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36日目:テトの後輩さん。

 如月くんとメルバさんの面接は30分ほどで終了し、丁寧に聞き取り調査をしていたメルバさんは「うーん」と難しい顔をした。

「今うちにいる子たちだと、あなたとの相性は80前後の子たちばっかりねえ」

「えーと、それはどのくらい高いんでしょうか」

 如月くんの質問に、メルバさんは僕の方を見る。

「参考までに、ナツさんとテトちゃんの相性はほぼ100よ」

「えっ、そうなんですか! やったねテト、僕達相性バッチリだって!」

 とうぜんなのー!

「あ、なるほど。じゃあ俺も相性100に近い子を見つけたいですねえ」


 如月くん的には80じゃちょっと低いのかな? まあ僕とテトみたいな関係性を狙うなら、確かになあ。思えば僕達って初対面から仲良しだったんだよねー、すごくしっくり来たというか……!

 つまりその、しっくり来る感じが相性ってことなんだと思うんだけど。

「じゃあ、やっぱり卵を選ぶ?」

 最初はそのつもりだったわけだし、僕とテトも選ぶとなれば全力で取り組む所存である。ぐっと拳を握る僕のとなりで、テトも「えらぶー!」と言いながらびしっと背筋を伸ばした。このやる気に満ちた目、さすがお仕事大好き猫である。

 メルバさんもそんな僕達を見てにっこりした。

「卵を選ぶのは悪くないと思うわ。契約主に対して親へ持つような親愛の感情をいだいてくれるから、普通に契約するより仲良くなりやすいわよ。外見や能力を選ぶことはできないけれど、とにかく仲良くなりたいというのであれば、おすすめよ!」

 そうそう、シーニャくんもそんなこと言ってたっけ。僕とテトは親子というより友達って感じだけど、如月くんはしっかりものだから良いお父さんになれそうな気がする。

「能力とかは、うん。なんでもいいですね。じゃあ卵を見せてもらいたいです」

「いいわよー!」


 そんな感じで心を決めたらしい如月くんは、早速卵を見せてもらうことになった。そしてそこに僕達も一緒に見に行く。

 とはいえ、イオくんは本当に見てるだけで壁際に待機するので、基本的にはテトが気づいたことを僕が伝える感じにして、決定権は如月くんに持ってもらう。僕も何かあったら言うけど、絶対こういうのって自分で決めたほうが良いと思うし。

「さあさあ、ここよ! どうぞ気になる卵を選んでね!」

 と元気に促すメルバさんと、その隣で「良い御縁があるといいわねえ」と微笑むマーチャさん。この2人も基本は見守り体制だな。

 じゃあ僕の出番でしょう! というわけで、僕がテトと出会ったときと同じように……とりあえずお声をかけねば始まらぬ。


「みんなー! 今日はこちらの如月くんの相棒探してます、優しくて真面目で気配りさんだよ!」

 きさらぎなでるのじょうずなのー。なでられたいこはりっこうほするとよいのー。

「我こそは! って人は是非、手を上げてねー!」


「……お、おお。話は聞いてましたけど、まじで声掛け募集するんですね……?」

「如月くんもほら、自分の契約獣なんだから一言どうぞ!」

「あ、はい。えっと……」

 なんかこう、部屋にたくさん保管してある卵さんたちのざわめきみたいなのを、僕達も感じるけど、如月くんもちゃんと感じ取っているようである。ちょっとためらいながらも、卵に向かって口を開く。

「基本的には一人で動くので、あんまり賑やかな環境が好きな子には合わないと思います。姿形に好き嫌いは特にないです。仲良くしてくれる子、よろしくお願いします」

 うむ、コメントも真面目。卵のざわめきはなんとなく大きくなったような気がする。

「テト、何かわかる?」

 んとねー。こっちのあおいたまごとー、あとこっちのきいろのたまごのこがねー、いいよーって。

「如月くん、この青い子と黄色い子がいいよって」

「お、ありがとうございます。テトがいると助かりますね」

 テトに導かれるままに該当の卵の前に移動する如月くん。あ、なんか卵きらきらしてるかも……? こういうときは<魔力視>で見ると……!


 おお?

 この部屋にある卵、みんなうっすら魔力をまとっているみたいだ。カラフルできらっきらで、まるでクリスマスのイルミネーションみたいだなあ。

 えーと、テトが言ってた卵は……。

 青い卵の方は、魔力は緑色だ。如月くんが近づくとふわふわと楽しそうに揺れている。黄色い卵の方は……如月くんに向かって白い魔力を伸ばしているなあ、これは結構強く求められているのでは? どっちを選んでも良い感じになりそうだけど、後は好みか。

「如月くん的にはどう?」

「えーと、こっちの青い卵は気楽な感じがして、黄色い卵はじゃれついてるような感じ……ですかね」

「僕がテトを選んだときみたいに、ちょっと伝わるものがあるよね。後は如月くんの好みかな」

「うーん、そう言われると難しいですね……!」

 如月くんはスキル選んだときも結構迷ってたし、慎重派なんだよね。二択とはいえ、これはなかなか迷いそうである。そんな迷える如月くんに、メルバさんがとことこと寄っていってまたアドバイスを始めたので、ここからはお任せしましょう。


「テトの後輩どっちかなー?」

 どっちかなー!

 とわくわくの眼差しで待つことにした僕とテトは、イオくんの待っている場所まで下がった。「また同じ顔をしよる」とか言われたけど、そりゃ期待とわくわくで似たような顔にもなるでしょう。

「イオくんだって気になるくせにー」

「……俺の契約獣じゃないし」

「イオくんも選んじゃう?」

「あー、いや。俺はまだ後で良いな。テトもいるし」

 イオくんはそう言ってテトをワシャワシャと撫でた。にゃー! と嬉しそうに声を上げるテトの様子に、まあ確かに当分テトだけでいいか、っていう気持ちになる僕である。イオくんのことだから、気が向いたら即断即決しそうだしね。

 それに、家にはテトだけじゃなくてユーグくんもいるわけだしね!

「……そういえばイオくんの剣って、意思表示しないの?」

「しねーよ。ナツの杖はナツ用のオーダーメイドだから、意思表示があるかもしれんが」

「あ、そうか。良い職人さんが作ったっていっても、イオくん専用に作られたわけじゃないんだった」

 青くて真っ直ぐで、波紋が氷みたいにきれいな、いかにもイオくんにピッタリ! って感じの剣だから、オーダーメイドと言われても納得しそうなんだけどなあ。

 ユーグくんはたまーに光ったりしてなんか主張してくれるから、イオくんの剣もそういうのあったら楽しそうだなと思ったけど、無理なら仕方ない。そのうち、イオくんも剣をオーダーメイドして名付けをすると良いと思う。


「武器といえば、強化条件クリアしたか?」

「あ、そうそう! ようやくクリアできたよー、おまたせ!」

「おう。ダナルに良い武器屋を紹介してもらおうぜ」

 ふふふ、そうなのだ。家のユーグくんが、ついに第一段階目の強化条件をクリアしたのだ! イオくんの剣は、実は里にいる間に条件クリアしてたんだけど、僕の場合は敵へのデバフ回数が足りて無くて、ゴーラに到着する前にようやく達成できた。

 どっちみち里では武器の強化ができる人が居なかったから、イオくんのだけ先に、とかも無理だったんだけど。ちなみに掲示板情報だと、結構、強化を頼む職人さんによって出来上がりはピンキリらしいんだよね。

 「誰に頼むか」も超重要なのだ。

 だからこそ、地元の人に良い職人さんを教えてもらうのは、とても良い方法だと思うんだよね! 住人さんたちが信頼を寄せる職人さんなら、きっと腕も良いはずだもん。


 僕達がそんな話をしている間に、如月くんはメルバさんと相談の上、黄色い卵に決めたらしい。一抱えあるその卵を抱えて戻ってきたので、テトが目を輝かせてにゃにゃーっとすり寄っていく。

 テトのこうはいー!

 喜びを全身で表現しつつ、如月くんの周囲にまとわりつくテトさん。もうね、目がきらっきらのわっくわく。如月くんもなんか微笑ましいものを見る眼差しになっている。うにゃんにゃとテトが一生懸命語りかけている内容は、要約すると美味しいものとかたくさん教えてあげるねー! というようなことである。

 やはり美味しいもの布教の先駆者のテトさんなので、まずはマロングラッセからはじめたらいいんじゃないかな……。如月くんの契約獣なので如月くんに許可とらないとだめだよーとだけは言い聞かせておこう。

「如月くん、テトがね……」

「あ、なんとなくわかります。何か食べさせたいって話なら、構いませんよ」

「……テトも心読まれてるよ! 僕と一緒だね!」

 ナツといっしょー!

 わあいって喜ぶところじゃないと思うけど、まあテトが嬉しそうならいっか!


 卵の部屋からお店に戻って、僕が聞いたのと同じような説明を受ける如月くん。決め手はなんだったの? と聞いたところ、

「この子が俺と一緒に居たいって感じだったので……」

 と照れくさそうに答えてくれた。青い卵の子は、もうちょっとのんびりした感じだったらしい。こっちの子のアピールが強いような気がしたんだって。

 ホームとかは、生まれてからじゃないとどんなのが良いかわからないから、契約獣が生まれたらまた来てねって感じで説明も終了。如月くんは今日の分の魔力を卵にぎゅっと注いで、インベントリに入れた。僕のときもそうだったけど、何日かかけて魔力を注ぎ込まないとだめなんだよね。

 ちなみに、ハウスと呼んでもホームと呼んでもいいらしい。僕はなんか前にやったゲームでホームって言葉を使い慣れてたからホームって呼んじゃってたけど、シーニャくんはハウスって呼んでたっけ、そう言えば。別にどっちが正しいとかはないので、呼びやすい方でいいよってマーチャさんに言ってもらえた。


「懐かしいなあ、テトもあんな感じだったんだよ。覚えてる?」

 たまごのなかにいたときはー、ナツたくさんおはなししてくれたのー。

「確かにたくさん話しかけたかも?」

 あとねー、イオのまりょくももらったよー。それでねー、ようせいさんたちからもー。いっぱーい♪

「あ」

 そう言えば如月くんにも言っておかなきゃ、人混みでうっかり卵だしたら大変なことになるよって。テトはとってもつやつやキラキラになったけど、流石に卵の中で進化までしちゃうのはやりすぎと言うか。僕は全然気にしないけど、人によっては共に成長する喜びみたいなのもあるからね。

「如月くん、卵だけど……」

 と切り出し、テトに起こったこと……アイドルの握手会みたいな状況……を説明すると、マーチャさんとメルバさんは「あららー」って顔をした。

「さもありなん、ねえ」

「わかるわあ、私だって外で卵を見かけたら祝福したくなっちゃうもの!」

 うんうんと頷きあう2人である。


「あー、つまり、人前で卵を出さないように気をつけたらいいんですね」

「卵の中で進化しちゃうとかは、まあ良いよって人もいると思うんだけど、めっちゃ囲まれて身動き取れなくなるから気をつけたほうがいいかも」

「なるべく出さないようにします!」

 如月くん的には身動き取れなくなることのほうが大問題らしい。そりゃそうか、これから探索だからね……!

「妖精類の皆さんがめちゃくちゃテトに友好的なのってそんな話があったからなんですね。今のところ契約獣を持ってる人がまだ少ないから、あんまりその話知られてないと思いますよ」

「それはそうかもねー。サンガでもちらほら見るくらいだったし」

 増えてきてるってシーニャくんは言ってたから、そのうち広まる話だとは思うけどね。その前に卵を選ぶトラベラーは少ないからなあ。

「嬉しくなっちゃうのよねえ、契約獣がいると」

 とおっとり微笑んだマーチャさんは、そのままテトの頭を撫でた。身長1Mくらいのケット・シーさんが背伸びしてちょっとかがんでいるテトの頭を撫でるの図、大変素晴らしいと思います。スクショとっていいですか? ありがとうありがとう。

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― 新着の感想 ―
ジャンボな猫が卵に向かってウニャウニャ言ってるように周りは見えてるんだよなぁ、これ。うーん、メルヘン
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