39日目:友達に頼られるのはちょっと嬉しい
【速報】名声、いつの間にか増えてる!
「いつの間に……!」
つぶやきつつ確認してみたところ、新しい名声「神飛モモンガの友」と「聖獣ラメラの友」が増えておりました。効果は、以下の通り。
「聖獣ラメラの友」効果:この名声を得るものは、聖獣に関するあらゆる事柄に対して少し良い効果を得やすくなる。
「神飛モモンガの友」効果:この名声を得るものは、飛行する鳥類・神獣・聖獣からの好感度が少し上がる。
汎用性でいったら今セットしている「神水精霊の友」のほうが良いんだけど、それぞれ使い道がありそうな感じだなあ。っていうかラメラさんのやつは本当にいつの間に……昨日もうもらってたんだろうか。名声とか普段ステータス見るときに特に気にしてないから、全然知らなかったよ。
「お、神飛モモンガの友は俺ももらったぞ」
とイオくんは若干嬉しそう。イオくんはウンディーネさんのときにもらった名声が「友」じゃなかったから、今回が「友」系名声初ゲットだね。それを聞いてテトのステータスも確認してみたら、テトもちゃんと神飛モモンガの友をもらってるみたい。なんなら早速セットしている。
しんそくのせんぱいなのー。そんけいなのー。
「テトも翼を持つものだもんねえ。あこがれの先輩って感じなのかな」
にゃふっと嬉しそうなテトさんである。
「俺ももらってます。いただいちゃっていいんでしょうか……!」
「如月くんも良かったねー」
ヴォレックさん、僕達をまとめて友達認定してくれたらしい。正直に嬉しいことだね。でもって、ラメラさんからの友達認定は……僕だけかあ。
「ナツはあれだろ、ラメラに宝飾品を捧げる奉納大会みたいなの、やりたいって言ってたからじゃ? リゲルから領主に話してもらうんだろ」
「昨日、ラメラさんと楽しそうって語り合っちゃったからねー。そっかあ、それで友達認定……効果も嬉しいかも」
まあラメラさんはもともとフレンドリーな竜さんだから、そういう性格の違いとかもあるのかもしれないね。ルーチェさんとか、たくさん話をした気がするけど、友達にまでは届いてないし。また会いに行こうと思うけど、いつか友達認定してくれるといいな。
「ヴォレックさんに友達だって思ってもらえるのは素直に嬉しいな!」
「おうおう、ジュードはオイラの故郷なんでなあ! 復興に力を貸してくれるってんなら、そりゃ、ありがたくてよぅ!」
「え、そうなんですか?」
「ジュードは、昔はそりゃあ緑豊かな、良い森だったんだぜえ! 今じゃ見る影もねえけどなあ、いつかはきっと、あの日のように……って、夢はでっかくな!」
でっかく、と両手で大きく円を描くようにしたヴォレックさん。ちんまいのでめっちゃかわいい。
「故郷のためなら、一生懸命になるのもわかりますね」
頷く如月くんに、ヴォレックさんは照れくさそうに頭を掻く。
「まあ、オイラが神獣になる前に住んでたところってだけで、神獣になってからは、根無し草だったんだけどよお! それでも縁はあるからなあ!」
「神獣になる……って、任命されたり、進化したりとか……?」
「いやいや、ある日突然、こう、スペルシア神から力をもらってなあ! いやあ、大変だったぜえ!」
な、なにそれ……? って思ったら、なんか事前にお知らせとか任命とかは全くないらしい。ある日突然、スペルシア神から「今日から神獣になって力を貸してね、よろしく!」とばかりに能力とか考える力とか知識とかが送られてくるのだとか。
主にどんなことをすればいいのかっていう役割分担とか、自分がそれに対してどんな事ができるのかっていう能力の解説、あとは関わりのあるであろう世間一般的な知識とかが、ある日突然頭の中にぐわっと送り込まれたから、あまりの情報量にさすがのヴォレックさんものたうち回ったとか。
で、神獣に任命されたってことも、その知識の中に含まれるので、実際には事後報告だったそうで。
「それまでのオイラは、ちょっとばかし<風魔法>を使えただけの獣だったからよう! そんな御大層なことになるたあ、人生何があるかわかったもんじゃねえよなあ!」
「へー、ある日突然かあ……」
それはちょっと、戸惑うってレベルじゃないような。ヴォレックさんは神速の移動能力を誇る神獣さんだから……割り当てられた役割は見回り……とかかな?
「オイラの役目は見分と伝達よお! あっちこっち見聞きしたことを、迅速に人に伝えることだなあ!」
「……ま、まさかヴォレックさんにまで心読まれてる……!?」
「いや何、なんぞ聞きてえような顔をしてたからな!」
それ完全に心読んでますヴォレックさん。そろそろ僕、無表情の練習したほうが良いかもしれない……! 思わずむむむと頬を揉んでいたら、テトさんが僕を見上げて純粋な眼差し。
ナツはねー、テトみるとにこーってしてくれるからだいすきー。
「ぐっ、そう言われてしまっては……無表情を目指すのはやめます」
テトさんのほうが大事なので、僕の心の読まれやすさは捨てておこう。よし。気を取り直してスプーンを握り直した僕に、リゲルさんが苦笑を向けている。
「エクラの役割は育むことだと言っていたな。ああ見えて、エクラは最古の神獣のひとりだ」
「エクラさんは、素晴らしい花を育ててますもんね……!」
リゲルさんの言葉をヴォレックさんが補足してくれたんだけど、最古の神獣さんはだいたい<樹魔法>持ちなんだって。そもそも神獣という存在そのものが、世界の調和……要は偏ったバランスを正すために任命されるものなので、神獣が増えるということは、つまり正すべき事情があるということになる。
最初の神獣さんたちが任命された時、世界は爆発的に増えた人口に対し、食料不足という大問題と直面していたんだそうで。だから、<樹魔法>持ちの神獣さんたちが食糧事情の改善のため、育み、命を見守ることを使命として多数任命されたというわけだ。
ただ、そういった古い神獣さんたちは、同時に聖獣には出来ないことをある程度こなしてもらうことも前提だったため、戦いが得意な強い神獣さんも多い。僕が会ったことある中だと、グランさんやエクラさんも、どちらも強いって話だったね。
ヴォレックさんや、湯の里で出会ったキャスさんみたいな、伝達特化みたいな神獣さんたちは、もっとあとの時代に任命されているらしいよ。
「神獣さんにも色々あるんですねえ」
「おうおう、まあそれなりになあ!」
と、そんな興味深いお話は尽きないんだけれども。ヴォレックさんはこれからジュードへ戻らねばならいというので、ここらで離脱するとのこと。料理食べないんですか? と差し出してみたけど、やんわりと断られてしまった。
「さっきゼリーもらっちまったしな! ありがとよ!」
バチッとウインクを残して去っていくヴォレックさん。やっぱかっこいいしかわいいのである。くっ、最強の生き物……! そんなヴォレックさんに憧れているテトさんも、今はかわいいだけだけど、そのうちかっこいいもプラスされて至高の猫になっちゃうかもだ。
「……思ったんだが、俺達は会う度にヴォレックに餌付けしてたから、それもあっての友認定かもしれないな」
「あー。そう言えば湯の里ではダンジョン産コーン、ゴーラに来る途中のセーフエリアでは果物あげてたね。今回はゼリーあげて……全部お気に入りなのかなあ」
なるほどそういう条件かもしれないのか。名声、条件とか確認できたら楽しそうだなあ。
とっても美味しい夕飯を終えて……結局テトがチョコレートケーキにかぶりつけたのは、僕が食べるタイミングと同じだったよ。それまでずーっと見つめていたらしいテトさん、チョコで出来たお花が欠けるのは残念だったみたいだけど、食べたら食べたで「おーいしー♪」ってご機嫌だった。
ミルクチョコレートだから、多分ミルクの質が良いんだろうなー。乳製品の本場・ヨンドのチョコレートにも期待が持てるね。
リストランテ・マーレを出ると、すでに時間は午後8時を回っている。色々雑談もしたし、ゆったりと食事をしていたので思ってたより時間がかかっていたね。でもすっごく美味しかった! さすが最高級のお店だよ、ゲームでしか来られないね!
「リゲルさん、明日領主さんと会うんですよね。ラメラさんやメリカさんへの装飾品奉納について、何か話が進んだら教えてもらえますか?」
「ああ、午後には一度ナナミに戻って、報告の後にジュードへ行くことになるだろう。昼食を一緒にとれるようなら、そこで報告しよう」
「やった! ありがとうございます!」
ラメラさんたちが喜んでくれる形になるといいなあ。メリカさんは捧げられても宝飾品とかしまっておく場所あるのかな? と思うけれども。あ、でもアクアさんがいるからどうにでもなるかな。そう言えばラメラさんとメリカさんの立像があるって話、あれも探しておかなきゃ。試しに何か捧げてみたいよね。
僕達はギルドの2階に泊まるけど、リゲルさんはちゃんとしたお宿をとっているので、ギルド前通りに出たところで一度解散だ。また明日! と手を振って分かれる。
「ジュードのことまでお任せすることになっちゃって、リゲルさんには迷惑かけっぱなしで申し訳ないねえ。なんかお礼にできることないかなあ」
リゲルおしごとがんばっててえらいのー。
だよねえ、リゲルさん色々出来てえらいよ。うーん、でも僕にできることなんてそんな大したことはないよねー。ラメラさんの鱗とか、ダメ元で<細工>してみる? でもレベル低いから失敗しそうだしもったいないか。
何か新しいお守りでも作ってみようかな? という話をしたら、じゃあギルドで生産しましょう! と如月くんが同意してくれたので、作業場をレンタル。2時間くらい生産したら今日のアナトラは終了しよう。
「リアルはもう夜なんで、明日続きですかね。ナツさんたちは朝からログインですか?」
「今日よりは遅いけど、午前中からインの予定だよ。如月くんは?」
「俺はプリンさんと一緒で、午後からの予定です。一応俺とプリンさんの方で時間紐づけしとくんで、ナツさんたちとのパーティー連結はそのままにしといてください」
「OK。プリンさん色々お店紹介してくれるって言ってたっけ、楽しみだなー」
あ、でもそうするとテトの後輩に会えるのはちょっと先かな。明日は多分、ログインが午前10時くらいからになりそうだから……ゲーム内では明日だけ僕とイオくんだけになって、明後日にプリンさんたちと合流って感じ?
ゲーム内の時間の流れ早すぎて、たまに混乱するなあ。
「じゃあ、僕とイオくんは明日リゲルさんと会うこと以外に何か予定ある?」
「ジゼルの店に行って鰹節を買う」
「あー、そんなのもあったねえ」
港倉庫街にある「乾屋ジゼル」で、イオくんが取置を頼んでたっけ。じゃああそこは朝一番に言ったほうが良いね。たしか、煮干しも朝早くなら売ってるって言ってた気がする。
「如月くんがいないなら、教会に顔を出すのはあとの方がいいかな? 如月くんも気になるよね?」
「あ、そうですね。申し訳ないんですけど……。俺もその後どうなったか気になるので、カパルさんのところや教会には話聞きに行きたいです」
「OK」
じゃあ、救助した人たちのその後については、明日はスキップ。となれば、午前中は主に港倉庫街で買い物に費やしても良いかも。お土産とか色々探したいものはたくさんあるし。港倉庫街は朝早いほうが活気があるらしいもんね。
「早朝から買い物に出て、昼はリゲルの報告を聞くんだな。それなら午後は……テト、ロミと競争するって言ってただろ、あれ明日行くぞ」
! まけないのー!!
テトさんまさか美味しいものにまみれて忘れてたかな? 実は僕もちょっと忘れてたよごめん。ゴーラについた日から競争競争って言ってたから、遅くなっちゃって申し訳なかったかなあ。もちろん僕は全力でテトを応援しましょうとも。
「じゃあ、それが終わったらラメラさん像とメリカさん像を探しに街を探索しようよ! もしあっさり見つかったら、追加のワイルドピッグを倒しに行くとか」
「んー、まあ武器も強化したばっかりで調子良いし、それもいいかもな。名声のお陰でプレイヤーレベルのほうの経験値たまってるし、レベルアップできるかもしれん」
プレイヤーレベルと職業レベルは個別に経験値があるんだけど、確かに僕もプレイヤーレベルの方はもうちょいで上がりそうな感じになってる。名声がくれる経験値、めっちゃ多いのかもしれない。僕のほうが多くもらってるから、プレイヤーレベルだけならイオくんより僕が先に上りそう。
職業レベルは……んー、まだ半分くらいだなあ。早く今の職業を20まで上げて、次の三次職に転職したいところだけれども。
僕達の進行度だと、それは本サービス開始後になっちゃうかも。まあ、別に急いでレベルアップしたいわけじゃないからいいけどね。




