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39日目:ラブロマンスもありましたか。

 っていうかリゲルさんってそんな有名人なの?


 と言う顔をしただけで何か察するリゲルさん、

「確かに私の家は有名かもしれないな」

 との回答である。……あの、そんなあっさり心読むの流石にやめませんか。僕のわかりやすさがとどまるところを知らないのですが?

「解せぬって顔すんなよ」

「ぐぬぬ。イオくん僕ミステリアスに憧れてた時期もあるんだよ!」

「お前の対極にいる存在だぞ、諦めろ」

「知ってる!」


 ミステリアス要素もあるイオくんが言うと説得力があるね! というかイオくんは黙ってすんっとしてると近寄りがたい感じの雰囲気になるので、僕は密かにこの雰囲気をATフィールドと呼んでいる。すごくきれいに周囲の人たちが避けて通るのでめっちゃ面白い。

 まあ美形が真顔してると妙な迫力があるってだけなんだけど。ちなみにイオくんに「難しい顔で何考えてたのー?」とか聞いてみると、大抵「今日何食うか問題」とか「昨日作ったスープの一味足りない問題」とかそういうのなので、大したこと考えてるわけではないらしい。親近感。

 まあそれは置いといて。

「リゲルさんのお家って?」

 とりあえず代表して聞いておこう。めっちゃ気軽に聞いてみたせいか、リゲルさんもとても軽い感じで返してきた。

「ああ。当主がエンシェントエルフと言われる古来からの種族でな」

「待って??」

「今確認できているのが5人……6人か? そのくらいしかいない。故に、私と兄はそのエンシェントエルフの血を引くエルフとなり、特殊な魔法が使える」

「思ってたよりなんかすごいこと言ってる!」


 衝撃の事実がぽろぽろ出てくるんですがイオくん助けて! 視線を向けた先でイオくんは肩をすくめただけである。頑張れって言われてる気がする。丸投げされてしまった。

「き、如月くん、エンシェントエルフのお知り合いとかいる?」

「いませんね普通に。あ、でもえーと、サンガにエンシェントエルフの血を引く魔法士がいたって話を聞きましたね」

 そう言えば聞いたかも。えーと、ほらあれ、ジドさんだ。オーレンさんの師匠で、レストさんも話題にしてたっけ。……ということは、エンシェントエルフの血を引くエルフさんは、そんなに珍しくないのかな?

「エンシェントエルフは未だに妖精郷から離れないのでな、こちらの世界で暮らす者は少ない。当家の父は600年ほど前からこちらで暮らしていて、建国の際にも王家に助力したとか。それで星の民として取り立てられたのだが、何しろエンシェントエルフはマイペースでな。長寿種の特性かもしれんが」

「普通のエルフよりも長寿なんですか?」

「千年は生きると言われている」

「わあ」

 えーと、確かサンガで寿命の話って聞いたような。普通のエルフさんは200年以上生きるって話だったよね。その5倍かあ……それは、時間はいくらでもあるわけだから……マイペースにもなりそうだ。


「えーと、リゲルさんのお父さんがエンシェントエルフで、有名なんですね」

「建国王の友人ともなれば生きる伝説だな」

 それは確かに伝説。うわー、色んな話聞けそうだなあ。

「だが、兄はともかく私は普通のエルフだぞ? 母が違うからな」

 しれっとリゲルさんがそんなこと言ってるけど、何か絶対謙遜だよねそれ。


 リゲルさんが言うには、リゲルさんのお父さんは3回結婚しているのだそうだ。

 最初の奥さんは両親がエンシェントエルフと普通のエルフという女性で、この人とは400年くらい連れ添ったらしい。で、リゲルさんのお兄さんは最初の奥さんとの間の子供で、エンシェントエルフの血が濃いから500年くらいは生きるだろうと言われている。

 奥さんと死別した後、次にリゲルさんのお母さんと再婚。エンシェントエルフの血が濃すぎると、子供は授かりにくくなるらしく、リゲルさんのお母さんは普通のエルフさんだったんだって。リゲルさんが生まれてしばらくは仲良く暮らしたけど、そのうちにリゲルさんのお母さんは病死。

 で、最後に王家からヒューマンの王女様が降嫁されたらしいんだけど、ヒューマンとエンシェントエルフでは寿命が違いすぎる。エンシェントエルフの感覚では、瞬く間に儚くなってしまったように思える3人目の奥さん。そのあまりの儚さにショックを受けて、リゲルさんのお父さんはそこから独身を貫くことにしたらしい。

 ちなみに妹さんが生まれたけど、ヒューマンだったのですでに川へと渡ったという。


 エルフって半分人類で半分妖精類って聞いたけど、エンシェントエルフも同じなのかな。それにしても、そこまで寿命が違うのって悲劇感が強い。ヒューマンって……儚い……!

「……まあよろしいわ。確かにレジャンタ様は生ける伝説、大変高名な方でしてよ。そうでなくとも王家から王女の熱烈な希望により降嫁が成されたのですもの、目立つなと言う方が無理というものね」

「ドラマだあ……。恋愛小説になっちゃうやつだねえ」

「売れに売れたらしい」

「すでに恋愛小説になっちゃってましたか……!」

 確かにめっちゃ売れそう。あ、でも本は戦争のせいで結構被害を受けてるんだったっけ。どこかで見つけられないかな、ちょっと読んでみたい。

「伝説上の存在だって聞いたような気がするんですけど、割と身近にいるんですね……?」

 と何故か僕をジト目で見ている如月くん。多分これも<グッドラック>さんのせいでは? と言いたいのだろう。まあうちの<グッドラック>さん優秀だからね、仕方ないね……。


 そんな話をしながらマレイさんが案内してくれたのは、あの日も通された商談スペース。ソファがめっちゃ座り心地良いんだよねこれ。

「マレイさん、よかったらこれどうぞ」

 手土産になるかわからないけど、サンガでしこたま買い込んで置いた食料の中からパウンドケーキを出した。ブランデーケーキを買ったお店で買増しといた、ナッツとベリーのパウンドケーキ。これも洋酒たっぷり目でとても美味しいのだ。

「あら、気を使わせてしまったわね。ありがとう、紅茶と一緒にお出しするわ」

 マレイさんがパチンと指を鳴らすと、どこからかメイド服の女性がすっと現れてケーキの箱を持っていった。……え、今どこから……? 全然わかんなかったので一旦置いておく……。

「大人数で押しかけちゃってごめんなさい。えーと、実はこちらのリゲルさんに頼まれて、できればマレイさんに紹介してほしいというので来ました」

 リゲルよいこだからおはなしきいてあげてほしいのー。

「僕もいきなり紹介するのはどうかなーと思ったんですけど、理由を聞いたらマレイさんならわかってもらえそうな気がしたので」

「あら、理由次第では紹介しないという選択肢もあったのかしら?」

「そりゃあ、友達のお店に適当な理由では紹介しないよ」

 例えばただおしゃれのために宝石欲しい、みたいな理由だったら紹介しないかな。なんかマレイさんそういう基準高そうだもん。でも、リゲルさんはそんな適当な理由で動く人ではないのである。


「そう、では、ナツさんを信じてお話を聞いて差し上げるわ。どんな宝石をお探しかしら?」

「……今、ナナミで進んでいる話になるが、他言無用で頼む」

 淡々と静かに話すリゲルさんに、ただ静かな眼差しを向けるマレイさん。リゲルさんの話は昨日聞いたのと同じで、王冠を作りなおすために、そのメインにナルバン王国産の宝石を置きたい、って話だね。他国からどんな素材を買い付けるか、なんて話もしているんだけど。正直名前を聞いてもどんなものなのか全然わからないので、頭を素通りしていく……。

「……それで、加工前の宝石を買い付けたい。作成を依頼する予定の工房は、ナナミの工房の中からデザインコンペで決まる。これは素材が揃い次第のデザイン募集となるため、完成は少し先になるだろう」

「大変興味深いお話でしたわ。確かに、当店への紹介を希望した理由としては納得できますわね」

 だがしかし、なんとなくマレイさんは乗り気ではなさそう。なんでかなあと思っていると、その理由はすぐに聞くことが出来た。

「でも難しいわね。当店ではお客様に合う宝石を我々が選んで購入していただくスタイルですもの。肝心の王冠のデザインがまだわからないというのは、困ってしまうわね」

「む」

 リゲルさんの眉間にシワが寄る。

 一見すると怒ってるように見えるけど、これは困ってる顔かな。王冠のデザインがわかれば、それに合わせた最適の宝石を選んでくれる……ってことなんだろうけど……。


「でも、マレイさんは割りたくないって言ってたから、ちょうどいいかなと思ったんだ」

 思わず口を挟んでしまう僕。唐突すぎたせいか、何かしら? って感じに首をかしげたマレイさんに、もう一声。

「大きい宝石は大きいままがいいよねって。ねーテト?」

 きらきらはおおきいほうがよいとおもうのー。

「だよねー、大きい方がいいよね」

 ねー? と顔を寄せ合う僕とテトを見て、マレイさんは何かに気づいたようにハッとした顔になった。それから、そんな表情を一呼吸で飲み込んで、唇に勝ち気な微笑みを乗せる。

「あれのことを言っているのね?」

 疑問形だけど質問ではなく、確認のようなマレイさんの問いに、もちろん、と僕とテトは頷く。だってナルバン王国では、統治神スペルシアが太陽で、王家が月と例えられる。であれば、その頭上に輝くのは星のはず。

 それに、王冠ならあのきれいな宝石を割る必要がない。そのままで魅力を最大限に引き出して使えるはずだもん。

「ナナミに売約済みっては聞きましたけど、どうにかならないかなと思って」

「ふふ、大丈夫よナツさん。ナナミのエタンセル系列店に売却は決まっているけれど、そこから先はまだ未定。だって現物を見てからでなければ、どこの工房に売るか決められないでしょう?」

「あ、じゃあそれなら……!」

 ワンチャンあるんでは。いける、いけるよリゲルさん!


「ええ。……ええ、よろしくてよ。あの輝きをそのまま活かせるというのなら、やってやりますわ。どれほどの価値をつけてくれるのか、期待を裏切らないでいただけるわよね?」

「何を提案してもらえるんだ?」

「ご覧に入れるわ」

 マレイさんが立ち上がって、あの箱を持ってくる。なんだなんだと不思議そうにしているイオくんと如月くんも、あの輝きを目にして驚くがいいよ。

 きらきらのはこー。

「テト、あの宝石また見せてくれるって。ほら、テトがイオくんの色って言ってたやつ」

 イオのあおいのー!

 わーいっとその場で跳ねたテトに、イオくんが思いがけず自分の名前が出たので「ん?」と視線を向けた。テトはそんなイオくんに一生懸命宝石について説明している。

 あのねー、あおいのがイオのいろなのー。それでねー、かげがにじいろになるんだよー。すごくすてきなのー!

「テトが気に入ってるってことは相当キラキラなのか?」

「光にかざすとすごく良いよ」

 さあ、マレイさんがあの箱を机の上に置いた。

「国の象徴たる王冠。王家の顔となる名誉に、どれほどの価値を積んでいただける?」


 星の名前を持つ宝石、その輝きは確実に一級品です。

 同じように星の名前を持つリゲルさんだし、きっと気に入ると思うんだ。

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― 新着の感想 ―
あの宝石の出会いはここに繋がるの!? 知り合いと知り合いの出会いがどんなイベントを生むのか リゲルさんとは思わなかった!
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