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34日目:テトはおいしいを布教する

いつも誤字報告ありがとうございます、助かります。

 ところでこのクエスト、おそらくイオくんにのみ出てるクエストらしいんだよね。これまでも僕にだけ出ててイオくんにはいってないクエストはあったけど、逆のパターンは初めてだ。

 ということは、このクエストに必要なのは、武力かな?


「A評価クリア。この話にはまだ先がありそうって書いてある」

 とイオくんが教えてくれたけど、僕がクエストリストを探しても出てこなかったからね。そしてそのことを話すと、イオくんはちょっと楽しそうな顔をした。

「ということは、これからも歯ごたえのある敵が出てくる先のクエストがあるってことか?」

「多分ね。他にも条件はあるような気がするけど……。あ、クエストの枠の色何色?」

「赤」

「重要クエストじゃん!」

 それ、<グッドラック>さんだったら「ぜひぜひやりましょう!」って猛プッシュしてくるやつ! この先のストーリーも気になるし、イオくんに適度に歯ごたえのある敵をぶつけてくれるなら良いことです。イオくんのストレス発散にもなるでしょう。

「ま、チェーンクエストならそれはそれで先に期待だな。戻るか」

「はーい。ところでこの種どうする? 植えるところもないし、強化素材とかにも使えないし……でもそのへんに捨てるわけにもいかないよね」

「無差別砲撃が始まるだけだからやめろ? まあ、一旦しまっておいて、またグランと会ったら処分を頼むか」

「なるほど、プロにお任せしよう」


 大切なものタブには入らないから、多分これ普通のドロップアイテムなんだよね。うーん、何か用途があればいいんだけど。早く<総合鑑定>をレベル20にして<心眼>を覚えたいなあ、そしたら取得可能一覧に出ている鑑定スキルを全部取って、鑑定で出てくる結果を充実させたい。

 実は<食材鑑定>とか<植物鑑定>とか、色々鑑定系スキル出てるんだよね。でも半端に育ててもなーと思って、<心眼>取るまでは取得しないようにしてSPをためている。多分、今調べたらもっと変わった鑑定とか取得可能になってるんじゃないかと思うんだけど、見ると取得したくなっちゃうから自重……!

 なんでこんなに鑑定を細分化させるんだろうなーと思ったんだけど、公式さんのコメントによれば、知識っていうのは本来それなりの経験や教育がなければ身につかないものだから、というのが理由なんだって。自分で調べるか薬学に詳しい人に習わないと<薬鑑定>は取得可能にならないし、毒を調べたり詳しい人が教えてくれないと<毒鑑定>は取得可能にならない。

 僕達が<素材鑑定>を取得したときも、教師役の住人さんがいて初めて取得出来たわけで。要するに手順を踏めば誰にでも取得できるけど、必要ないと判断するなら取得しないという選択肢もあるよ、っていうことなんだろうけれども。

 うーん、<鑑定>も奥が深いな。



 如月くんたちのところに戻ると、テトさんがロミちゃんの上をくるくる回るように飛んでいた。ロミちゃんはそれを見上げて「あらあら」って感じの表情だ。……なにしてんのテト。

 ナツー! おかえりー!

「ただいまテト。なにしてるのー?」

 しゅと? っていうところにはおうまさんがくるくるまわるのりものがあるってきいたのー。

 馬がくるくる……あ、メリーゴーランドじゃん! 遊園地があるのかな? 首都ナナミに? ……いやたしかに戦後10年経ってるしそれなりにエンタメ施設も充実してるかもしれないけど、遊園地って結構敷地面積が必要だよね、流石にないか。ってことは、デパートの屋上みたいなミニ遊園地かな? ああいうのって観覧車が定番かと思ってたけど。

「テトさん、それってメリーゴーランドっていうんだよ」

 めりー? テトもおうまさんみたいにまわるからナツのってー。

 にゃあん、と甘えた声でおねだりするテトさん。これは断れないな……ってことで乗せてもらうと、テトは張り切ってロミちゃんの周りを再び回り始める。う、うーん。なんか違うけどまあいっか!


 僕とテトがそんなふうに遊んでいる間に、イオくんは如月くんに情報共有している。ダナルさんはぐっすり寝ていて、まだ起きないみたいだし、ここで一泊して明日からゴーラを目指すほうがいいかな? もうすぐ夕暮れ時だしね。

 ロミがねー、きさらぎにありがとーっていってるのー。

「ロミちゃんはダナルさんの契約獣さんだよね。如月くんはお薬作れてえらいよねー、伝えておくね」

 お馬さんだから、こう、「ヒヒーン」って感じの鳴き声を想像してたんだけど、どうやらロミちゃんは無口なタイプのようで、優しげな眼差しをこちらに向けるだけだった。軽く頭を下げる仕草で、だいたい何を伝えたいのかは理解できる。

「色々あってそろそろ夕暮れ時だし、今日はもうこのまま一泊かも。そうだ、ロミちゃんは、何か食べ物の好き嫌いある?」

 試しに聞いてみたところ、小首をかしげるロミちゃん。テトはにゃあっ!? と大きく鳴いて、空中旋回を中止してしゅたっと地面に降り立った。


 もったいないのー!

 にゃーん! となんか必死に呼びかけるテトである。あ、さてはロミちゃん、普通のご飯は食べない派かな? 契約獣って普通は契約主の魔力だけでOKだからね、普通は。大事なことなので繰り返します。普通は。

 あまいのおいしいの、てんごくのおあじがするのー! イオはとてもよいりょうりにん、きっとロミもきにいるようなすてきなおりょうりをだしてくれるのー! 

 にゃにゃにゃんっと必死で訴える家の猫、よっぽど食べるの好きだよね、知ってるけど。あと料理人イオくんへの厚い信頼がよく伝わるお言葉である。

 ロミちゃんも気に入るような素敵な料理か、やっぱりニンジンかな? ニンジンがメインの料理って僕、ちょっと思いつかないんだけど……。煮物とか、スープとか、カレー・シチュー系に具材の一部として入ってるイメージが強いよね。


「イオくん、ニンジン料理のレパートリーある?」

「きんぴら」

「あー、美味しいよねあれ」

「あとはキャロットラペとかか? テトに食わせるならキャロットケーキ一択だろうけど」

「なんでも作れてえらい。いやテトがね、ロミちゃんに美味しいもの食べないのもったいないって力説してるからさ……」

「あー」

 まーたあいつは、という顔をするイオくんである。ついでのように僕にも呆れた視線を向けるのやめてほしい、テトが食いしん坊なのはあくまでテトの資質であります。

「イオくんは素晴らしい料理人なのできっとロミちゃんも気にいるよ、って話をあそこでしてるよ」

「さっきからなんかにゃーにゃー必死だなと思ったらそんな話か……!」

 そんな話だよ。ほんとイオくんに聞かせて上げたいんだけど、めちゃくちゃ褒められてるからねイオくん。料理人として。「イオはなんでもつくれるのー。しこうのりょうりにんなのー。でもモンブランだけはヴェダルのかちなの、ヴェダルのモンブランはね、こころがとろけるおあじなの……!」ってヴェダルさんへの賛辞に変わってたな? うーん、今日の夕飯にモンブラン出してあげるか……!


 僕達の会話を聞いていた如月くんが、確認するように顔を上げる。

「夕飯の話をするってことは、今日はここでキャンプってことで大丈夫ですか?」

「おう、そうだな。病人を動かすのもな……」

「良かったです、じゃあ俺テント張っちゃいますね」

 そういえば如月くんのテントは、僕達が買った投げるだけでテントになるやつじゃなくて、ちゃんと組み立てるやつだったっけ。本物のテントよりずっと簡単な簡易組立のものだから、10分もあれば組み立て完了だけれども。

「ダナルさんを中で休ませたいんですよね。熱大分下がったんですけど、まだ微熱は続いてるので、夕飯食べてもらってからもう一回薬飲んでもらいます」

「病人食ならおかゆ……だけど、ダナルはこっちの住人だしな。リゾットやスープのほうがいいか?」

「卵のおじやがいいと思います!」

「それナツが食いたいだけだろ」

「バレたか……!」

 おじやおいしいじゃん。波多野家では、具合悪いときしか作ってもらえなかった特別なお料理なのである。とはいえ、あれは味付けが醤油だからなあ。こっちの世界の人たち、まだ醤油と味噌にはあんまり慣れてなさそうだから、確かにリゾットのほうが無難かな。


 如月くんがちゃちゃっとテントを張っている間に、僕も投げるだけテントを設置しておく。テトは未だにロミちゃんに向かって「ごはんとってもおいしい」を力説していて、今まで食べた中で美味しかった食べ物について色々話をしていた。

 ロミちゃん、困惑してると思うんだけど、うんうんと話を聞いてくれている模様。できるお馬さんである。

「ナツー、ここの焚き火場で火起こしておいてくれ。そろそろ暗くなるぞ」

「了解!」

 イオくんに頼まれたので、キャンプスペースの中央にある焚き火場……なんか焚き火のあとが残っていて、四角に区切ってあるところ……へ向かう。焚き火場って名称がリアルにあるのかはよくわかんないけど、<鑑定>したらそう出てきたのでここは焚き火場なのだ。

「薪、共有の方から出すねー」

「おう。後でまた適当に拾っておくか」

 キャンプ用の薪だけど、これは街で買うととてもお高い。まあそりゃ、植林場を作って街の中で育てた木を切るしかないから、必然的に数が限られるんだろう。<樹魔法>で育成促進する魔法もあるし、ある程度賄えるんだろうけど、どうしても家や家具みたいな生活に必要なものに優先的に使われる。

 ナルバン王国の気温は温暖な方で、寒くなって暖房のために薪を使うのはヨンド、ナナミ、クルムくらいなのだとか。そのなかでも雪が降るほど寒いのはヨンドのみ、つまり薪の需要がほとんどないのだ。そりゃ高くもなろうというもの。

 なお、オーブンの火入れなど料理に使われるのは火属性の魔石を使った着火装置であり、薪ではない。


 なもんで、僕達はセーフエリアでキャンプするときのために、森で良い感じの木の枝とかをある程度拾っておいた。【ドライ】をかければ立派に薪なので。インベントリを圧迫されても困るから、大きめの麻袋をもらって入れておくことで、1つにまとめている。

 というようなことを如月くんに教えつつ、薪を積んで、<火魔法>の【イグニッション】を唱えれば、焚き火の出来上がりである。

「へー、さすがですね。薪なんて頭に浮かびもしなかったなあ」

「如月くんセーフエリアで寝るとき、ランプ使ってたの?」

「はい。でもランプって魔石の減りが早くて、もっといい光源ないのかなと思ってたんですよ。【ライト】でも代用は出来ますけど、あれだと1時間くらいで消えちゃうので、突然消えると焦りますし」

 確かに代用できるものは色々あるんだよねー。木を拾うのが面倒なら別に【ライト】で十分だと思うし。僕達が焚き火するのってただのロマンだしなー。これで料理できるわけでもないしねー。

 でも如月くんは焚き火が気に入ったみたいで、「音が落ち着きますよねー」とか言ってるので、今後焚き火派に転向しちゃうかもだ。そうそう、なんかいいよね焚き火って。


 場を整えたところで、僕は生産でもしようかな。イオくんは料理するだろうし、ダナルさんはテントで寝てて、テトはロミちゃん相手に「くりはすばらしいたべものなのー!」と布教に余念がない。

「如月くん、テーブル持ってる? 夕飯できるまで一緒に生産しない?」

「あ、いいですね。俺も今ならもっと品質の良い頭痛薬を作れると思うんで」

「僕はアクセサリ作りたいんだよねー」

 僕達が普段使っているテーブルセットは、今はイオくんで料理に使っているので、如月くんに聞いてみると小さめのテーブルが出てきた。2人で使うには十分かなってくらいの大きさである。

「調薬セットが結構場所取るんですけど、邪魔だったら言ってください」

 と続けて如月くんがインベントリから取り出したのが、ビーカーとかフラスコとかすり鉢とか、小型のコンロみたいなのまでついた調薬セットというやつ。<鑑定>してみると、これは「下級調薬台」となっている。

「スキルレベルが上がると、調薬台も買い替えないといけないのかな?」

「下取りはやってくれるんですけど、結構なお値段するんですよこれが」

 最初に<調薬>スキルを取ると、初心者用調薬台っていうのがもらえて、発展スキルの<上級調薬>か<自由調薬>を取得すると、下級調薬台にしないと作れない薬のレシピとかが出てきてしまうらしい。つまり、その先の発展スキルを取ると、更にこの上の調薬台が出てくる……ということなのだろう。


 ……僕の彫刻刀、多分これもそうなんだろうなあ。

 妖精類が彫刻しやすくなるっていうちょっといい彫刻刀セット、これ<鑑定>すると下級って出てくるんだ。ゴーラに行ったらお金を稼がねば。

 本サービス開始したら倉庫も借りなきゃいけないわけだし、貯金を頑張ろう!

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