中してるから、絶対眺めが良いよねー。とか雑談をしながら、とりあえず生産である。
テトはすでにイオくんの隣にスタンバイOK。尻尾をゆらゆらと揺らしながら、「きょうなにつくるー?」とイオくんを見上げている。シチューを求める眼差しですね、わかります。そこはイオくんもちゃんとわかっているので、ハニーラビットのお肉を真っ先にインベントリから取り出している。
僕は、今日は<細工>かなー?
プリンさんのために何かを作ろう!
「うーん、女性用だと……何かかわいいの……色合いがきれいなの……」
アクセサリ用の素材、ちょこちょこ集めてはいるんだけど、数が少ないやつから使ってインベントリをあけないとなあ。品質表示がないようなすごいものはしまっておくとして、この前買った天然石とか貝殻とか……貝殻がいいかな!
テトが拾ってきてくれた綺麗な白い貝殻と、黄色くて小さい花と……革紐。これでどうだろう。
「なんかかわいいのお願いします。……【アクセサリ合成】、MP230!」
ぱあっと輝く素材、そして合成されていく光。正直女性用のアクセサリってよくわかんないんだけど、プリンさんにとって有用なものになるといいなあ。
わくわくと出来上がりを待っていると、次第に光が収まって完成品がテーブルの上に残される。作成されたのは……ブレスレットだ。
「おお、いい感じ!」
貝と花を編み込んだような、細めの革ブレスレットが出来上がった。見た目はかわいいぞ。効果は……<心眼>で。
貝と花の編み込みブレスレット 乙女の夢を詰めた軽やかな装備品。弓を射る時、連射しやすくなる。装備者がエルフの場合、甘いものを食べた時の幸福度UP 品質★4
「うん。……うん?」
いや弓に対する効果はいいんだけど……プリンさんは弓士だもんね。でもこの後半……じ、自分用にも欲しくなっちゃうじゃん……。だって甘い物を食べるってことはそれだけでも幸せなことなので、その幸福感が上がるとなれば……!
「りょ、量産、いや、改良を……!」
3つある素材の内、どれかがこの幸福度とやらに関係しているはずである。どれだ……! 花も貝も在庫が3つずつしか無いぞ、組み合わせを変えて検証しなければ。革紐だけはたくさんある。
組み合わせを変えていくつかアクセサリを作ってみたら、どれにどんな効果がのるかわかるかな? ちょっと前に拾ったどんぐりは幸運方向の効果だったような気がするから、あれと組み合わせて……。
なんか食事方向の幸運を下さい!
よりよい食生活のために、がんばれ僕!




