40日目:フェアリーさんたちとの遭遇
ロイドさんの救出には如月くんも関わったし、みんなで後日伺うことをセスくんに約束して、その場は解散となった。
今すぐにでも行きたい気持ちはあるけど、夜だからねえ……! 常識的な時間にお邪魔しないと、住人さんたちに迷惑になってしまうのである。
「そうと決まればテトを回収して夕飯、そして生産!」
「それが終わったらリアル昼食休憩だな。……あ、そうだ。ナツ餃子食うか?」
「餃子! 美味しい!」
「食ってから言え」
約束された美味しい食べ物だったのでつい断言してしまった。でも餃子美味しいじゃん、絶対。紫蘇入りさっぱり餃子から、エビ入りプリプリ餃子まで、結構幅広いけどもれなく全部美味しい。なんなら餃子の皮にチーズくるんで揚げたやつとかも僕は好きだよ。
「昨日一心不乱に包んだ餃子が冷蔵庫に詰まってんだよ」
「餃子パーティーだ!」
「晴兄は確保した。常磐兄はこういう時役に立たん」
「求められているのは僕の胃袋だったか……!」
イオくん何か作り出すと一心不乱に作り続けちゃうからな。餃子なら冷凍すれば? って聞いてみたところ、冷凍庫に空きが無い、と言われてしまっては仕方がない。OK、つまり昼にイオくん家に行って餃子を貪れば良いのだな!
快く了承するとイオくんは若干ホッとした顔をする。これは本格的にめっちゃたくさんあるパターンだな。
イオくんの一番上のお兄さん、晴臣さんは結構大食いで、朗らかにマイペースに大量に食べるタイプ。そして下のお兄さん、常磐さんは反面、食が細い。というか好き嫌いが多いというか。野菜・果物はいくらでも食べてくれるんだけど、油っぽいものだめなんだよね。揚げ物とか一口しか食べない。
当然、餃子戦線では戦力にはならない。そこで代打・僕というわけだ。
これは楽しみが出来てしまったな……!
ゲーム内で今日が終わったら、自転車を飛ばしてイオくん家にGOだ!
*
ダナルさんのお家に戻ってきて、ロミちゃんと何やらにゃんにゃか話しているテトを回収する。
「ロミちゃん、ありがとうねー。テトはホーム嫌いだから、遊んでくれて助かったよ」
ロミありがとー!
僕とテトのお礼に、ロミちゃんは優しい眼差しで答えた。それからテトと僕に1回ずつ、すりっと頬を寄せてくれる。かわいい。ロミちゃん大きいからなんかこう、包容感を感じる……! 安らぎを覚えてしまうな。
「おかえり、ナツさん、イオさん」
ダナルさんも工房から出てきて挨拶してくれるので、「ただいま!」と答える。イオくんがそっちに向かって、テトの預かりのお礼を言ってお肉を手渡したりしてくれるので……僕は甘えてくるテトを撫でることに専念しましょう!
「テトもロミちゃんとお留守番できてえらいねー。お肉いっぱいとってきたよ!」
おにくー♪ イオがおいしくしてくれるのー。
「楽しみだね!」
豚肉は本当に幅が広いからね、美味しいものたくさんあるのだ。
「ナツさん、ロミが喜ぶから、俺がいるときならいつでもテトさんを預けに来てくれていいよ」
「ありがとうダナルさん! テト、また遊びにこようね」
ロミといっしょならいいよー!
にゃんっと元気にお返事できるテト、えらい。ロミちゃんもちょっとうれしそうにぶるるっと鼻を鳴らしてくれたので、ロミちゃんも楽しいならWIN-WINだね。次もお願いするなら、何か良いものをお土産に持ってこなきゃ。あ、今度こそイオくんのシチューで一緒にご飯というのも良いね。
イオくんとダナルさんの話も終わったようなので、じゃあ行くよとテトに声をかける。テトはロミちゃんの回りを体を押し付けながらぐるぐる回って、存分に甘えまくってからこっちに戻ってきた。満足そう。
ごはんー?
「そうだね、どこで食べよっか? 新しいお店開拓してもいいし、ここらへんのお店に行くのでもいいし」
「なんか食いたいものあるか?」
「割となんでもいいなあ……」
「この辺だと……「カフェ&バー・シーサイド」か「海の夢亭」……」
「あ、シーサイド行こう! ディープディッシュピザ!」
以前シーサイドでランチした時はピザを食べて満足してたんだけど、あそこディナー用のメニューもあって、そこにディープディッシュピザっていう、深皿で焼いたピザメニューがあったんだよね。気になってたんだ。
「シカゴピザか。あれ結構ボリュームあるんだよな」
「あの、ほら、生地が高いやつでしょ。ケーキの型みたいなピザ生地の中に、具材がぎっしりの……」
「ナツは確かに好きそうだな。夜は酒も出るみたいだから、酔っぱらいに絡まれなさそうなら行くか」
あ、そっか。カフェ&バーだからお酒を出す店になるのか。
まあ、アナトラ世界で酔っぱらいに遭遇したことあんまりないし、大丈夫でしょ。ってことで、2度目の「カフェ&バー・シーサイド」へ。猫のお皿でパンケーキ出してくれたお店だよって教えたら、テトさんは嬉しそうに猫の歌を歌っていた。
まだお酒を飲むには早い時間だからか、お店はそこまで混んでない。前回は大人数座れるテーブル席があった2階へ行ったけど、今日は1階でもいいかな? って話をしていたところ、店の奥の方から僕達に手を振る住人さんが1人。テトが嬉しそうにそっちに駆けていってしまうので、慌てて後を追う。
「トゥルゥさんだ!」
「誰だ?」
「杖工房の人!」
「ああ」
これだけの会話で納得してくれるのでイオくんは賢いと思います。
お店の奥の方の、ちょっとした仕切壁の向こうにある席にいたのは、アリシャさんの杖工房で事務とかをしているフェアリー族のトゥルゥさん。というかこの辺の席フェアリーさん多いな!? みんなの視線がテトに釘付けになっている……妖精類だからね。
「トゥルゥさん、こんばんは! 何かの集まり?」
「やあナツさん! それより、テトくん撫でていい?」
「あ、どうぞどうぞ。テトは撫でられるの大好きですので、他のみなさんも是非」
「「「「やったー!」」」」
さっきからびしばし視線が向けられてたので、僕も気の利く男としては許可せざるを得ないやつだ。5・6人のフェアリーさんたちが一斉にテトに群がって、テトは「なでるのー? いいよー!」とおすましポーズをとっている。
テトはサンガでリィフィさんにめちゃめちゃ撫でてもらってるから、フェアリー族=いっぱい撫でてくれる人たち、みたいな把握の仕方をしていそうだなあ。小さい体でめいいっぱい撫でてくれるので、テトも満足度が高いらしい。
「偶然ですねー。俺は仲間内での飲み会の予定だったんですけど、うちの工房に人懐っこい契約獣が来たって話を今してたとこなんですよ!」
にこやかなトゥルゥさんが、どうぞどうぞと隣の席を勧めてくれる。ここって仕切ってある空間だけどいいのかな? って聞いてみたら、このスペースは今日トゥルゥさんたちの貸し切りなんだって。
「みんな契約獣がいてくれたほうがいいに決まってるので、遠慮なく!」
「それならお邪魔します! ……あ、トゥルゥさん、こちら僕の親友の何でもできるオールマイティーイケメン、イオくんです!」
「余計な単語付けなくていいぞ。……どうも、イオという。ナツとテトが世話になった」
「親友とはいいですねー! 杖工房の裏方をしてます、トゥルゥです」
フェアリーさんたち、全員きらっきらだから見分けつけるのが大変……! 多分、女性が3人、男性が3人……だと思うんだけど。さっき仲間内の飲み会って言ってたから、ご友人たちかな?
勧められた席に座ると、テトはにゃにゃっと僕の隣にやってきて、にゃあんと鳴いた。
ナツー、テトはパンケーキがよいのー。しろいクリームたっぷりのはまえにたべたから、きょうははちみつとブルーベリージャムのやつにするのー。ブルーベリーはむらさきいろだからきっとおいしいのー!
「テトははちみつとブルーベリージャムのパンケーキだね、了解」
テトが移動するとフェアリーさんたちもぞろぞろと後ろについてくるので、ちょっと面白い。僕達の紹介は、トゥルゥさんがまとめてやってくれたので、よろしくーって頭下げるだけでよい。名前……個別に聞きたいところなんだけど、今紹介されなかったということは、それぞれのお勤め先とかに縁がないとだめなのかも。
普段なら、この店は中央カウンターで注文するタイプのお店なんだけど、今日は貸し切りだからベルを鳴らすと店員さんが注文を聞きに来てくれるらしい。もちろん運んでくれるというので、僕達も急いで注文するものを決める。
ディープディッシュピザは3種類!
スタンダードと、シーフードと、ミートミックス。スタンダードは野菜多めのヘルシーな感じで、他は魚介類と肉がたっぷり。くっ、どれもこれも美味しそうすぎる……!
「……トゥルゥさん、ディープディッシュピザを3種類頼むので、みんなで食べませんか?」
「いいねえ!」
というわけで、全種類! 1切れずついただきましょう!
食事が届いたら、みんなで乾杯して、早速料理に手を伸ばす。……あ、僕は普通にオレンジジューズ、テトはパンケーキで、イオくんはコーラで乾杯したよ。このゲーム、お酒は20歳以下のプレイヤーは注文できない設定になっているのである。
僕とイオくんは今19歳だから、ギリギリだめなのだ。とは言え僕はお子様味覚なので、お酒をどこまで美味しく感じられるかは未知数なのだけれども。洋酒が効いたチョコとか洋菓子は好きなんだけど、どうなんだろうなあ?
結局、トゥルゥさんたちとはテーブルをくっつけて色々シェアして食べる事になった。テトのためにフェアリーさんたちが色々貢いでくれて、テトはさっきから美味しいものたくさんお裾分けしてもらえるので超ご機嫌である。
あれがおいしいこれがおいしいと教えてくれるテトに対応しつつ、聞こえてくる雑談に耳を澄ませると、どうやらこのフェアリーさん軍団はゴーラで事務職をしているお仲間らしい。トゥルゥさんは杖工房だったけど、港の中央卸売市場とか、船工房とか、お店とか、いろんなところでみなさん働いているのだそう。
「へー、フェアリーさんって魔法得意だから、そういう魔法使う系の職業が多いのかと思ってました」
と言ってみると、魔法は結構使うんだよ、という返答が。
「聞いたことをそのまま文字にする筆記魔法とか、メモを複製する魔法とか、特定の時間になったら音がなる魔法とか、色々あるんですよ」
「なるほど、便利そう……」
「ナツさんは魔法士? 今何使えるの?」
「あ、えーと……」
トゥルゥさんの友達の女性フェアリーさんに聞かれたので、ステータス画面を見せてみる。これも最近アップデートされてたんだけど、パーティーメンバーやチームメンバー以外の人にステータスを開示できるようになったのだ。ステータス画面の右上にある切り替えボタンをスライドさせて「開示」、そのスライドを戻すと「非開示」となるらしい。
「おおー、満遍なく魔法とっててえらーい!」
「イオくんと2人のパーティーなので、火力とか回復とか専門になるよりも、広く浅くのほうがいいかなって思って」
「2人だとそのほうがいいかもね。あ、<原初の魔法>! これは育てたほうがいいよー」
「もちろんですとも!」
トラベラーのステータスなんか見る機会ないというので、フェアリーさんたちが今度は僕の両側にぎゅぎゅっと密集する。
あ、いつの間にかレベルが1個ずつ上がって、<雷魔法>と<樹魔法>がレベル8に、<氷魔法>がレベル9になって新しいアーツを覚えてる。やったね!
<雷魔法>は、レベル5で【サンダーウォール】を覚えた後は、レベル7で【パラライズ】というマヒ系のデバフを覚えるんだけど、これがなかなか微妙。イオくんが上級盾術で覚えた【パラライズ】と違って、成功率がそもそも70%くらいな上、相手に耐性があると更に下がる。その代わり、かかると弱めのマヒが20秒続くのでかなり敵の動きを阻害する事ができるんだけど、そもそもの成功率が低いからなあ……って感じ。ちなみに、上手く行けば重ねがけになるらしい。出来たこと無いけど。
<樹魔法>は、レベル5で覚える【ウッドケージ】の次は、レベル7で【ホールド】という、植物で拘束するアーツが出てきた。攻撃魔法が出てほしかった! ケージもこれも拘束系の技だから、役割が被るよ。とはいえ手足を自由に動かしていい敵なら【ウッドケージ】、手足も、口とかも拘束したいなら【ホールド】になるのかな。次こそは攻撃系のアーツが出ますように。
そして<氷魔法>! レベル5で【アイスウォール】、レベル7で【フリーズ】を覚えた後に、レベル9でようやく【アイスラッシュ】という全体攻撃が来てくれた。他の魔法のラッシュ系魔法より少しだけMP消費が多くて、その差分は「稀に氷結効果がつく」というところ。
氷が高速で飛んでくると思うと怖い技だな……。とか思いつつ、僕はフェアリーさんに質問をですね。
「<樹魔法>ってちょっと使いづらいんですけど、育てると強いですか?」
この魔法だけなんか独特なんだよねー。
「あら! <樹魔法>は便利よー、絶対に育てるべきよ!」
「そうそう、植物なんてどこにでもあるもので攻撃できるんだから、腐ること無いよ」
「でも最初は確かに使いづらいかも? 上級になるとホント便利だから。それに君はエルフでしょ、レベル20になったら種族スキル取りなよ、化けるよ」
「種族スキル?」
って、プレイヤーレベルが20になったら取得可能になるやつか。え、ちょっと詳しく聞かせてくださいな!




