40日目:ラメラさん像も見に行くのだ。
炎鳥さんはスペルシア神の直属の使いだから、その力が唯一無二、というのは確かに聞いたことあった。
あったけれども。
「このお守りを作れる事自体がおかしいと気づけ」
「そう言われましてもですね……!」
僕がそんなことに気づけるワケがないのである……! いや自慢できることでもないけど! 本当にヤバかったら多分イオくんが止めてくれるかなあと!
「責任転嫁すんなよ」
「すみませんでした!」
「許す」
「許された!」
「まあ茶番は置いといて。ここらでリゲルに保護してもらえ」
ついノリで茶番にのってしまったけれど、イオくんがそういうということは、やっぱりこれなんかすごいお守りなのか。うーん、僕の力っていうか、僕に懐いてくれたリュビとサフィの力だよねえ、これ。虎の威をかる狐にならないようにしなければ。
「湯の里にいる炎鳥さんについては、ナナミのみなさん把握してるんですか?」
「報告は上がっている。ナツは親しいのか?」
「親しいっていうか、名付けをですね、僕がしまして」
「……はあ。ナツは一体どうなっているんだ。イオ説明しろ」
「ナツだからとしか……」
いや僕としても流石に名付けすることになるとは思わなかったよ。そもそも名付けっていうのが苦手だから、イオくんに協力をお願いしたわけだし。でもお陰で<バードフレンドリー>のスキル取れたからすべてよしなのだ。
「たぶん炎鳥のお守り作れたのって、名付け親になったことが前提条件みたいな気がします」
「今後作れる者は現れないということに安堵すればいいのか……」
「でも可愛いから名付けしたいって人はたくさんいると思いますけど」
「ナツ」
リゲルさんは真顔で僕を見据えた。
「普通、炎鳥とは、そう簡単に会えない」
「アッ、ハイ」
そういやそうでした。普通に伝説の存在だった。いやだって結構ぽんぽん目の前に現れるからさあ! 聖獣さんとか神獣さんとかも、わりと出会いやすい……のは、もしや僕たちだけなんだろうか。やっぱり最初にラメラさんを助けたのが大きいのかな?
偉大なるテトの功績。
「とにかく、あまり迂闊に使うなよ。もしどこかでうっかりバレてねだられたら、ナナミから止められていると言って断れ」
「重ね重ねご迷惑をおかけします……!」
うーん、確かに、このお守り必要なのってこの世界の住人さんたちだもんね。エクラさんも言ってたっけ、生と死を司る存在だから、畏れ敬うくらいでちょうどいいって。僕達トラベラーは、その範囲外の存在だから多少近くてもいいんだって。
つまりこのお守りが出回っちゃうと、炎鳥さんの地位というか、役目をちょっと侵害しちゃう、ということかな。理解。
「イオ、できるだけ手綱は握っておけよ」
「無茶言うな。ナツは首根っこ掴んでたってすり抜けるやつだぞ。っつーか、ナツはテトと一緒になると更になんかパワーアップするんだよ……」
イオくんがジト目をするけど、テトが優秀なことについては僕も全力で同意するよ!
そんな感じで和やかな(?)昼食を終えた僕達は、転移装置でナナミに戻るというリゲルさんを見送った。別れ際に両肩に手を置かれ「くれぐれも暴れるなよ」と釘を刺された僕である。暴れてないよ!
「ナツは暴れてないかもしれないけど、ナツの周辺は暴風雨なんだよなあ」
「台風の目みたいなこと言うじゃん……?」
「あ、まさにそれだ。お前台風の目じゃん」
「まあ、イオくんとテトに影響なければいいんじゃない?」
ねーテト? と話を振ってみたところ、僕のかわいい契約獣のテトさんは、「ナツあばれるー? テトみかたになってあげるねー」とやる気である。シュシュッと前足猫パンチもキレッキレだ。なんて良い子なんだろう、撫でましょう。
午後は、ロミちゃんと競争……の前に、北門の近くにラメラさん像があると聞いたので、そっちを先に見に行くことにした。見学してお供えするだけだから、時間もかからないし。メリカさんの石像がかっこよかったから、きっとラメラさんの像もすごいに違いない。
「言われてみるとって感じだけど、鯨のモチーフと竜のモチーフ、すごく多いね」
「ああ、街灯とかもデザインされてるよな」
やねにくじらさんいるよー。あとねー、みちにもりゅういるのー。
さすがゴーラの人気を二分するラメラさんとメリカさん。どこを見ても何かしらモチーフが目に入ってくる。ここまで浸透してるってすごいなあ。
「もしかして、サンガとかイチヤにも、よく見るとそういう縁の深い聖獣さんや神獣さんがいたのかな?」
ディテールまでは見てなかったけど、サンガにも竜のモチーフのものは結構あった気がする。でもスペルシアさんかなと思ってあんまり気にしてなかったんだよね。統治神のモチーフが多いのは当然だし。
「ロクトはナツの言ってた地竜とやらが人気なんじゃないか? 神獣は各街に1匹くらい、有名なのがいるかもな」
「あとで戻ったときに探してみたいね!」
一応、ヨンドに行く前に一度湯の里とサンガには戻る予定だし、その時にでも。
ナムーノさんが教えてくれたラメラさん像のある場所は、「白雲亭」から南北通りに戻る途中の脇道に入って、高台に続く木製の階段を上がったところにあるらしい。テトが期待の眼差しで「のるー?」って聞いてきたけど、このくらいは自力で……!
高台と言ってもちょっと高いところで、海を見渡せる感じのところ。このあたりまで来ると、ヨンドに続く北の地形が山なのが目に見えてわかる。
ゴーラからヨンドへ向かうには、この山道を延々登っていくか、馬車を使うか。馬車だと5日、歩きだとその倍くらいはかかると言われたので、僕達は素直に馬車を使う予定である。さすがに移動だけで10日はかけたくない。そういう探検は、街の転移装置に全部登録して、行き来が自由になってからにしたいよ。
あとはまあ、魔物の適正レベルの問題があるからね。
うっかり強い魔物の群生地に踏み込んで、死に戻りはしたくないのである。
「お、あれか」
イオくんが声を上げたので、ぜーぜー言いながら階段をのぼってた僕は顔を上げた。見上げた先にあるのは、なんかきらっと輝く大きなもの……。
「クリスタル……?」
「どうだろう。ガラスっぽくもあるが……」
きらきらきれーい♪
階段の上の、ちょっとした広場みたいなところに、ラメラさん像は堂々と立っていた。
太陽の光を受けてきらっと輝く、透明できれいな竜の像。僕の身長の倍はありそうな大きさで、すごく立派なんだけど……これでも本物に比べるとちっちゃいねえ。
「えーと……魔水晶? 魔法で強化した水晶だって」
<心眼>を使うと、とんでもない魔力含有量だった。あ、スキルレベル上がった、やったね。
「ここにも供物台あるぞ」
「あ、いいね。ラメラさんにもテトビタDを送ろう」
テトのびんー?
「そう、新しいテトの瓶に入れて捧げようね」
ラメラこれすきかなー?
テトはわくわくって感じに僕が取り出したテトビタの瓶を見つめている。きれいな瓶だからきっとラメラさんも好きだと思うよ。テトビタの原液を詰め込んで……よし。
ラメラさん、これはメリカさんもお気に入りのテトビタDという栄養ドリンクです。よかったら飲んで下さい、瓶もかわいいよ!
しっかり祈って目を開けると、丁度瓶がぱあっと光って消えていくところだった。ラメラさんもこっち見ててくれたみたいだね。
「俺もメリカと同じもの送っとくか」
とイオくんもおにぎりを供物台に乗せる。ちなみに、ゴーラに来ても海苔はなかったので、ベーコンとチーズ入りの洋風おにぎりである。これ美味しいのでイオくんは常備してくれている。
イオくんのおにぎりも無事に光って消えたので、良かった良かった、と思っていたら、少ししてからお返しが届いた。別に無理しなくても良いのに……と思いつつ受け取ったのは。
「……鍵」
「どこの鍵だ?」
「わかんない、<鑑定>してみて」
なんか薄いピンク色の、きれいな鍵なんだけれども。僕が反射的に<心眼>発動した結果がこちら。
薄紅色の鍵 美味しいものありがとねー。テトの瓶かわいいわー、宝物庫に入れておくわねー。あ、それでね、お礼なんだけど、んーと、どこの鍵だったかしら? ちょっと忘れちゃったんだけど、何か素敵な鍵だったような気がするのよねー。ナツは便利な道具持ってるみたいだし、これあげるわー。何の鍵だったか判明したら、後で教えてちょうだいねー!
ラメラさんアイテム説明欄を手紙にするのはやめましょ……? ってなるよね。
「……何でもありだなラメラ」
ナツー、なんのかぎなのー?
「ちょっとまだわかんないみたい。ストラップにかけておこう」
ぎんいろのかぎはねー、はちみつのらくえんにつづいてるでしょー。だからきっとおいしいもののらくえんにつづくとおもうのー。くりとかー、りんごとかかなー?
テトが楽しそうにそんなことを言っている。そうだね、栗とかりんごの楽園、僕も行きたいよ。でも多分違うんだろうなあと思いつつ、鍵束のストラップに引っ掛けておく。
このストラップ案外重宝するね。
アナトラでは鍵の形のアイテム多いって、どこ情報だったっけ? 忘れちゃったけど、掲示板で見たんだったか、公式サイトだったか……。まあ出どころは別にどうでもいいか。
品質が★4だから、あんまりたくさん鍵を付けておくことは出来なかったはず。ブルーアクセスカードは使うところがわかったから、一回外しておこう。
「なんか釈然とはしねえんだが、ラメラのくれた鍵だもんな。何かしら良いものなんだろう」
イオくんはひとまず考えることをやめた。まあ、うん。良いものだってことだけは確実だと思うよ。箱の鍵なのか、部屋の鍵なのか、それとも他の何かの鍵なのか。考えるのもちょっと楽しいね。
「何が待ち受けているのか楽しみだねー」
たのしみなのー♪
「今からわくわくしていやがる……」
まあ情報がゼロだから、今できることはわくわくすることだけ、とも言えるけどね!
「ところでナツ、そのストラップ作ったときに魔法防御力を可及的速やかに60まで上げると約束したはずだか、どうなってるんだ?」
「あっ」
「<最大HP上昇(大)>ちゃんと取れよ?」
念押しされた……。確かに忘れてたからありがたいけれども。
とはいえ、今自由に使えるPPは2しかないから、これを魔法防御力へ入れても51。あと9もあるので道は長いなあ。
ナツ、がんばれー♪
「ありがとう、テト。頑張る……!」
さて、これでラメラさんの像を見るというミッションはコンプリート。次に待ち受けるのはロミちゃんとの競争だね。テトは、楽しげなわくわくのテンションのまま、スキップしながら先頭をゆく。南北通りを南へ向かい、ダナルさんのお店がある海岸通りへ。
途中すれ違う妖精類さんたちが、みんな「まあかわいい」って顔で見てくれるので、契約主としてもドヤ顔になってしまうのである。ふふふ、よかったらどうぞ撫でてやってください。
いつになく愛想の良いテトさんは、撫でてくれる人たちみんなに「おともだちときょうそうなのー♪」とにゃんにゃか話していた。みんなにこにこ聞いててくれるけど、多分誰にも伝わってない。微笑ましいね。
やがて見えてくるあのファンシーなお店。とはいえ、今日は隣の工房へ直接行けばいいので……ってテトさん、隣だよ、隣の工房!
と僕が止める間もなく、テトはてててーっと軽やかにファンシーな扉に体当りするのであった。
ロミー♪ あそぶのー!
にゃああああん♪
……うん、超絶楽しそうだねテトさん……!




