39日目:良い一日は、美味しいご飯から!
起きました!
昨日はみんなで鍋をつついて、イオくんが「豆腐ほしかった」と心からの嘆きを口にしていたけど、そればかりは全面的に同意の僕である。しかし、鍋といえば豚肉と白菜があればよし、さらにきのこがあれば尚良しではないだろうか。あ、豚肉は当然ワイルドピッグです。
ラメラさんがダンジョン産のしいたけに「おいしいわー!」と歓声をあげ、きのこ好きを増やせたのは満足である。リゲルさんも醤油ベースの味付けは新鮮だったようで、「変わった味だが旨い」という評価だった。白菜めっちゃ食べてたからお気に入りなんだろう。
しめの雑炊まで味わい尽くして、もう移動する気力がなかったので、そのままラメラさんのところでテントを張ったのであった。リゲルさんは如月くんのテントで寝ました。
あんなお腹いっぱいで幸せな気分の時、すぐ寝たい気持ち、わかってもらえると思う。
時間もちょうど良かったから、トラベラー組はそのまま夕飯休憩に入り、夜にまた再ログイン。朝7時に起きたから、みんなでゴーラに戻ってからスープを食べに朝の「白浜の風亭」へ!
「ミルクスープだー!」
しろいのだー!
そう、船乗りさんたちが噂していたのである。今日の白浜の風亭はミルクスープだと! そう聞いたらもう行くしかないので、リゲルさんを引っ張るようにしてお店に向かったのだ。
白浜の風亭は港倉庫街にあるから、朝早くから開いてて夜は早めに閉まる。早朝から漁に出る船や、夜の漁から戻ってきた船乗りのみなさんで、朝6時頃が一番混み合うらしい。そうすると今は、波が引いた後ってことかな。
「奥の席どうぞー!」
と促されて、店の奥の席へ。6人がけの席で、右側がソファ席、左側が椅子だったから、テトと僕がソファ席はもらっちゃおう。
しっろーい、すーぷ♪
と楽しそうに歌っているテトさん、尻尾をご機嫌にぴーんとしている。当然僕とテトは、日替わり特製ごった煮スープ!
「そしてミルクスープにはパン!」
「んー、俺もそれでいいな。如月とリゲルは?」
「そのごった煮スープというのが旨いのか? それなら同じもので」
「じゃあ俺は付け合せはライスにします」
さくっと注文も決まる。というかこの店にきてごった煮スープを頼まないのは正直もったいない。
一応、定番メニューとして3種類くらいのスープはメニューに載ってるけど、どうやら貝や豆にアレルギーある人用のメニューらしい。注文している人はほとんど居なかった。
「リゲルさん、ここは海の男たちに一番人気のお店なんだって」
「ほう」
「僕達も人に紹介されて来たんですけど、めちゃくちゃ美味しいんですよー! 旨味の洪水が口の中に広がるユートピア……!」
「ナツが好んでいることはわかった」
期待しておこう、とリゲルさんが言ってくれたので、満足の僕である。僕が好きなものを僕の知り合いも好きになってくれるのって、なんかいいよね。
そんなわけで味わいましたよミルクスープを。
魚介の旨味たっぷりのミルクスープを。
「クラムチャウダーが美味しいんだから当然のように美味しいんだ……! 貝の味わいぎっしり……!」
かいはぷるぷるー!
おいしーい! とテトと一緒に噛み締めるのである。前回のピリッと辛めのスープも色んな味が溶け込んでいて美味しかったけど、今日のは完全にミルクと貝に絞った感じだね。野菜もちょっと感じるけど、基本は貝! 貝! 貝! って感じ。それがまたミルクスープと良く合うのだ。
あまりの美味しさに震えつつ、初めてここに来たリゲルさんを伺ってみると……あっ早い。めっちゃ早いリゲルさん。僕知ってる、リゲルさんが早食いの時はめちゃくちゃ気に入ってる時……!
思わず「でしょー!」って得意になる僕である。
イオくんと如月くんもそれぞれ満足げにスープを食べ、なんならおかわりまでしてしまいつつ、美味しい朝が過ぎたのであった。
良い一日は、美味しいご飯から!
今後の標語にしよう。
「おいしかったー!」
まんぞくなのー。
「テト跳ねすぎだぞ、転ぶなよ?」
だいじょぶー!
さて、美味しい美味しい朝ごはんを食べた僕達は、そのまま港を出て坂道を上る。今日は宝石店にリゲルさんを連れて行く予定だけど、まだお店が開くまで少し時間があるのだ。
それで、さっき知り合った住人さんたちがどこにいるかなーと思ってリストを見てたら、マーチャさんとメルバさんがすでにお店にいるんだよね。ということは、契約獣屋さんは開いてるかも。テトの首輪に、あの紫の宝石をつけられるか聞いてみよう。時間潰しにもなるし。
……と、告げたらテトのテンションが暴発してしまい、今歩きながらステップ踏んでいるという。テト、ダンスの才能あるなあ、エルディさんにも褒められてたし。
くーびわー♪ テトのくびーわー♪
「テト、テンション高すぎませんか、大丈夫ですか?」
「大丈夫、契約獣屋さんについたら落ち着くと思うから……。あ、そう言えば如月くん、卵どうなった?」
「明日か明後日には、って感じですね」
跳ね回っているテトは、イオくんが見ててくれるのでよしとして。僕と如月くんがそんな話をしていると、リゲルさんが横から会話に混ざる。
「卵というのは契約獣か?」
ソワソワしている。やはり妖精類だから当然か。
「はい、ナツさんにあやかって卵を選んだんです。どんな子が出てくるか今から楽しみで」
「……ん? テトも卵から孵ったのか」
「あれ、言ってませんでしたっけ」
そういえばリゲルさんと初めて会った時には、テトはもう大きかったしねえ。テトは僕が選んでサンガで卵から生まれました! と話したら、なるほどとリゲルさんは大きく頷いた。
「だからあんなに懐こいのか」
「卵から生まれるとなつきやすいみたいですねー」
「住人でもそんなギャンブルはしないものなんだがな。1人1匹と決まっているのに、よくやる」
やっぱり卵に魔力を注いで生まれてきた契約獣は、店で契約するより何倍もなつきやすいのだそうで。あとは個体との相性とかもあるんだけど、僕とテトの仲良しっぷりを見るに相性もかなり良さそう、とはリゲルさん談。だよねー! と納得する僕である。
「テトめちゃくちゃしっくりくるので知ってました」
「だろうな」
とにかくただでさえなつきやすい上に相性まで最高なので、テトは爆速で僕になついてくれているというわけなのだ。さすが僕、テトを選んでえらい。
「それで、如月も卵にしたのか」
「だってテトとナツさん見てたら羨ましくて」
「わからんでもないが」
「なんならリゲルさんも少し魔力込めますか?」
「是非」
わあ即答だ。さすが妖精類、契約獣への愛が深い。
そんな話をしながら、ギルドを通り過ぎて西門近くの契約獣屋さんへ到着。ちゃんと「OPEN」の板が下がっていることを確認してから扉を開けると、中でメルバさんがきゃっきゃしながらシマウマみたいな感じのお馬さんとじゃれ合っていた。なにそれかわいい。
「あら! いらっしゃーい!」
元気にご挨拶してくれたので、僕達もそれぞれ挨拶を返す。その声が聞こえたのだろう、カウンターの奥からマーチャさんもゆっくりやってきた。
「あらあら、みなさんお揃いで。いらっしゃいませ」
おっとりしたマーチャさんにも挨拶をしつつ、テトがてててっと駆け寄って「くびわー!」と叫ぶのであった。テトさん、それだとわかんないと思うよ。
「首輪? 首輪がどうしたのー?」
「あ、メルバさん。実はテトがきれいな宝石を手に入れたので、首輪につけたいと言ってるんです。できればつけてあげたいんですけど、できるのか確認したくて」
「まあ、そうなのね!」
メルバさんとマーチャさんはが2人そろってテトの周りをぐるぐる回って、何か確認してから「できるわよ」とのお返事。
「こういう器用なのはマーチャのお仕事ねー!」
と言いながら、メルバさんはシマウマさんを連れて奥へ引っ込むのであった。遊び足りない子と遊んでいたらしいんだけど、これからメルバさんはお掃除なのだとか。
あのねー! むらさきのきれいなやつなのー。ナツのおめめみたいでとってもすてきー。テトこれとずっといっしょにいるってきめたのー!
にゃっにゃっと一生懸命お話しながら、テトは宝箱を呼び出してマレイさんに交換してもらった紫の宝石を取り出した。テーブルの上に乗っけて、マーチャさん相手にドヤー! と誇らしげな顔である。かわいい。
「なるほど、契約主さんのイメージで選んだのかしら。とてもきれいな宝石ね」
でしょー! テトえらんだんだよー。ほめてー。
「そうね、これなら……ちょうどぴったり足りるわね」
マーチャさんは多分宝石を<鑑定>したかな? 小さく頷きながら説明をしてくれた。
契約獣の首輪は、親愛度が上がるほどプラスできる素材が増えていくものらしい。で、家のテトさんは余裕で僕への親愛度がぐんぐん上がっているので、この品質★7の宝石をギリギリ装備可能、と。この宝石★7だったんだ。<鑑定>した時そこまで見なかったな。
「2回目の強化だと、本当なら★5までのアイテムを1つ追加できるパターンが多いのだけれど。テトちゃんは強化可能な親愛度をとっても大幅に超えているみたいだし、このお花……白八重花が宝石ととても相性の良い素材だから、★7ならギリギリ大丈夫よ」
「そうなんですか? テト、つけてもらえるって。良かったねー」
ありがとー! すてきなくびわにしてねー!
にゃーん♪
喜びに満ちたテトの鳴き声である。お願い! って感じにマーチャさんにすりすりするテトの首から、手を回して首輪を外して……。
そう言えば<鑑定>レベル上がったから、わかること増えてるかも? と思って久々にテトの首輪を<鑑定>してみると……確かに「強化可能:品質★7まで、合計素材2つまで」という表記が増えている。……僕の杖・ユーグくんもついでに<鑑定>してみよう。えーと……「強化可能:品質★10まで、合計素材3つまで」か。
「イオくんの剣<鑑定>していい?」
「ん? 情報増えてるか?」
「強化に必要な素材の合計品質と、個数が表示される」
「マジか」
イオくんの剣は……「強化可能:品質★8まで、合計素材2つまで」。あれ? 僕のと違う。不思議に思ってそれを口にしてみると、イオくんは「だろうな」と軽く頷いた。
「ナツのは職人が作った杖だからじゃないか? 俺のは一応レアな店とはいえ、市販品だからな」
「そういうので差がつくんだとしたら細かいねえ」
「ナツの杖はずっと使えそうだけど、俺のはどこかで買い替える予定だしな。腕のいい職人に会えたら作ってもらうのもありだしな」
ゲームによっては、装備品って次の街へ行く毎に買い替えとかもあるからね。強化可能武器が最初から買えるのって珍しいと思う。そう言えばリゲルさんは? と思って杖事情とか聞いてみると、さすが国家魔道士、いくつかの杖を使い分けているらしい。
「特化の杖というのも使いたい時がある。ナツはすでに良い杖を持っているようだが、複数所有は視野に入れておくべきだ」
「使いこなせる気がしないんですが……」
「まあ、多く持てば強化に手間もかかる。それ一本で行くというのならそれもよかろう」
リゲルさんがそう言ってくれるからには、ユーグくん一本で僕はどこまでも行けるということかな? 切り替えながら戦うとか絶対ムリなので、これからも頼んだよユーグくん!




