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37日目:テトの宝石選び

「だめだったよー、テト」

 むむー。ここはテトにまかせるのー!

「え、テト宝石なんて持って……持ってたねそういえば!」

 テトは、ぽんっと影から宝箱を取り出して、ふんぬっと箱の蓋を開けた。そしてその中からひょいっとテトが取り出したのは、一粒の真珠。

 以前、コレクターバードという宝物を溜め込む鳥の魔物の巣へ侵入したとき、テトが選んだ至高の逸品。ディープパールという一粒の真珠だ。

「まあ、ディープパールね、素晴らしいわ」

 マレイさんもすぐにその宝石の正体に気づいたようで、その輝きを確認している。あ、<鑑定>してるかな。僕も以前<鑑定>したとき、すごい価値のある宝石だったからびっくりしたんだっけ。


「テト、あれはテトの宝石だから、別に出さなくて良いんだよ。お気に入りでしょ?」

 すてきなものとこうかんするとよいのー。ナツにあげるのー。

「テトさん……!」

 気持ちは嬉しいけど、すごく申し訳ない……! あ、でも交換できる宝石の中に、テトが真珠より気に入るものがあったらそれにしてもらうっていうのならありだね。別に僕は宝石ほしいわけじゃないし、交換できる候補の中にテトが気に入るものがないなら、交換しなければいいんだし。

「じゃあ、テトがもっと気に入るやつがあったら交換してもらおうか。取り合えず、他の宝石見せてもらう?」

 きらきらのあるかなー?

「きっとあるよ!」

 何しろここは宝石店だからね! マレイさんもきらきら好きみたいだし、きっとテトと気が合うと思うんだ。

「そうね、ゴーラではパールは特に人気があるの。漁師が海に出るとき、良いパールを持っていると生きて返ることができるという伝承があるのですって。このお店も、ゴーラでのパールの仕入れとロクトからの宝石の中継で成り立っているのよ」

「素敵な伝承ですね! じゃあ、海に行くならやっぱり持ってたほうが良いのかなあ」

「気に入っているのなら無理にとは言わないわ。でも交換してくださるなら、そうね……。こちらの箱から1つ選んでいただくか、こちらの箱の中から2つ選んでいただくか、どちらかね」

「おお」


 マレイさんが差し出したのは、1つは高級品ばかり集まっている箱。ディープパールと同等か、少し高いくらいの宝石が8個並んでいる。こっちからは、1つ交換できる。

 もう1つの箱はその6~7割位の値段の宝石が集めてある箱で、こっちは12個の選択肢があった。この箱からは2つ選べるので、どっちを選んでも損はない。どうせなら交換してみるのも良いかもなあ。

 いっこがにこになるのー? すてきー!

 テトさんはお値段とか気にしないから、きらきらが増えるという話をとても魅力的に思っている様子。確かに、どうせテトのだから売って資金にはしないし、好きなものが増えるっていうんなら増やしてもらうのがいいのかな?

「マレイさん、2個にする方で!」

「よろしくてよ。こちらから2つ、選んで頂戴」

 差し出された箱を身を乗り出して見つめて、テトは「うにゃあ」とうっとりした声をあげた。とっても素敵なきらきらした石が沢山並んでいるので、非常に眼福である。

「好きなの2個えらんでいいって。さっきのパールと交換だよ」

 まようのー、どれもとってもすてきなのー!

「あ、これ! これがオパールだよテト。テトの目は瞳孔が黒っぽい感じで、人間で言うところの白目の部分がオパールっぽく輝いてるんだよね」

 

 候補の中にオパールがあったのでテトに教えてあげると、「テトのおめめー?」と首をかしげたテトさんはじーっとオパールを観察している。自分の目がこんな感じなのかーという好奇心なのかな?

「こちらはテトちゃんの目に一番近い、ホワイトオパールね。最も一般的なオパールとも言えるわ」

「一般的じゃないオパールもあるんですか?」

「そうね、今お見せできるのはブラックオパールとボルダーオパールかしら。特にボルダーオパールはとても人気があって高価なものだから、残念だけど交換には出せないわ。ブラックの方はあまり良い品質のものではないから、これも選外ね」

 言いながらマレイさんが見せてくれたブラックオパールは、確かにホワイトオパールに比べると色が濃いけど、ブラック……? と呼ぶにはちょっと色合い淡くない? って感じのものだった。少しひび割れっぽい模様が入ってしまっていて、だから価値は高くないんだって。

「こちらがボルダーオパールよ。星屑を散りばめたような強烈な輝きが美しいの」

「おおー、すごい。ホワイトと全然印象違いますね……!」

 きらきらー! すごーい!

 テトがはしゃいでしまうくらいの強烈な輝きを持っているボルダーオパール。これは流石に高価だから交換できないと言われるのも納得の色合いだ。ボルダーオパールもやはりピンキリらしいんだけど、良いものは目玉が飛び出るほどの値段がつくとのこと。


「ちょっと強すぎですね。僕はホワイトオパールが好きかなあ」

 テトもしろいのがいいなー。

 だよね、ホワイトのほうが目に優しいし。ブラックとかボルダーとかは輝きは際立っているけど、僕達には華やかすぎるもんねえ。

 しばらく宝石をじーっと見つめていたテトさんは、やがて意を決したようにホワイトオパールと濃い紫色の宝石をにゃにゃっと指定した。これは……スピネル? うーん、知らない宝石だった。でもきれいな色だねえ。

「あら、お目が高いわね。スピネルには様々な色があるのだけれど、この国では特に紫の価値が高いのよ。数が少ないので希少性が高いの」

「おお、さすがテト、目利きだね!」

 にゃふー。まよったときはしろとむらさきえらんでおくとまちがいないのー。

 ドヤッと胸を張るテトさん、いそいそと僕にホワイトオパールを差し出した。

 テトのおめめナツにあげるのー。はんぶんこー。

「なんていい子なんだテトさん……! でも元々はテトのディープパールだから、両方テトのでいいんだよ?」

 わけあうしあわせもあるのがじんせいなのー。

「人生の師匠みたいなこと言うじゃん……!?」


 テトはねー、このむらさきの、くびわにつけてもらうのー。マーチャにおねがいするー。

「首輪のバージョンアップか、それも良いねえ」

 シーニャくんに首輪作ってもらったとき、入れられる素材は上限まで入れてもらったけど、これも強化できるものなのかな? 僕たちが武器を強化するように、テトの首輪も強化できるなら是非したいね。

「じゃあ、宝箱に大事に入れておこうね」

 わかったのー。

 楽しそうに宝箱に紫の宝石をしまいこむテトである。マレイさんもにこにこでその姿を見つめている。2つの宝石合計の価値と、ディープパール1つの価値だと、若干2つの合計のほうが高いので、マレイさんにはお礼を言わないと。

「マレイさん、交換してくれてありがとうございます!」

 ありがとー。とってもすてきなむらさきなのー!

「うふふ、どういたしまして。素敵な宝石を手に入れたら是非またいらしてね、もちろん、宝石の情報でも構わないし、ただ私に会いに来てくれてもよろしくてよ」

 どこまで本気なのかわからないけど、上品スマイルのマレイさんにそう言われて、テトはぱああっと目を輝かせるのであった。

 おともだちー!

 うんうん、美人さんのお友達ができてよかったねえ。



 結局1時間まるっとマレイさんのお店で時間を使った僕達は、マレイさんに感謝しつつお店を出た。テトがかじったゼリーは「お土産にお持ちになって頂戴」とのことだったので、ありがたくインベントリへ入れさせてもらった。テトのお昼ご飯に食べようね。

 まんぞくなのー。

 とスキップするテトさんと一緒に広場へ戻ると、良い砥石を買えたらしい満足げなイオくんが先に戻っていた。如月くんはまだかな? と思いつつイオくんの座っているベンチの隣に座る。

「イオくんおまたせ。いい買い物できた?」

「おう。砥石と隕石を買った」

「隕石かー、ロマンだねえ」

「小さいやつだけどな。アクセサリ用素材だから共有インベントリ入れといたぞ。あとでなんかかっこいいアクセサリを俺に作ってくれ」

「なんというプレッシャー! 僕の<グッドラック>さんに祈っといて」

 ベンチは3人がけだから、僕が詰めればテトも座れると思うんだけど、テトさんは僕の正面から膝の上にぽてっとお顔を乗っけてまったりしている。なんて撫でやすいんだ。よしよし。

 にゃふふー。

 わしゃわしゃされて満足そうなテトである。かわいい。


 少しの間待っていると、近くのお店から如月くんが出てきて小走りで駆け寄ってきた。あのお店は……原石のお店っぽいけど……。

「おまたせしました! 薬石売ってたので、オーダーして砕いてもらってたら時間かかってすみません」

「薬石……薬の材料になるやつ?」

「はい。この国特有のやつがあったので、買ったら調薬レシピが増えたんですよ。それであれもこれもって」

 おお、如月くんの調薬レベルがドカンと上がる予感だね! 多分、調薬系のスキル持ってないと見つけられない商品だったのかも?

「ナツとテトは何を買ったんだ?」

 とイオくんに聞かれたけど、僕達買い物はしなかったんだよねえ。

「買わなかったけど交換はしたよ、テトが」

「テトが? 何交換したんだ?」

 あのねー、しろいまるいのとー、しろいきらきらとむらさきのきらきらー!

「コレクターバードのところで拾ってきたディープパールって真珠を、ホワイトオパールと紫色の……えっと、スピネル? っていうやつに交換してもらったんだ」

「……待て? お前達何の店に行ったんだ?」

「そこの宝石店」

 僕が指さした宝石店「エタンセル」は、高級感あふれるその外観から気軽に入ろうって感じにはならない店だ。イオくんが眉間にシワをよせ、如月くんが「マジっすか」って顔をするのも頷ける。でもテトが入りたいって言ったら入るじゃん?


「あそこさっき俺が通りかかったときは閉まってたぞ」

「え? たっぷり1時間あそこにいたけど……」

「もしかして特殊な条件を満たさないと入れない店かもしれませんね。それだったらショップカードもらってますよ、多分」

 あ、そういうのもあるんだ? えーと、ステータス画面からショップカードのタブを開いて……えーと。

「あった! すごいきらきらのレアカード!」

「やっぱり。大通りに面している店でも、条件つきの店はだいたいレアカードですよ。裏面に条件が書いてあるって聞いたことありますけど……」

「裏面……高価な宝石を持っていること、だって。条件満たしてたのはテトかな? 僕は宝石はユーグくんしか持ってないし、他のいろんな高価な石はあるけど、あれは宝石じゃないから」

「さすがナツさん、なんか持ってますね……」

「持ってるのはテトです。テトえらい!」

 わーい!

 お陰で美人さんとも知り合いになれたし、すごい宝石も見せてもらえたし、とてもお得な体験だった。やはりうちのテトさん、徳が高い。


「良し、じゃあ揃ったし、このまま南北通りを北上するか。途中でよさそうな店を見つけたら昼にする」

「賛成!」

「行きましょう!」

 ごはーん!


 最後の声だけなんか違う気がするけど、まあよいでしょう!

 お昼ご飯も人生の楽しみなので!

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さすテト! ご主人ナツも導いちゃう!
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