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3日目:ビーフシチューはいつでも美味しい



 小麦畑の鷹亭は、ギルド前通り西側で一番プレイヤーに人気の店らしい。


 ギルドを出る時、キガラさんのところで木材を買っていた3人組のプレイヤーさんと再会したから、軽く情報交換したんだよね。イオくんは対プレイヤー塩対応だから僕が。

「地図の空白地埋まりました?」

 って聞いてみたら、あんまり埋まってないんですーって言いつつもちょっと見せてくれた。

 僕たちは結構いろんな道開けたけど、彼らは僕らの半分くらいしか行けてないっぽい。僕の地図見せたら褒められたのでちょっとドヤっておく。ふふん。


「もうニムにたどり着いた人が早速鍛冶屋さんに弟子入りしたらしいですよ」

「イチヤの次の行き先はニムが一番人気みたいです」

「そりゃ武器大事だし!」

「職人の街ってだけあって色々、生産系のスキルも覚えるみたいです」

「早い人はもう首都ナナミに向けて出発したとか」

「あ、イチヤの南で集落を見つけた人たちの話聞きました? あれってイベント扱いで、フラグが個別管理だから、条件が合えば私たちも見つけられるかもしれないですよ!」


 この子たちめっちゃ掲示板見てるな! って感じの話を聞いて、そのついでに「プレイヤーに人気のレストラン知ってたら教えて?」と聞いてみたら教えてもらったのがここである。

「小麦畑の鷹亭はビーフシチューがマジでめっっっちゃ美味いんでおすすめです!」

「とにかくビーフシチュー! あれに勝るものなし!」

 という大プッシュがあったので、僕もイオくんもすっかりビーフシチュー食べる気になってしまったのだ。

 僕たちも一押しの陽だまりの猫亭を教えたかったんだけど、ショップカードってプレイヤーに渡せるのかな? と思っていたらショップカード一覧から「複製」が使えました……。

 知らなかった!


「おおお!?これまだ行ったことない通りです!」

「ショップカード複製できるんかい!?」

「これ掲示板に書いてもいいですか?」

「いいよー。1枚につき1回しか複製はできないみたい。でもおかげで幅が広がるね」

 陽だまりの猫亭はちょっと高級路線だけどランチはお得だよと伝えると、彼らは喜んで僕らの知らない通りのショップから1枚ショップカードを回してくれた。これぞ等価交換ってやつだね!


 掲示板ヘビーユーザーらしき3人組が言うには、このゲームの掲示板はもはやどこへ行っても雑談ばっかりで、有用な情報はスキルの使い勝手を書くスレッドくらいしかないんだそうだ。

 同じクエストがそもそも起こらないし、街の空白地へ行くにはゲーム内で何らかのフラグが必要だし、人によって店で売っているものすらランダムに変わるから、これほど攻略情報の意味がないゲームも珍しいとのこと。

 出会える住人も違うなら、住人について盛り上がることもできないし、完全にソロゲーのプレイ感。だがそれが良い、と結構好評でもあるとか。


 3人にお礼を言って別れ、もらったショップカードを確認しつつ歩き出す。

「お、いいじゃん。ここ冒険靴の店だ」

「おお!」

 貰ったショップカードはパーティー共有になるから、僕がもらったカードはイオくんも見られる。僕たちが装備品をそろえたい話をしてたから、合うお店を選んでくれたんだろう。人の優しさを感じる……!

 冒険靴「ラン・ハイ」。ギルド前から南へ延びるレンガ道通りから西へ入るっぽい。これは明日行ってみたいな。

「ナツがこの前言ってたショップカードのレアリティの話だけど、あれ多分当たってるぞ。ノーマルカードは1回ずつ複製できるけど、レアカードは複製できない」

「レアカードって……イオくん、カードゲームじゃないんだから。そっかー、でもそうだよね。きらきらしてるカードはソルーダさんとイライザさんが僕たちを信頼して教えてくれたわけだから」

 多分、星級の人がくれるカードだからレアって感じでもないと思うんだよなあ。住人さんがこの店はとっておきですよ、って思っている良いお店がレアカードになると思うんだ。多分だけど。


 というわけでやってきました小麦畑の鷹亭。

 ディナータイムの19時半、結構にぎわっているみたいだけど、待たされることもなく店内へ。店の奥の方の隅っこの席に座ることができた。注文はもちろんビーフシチューだ。席に着くと同時にウエイターさんを捕まえてビーフシチューセットを即注文した。

 セットだと焼き立てパンとサラダがついて、1,000G!パンのお替りは1個100Gだそうなので、腹減り具合によっては要検討しよう。


「んんんんとろける舌ざわり……! この肉の柔らかさ極上では……!?」

「美味いな」

「イオくん食レポ向いてないと思う!」

 なんて会話をしながらお腹を満たし、食後の珈琲タイムに入ったので、明日について軽く打ち合わせを開始。


「とりあえず今日の食後は、いつも通り生産して睡眠でいいかな?」

「おう。<調理>レベル今7だから経験値稼ぎたい。今日は味噌汁作るつもり。<調理>スキル早くカンストさせて発展スキル出したいんだよな」

「いいね! 僕も<彫刻>もう少しでレベルMAXだから、そしたらお札が作れると思うんだよね。お守りよりお札の方が金策には良さそうだから、売れるもの作れたら資金の足しにしよう」

「ん。じゃあ、明日の予定だな」

「えーと、10時以降にトスカさんの工房へ行くのは決定。あと靴屋さん、ラン・ハイだっけ? 可能なら冒険服も変えたいんだよね、効果とかはなくても良い」

「工房が武具通りのギルド前通り挟んで南側、靴屋がレンガ道通りから西だったよな。靴屋で服屋について聞いてみるか」

「そうしよう。起きる時間遅くする? それともいつも通り7時半でいい?」

「いつも通りで。朝は、南の経験値効率のいい敵っていうのちょっと行ってみるか。ロックタートルだっけ? 魔法がメインになるからナツが疲れそうだけど」

「問題ないよ! まだレベル低い魔法上げたいんだよね。ロックってことは土属性だろうから、えーと、風と光・闇メインに上げたい」

「俺も盾術メインに上げる。何かしら素材が売れればまた旅資金に入れられるだろうし、キャンプ用品と他の装備が整い次第、教会行ってサームに旅立ちの挨拶って感じだな」

「そうだねー。あ、イオくん。欲しい物リストメモしてあるけど、バーベキューセットは却下です」

「えっ」

「魔導コンロとテーブルセットは許可」

「バーベキュー……」

「却下」

 却下ったら却下。

 2人旅でバーベキューはしないでしょ。バーベキューって普通、大人数でわいわいやるものじゃん。リアルだと従兄弟が集まったときとかしかやったことないよ。

 イオくんはしばらくバーベキューセットのプレゼンをしてくれたけど、そんなことに心動かされる僕ではないのだ。お金のないゲーム序盤に買うものじゃないと思う。という頑なな姿勢を見せていたら、イオくんも「今じゃないな」って思ったらしく諦めてくれました。

 勝った。


明日やること

・南のロックタートルを狩りに行く

・10時以降、トスカさんの杖工房

・教えてもらった靴のお店に行く!

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