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39日目:新生ユーグくん!

「職人によってはいろんなタイプの強化方法があるけど、私の場合は依頼人と一緒に一問一答していくことが多いかな。さて、ナツくんはこの杖をいい感じに使いこなしているようだけど、何か不満や要望はあるかい?」

「え、えーと」

 ユーグくんに不満……特にないな? 要望っていうと、もっと良くしたい部分ってことだから……えーと。

「ユーグくんがっていうより、僕がもっとMP欲しいですねー。生産してるとあっという間になくなっちゃって」

「うん、そりゃあ魔法士はみんなそうだろうね。持ち手は使い易いかい?」

「しっくりきます!」

「そっか、それじゃあ……ん、これは珍しいスキルがついているね」


 珍しいスキルと言うと、おそらく<自動調整成長>だね。まだ1回しかスキルもらえてないけど、使えば使うほどいろんなスキルが増えるはずだから、これからに期待って感じ。

 トスカさんも、あのスキルは幸運が高い人にしか……って感じのこと言ってたから、珍しいんだとは思うけど。

「ナツくん、幸運値いくつだい?」

 おっと、思い返していたらまさにその話が。えーと、今の僕の幸運は……。

「51です」

「おお、さすがエルフだね。それなら、確率でもある程度……」

 真剣な眼差しで何事か考え出すアリシャさん。エルフは幸運値が自動で上がる唯一の種族……なんだけど、そう言えばリゲルさんもエルフだから幸運値高いのかな? トラベラーと住人さんで、そのへん同じなんだろうか。

「リゲルさん、幸運いくつです?」

「200は超えているが……ナツはレベルがまだ低いのに50を超えているんだな。数値を振っているのか?」

「テトの卵を選ぶときに思いっきりPP振りましたね」

 それ以降も、僕には<グッドラック>さんがいるから、無駄にならないだろうと思ってちょいちょい振ってる。ちなみに、今は魔力50だから、なにげに幸運が一番高い数値になっております。


 なってやるんだ、幸運の権化に!

 

 と、まあそれは置いといて。

 アリシャさんは素材と杖を横に並べて、うーん、と一つ大きく唸った。何か迷っているのかな? と思って見ていると、更に質問が飛んでくる。

「魔法の発動スピードとかクールタイムは気になるかい?」

「反応は今でも充分良い感じなんですけど、クールタイム減少したら助かりますねえ」

「うーん、それじゃ、欲張ってスキル2つにチャレンジするより、欲しい方向性のスキルが確実に付くように方向指定していくほうがいいかな。MP節約とかクールタイム減少とか、バフへの補強とか」

 それめっちゃ助かる。僕の場合はヘイト管理もあるから、攻撃力上昇系のスキルがついてもちょっと困るところあるしねー。

「補助系のスキルに絞れるならありがたいです!」

「それだったら……うーん、アメジストとホワイトオパールを完全に混ぜちゃおうか」

「混ぜ……?」

 ちょっとよくわかんないですねって顔をしてたら、アリシャさんが追加で説明してくれた。宝石を使って強化する杖の強化はちょっと特殊なんだそうで。

 後から追加する宝石と元々の宝石の性能を両方明確に両立させたい場合は、混ぜずに形を変えて接着させる。両方の性能がうまく噛み合う……互いの性能を阻害しない場合には、宝石同士を完全に融合して別の宝石にしちゃう、っていう方法が取られるとのこと。


「宝石同士の相性によっては混ぜられないものもあるから、実際に素材を見てからじゃないと判別できないんだけどね。このホワイトオパールとアメジストの相性は良さそうだよ」

「それって、同じホワイトオパールという種類でも、別の石だったら相性が違うんですか?」

「違うんだ、面白いだろう? 色の相性が大きいんだよね。特にオパールは多数の色が複数あるから、あまり赤が濃かったり緑が強かったりっていう偏りがあると、属性が出てしまうんだよね。その点、このホワイトオパールは特に突出して強い色がないから、凄くバランスを取りやすいよ」

 へー、色々あるんだなあ。でもそんなの、実際杖職人さんに見てもらうまでわかんないよね。少なくとも僕には判別できなさそう……次の強化段階のとき用意する宝石はどんなのがいいのか、あとで聞いといたほうがよいかもだ。

「他にも石言葉とかカットの相性とかも多少あるね。あとは、この杖をどう使ってきたかの履歴とかも強化の際には影響するかな。でも、私のカンだと良い強化が出来そうだよ」

「やった! それで、どのくらいのお値段でしょう?」

「うーん、最初の強化だし、300,000Gくらいでどうだい?」

 僕はさっとリゲルさんを見た。どうですかこのお値段、相場ですか? という確認の意味である。リゲルさんは僕の視線を受けて冷静に頷いてくれたので、ボッタクリではない、良心的お値段であるという判断でよいでしょう!

「お願いします!」


 正直もっと高いかなと思ってたから、想定よりは安いし、相場なら即決である。何しろ大きなクエストをこなしたばっかりで、今ならお財布が潤っているからね……!

 ちなみに、武器や防具を買う時はパーティーの共有財布から出しているけど、強化に関しては個人の財布から出すことになった。杖と剣だと、強化に使う素材も工房も異なるから、値段も違うと思うし。何より愛用の武器には自分で手間暇とお金をかけたいのである。

 僕の場合、お高い宝石を買わなきゃいけないから……流石にそれを共有財布から出すのはちょっと使いすぎだよね。共有財布は僕達の食事事情を支えているのだ。

 強化の準備をするアリシャさんの視線から、多分、ステータス画面みたいなのが出てて、色々設定してるんだろうなあ。そわそわしていると、テトが膝の上にずしっと乗っかってきた。

 ナツおちつくのー。ユーグせんぱいならきっとまーべらすにへんしんしてくれるのー!

「出たマーベラス……! ロミちゃんとの競争、忘れずに誘いに行こうね!」

 まけないのー!

 うむ、やる気があって大変よろしい。撫でましょう。

「一段階目の強化でどんなスキルが付くかは、なかなか重要だぞ。それ次第で長く使えるか買い替えるかの分岐点になる」

「脅さないでくださいよリゲルさん……! うちのユーグくんは有能なので、きっと素晴らしい結果を残してくれると思います」

「杖を信頼するのは良いことだ」


 でもそっかー、最初の強化でスキルが付くから、それ次第では買い替えが視野に入る……だから名付けを勧められるのが2回目の強化の時なのか。すでに名付けてある杖をスキルが微妙だったからって買い替えるの、なんかイヤだもんね。

 ユーグくんがどんなスキルをゲットしても、見捨てないから大丈夫だ……! と心に誓う僕である。

「さ、じゃあ強化するよ」

 アリシャさんは不思議な柄の入った布の上に杖と素材を並べて……あ、これ魔法陣? <魔法図案>かなあ。なんか多分、<魔法図案>の上位スキルに魔法陣っぽいのがあるのかな? 複雑そうな模様だ。

 中央に杖を置いて、その左右に素材を置いて、深呼吸。そしてアリシャさんは静かにいくつかのスキルの発動を口にした。小さい声だったからよく聞き取れなかったけど、多分<器用強化>は言ってたかな? 他にも成功率とか品質向上系の単語っぽい。

 生産職としての能力に可能な限りバフをかけて、最終的に杖強化に行き着く。布の上に置かれた杖と素材がぱあっと光って、それらが融合し、光の塊になった。それがだんだんと姿を変えていく。

 結構丁寧にこねくり回してる感じがある。アクセサリ作成は、ぱっと合わさって終わりだけど、アリシャさんはしっかりどこをどうするか把握している感じがする。

 <細工>も最終的には、自分でここにこれ、みたいな指示ができるようになるのかなあ。僕にできるか不安だけど、頑張ろう。


 光の塊は、やがて杖の形になった。長さは今までと同じで、持ち手の太さも変わらない。ただ、上部の宝石部分が今までと少し違うかも。わくわくしながら見ていると、やがて光が徐々に抜けていき、布の上に杖が残された。

「……よし、良い出来だよ。さあ持って確認してごらん」

 ふうっと息を吐きながらそう告げたアリシャさん。僕はそっと杖を手に取り、目をきらきらさせたテトが「ユーグせんぱいー!」と横から覗き込む。あ、リゲルさんまでそんな興味深々に……大注目だよユーグくん!

 1回目の強化というからには、後何回か強化が控えているんだろうし、そんなに変化はなさそうと思っていたんだけど……外見から結構がっつり変わっている。

 元々は、アメジストがはめ込まれた台座を囲むように花、草、木々の細かな彫刻が施されていたんだけど、まずアメジストの部分がアメジストではない別の石に変わっていると言うか……ほんのり紫色だけど、オパールの輝きがプラスして透明度がかなり増していた。きれい! めっちゃきれい!

 すてきー……。

 とテトがうっとりしちゃうくらいきれい。大きさもなんか一回り大きくなったような気がする。そんなきらきらきれいな宝石部分を囲む彫刻は、思いっきり花に統一された。僕、花の名前は詳しくないんだよなあ……バラ……? 牡丹……? なんかちょっと違うかも。多弁の花だってことしかわからない。でもすごく花束っぽい杖になった。


「うわー、きれい。あ、そうだ<鑑定>っ!」

 うっかり外見だけ確認してホルダーに戻すところだった。えーと、スキルが追加されてるはず……。

 

魔法杖ユーグ 品質★7 強化1回

杖作成師トスカが作った良質な杖。様々な可能性が秘められているので、強化には宝石を要する。

装備条件:ナツ専用(譲渡不可)

効果:耐久値∞ 魔力+15 幸運+5

スキル:

<自動調整成長> 使用者の望み、経験、習性などを分析し、成長する。

<補助強化> 攻撃魔法以外を使う時にMP軽減。

<魔導効率強化> クールタイム減少(小)

次回強化条件:この杖を使った魔法の使用回数1000回

強化素材:品質★15まで、合計素材4つまで


「おお!」

 クールタイム減少! クールタイム減少きた!

「素晴らしい、さすがユーグくん! 良いスキル選択です、えらい!」

 ありがたいー! 特に回復系はクールタイム結構ギリギリで回してたからめっちゃありがたい! 上級魔法系統で上位の回復魔法覚えるっぽいんだけど、そうなるとまたクールタイム伸びるから正直めっちゃ欲しかったスキル……!

 回復系の上位スキルは、下位スキル残しておくか選択できるんだけどさー、呼び分けをしないといけなくてですね……。でも上書きしちゃえば今まで通り【アクアヒール】とか【ファイアヒール】とかで発動できるから、僕としては上書きしたんだよね。

 だって正直イオくんのHPが400超えた今、回復値100くらいの【アクアヒール】残しといてもな……っていう。上位スキルに置き換えると250くらい回復するようになるはずだから、絶対そっちのほうが良いじゃん。下位スキル残しといたら、間違えて使っちゃう自信があるよ僕。

 ちなみに、<魔操Ⅱ>スキルにもパッシブアーツの【クールタイム減少Ⅰ】があるんだけど、Ⅰなので、(小)とは共存できるのである。そこもえらい!


「ふむ、初回のスキルとしては優秀だな」

 リゲルさんも褒めてくれたよユーグくん、さすが中堅……いやもうベテラン社員だ! ちなみにこれ、杖を使った魔法の使用回数ってなってるってことは、<原初の魔法>が含まれますね……条件クリア、初回より楽な気がする。僕のユーグくんが一番使っている魔法、<クリーン>か【適温】だと思うからね……。

「さすがユーグくん、優秀さをこれでもかと見せつけている……! 素晴らしい働き!」

 ユーグせんぱいさすがなのー。きれいだし、ゆーしゅーなのー。

 お目々きらきらのテトさんが前足でやさしくユーグくんにタッチして、ドヤーって顔をする。やはり身内が褒められるのは嬉しいのである。テトも優しくタッチ出来てえらいよ……!

「……あれ、そして幸運+5がついている……?」

「ナツ、別のステータス補正が付くのは珍しいぞ。初回の強化だと、大半が魔力のプラス値が増えるだけのはずだ」

 おお、魔力もちゃんと+5されてるし、ますます素晴らしい……! アリシャさんもありがとう!

「いやいや。組み合わせってやつかな。ホワイトオパールの宝石言葉は幸福だし、杖の色が紫だから、彫刻をラナンキュラスにしてみたらすごく反応が良くなったんだ。花言葉を知っているかい?」

「あっ、この花ラナンキュラスっていうんですね。花言葉は詳しくないです」

「紫のラナンキュラスなら幸福、だろう。色によって違う花言葉があったはずだ」

 さすがリゲルさん、お貴族様は宝石と花に詳しい……!


 これは……なれそうだね、幸運の権化に!

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― 新着の感想 ―
幸運フォローが! こうして揺るぎなく、幸運の申し子として盤石になっていくんだね
グッドラックさんとユーグ先輩の二大巨頭になるやつだな。 ユーグ先輩は実数値で貢献する方向か
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