表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
269/337

30日目:生産三昧の午前

 さて、取り出したるは金属の塊。これを、丸にして、三角にして、サイコロにして、プレスして板にして……と繰り返すことしばらく。

 <金属加工>はレベル9に上がり、【カット】というアーツが増えた。

 これがあるのとないのとでは、加工の幅が段違い! って感じのスキルだ。例えば球体を作って半分に【カット】し、半円にしたり。更にそれをカットして円形のプレートを作ったり、長方形をジグザグに切ったり、尖っている板の角を丸くしたり……とにかく、使い方無限にあるやつ。

 使い方も直感的で、指でなぞったところを切るとか、ステータス画面みたいにモニター表示して切る線を指示したりもできる。決まった模様をなぞらなければならない彫刻と違って、かなり楽なのである。

「なにこれ面白い!」

 と夢中になって遊んでいたら、猫っぽいシルエットのプレートも作れたので、これはテトにあげよう。


 ねこだー!

 わーいっと喜んだテトさんは、お目々キラキラで僕を見上げた。

 ナツー、これくびわにつけるー?

「あ、なるほど。首輪の材料にもなるんだね。ゴーラの契約獣屋さんに行って、アップグレードできるか聞いてみようか?」

 しろいのとー、むらさきいろのとー、あおいのがほしいのー。

「僕とテトとイオくんだね! テトは僕達のこと大事に思ってくれてて良い子だねえ、頑張ってみるよ」

 わーい!

 嬉しそうなテトである。かわいい。テトの卵を孵すとき、イオくんもちゃんと魔力を分けてあげていたので、テトの中では僕の次にイオくんの優先順位が高いのである。そうでなくても美味しいもの作る料理人さんだから、リスペクトを感じるのであろう。


 その料理人イオくんだけど、土鍋でお米を炊いてくれている。この匂いが良いんだよねえ、お腹すいたな……。片手間のようにちゃちゃちゃっと作ってるのはどう見てもマヨネーズである。マヨネーズって手作りできるんだあ、と感心していると、視線に気づいたイオくんが「ほれ」と小皿を差し出してきた。

「……イオくん、僕は決して味見したかったわけではなくてですね」

「でも食うだろ?」

「食べますが!」

 スプーン1杯分のマヨネーズと切ったきゅうりを差し出されたら、そりゃ食べますが! 市販のマヨネーズより若干塩味強めに感じますイオくん、もう少し甘くてもよろしいかと!

「ナツの味覚に合わせると甘くなるんだよなあ。ポテサラにしてやるから」

「やったー! 僕もテトも大好きなポテサラ!」

 ぽてさらー!

 ポテサラと聞いてテトもにゃあんと期待の表情である。テトさんはお芋の甘みが好きなので、ポテサラも大好物なのだ。さらにきゅうりとかにんじんとか入ると、食感の違いが面白くてとても良い。

「ポテサラこの前テトが食ったのでラストだったから作り置きしとかねえと」

 ぽてさら……もうないの……?

「しょんぼりすんな。これから作ってやるから」

 ほんとー? またたべられるー?

「次はコーン入れてやるから」

 あまいのだー。


 ねえテトとイオくん普通に会話してると思うんだけど、イオくん<キャットフレンドリー>ってスキル持ってない? ないんだ……。絶対潜在スキルとして持っていると思う。イオくんはスキル一覧に載ってないスキルたくさん持ってる人だからね……。

 テトさんは大好きなポテサラに甘いコーンまで入ると聞いて大満足のお顔だ。ありがとー! とイオくんにまとわりついてすりすりしている。

「あとテトのリクエストのさつまいもは、蒸しパンにした」

「定番だ!」

「さつまいもゴロゴロ入ってるのが美味い」

「食べ応えあるよね!」

 サイコロのように四角に切ったさつまいもが、ふんわり蒸しパンの中にゴロゴロ入ってるのでお腹に結構たまるのだ。田舎のおばあちゃんが作ってくれた思い出が蘇るなあ。

 ナツすきなやつー?

「大好き! ふわふわとほくほくの素敵なハーモニーなので!」

 それはすてき……!

 テトさんは美味しいさつまいも蒸しパンを想像してうっとりしている。お昼に食べさせていただけるそうです、僕の期待も高まるね。


「で、<料理>スキルが14まで上がったから、新しいアーツが出てな。【撹拌】ってやつ」

「かくはん……。あ、混ぜるやつか」

「そうそう。お陰でマヨネーズ作りやすくなった」

 イオくんも新しいアーツを覚えて使ってみたかったらしい。僕と同じことしてるので親しみを覚えますねこれは。というかマヨネーズって手作りする人いるんだな、材料何なんだろう、これ。卵と酢は使うと思うんだけど他に何使うの? ……油と塩? 意外と身近な材料でできるんだね。

「結構混ぜるの大変なんだよな。アーツ出てくれてよかった」

「そうなんだ……」

「ナツは? さっきからなんか楽しそうに作ってたけど」

「あ、僕も新しいアーツ出たんだよー」

 じゃーん! と猫の形の金属プレートを見せてみると、イオくんも興味深そうに「へえ」と声を上げた。金属の薄さを確認して、

「これもっと厚み出せるのか?」

 と質問が来る。

「出せるよ。結構感覚で加工できるけど、正確に何ミリとか図ってやってるわけじゃないから同じものの量産は無理かな。【コピー】アーツこっちにも欲しい」

「んー、金属板だし、このプレートにお守りみたいに模様を<彫刻>できないのか?」

「あ、なるほど……!」

 それはできるかも。お守りの規定サイズ内だし、長方形じゃないからちょっと小さく掘らないとだけど、簡単な<魔術式>なら。

「でもお守りって基本使い捨てだしなあ。ちょっともったいない」

「それはそうか」


 効果が消えないようなものってなると、やっぱりアクセサリを作るしかないよね。<金属加工>のレベルMAXまではあとちょっとだ。

 あれ、そう言えば<高度魔術式>がなんか拾ってる。火山とイチヤでなにか拾えるのがあったのかな? と思ってみてみると……よくわかんないのが増えてるな。「防衛」と「気配消し」……どっちも今の僕では作れないやつだ。

「イオくん、なんか変な護符の魔術式拾ってる」

「どれ?」

 とイオくんに見せつつ、説明を読んでみると……。「防衛」は1度だけ敵の致命的な攻撃を防ぐ護符で、「気配消し」は一定期間魔物に見つからなくなる護符だった。冒険者用って感じがする。

「どこで拾ったんだろう、こんなの持ってるのって冒険者くらいしか……あ」

「サームの両親のところかもな」

 イオくんも言ってくれたけど、多分それだ。何も持たずに正道を外れるわけないし、少しでも生存率を上げるために色々用意していったんだろう。それが巡り巡って僕達のところにも恩恵をもたらしてくれたということになる……ありがとうございます、サームくんのご両親。

「多分、「結界のお守り」の延長上にあるのが「防衛」だろうな。お守りは装備用、お札が家屋設置用で、護符は種類によって様々って感じか」

「住人さんたちにお守りを作れるって言うと、護符を作れるんですね! って返されることが多いから、全部まとめて護符で、その中でもお守りとお札って種類があるって感じなのかな」

「そうかもな」


 ちなみに、前は作れない護符の説明文は読めなかったんだけど、<鑑定>レベルが上がったことによって読めるようになっている。<鑑定>さんは積極的にレベルを上げておきたいスキルだね。

「他に拾ってたのは、「落下ダメージ軽減のお守り」と、武器に使える「攻撃力上昇のお守り」だけど……」

「攻撃力上昇くれ」

「待ってイオくん。このお守りデメリットもあって、耐久力上限を50減らすんだよ。その剣には使わないほうがいいんじゃないかな」

「ああ、そういうのか……」

 多分これは、量産されたそんなに質の良くない剣の攻撃力を上げるために使われたお守りだと思う。良い武器に使うものではないし、多少の攻撃力UPより耐久値のほうが絶対に大事だ。

「1回は作ってみるけど、お守りの方はどっちも使わないかなあ。ギルドに売っちゃおう」

「はやく護符作れるようになってくれ」

「それは地道に頑張る……!」

 今もグレーアウトしてて作れそうにない護符だけど、エクラさんにお願いされている「品質向上」と「成長速度UP」の護符は絶対に作りたい。とは言え僕は彫刻ばっかりやってると飽きちゃうので、地道にやります。

 それに、今日の目標は<金属加工>のレベルMAXだから……! お守りはまた今度。


 時間はまだ余裕があるので、僕は自分の作業テーブルに戻ってまた<金属加工>を繰り返してスキルレベル上げに勤しむ。テトさんはポテサラ作ってもらえるのでご機嫌で僕の膝の上でにっこにこで歌っている。

 ぽーてさーらさーん♪

 さん付けするほど気に入っているらしい。ポテサラさんは美味しいからね、しょうがないね。曲線の【カット】はちょっと難しいけど、喜んでいるテトが微笑ましいので、さらに猫シルエットを量産しようかな。

 そんな感じで集中して猫型金属をたくさん作っていると、1時間後くらいにようやく<金属加工>がレベル10になったのであった。

「よし!」

 新しくアーツ【自由形成】を覚え、発展スキルとして<材質加工><細工>を取得可能になった。うーん、これは悩ましいな……!

 <材質加工>は言葉の通り、表面の質感とか色とか強度とか、加工した金属に様々な付加価値をつけていくスキルだ。当然、これで加工した金属は<鍛冶>には使えない。でも金属の輝きを増すとか、逆にくすんだ色にするとかもできるし、<細工>を取るなら合わせて取っておきたいスキルなんだよね。

 当然<細工>は取る。こっちは【アクセサリ合成】というアーツがレベル1から使えるんだけど、これを使うと材料を並べて合成するだけでアクセサリが作れるのである。この合成で作れるアイテムの効果は素材によって様々に変わる。あと<細工>のレベルが上がるほどよい効果がつきやすいとか色々あるらしい。


「うーん、<金属加工>は統合されないからそのまま残るし、<材質加工>が迷うなあ……!」

 手触りとか光沢とか、そういう細かいところまでこだわって作るかっていうと……僕は結構面倒くさがりだから、微妙なところなんだけど……。でも色変えとかできるってなると欲しいよねー。

 ナツー、どしたのー?

「テトさん、新しいスキルを取ろうか取らないかで迷ってます」

 んー、むずかしいもんだいなのー。でも、まようならとったほうがよいとおもうのー。

「うむむ。やっぱりそうだよねー」

 うん。だよね、迷ったらとっちゃおう!

 幸い、すごくSPを消費しそうなスキルはしばらくこないと思うし、今のSPは30ちょいある。SP5を費やしましょう。そうと決めたら、取得!

 えいやっと<材質加工>を取得してみると、【光度調整】のアーツが開放された。これは素材になる金属をピッカピカに磨くか、くすんだ感じにするかっていう調整が可能になる。試しに今さっき作ったばかりの黒っぽい銀色の猫プレートを……ピカピカにしてみようかな?


「【光度調整】……あ、なるほどこういう感じか」

 アーツを使うと視界に目盛りというか、HPバーみたいなのが表示されて、そのバーを上げるとキラッキラに、下げると黒ずんで行く感じだった。もともとの金属の色合いはある程度保持されるけど、最高光度まであげちゃうと眩しいくらいの白銀に、最低光度まで下げると真っ黒に見える。

「うーん、テト用にキラキラしたのがほしいな……」

 きらきらー?

「ちょっとまってねー。えっと、光度落として……」

 通常の状態が50とすると、最高が100、最低が0。100まであげるとちょっと太陽に反射して眩しそうなので、だんだん光度を下げていって……。大体77くらいが適度に輝いてて目にも優しい感じかな?

「よし、できたよー」

 すてきー!

 キラキラの猫プレートをあげると、テトがすごく喜んでくれたので満足。さて、そうすると次は<細工>の【アイテム合成】でアクセサリを作ってみようか。記念すべき最初のアイテムだけど、まあ<細工>レベルも低いし大したものはできないだろうから、適当な材料で……。


 サンガで買ってあった革紐、小さい500円玉くらいの金属プレートを猫の形にして、ちょっとだけ【光度調整】で……60くらいにあげるか。この他に何を使おうかな?

 魔物素材とかにも使えそうなのがあるけど……使わない素材全部売っぱらってたからあんまり種類がないな。かといってこの前使った魔法石は微妙な効果ばっかりだし……。うーん、あ、魔石も使えるんだ。火の魔石はイオくんの魔導コンロに使えるから、水の魔石1つ使ってみてもいいかな?

「イオくーん、水の魔石1個使ってもいい?」

「今使い道ないからいいぞ」

「ありがとー!」

 よし、ではこれらを使って……いざ、【アイテム合成】!

 ぱっと素材が光って、その光が一つの光の玉になり、素材を完全に覆い隠す。これはMP使わないのか……と思ったらこの段階で注ぐMPを要求された。最低50、最高200までか。それなら200注ぎ込んで、っと。

 使うMPを指定すると、光の塊がぱあっと虹色になって、すっと光が引いていく。光っていた場所に残されていたのは……。


「ループタイだ」

 紐が交差するところの留め具が猫プレートになってて、水の魔石はループタイの紐部分の両端に、分割されて玉になっている。わりとおしゃれでは? と思ったけど、猫好きにしか装着できない奴かもしれない。効果は……猫型の獣からの好感度が少し上がる。び、微妙……!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
アサギくん大歓喜のアクセ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ