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33日目:密林アトラクション巡り

 ところで秘境って、その存在だけでもものすごいものなんだけどさ。

 その中でも秘境の主が「これぞ!」とプッシュできる名所って、そりゃものすごいのではなかろうか。


「その感想今更か?」

「いやもう本当にこれを目の前にして初めて思い当たったんだけど、僕の語彙力ではすごーいしか言えないんだ……!」

「食事に対する褒め言葉レパートリーを思い出せ」

「食べ物は至高の存在……っ!」


「なーに、内緒話してんのー? 君等も飛んできなよー」

 グランさんが陽気に促すので、改めて、最初に案内された場所をゆっくりと眺めてみた。いや、もう、なんかファンタジー感凄いけど、確かにこれは……!

「めちゃめちゃ楽しそう……!」

「よし、行け。高いところ大好きなナツ向けだ」

「行ってきますー!」

 イオくんに背を押され、僕はそれに駆け寄った。テトが先に楽しんでるんだけど、僕は楽しむ前にちょっとびっくりしちゃったんだよね。何にって? そりゃもうこれだよ。

 超巨大な花!

 その上でぽーんぽーんと飛び跳ねている、僕の家の白猫!

 かわいい!


 まあ簡単に言うと巨大トランポリンっぽいんだよねこの花。マジでここ遊園地じゃん、アトラクションだよこんなの。直径50メートルくらいありそうなでっかい赤い花の、花びらの1枚1枚がそれぞれ弾み具合が違うトランポリンになっているのである。地上から高いところに咲いているので、段になっている葉を登って行くというのがまたアトラクション感がある。

 全員でお昼ごはんを食べた後、自信満々なグランさんの案内で最初にたどり着いたのがここだ。グランさんに遊んでおいでーと言われて、真っ先に飛び込んでいったテトは、自力で飛べるくせにめっちゃ楽しそうに飛び跳ねている。

「ナツさん、そこの葉っぱ階段になってるんで」

「了解! テトめっちゃ飛ぶじゃん……!」

「気をつけないと舌かみますよ、気を付けて」

「はーい!」

 ナツー! たのしいよー!

 にゃっにゃにゃー! と非常に楽しそうなテトさんと一緒に、僕も思いっきり巨大な花の上に飛び込む。おおお、すっごい弾むー! 僕も余裕で2・3メートルぽーんと飛び上がることが出来た。なにこれ超楽しい!

 僕がやってきたことでテトがぴょいんと僕のそばにやってきた。


 このおはな、ほしいのー。

「こんな大きい花、置くところ無いよテトさん……!」

 でもめっちゃ分かる。僕ももらえるものならほしい、置くところ無いけど。如月くんはさっきちょっと弾んでたけど、僕が参加し始めたら端っこの方に寄っていって休憩しているみたいだ。イオくんもようやく階段を登ってきたけど、端っこの方で何回か跳ねたら何か納得したような顔をして跳ねるのをやめてしまった。一緒に飛んでもいいんだよ……?

 ナツー、まんなかのほうがたかいのー、たのしいのー!

「よし真ん中に行こう!」

 わーいっとはしゃぎ倒した僕とテトが満足するまで高く飛んでから、グランさんが「そろそろ次いくよー」と声をかけてくれたので、ハイテンションのままで元の場所まで戻る。結局如月くんもそんなに飛んでないし、僕達ばっかり楽しんでしまった。

「楽しかったー! 僕5メートルくらい飛んでなかった?」

 おそらたのしかったのー! ぽよんぽよんするおはなすてきー!

 ほっくほくで花から降りる僕達を、イオくんがなんか呆れた表情でみているのだが……イオくんももっと飛び跳ねればよいのに。こういうの嫌いじゃないくせにー。

「ナツ、お前が5メートル飛ぶんだぞ? お前の倍近く重いと推測される俺はどのくらい上行くと思う?」

「あっ、重い方が反動が大きいという説が……!」

 ここに来てゲーム内設定体重の話になるとは……! 確かに僕ってかなり軽い設定だもんな、その僕が5メートル……イオくん、10メートルくらい行くのでは? そこまでいくとさすがにちょっと怖いかもしれない。

「そーね、イオが空高く飛んでいくの、見たかったのにー」

 グランさんがちぇっと小さく舌打ちしている。何も知らずに豆粒になるまで飛んでいくイオくん、ちょっと見たかった気もするけど……僕の親友は頭良いので気づいてしまうんだ、ふふん。さすがイオくん賢いな!


「いーか。それより次のところに案内するよー!」

「わーい!」

 わーい!

 もちろん喜んでついていく僕達である。色鮮やかな密林の中を進んでいくと、次にたどり着いたのは崖の上だ。この密林は結構地形が凝ってて、高低差があるんだよね。それで、この崖に至るまでは急な坂道で、その行き止まりに木製の物見台みたいなのが設置されている。

「展望台ですか?」

 と思わず意気込んでしまった僕だけど、テトの頭の上に乗ったグランさんは「んーん、ちがーう!」と即座に反応した。そして、横の簡単な小屋を指さした。

「あーれ。あれを使って、ここからだーっと下まで下るんだよー」

 よく見ると、その指さされた先の小屋にあるのは、ロープで作られた簡単なブランコみたいなものだ。それがいくつも積んである。ここからだーっと下まで……? 僕がぽかんとしている間に、イオくんがぱっと顔を輝かせて叫んだ。

「ターザンか!」

 そして機敏な動きでブランコをすちゃっと手に取った。あ、ちゃんと金具とかついてる。あー、なるほど。この木製の物見台から、ロープが一本、崖下に向かって張ってあるんだ。で、このブランコっぽいのの上部に付いてる金具をロープに引っ掛けて、ブランコに座って、滑ってく感じかあ。

「イオくんの求めてたやつ!」

「密林だぞ、外せんだろ!?」

「すごい、イオさんのテンションめっちゃ上がりましたね……」


 目をキラキラさせたイオくんは、そそくさとブランコをセッティングした。そしてこっちを見る。なんか、こう、「もうやっていいか??」って感じのわくわくの顔をしている……! テトの頭の上で仁王立ちしたグランさんは、ふむっと大きく頷いて、びしっと先を指差す。

「いーね、楽しんじゃってー!」

「よっしゃいくぜ!」

 許しが出た瞬間、イオくんは勢いをつけて空中にブランコを漕ぎ出すのであった。「ひゃっほー!」と珍しく子供っぽい声がドップラー効果で響いて……あ! イオくん忘れてるよ!

「イオくん、ここは『あーああー!』って叫ぶところ……!」

「イオさんそういうお約束知ってるんですかね……?」

 あ、どうだろう。知らない可能性が高いかもしれない。むしろよくターザン知ってたなって感じなんだけど。あー、でもアスレチック系のアトラクションとかでは、こういうロープで下る感じのやつって「ターザン」って呼ばれてるの多いもんな、そっちで知ったのかもだ。うん、そっちのほうがイオくんっぽいな。

「よし、じゃあお約束は俺が果たしましょう。……あーああーーー!」

 イオくんに続いた如月くんが、お約束通りに叫んで滑っていく。如月くん意外とノリ良いよねー。

 ごうっと風を切って崖下へ向かう2人を見送ってから、さて僕も行きますか! えーと、このブランコの金具をロープに引っ掛けて……こうして、っと。


 ナツー、あーああー♪ ってなあにー? じゅもんー?

「テトさん、こういうロープを伝って行く乗り物に乗るときはね、あれを言うのがお約束ってやつなんだよ」

 やくそくーは、まもらないといけないのー。

「テトは良い子だねー! 僕達はイオくんの分まで叫ぼうか!」

 まかせろー!

 うん、良いお返事です。……よく考えるとテト一匹でブランコには乗れないしなあ、どうしよう。えーと、こうなったらテトには一緒に飛んで並走してもらう感じで……競争! 競争しよう!

「テト、イオくんたちのところまで僕と競争しよ! テトは飛んでー!」

 ! まけないのー!

「そんじゃいくよー! せーのっ!」

 ていっと地面を蹴ってスタートした僕と、にゃっ! と翼を広げたテト。ほぼ同時のスタートだ、良い勝負出来そうだぞ。あ、そうだお約束もちゃんとやらなきゃ。

「あーああー!」

 あーああー♪

 僕が叫んだらテトもつられて叫んだので、これもほぼ同時。っていうかテトさん早いな? こちとら重力を味方につけているというのにちょっと抜かれてる……! いやでもこのターザンロープで加速ってどうやって……あ、さっきのトランポリンの花だ、あそこがゴールだ!


 テトのかちー!

「負けたー!」


 ほぼ同時だけど、テトのほうが体半分ほど先に花の上に降り立って、僕はゴール地点でブランコが自動ストップしてぽーんと花の上に投げ出された。なるほど、これがクッションになって安全な着地ができるということか。ぽんぽんはずんだ先にイオくんたちがいて、無事に地面に降り立つ。

「こっちの花はあんまり弾まないねー」

 つまんないのー。もっとうえにいきたいなー。

 空を愛するテトさんにはこっちはお気に召さないようである。僕もどうせなら高く弾むほうが好きかな。


「競争してたのか」

「負けました!」

 かちましたー!

「テトめっちゃ得意げですね」

 ふんすっとドヤ顔しているテトさん、にゃにゃっと語って曰く、「イオおやくそくやぶったらだめなのー」だそうです。そうだね、イオくんだけ叫ばなかったから……って、そんなこと言ったらイオくんがやる気になってしまうではないですか。

「あ、ターザンやるときのお約束は教えておきましたよ」

「如月くん仕事早い!」

 でも大事なことだからGJだ。やっぱターザンロープといったらあれだよ。僕がうんうん頷いている間に、イオくんはもう一回チャレンジチャンスをグランさんに願い出て、OKをもらっていた。

「テト、イオくんを乗せて上まで戻ってあげて。それで、今度はイオくんと競争しておいで」

 むむー! テト、イオにもまけないもんー!

「よし、ナツの敵は俺が取る」

 む、むむむー!!

 テトさん、僕の敵みたいな言われ方に思うところがある様子。でもなんかうまく言葉にできないらしくてくやしそうなお顔である。んにゃー! と僕の方に駆け寄ってきて、僕の肩口にぐりぐり頭を擦り付けた。あだだだだだ、テトさん、あの、押される押される……! 

 ナツのことだいすきだもんー!!

「僕もテト大好きだよ! ほら、普通に競争しておいでー」


 かろうじて転ぶ前にやめてくれたので、やっぱ家のテト賢いなって思います……。

 イオくんはそんな僕達を苦笑しながら見ていた。そして「行くぞテト、高速世界が俺達を待っている……!」と手招き……う、うーん? 確かに高速世界だけれども。

 おんそくのせかいにちかづいてやるのー!

「よし、正々堂々と勝負だ」

「あれおかしいな……? ただのターザンロープがなんか世紀の大決戦みたいな有り様に?」

「イオさんもテトもめっちゃ真顔ですからね……」

 よくわかんないけどイオくんとテトが楽しいならいいか……。とりあえず高速の勝負、果たして勝者はどちらかな?

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ジャングルパーク!って感じで楽しそう!
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