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36日目:ゴーラへ、第一歩!

 リアルでお昼の休憩を挟んでからの再ログイン。

 今日はゴーラへ到着の日なのでわっくわくで目が覚める。……やはり美味しそうな食事の匂いがしてくるんだけれども、昨日の夜寝る前に、ちゃんと起床時間合わせたはずなんだけどなー。なんでイオくんって僕よりちょっと早く目覚めるんだろう、もしやリアルの目覚めの良さとかが反映されてる?

 ……だとしたら二度寝常習犯の僕は、多少起床時間が遅いのもやむなし……!

 ナツー! おはよー!

「おはようテト、今日もかわいいね。撫でましょう」

 わーい!

 いつものやり取りをしつつ、ふあーっとあくびをしてから起き上がる。このテント、たたむのも楽だからちょっと高かったけど買ってよかったなー。とか思いつつ、のそのそとテントを出ると、いつものテーブルセットに朝食を並べるイオくんがいた。


「イオくんおはよー!」

「おう、おはよう。今日は残り少ないのを適当に出すから、好きなのを取っていいぞ」

「了解!」

 早いもの勝ちってことかな? と思いつつテーブルの上を確認すると……朗報! たまごサンドがあります! これは確保せねばならぬ。

 あまいのあるー?

「テト、焼き菓子があるよ、甘いやつ」

 わーい! テトそれにするのー。

 ぴょいっと僕の隣の席に座ったテトさんは、猫のお皿を要求して焼き菓子を乗せてもらってご満悦である。そこに、如月くんとダナルさんもやってきて、みんな揃って朝ご飯だ。

「なんか在庫一斉処分って感じですね」

 しみじみ言いながら如月くんがささっとおにぎりを確保する。あれはベーコンとチーズを混ぜ込んだやつだな、在庫なくなったんならまた作ってもらいたい。

「ゴーラいけばまた色々買えるからな。<料理>スキルも上げたいし」

「あー、スキル上げは大事ですね」

「魚介類は今まであんまり作ってないから、結構スキルレベル上がると思う」

 ダナルさんはちょっと迷ってから、無難にレタスとベーコンを挟んだサンドイッチを手にしていた。これはどこかの店売りを買い込んだやつだったかな? ロミちゃんにはテトと同じのを出しておこう。


 街の門は、朝8時から開く。

 なので7時に起きて朝食をとり、テントを片付ければだいたい良い感じの時間になるのである。まあ、ちょっと門の前で待つかなーってくらいの時間帯だったんだけど、ダナルさんが馬車で門に近づいたら、中から門番さんが出てきてちょっと早いけど門を開けてくれた。

「馬車の正面にゴーラの所属であることを証明する、紋章をつけてあるからね。少し融通してもらえるんだ」

「へー! あ、これですか? 波がモチーフなのかな?」

 リアルでも、都道府県のマークとかあるもんね。ああいう感じのシンプルなマークだ。この波のマークがついている馬車は、ゴーラの領主様が作っている輸送部隊に所属しているって意味になるらしい。

 この人はゴーラのまっとうな商人です! って保証になるのだ。

 僕達も、そんなダナルさんと一緒だったので一緒に街の中に入れてもらえた。門のところにある読み取り装置にギルドカードをかざして、ピッと認識させてから門をくぐる。僕達がトラベラーだとわかると、門番さんは朗らかに大きな声で、

「ようこそゴーラへ!」

 と歓迎してくれた。すごく気持ちの良い挨拶である。思わず「ありがとうございます!」って返しちゃったけど、なんかもっと良い返答があったような気もするなあ。語彙力欲しい、本を読まねば。


 気を取り直して、ゴーラへの第一歩!


「うっわあ……!」

「おお、これはすごいな」

 きらきらー! おみずー?

「テトさん、あれは海だよ。すごーく大きくて、ちょっとしょっぱくて、いろんなお魚が住んでいるところだよー」

 おさかなのおうちー!

 すてきー! とテトさんがご機嫌な表情をするけれど、いや確かにこれはすごい。僕達はゴーラの西門から街に入ったんだけど、そこから港まで一直線に大通りが敷かれていて、それがそれなりの角度の坂道になっている。つまり今、高台から海を見下ろしているような感じ。これがものすごく絵になる構図なのだ。

「すごい、段々畑みたいになってますよ」

「どれどれ? あ、ほんとだ」

 如月くんが指摘した通り、坂道が結構急だからか、大通り沿いの建物は段々畑みたいになっている。ある程度の面積を平らに均して、段をつけて下へ、巨大な階段のような構造だ。イチヤともサンガとも全然違う雰囲気なのは、立ち並ぶ建物の素材が全体的に統一されているせいもあるかも。

「白い壁に、赤茶色の屋根……。これは揃えているんですか?」

「うん。ここは昔からそうなんだ。壁の色は貝から作られる素材で、屋根は塩に強くなるような塗料を塗られているからね」

「なるほどー!」


 なんかすごく、ザ・港町! みたいな雰囲気!

 そして風が結構強いな、ちょっとベタつく感じですごく海を感じます。

「さ、皆さん、あそこがトラベラーズギルドだよ」

 ダナルさんが指さして教えてくれたトラベラーズギルドは、かなり目立つ感じの建物だった。イチヤとかサンガとかのトラベラーズギルドと違って、1階部分がばーんと開け放たれていて、ちょっと洒落たオープンカフェみたいになっている。

 壁、ぶち抜いてるのかな……? 住人さんでもトラベラーでも、外に置かれたテーブルセットは自由に使っていいみたい。大きめの看板が掲げられているからわかったけど、この看板がなかったらお店だと思ってスルーしちゃってたかもしれない。

「他と結構雰囲気が違いますね」

 と呟いた如月くんに全面同意である。まあ、僕達だってイチヤとサンガと里のトラベラーズギルドしかまだ見てないけど、イチヤのは役所みたいな雰囲気で、サンガのはレトロなデパートっぽかった。どっちもそれなりに硬派な雰囲気があったけど、ゴーラのトラベラーズギルドはなんか、開放感のせいなのかもっと庶民的な雰囲気を感じる。


 そんなことを思っていると、ダナルさんがもうお店に行くからここで解散、という話になった。如月くんは念の為と解熱剤を渡してたけど、体の方はもうすっかり良いらしい。

「皆さんのお陰で、本当に助かったよ。よければあとで店に顔を出して欲しいな。助けてもらったお礼もしたいし、美味い店で食事でも奢るよ」

「それは楽しみにしてます!」

「じゃあ、あとで必ず顔を出しますね!」

「近日中には必ず」

 あまいのもおねがいするのー。ロミともきょうそうするのー。

 って感じにお別れして、僕達はトラベラーズギルドへ、ダナルさんは大通りを馬車に乗って下っていくのだった。うーん、遠ざかる馬車でさえ絵になる。この坂道まっすぐ整備したの大正解だなあ。


 トラベラーズギルドは、西門から入って坂道を少し下ったところにある。当然、このまっすぐ港へ伸びる道がギルド前通りだ。オープンカフェっぽいエリアを抜けて建物に入ると、1階に相談カウンターと買い取りカウンター、待合室の内部もカフェっぽい。

「転移装置は左だな」

 イオくんが見つけてくれた転移装置に、まずは登録。この建物、外側は真っ白な壁なんだけど、内側はきれいな青の塗料が塗られていてすごく爽やかな感じになっている。天井が高くてロビー部分は吹き抜けだし、開放感がすごい。

 全員が転移装置に登録し終わったら、次は素材の売却。新しい街に来たら、絶対欲しいものがいっぱいなので、まずは資金確保である。

「すみませーん、素材の買い取りお願いします!」

「はーい」

 買い取り窓口のお姉さんに、不要な素材をじゃんじゃか出していく。イオくんが。昨日のうちにちゃんと不要素材を共有インベントリにまとめてくれていたイオくん、実にできる男である。僕もちゃんとどれを取っとくとかどれを売るとかしっかり仕分けしてもらったので、売却はお任せだ。

 横で査定だけ聞いてたけど、やっぱりグランさんの秘密基地で拾ってきた素材はなかなかの高値だった。品質が素晴らしいです! ってべた褒め。そりゃ神獣さんの住処にあるものだもん、当然だよねえ。


 一応、グランさんのところにしかないオンリーワン素材は売却してない。単純に、そういう素材は有用なので自分たちで使いたいから。だから、売ったのは普通の森でも拾えるような素材だけなんだけど、品質が違うと価格も変わるのである。

 1個だけ、味も効果も完全ランダムなラダンの実を売ってみた。そしたらこれすごく珍しいものです! って結構喜ばれてたみたい。150,000Gの高値がついたので全部売っぱらうか一瞬迷ったんだけど、イオくんが出さなかったのでやめといたほうが良いんだろう。うん。

 大量投入したら価値が下がるかもしれないしなあ。需要と供給のバランスは大事だよね。

 今回の素材売却は、大体500,000Gくらいになった。金運上昇のお守り効果で買取価格10%アップなので、なかなかの収入である。これで美味しいものたくさん買ってもらえるはず。

 あまいのー♪

「テト、美味しいお魚もあるよ」

 おさかなー♪ ねーナツー、あまいおさかなってあるー?

「甘い魚……煮付けとかかなあ」

 えーと、確か白身魚の甘めの煮付け、食べたことある。給食で出たっけ? 正直僕個人としては魚ってしょっぱい味付けのほうが好きだから、好んで食べないんだよなあ。よし、話題を変えよう。

「テトが好きなお魚料理ってある?」

 しゃけのしちゅー!

「あ、なるほど。テトはシチュー好きだねえ」

 おいしいのー♪


 シチューを思い出してうっとりした顔をするテトさん、とても幸せそうである。僕達がそんな話をしている間に、如月くんも売却が終わったようで、「インベントリがスッキリしました!」と満足そうだった。

 よし、これでギルドでやることは終わったし、早速探検に……!

「待て待て。ナツお前大事な用件があるだろ、先にそれを済ませるぞ」

「うん?」

「なんでそんなナチュラルに忘れるんだ。キャノンフラワーの種」

「ああ!」

 そう言えばそんなものもありました。っていうか逆になんでイオくんそんなになんでも覚えてるんだろう、天才かな? 僕は慌ててインベントリからキャノンフラワーの種を取り出した。その間に如月くんが相談カウンターの窓口の人を呼んでくれたので、3人で事情を説明して種を渡す。

 ダナルさんのことや、そのダナルさんから襲撃事件が相次いでいるって話を聞いたことも説明したんだけど、どうやら謎の襲撃事件に関しては情報提供を求めるクエストが出ていたらしい。僕達の報告を聞いたギルド職員さんが、その情報提供クエストの方の手続きをしてくれて、報酬が支払われたのでラッキー。

 キャノンフラワーを倒したことについては、原因を解決したってことでこちらも報酬が出るらしいんだけど。何しろ住人さんたちは現場を確認できないから、この話が嘘や勘違いではないという確信が得られないと支払いができないんだそうで。

 具体的には1ヶ月ほど様子を見て、他の馬車が襲われなければ、解決したと判断されるらしい。

「最近襲撃される件数が増えていたので、本当に助かります」

 と大変感謝されました。


 僕達の勘違いで他に原因があるってことも、可能性としては0ではないので、現時点でそんなに感謝されちゃうとちょっと気まずくもあるんだけど……! 

 まあ、でもそんなふうにありがたく思ってもらえるくらい、ゴーラの人たちは困ってたんだろうな。報酬がもらえるというのなら僕達も助かるし、ウィンウィンってことで。

 ……もう忘れてることってないよね? 

 今度こそ探検に行こう!

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