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23日目:即席、お札屋さん

 無事にお昼ごはんも食べて満足したので、僕とイオくんはレベルアップに伴うスキルの確認に入る。

 テトは僕の膝の上に顎を乗せてごろごろしている。なんか、もうホームには戻らないぞ! という強い意思を感じるテトさんである。テトは僕達と一緒に行動するのが好きだから、ホームで1人になるのが嫌いなんだよね。前にサンガで会った美月さんとフレンドメッセージやり取りしたとき聞いたんだけど、美月さんのところの契約獣・メグは、夜とか美月さんが戦闘に行くときは自主的にホームに戻るらしい。

 性格の違いが出るねえ。

 テトは基本的に構ってほしいタイプだからなあ。

 

「職業レベルが上がったから、またPPも増えて一安心」

「ナツは物理防御20にしとけよ」

「それはまた後ほど……!」

 だってせっかく2増えたのに、またたく間に0にしたくないよ。それよりもスキル、スキルを取得したいんだよ今は!

「SP溜まったから<潜伏>と<認識阻害>を取って<隠伏>にする!」

「あ、それは是非やってくれ。ナツの安全性が上がる」

「ラジャ!」

 SP10を消費して、スキルを取得! そして速やかに統合して<隠伏>へ。これで今後も安心して戦えるでしょう!

「イオくんは? スキルなにか取る?」

「<被回復量増(小)>がMAXになったから、<被回復量増(中)>をまず取る。俺はそこで一回ストップだな。<ロックオン>がもう少しでレベル20になるから、<ヘイト変換>っていうSP10の固定スキルが出る。変換先のパーティーメンバーを指定すると、その相手に向かうヘイトを半分俺に向けられるっていう有能スキルなんだが」

「僕がガンガン攻撃できるようになるやつ……?」

「そういうこと」

 発展スキルは、スキルによってレベル上限違うんだけど、<ロックオン>はレベル30でカンスト。それ以降の発展スキルはない。ヘイトを扱うスキルは他にもあるんだけど、<ロックオン>が一番使い勝手が良いし、ずっと使えると思う……と、イオくん談。実際便利だもんなあ。


 僕の方は<上級水魔法>がレベル5になったので、新しいアーツを覚えている。【アンチウォーター】というのがそれ。水を弾く魔法で、今後雨に降られてもこれがあれば濡れずに行動できるらしい。水魔法を使ってくる敵を相手にするときは、水魔法の威力を軽減してくれる効果もあるとのこと。

 ハニーラビット狩りが捗るかもしれない。ありがたいね!

「午後なにするー?」

「んー、そうだな。テトが退屈してるし、なんか作るか?」

 イオくんの回答に、耳をぴんっ! と立てたテトさん。

 テトもおしごとー!

「テトもお仕事したいって」

「んー、一旦ギルド予定地行ってみるか。レッカがいたら手伝う事あるか聞いてみよう」

「そうしよっか。テト、お仕事あったら一緒にやろうねー」

 わーい!

 大喜びのテトさんは、しゃきっとした顔で僕の膝の上からどいた。わくわくの表情で僕達をじっと見つめつつおすわり。ここでじらしたら拗ねちゃうので、僕達も急いでテーブルセットを片付ける。

 テトやる気だから、なにかお手伝いすることがあればいいなー。


 というわけで、ハクトくんたちにダンジョンの報告を軽くしてから、僕達は揃ってギルド予定地へ向かう。尻尾をぴーんと立てたご機嫌なテトさんは、「おーしーごっとー♪」とお仕事の歌を歌い出した。歩いている間も僕とイオくんに交互にすり寄るのを忘れない。

 首輪の効果に、良い香りで契約獣の機嫌を保つ、ってのが追加されてたはずだけど、テトの側に寄るとお花の良い香りがふわりと広がってとってもメルヘンなんだよね。ツバキちゃんたちがテトに抱きつくのも、その香り効果な気がしている。

「レッカに声かけてくる」

「お願いします!」

 おねがーい!

 ギルド予定地にたどり着くと、すでに土台の工事に取り掛かっている大工さんたちがいた。広間になる予定のところは地ならしされていて、石や草をどけた状態にしてある。アサギくんはここに石を敷き詰めたいって言ってたけど、どこから持ってくるんだろう。トラベラーが集めなきゃいけないやつかも?

 イオくんがささっとレッカさんに話しかけに向かったので、僕とテトは一旦待機。

 そう言えばハニーラビットのお肉、差し入れするって言ってたのにアサギくんに渡すの忘れてたな。明日ログインしたら忘れずに渡しておかないと。今38個あるから……8個くらい差し入れすれば十分でしょう。


 と、そんなことを考えていたら、レッカさんがイオくんと一緒にやってきた。「よう」と片手を上げて挨拶をしてくれたレッカさんが、続けて口を開く。

「ナツ、札を作れるなら頼みたい。家屋安全のお札と保全のお札、できれば防火のお札もあるとありがたいんだが」

「お札? ギルドに設置するんですか?」

「ああ。この里には魔法士がいないからな、護符も魔法符も作れるやつがいないんだよ。……あ、代金は物々交換になるが、それでもよければ」

「物々交換」

 食材とか……? と思わずイオくんを見ると、イオくんはうむ、と大きく頷く。

「この里、芋類の他には白菜が豊富だそうだ」

「よし、作りましょう!」

 鍋! 鍋には白菜が必要! 豚肉と合わせてうま煮も良いね!

 そうと決まれば、またテーブルセットを出して作業させてもらおう。今なら<上級彫刻>のレベルも上がったから少し良い品質のものが作れるかもしれないし……あ、テトさんのお仕事? なにかあるかなイオくん。……あ、うーん。それじゃあ、看板猫やってもらいましょう。

「テト、僕お札作るから、隣で応援してくれるー?」

 わかったー!

 にゃうん! と気合の入った鳴き声を上げて、テトは僕の隣にピッとお座りした。きらきらとした眼差しで僕の手元を見つめるテトに、カッコ悪いところは見せられまい。頑張って失敗しないようにしなきゃ。


 そんなわけで、その場でお札を作成したんだけど……。

 なんか、作ってる間に住人さんたちが続々仕事を見に来ましてですね……。

「防火のお札、家にも1枚作ってもらえるかしら。うちの人が作ったカゴでどう?」

「無病息災のお札があれば是非ほしいな。竹細工ならあるんだが」

「お守りもあるのか? 道迷いのお守りを融通してもらえないだろうか、なにか家から持ってくるから」

 という感じで、次々と依頼が舞い込んできてしまったのである。

「ちょ、ちょっと待って! 作れるけど一気には無理だよ、並んで!」

 レッカさんに渡すお守りは、とりあえず出来上がったけど、流石にこんなお店みたいになるのは予想外。あわあわしていたらイオくんがすっと現れて瞬く間に場を仕切ってくれた。

「よし、順番に並べ。MPを回復するものを持ってる奴いるか? 護符を作るのにはMPを使うんだ」

「あ、俺が。魔力薬なら5つくらい出せる」

 イオくんの呼びかけに、はいっと挙手してくれたのは……初日にちらっと会ったイナバさん、だったっけ? アサギくんと雪乃さんと仲良しだった人だ。

「魔力薬? 見せてもらえるか」

 イオくんがそう言って薬を見せてもらっているけど、僕も見たい。見せて見せて、と身を乗り出すと、隣でテトもにょーんと伸びてイオくんの手元を覗き込んだ。


 ポーション、ではないね。粉薬かな?

 薄い紙に包まれた、昔ながらの粉薬って感じ。えーと、<鑑定>してみると……。

 マギプランツと薬草から調合できる、鬼人伝統の薬。ポーションは100とか200とかで固定値の回復だけど、魔法薬は割合の回復らしい。品質★1で魔力の10%、★2で20%って感じで回復量が増えていく。MPやHPが少ない場合はポーションのほうが使えるけど、多くなればなるほど割合回復のほうが回復量が増える……はず。

 イナバさんは上級薬師さんだそうで、こういった粉薬の調合をしているらしい。差し出された魔法薬も、品質★5の良いものだった。

「これ1つで半分回復するってことだよね」

「ナツ今MPいくつだ?」

「470!」

 この半分だと、235は回復するはず。今だとポーション★3のほうが回復量多いけど、これMPが1000あれば500回復するわけだから……うん、成長すればするほどお得になるやつだ。今使うのちょっともったいないな。


「これは鬼人の里の薬なんだな。もらっていいのか?」

 一応イオくんが確認したけど、イナバさんは「構わないよ」とのこと。

「別に隠しているものでもないし。戦時中はサンガやゴーラにも売っていたはずだ」

「それなら大丈夫か。じゃあ、イナバは何がほしいんだ?」

「無病息災のお札を頼む」

「ナツ大丈夫か?」

「品質★3ならすぐ出せるよ」

「是非頼む!」

 無病息災のお札は、その家に住んでいる人が病気にかからないお札だったっけ。怪我は防ぎようがないけど、この世界だと病気はこういうもので防げるんだから便利だな。

 ナツー、がんばれー♪

 【コピー】で作ろうと構えたところ、テトからの応援が入りました。ありがとうありがとう。


 そんな感じで、主に人気なのは無病息災の御札と防火のお札、保全のお札の3種類だったかな。家屋安全のお札がその次くらい。

 希望が多かった道迷いのお守りだけど、これはスペルシア教会が誘致されてからのほうがいいんじゃないかな? と説得して一旦保留にしてもらった。僕の作ったお守りを使って、家出してサンガに無断で行っちゃう人が出たら申し訳ないんだよね。

 住人さんたちも使節団がサンガに行ってることは知ってるみたいだったんだけど、スペルシア教会を誘致しようとしていることまでは知らない人が多くて、もう予定地もあると知って驚いていた。

「教会のお守りを使うほうがいいですよ、僕のだと品質低いから」

 というと、身の安全のためにはそのほうがいいか、と考え直してくれる人が多くて助かった。どうしてもサンガに行きたい! って人もいたんだけどね。そういう人にはイオくんが気を利かせてくれて、村長さんがいいって言ったら交換する、と話を付けてくれた。さすがイオくんである。

 いらっしゃいなのー。

 と看板猫をしてくれるテトさんも、恐る恐る撫でてくれる人が増え始めてご満悦だ。構ってもらえないと拗ねるけど、構ってくれる人がいるならそれだけで満足のテトさんなのだ。

 ばたばたと色々作って、交換してるものの整理とかはイオくんにお任せしてるので、何をもらったのか全然把握してないけど、イオくんも生き生きと交渉してるからなんかいいものもらってることでしょう……!


「テトー! 預けてるMPポーション頂戴!」

 いいよー!

 テトの気に入る白くてきらきらしてるものも、なんかもらえてたらいいね。後でイオくんに確認しなきゃだ!

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