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34日目:幸運のどんぐり

 ここにたどり着くまでの間に拾ってた、どんぐりにそっくりな木の実。

 <鑑定>の結果だと、ラルベリっていう名前らしい。……覚えられる気がしないからどんぐりでいっか。形はどんぐりに似てるけど、帽子の形が違ってて、色もリアルで見るどんぐりよりもオレンジぽいかな? 明るい色だから僕は好きだけど、何と合わせよう。

 うーん、もう少しテカテカさせたいかも。<材質加工>スキルの【光度調整】を使って、光度高めに……。

 うむ、良い感じにピッカピカのどんぐり!


「あ、<細工>使うんですか?」

 ゴリゴリと小鉢で作業をしている如月くんが、興味深そうに僕の手元を覗き込んだ。まだどんぐりしかないけど、ここは一つセンスありそうな如月くんのアドバイスをもらっちゃおう。

「素材を並べてスキルを使うだけなんだけど、他にどんな素材を使ったらいいと思う?」

「何個まで選べるんですか?」

「今はまだスキルレベルが1だから、3つまでしか選べないんだ」

「この前ナツさんが言ってた、魔法石ってやつはどうでしょう」

「あ、そう言えばそんなものが。如月くんよく覚えてるね、賢い!」

 なんでみんなそんな昔の話をよく覚えているんだろうか。ありがたいなあ。テトが気に入ってたやつはいくつかあげたけど、空の魔石はあのあともいくつか村長がくれたから、追加でいくつか作ってるんだよね。今あるのが5個だから、この中から選ぼう。

 えーと、オレンジに合いそうな色は……。 

 ほのかに金色にきらきらしているやつが確か、【ピュリファイ】を込めたやつだったかな。周囲を浄化する(範囲小)って効果がついてるけど、これはトラベラーには必要なさそうなやつだから、これを使っちゃおう。練習だからね。

 ちなみにこの魔法石、品質は★2。……もうちょっと良い品質のものがほしいよねー。今後もアクセサリ作っていくなら、絶対に器用にPPを振らねばならない。


 僕がテーブルに魔法石とどんぐりを並べると、わくわくを隠しきれない如月くんが自分の手を止めて見学にやってきた。そんなすごい事するわけじゃないし、材料並べてアーツ使うだけなんだけど、「個人的に興味あるんで」とのことだ。

「前提スキルの<金属加工>は入手手段が多いので、俺でも取得できそうなんですよ。<細工>で有用なアイテムが作れるなら、正直俺も取ってみたいんです」

「あ、なるほどー。使い勝手とか気になるよね」

「器用はそこそこ上げてるんで! でも幸運のほうが大事だったら取ってもなーって。ナツさん今まで<細工>で何か作りましたか?」

「ループタイ作ったよー。効果は、猫に好かれる……だったかな?」

「ナツさん……!」

 なんかめっちゃナツさんらしいです、って言われました。解せぬ。ま、まあ僕と言えばテト、テトといえば猫だから仕方ないね。

「でもまあそんな感じだから、幸運はあんまり関係ないかも」

「いえ、逆に欲しい人はめちゃくちゃ欲しいやつですよ」

 そっかなー? そんなもんだろうか。……いやアサギくんが喉から手が出るほど欲しいと思ってくれるやつなのは知ってるけども。世の中そんな猫好きばっかりじゃないでしょ。


「んー、前回は革紐を入れたからループタイだったんだと思うんだよね。男女関係無く使えそうなアクセサリって何かなー」

「男性が使いやすいのは、バングルかイヤーカフですかねー。普通にペンダントでも、紐が長ければ問題ないですけど。俺チョーカーは苦手なんですよね、首がぐえってなってしまうので」

「あ、めっちゃ分かる。ぐえってなるよね」

 そうすると首元につける系のアクセサリはやめとくか。イヤーカフ……自分がつけたことないから使い勝手がよくわかんないんだよなあ。あれってすぐ落ちそうじゃない? 僕、絶対に失くす自信がある。

 とすると、バングルだけど……えーと、この前作った四角の金属板を使って……。

「【自由変形】」

 バングルの形って、普通に輪っかにすればいいんだっけ? 完全な円形じゃなくて、隙間空いてるんだよね確か。あ、だとしたらもっと薄くしないと。厚いと重いし。

「んー? こんな感じ?」

「その半分の幅でいいんじゃないですか」

「幅広いかな? 幅ある方がファンタジー感ある気がするんだけど」

「彫刻とかで装飾できるなら幅広でもいいような」

「ナイスアイデア」

 今まで<魔術式>以外を彫刻したことってないなそういえば。実は普通の彫刻もできるんだよこのスキルは。汎用パターンから選んで模様を彫ったりとかね! 僕一回も使ったことないけど! 

「えーと、えーと、<彫刻>の、柄を選ぶときに魔術式じゃなくてパターンを選んで……あれ、めっちゃいろいろあるじゃん……? これスキルレベル上がるたびに増えてた……だと……!?」

「あ、これとかいいんじゃないですか、どんぐり使うなら植物模様で」

「それでいこう!」


 えーと、バングルの上下に花とか葉とかの植物模様を入れて……すっごいさくさく彫れるじゃん、これもしかしてお守りとかいきなり作るんじゃなくて、最初はこのパターンを彫るところから始めるべきだったのかな。見事にすっ飛ばしたけれども。今まで触りもしなくて申し訳ない気持ちになるな。

 どんぐりが彩度高いぴかぴかどんぐりだから、金属部分もちょっときらきらさせとかないとバランス取れないかも。えーと、【光度調整】つかって……80%くらいにぴかっとさせて……。

「んーと、こんな感じ?」

「いい感じですね!」

 よし、如月くんが良いというなら良いのです。じゃあこのバングルと、どんぐりと、魔法石を並べてっと。

「じゃあ行くよ。 【アクセサリ合成】 MP200!」

 ちなみに、MPは素材によって込められる数値が変わる。今回は最大200だったから、最大値入れてみた。このとき使うMPは確変率っていうのに影響して、多くつぎ込むほど良い効果が出やすくなる……らしい。

 ケチっても良いものが出るときは出るから、そのへんはやっぱり幸運なのかもしれない。

 並べた素材がぱあっと光って、1つにまとまる。ちなみにこの合成演出も何パターンかあって、確変確定演出とかもあるらしい。ガチャゲームでもよく見るやつだ。

 そして、出来上がったものはというと。


「お、普通にバングル」

 ぱっと見は普通のバングルだった。どんぐりと魔法石が融合して、どんぐりの形の魔法石になって埋め込まれてるという、ちょっとデザインがかわいいやつだ。これは女性の方が喜びそうなアイテムだなあ、と思いながらも<鑑定>してみる。

「幸運のバングル。このバングルを装備していると、宝箱が取得できるダンジョンで中身のレアリティが少し上がる。魔法防御+3。品質★3……ちょっと限定的過ぎて微妙だなあ」

「少しってどのくらいでしょうね。それによってはかなり需要ありそうなんですけど」

「少しは少しだよ如月くん」

 少しとかわずかとか多少とか、どれも信頼してはいけない言葉だと思うんだ。特に確率という単語にかかるときにはね……! 7割でも裏切ってくるからねあいつは……! しかもこれだとダンジョンでしか使えない上、宝箱が出てくるダンジョンにしか意味がないわけで。

「里で作れたら売れたなあ」

 主にアサギくんが喜んで買い取ってくれたんじゃないかなと思う。雷鳴さんも野菜の確率上げるためになら買ってくれそうだし。ただ残念ながら、ちょっと遅かったね。

「欲しい人はめちゃくちゃ欲しいと思うんですけどね、それも」

「まあ<細工>レベル1だし。……あ、今2に上がったから、もう少しなんか作ってみよう。ちなみに如月くん、アクセサリ素材って持ってない? 買い取るよ」

「そうですね……いくつかありますよ」

 インベントリからいくつかアイテムを融通してくれる如月くんにお礼を言って、個人のお財布から材料費を支払う。スキルレベル上げを頑張らなくてはならない。


 とりあえず、どんぐりがいっぱいあるから、当分これで練習しようかな。えーと、次は彩度を落とした渋い色合いにして……。いぶし銀などんぐりに合いそうなのは、さっき如月くんから買い取ったルナプランタのツタとかいうやつが良いかな。夜限定素材なんだって。これは茶色がかった渋い緑色で、なんかちょっと高級感ある。

 最後の一つは……めぼしいものがないけどなんか植物系でまとめたい気持ちもあるし、<金属加工>で葉っぱの形をつくって、【光度調整】で彩度を落とし、全体的に渋い感じにする。あ、<材質加工>もレベル2になった!

「【色彩調整】を覚えた!」

「お、新しいアーツですか」

「うん、よくあるカラーパレットから色を変えられるらしいよ」

 とってもよく見る円形のあれ。好きなところから色を選べるやつだね。となれば、この金属の葉っぱをほんのり緑色に……うん、黒みがかった緑、渋くて良いね。

 他の素材はそのままの色が良さそうなので、変に加工せずにおいておく。一応<彫刻>で葉っぱっぽい筋を付けておこうかな。このくらいなら美術の成績普通の僕にもできるはず。


 なんとか良い感じにまとまった素材を並べて……よし!

「行くよ、【アクセサリ合成】!」

 あ、この組み合わせMP300入れられる! やばい、MP回復しなきゃ!

 慌ててMPポーションを飲んでMP300を宣言すると、素材がぱあっと光って……あれ、なんかちょっと虹色に光ってない? まさかこれが確定演出ってやつ?

 思わず如月くんに視線を向けると、如月くんは大きく頷いてぐっと親指を立てた。お、おうふ。これが噂の確定演出かあ。これはおそらく<グッドラック>さんが良い仕事してるなあ。

 気の所為か、光ってる時間もさっきよりちょっと長い。そしてその光が徐々に収まって、テーブルの上には1つのアイテムが残された。

「ん? なにこれ」

 ツタの部分が幅広になって、引っ掛けて輪っかにするタイプの金具がついているから……えーと、ベルトかな? その引っ掛け金具の部分に小さくなった葉っぱとどんぐりのチャームがついている。ん? いや、まってもう一個金具がついてる。これはあれだ、カラビナ!

「ベルトじゃなくて、ネックストラップかなこれ」

「ああ。なんか引っ掛けてつけられるやつですか」

 そうそう、リアルだとパスケースとかネームプレートとか下げるやつ。ペンダントにするにはちょっとごてごてしすぎだし、そもそも何を下げとくんだっていう疑問もあるけれども。


 MP300も入れたし、確定演出も入ったから何かしら有効なものだと思うんだよね。それじゃあ早速<鑑定>して……っと。

「鍵束のストラップ。このストラップに鍵を取り付けたとき、その鍵をどこで使うべきか必ずわかる。また、様々な鍵を入手しやすくなる。品質★4」

「これまたピンポイントなものを作りましたね」

 これは良いものなのか? という疑問は置いといて、鍵といえばいくつか持っている。リゲルさんとこに行く鍵はどこで使うべきか自分で判断するものだからいいとして、使い道のわからない鍵といえば2つほどあるね。

「僕には必要かもしれない……!」

 何しろすぐ忘れちゃうので。こういう救済措置めっちゃありがたいな。運営さんに感謝しながらインベントリから取り出した鍵は2つ。

 1つはアンティーク調のきれいな鍵。ヨンドのどこかにあるというローズガーデンの鍵だね。これ、鍵というキーワードがなければ存在ごと忘れ去ってたところだよ。たしか、サンガでテアルさんにもらったやつのはず……。

 そしてもう1つ、絶対にこれも鍵でしょう! と意気込んで取り出したカード。ブルーアクセスカードだ。でっかいカラスの宝物庫からもらってきたやつ。


「え、それも鍵ですか?」

「アクセスカードって鍵だと思う。僕は鍵だと信じます」

 そう、強い意志を持ってこれは鍵だと信じるのだ、さすればこれは鍵と判断されるであろう……多分。そんなことを思いつつ、ネックストラップのカラビナに鍵を引っ掛けて……あ、カードの角のところにちょうど引っ掛けられるような穴が出現したので僕の勝利です。

 カチッと音がして、2つの鍵がストラップと一体化する。最大HP上昇のお守りがちょうど切れてたから、それと入れ替えて……よし。


 これで!

 鍵の存在を忘却してせっかく近く通ったのにイベントスルーした、とか、そういうミスはなくなった。やったね!

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― 新着の感想 ―
ナツの場合はグッドラックさんも有るから、 たぶん?大丈夫だとは思うけど さらなる確実性を手に入れた訳だね これも幸運の無せる技かも
レア枠の鍵ってふわっとした表現でしか場所教えてくれないから思ってる以上に有用だと思うなぁ、これ。隠蔽されてるようなところでもその周辺くらいまでは案内してくれればいいなぁ
・・・確定演出で出る物かって思うけど確かに絶妙に便利だなぁ・・・ (使うタイミングないアイテムって所持枠喰うから倉庫の肥やしにして使う時に持って無いってとてもあるあるだしなぁ
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