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23日目:ダンジョンチャレンジをしてみよう!

 さて、村長さんを連れて2度目のダンジョンの前。説明ボードをじっくりと見つめた村長さんは、ほうっと大きな息を吐く。

「人生何があるかわからんと思っておったが、流石にここ数日でいろいろと起こりすぎじゃのぅ……」

 確かに、里にとっては劇的な変化だよねえ。アサギくんたちが力強く引っ張ってくれたおかげってことかな!

「それで、どうだ? この辺は整備できそうか?」

「幸い、隣りにあった母屋が取り壊されていて場所があるからの。右隣の家も空き家じゃし、教会の誘致には問題がなかろうよ。あとは全体の計画次第じゃ」

 村長さんの許可は取れそうだから、アサギくんの都市計画次第ってことかな。ところで……。

 むー。

 とちょっと離れたところから唸っているテトさんはどうしたの? と聞いてみたところ、テトはダンジョンの入口があるところには入れないから、ご不満だそうだ。さっきは子どもたちのところに居てもらったから、わからなかったんだけど……。

「契約獣はここは入れないんだねえ」

「戦闘用じゃないからだろ。テト、一回ナツのブローチ入っとけ」

 おーぼーなのー! ナツといっしょがいいのにー!

 にゃーっ! と抗議しつつ、見えない壁をてしてし……ばしばし? しているお怒りのテトさんである。


「ダンジョンは絶対戦うからねえ。テト、一回ホームに戻ろう? ダンジョンから帰ってきたらお昼ごはんだよ」

 ごはん……。

「テトの大好きなマロングラッセ一個出そうか?」

 マロングラッセー!

 一瞬で機嫌を直したテトは、栗の歌を歌いながらホームへ戻っていった。家のテト、素直ですごく良いと思う。守らねばこの猫を。

「よし、じゃあ俺とナツで一回チャレンジしてこよう」

「うむ、このあたりは広い場所があるからのう、テントがあったら万が一に備えて張っておくのが良いじゃろう」

「あ、なるほど」

 村長さんのアドバイス、的確だなあ。つまりこの待合スペースにリスポーン地点を作っておくってことか。里の中にはまだギルドがないから、死に戻る場所が最後に睡眠を取ったセーフゾーンとかになっちゃうんだ。

 トラベラーズギルドができれば、そこで復活できるからテントを設置する必要はなくなるけど、それまでは一応僕達もテントをここに設置しておこう。……と僕が考えている間にイオくんがぽんっと投げるだけのテントを設置してくれていた。早いよイオくん。すぐ行動できてえらい!

「では、出入り口は立入禁止にしておくので、がんばってくるんじゃぞ」

「はーい、行ってきます!」

「行ってくる」

 見送る村長さんに手を振って、それでは、ダンジョンへGO!




 一瞬の浮遊感を感じた後、足の裏に地面が形成されていくような感覚がある。

 室内の凪いだ空気が一転して、ぶわっと風が駆け抜けた。

「お、すげえ」

 と隣のイオくんが言うので、僕も目を開けてみる。と、そこにあったのは明らかに洞窟だった。それにしては暗くないなと思ったら、ランダム配置された水晶っぽい宝石が淡く光っているからだった。淡い空色のクリスタル、<鑑定>してみるとライトストーンというそのまんまのネーミングで、残念ながら<採掘>スキルがないとゲットできないらしい。<採掘>しないと詳細が見れない仕様だ。

「イオくん、これ<採掘>できる?」

「お、これの出番か」

 イオくんがインベントリから取り出したツルハシは、イチヤで活躍して以来の登場だね。イオくんが難なくライトストーンを<採掘>するところをわくわくしながら見ていると、「テトと同じなんだよなあ」とイオくんが呟く。

「ん? 何が?」

「いや、テトもナツも、なんで作業中の手元真剣に見てるんだ。微妙に緊張する」

「職人の手作業は芸術なので」

「いや職人じゃねえんだわ」

 ぼやきながらイオくんが差し出したライトストーン。受け取って<鑑定>してみると……ふむふむ。アクセサリや錬金術に使われる素材で、<雷魔法><氷魔法>と相性が良い、と……。武器の強化には使えないらしいから、僕が<細工>取ったら使わせてもらおうかな。

「光ってるのに<光魔法>じゃないんだ……?」

「雷も光るだろうが」

 的確なツッコミが入りました。それはそう。


 <識別感知>を使いながら洞窟内を進んでみると、この洞窟は基本的に一本道のようだった。両側に部屋のようなものがいくつかあって、その中には魔物の気配がある。

「イビルドッグチーフレベル12いる」

「げ」

「俺達のレベルなら勝てる相手ってことか……」

 イビルドッグのチーフには、イチヤのレベル上げで大変お世話になった。あのときのチーフはレベル10で、僕達のプレイヤーレベルは……10ちょっと超えたくらいだったかな? 11か12だった気がする。めちゃくちゃ苦戦したんだよね、あのとき。

 チーフは1レベル上がるとステータスがかなり上がるので、レベル9とレベル10ではかなり違った。ということは、レベル12になったチーフはかなり強いはず……! 僕たちのプレイヤーレベルが16まで上がってるのを加味したとしても、苦戦を強いられそうな予感がする。

「部屋に入らないと戦闘にならないっぽいな。先に一本道の先見てくるか」

「賛成! どこに宝箱が出るのか知りたい!」

 というわけで、一旦まっすぐに進んでどこに到達するのか確認する。左右に3つずつ部屋を素通りしたところで、ちょっと広い円形の広場に出た。そして、その中央に意味深な球体が光り輝いている……。

「ここから帰るっぽいな」

「うーん、宝箱見なかったね? 敵を倒さないと出てこないタイプかも」

「やるか、チーフを」

「チーフだけでもなかったよ……!」


 通り過ぎた部屋は、左右に3つずつ。右側の部屋は、イビルドッグチーフレベル12が居た部屋と、鳥系の魔物が5・6匹居た部屋、そしてでかいシカっぽい魔物レベル13が鎮座している部屋。多分このシカは威圧感からしてチーフと同等の力量と見た。

 魔物を<鑑定>すると、<上級鑑定>のレベル10から、魔物の進化度が見られるようになる。名前の横に★が1つついていたらその魔物は1進化していて、★2つなら2進化、と増えていく。これは基本スキルが発展スキルに転じるような感じで、★が多いほど種族として強いのだ。★がついていない魔物はそんなに強くなくて倒しやすいのが多い。格上相手でも余裕で勝てたりするのが★なしだ。

 例えばイビルドッグは★がついていない魔物だけど、イビルドッグチーフは★が1つついている。イビルドッグレベル5~6くらいの強さがイコールでチーフレベル1の強さ、って感じ。だから、レベル1でも★が2つとか3つとかついていたらやばい。僕達では相手にならない可能性がある。

 幸い、ここでは★1つのチーフとシカの魔物以外、全部★なしの魔物だ。


 左側の部屋はラビット系の魔物が5匹くらい、犬系の魔物が5匹くらい、そして猫系の魔物が……5匹くらい……っ!

「猫戦いづらい!!」

「だよな……」

 イオくんも若干難しい顔である。猫はさー、もう身内にテトがいるから殴り辛いんだよ! 幸い僕達はここまでの道程で猫の魔物には遭遇してこなかったわけだけど、ここに来て初対面だ。ちょっとここは最後にしよう。

「チーフ! ある程度パターン分かってるチーフから行こう!」

「そうするか。開始と同時にリジェネくれ、あと水魔法一発ぶっ飛ばしてくれれば【ロックオン】する」

「了解!」

「チーフレベル12だから、新しい攻撃パターンが有るはずだ。戦闘開始する前にナツは物理防御にPPを振れ」

「……くっ、やむなしか……!」

 イオくんに言われては仕方あるまい。普段イオくんあんまり人のプレイに文句つけたり指示したりしないもんなあ。そんなイオくんが敢えてやれと言うからには、よほどHP150ではまずいのだろう。と言ってもPP4しか余ってないから、全部振っても19、HPは190だけど。お守りあるから多少HPは増えるし、シャツに物理防御+5が付いてるから一応、ステータス的には20を超える。


 僕が渋々PPを振っていると、イオくんは呆れ顔だ。

「なんでそんな悔しそうなんだ」

「悔しいじゃん、イオくんだって魔力にPP振るってなったら悔しいでしょ」

「それはもったいない」

「それと同じです」

「いやお前は必要なんだよ普通に」

「全体攻撃さえこなければいらないのに……っ! イオくんが抜かれるはずがないんだ……!」

「お前のその俺に対する厚い信頼なんなの」

「実績!」

 イオくんの前衛には安定感があります。きっぱりと言いきった僕にイオくんはそれ以上続けず大きくため息を吐いた。そりゃあ歴代ゲームで前衛盾やり続けているイオくんなので、信頼が厚くなるのは当然でしょうとも。

「……まあいいか。それじゃ、行くぞチーフ」

「OK!」


 というわけで、始まりましたチーフ戦。

「オラ!」

 と気合の入った掛け声とともに一撃入れたイオくんに、即座に【ファイアヒール】を入れてリジェネ状態にしてからの、

「【アクアランス】! 【アイスアロー】!」

 火に強そうな魔法2連続!

 ちょっとだけ氷結状態のデバフが入ることを期待したんだけど、残念ながらだめでした。イオくんが【ロックオン】でヘイトを奪い返してくれたので、そこからはしばらく支援に入る。

「【ディフェンシブ】【パワーレイズ】【ヘイスト】!」

「ナツ、【ミスト】頼む! 【打撃】!」

「了解、【ミスト】!」

 火属性の敵だからか、チーフには【ミスト】が良く効いた。これは相手の視界をモヤで遮って命中率を下げる魔法なんだけど、水魔法だからね! チーフはもともと手数が多い多段攻撃タイプだから、命中率が下がるとミスの連発でかなり戦いやすくなるっぽい。


 攻撃をミスすると隙ができるから、そこにイオくんのアーツがガンガン入る。思ったより楽勝かも? とか思いながら戦っていると、HPが75%を切ったくらいでチーフがガウッと大きく吠えた。

「げっ、デバフ解除」

「OK、掛け直すよ! 【ブラインド】【バインド】!」

 あ、これ攻撃パターン変わるやつ。解除されちゃった【ミスト】は効果切れ間近だったからいいとして、【バインド】はミスになった。それなら!

「【トラップ】!」

 4つ足ならばかかりやすいはず! と繰り出した<樹魔法>だけど、一応チーフは引っかかった。でも、チーフが足にまとった炎がすぐに足に絡んだ植物を焼いてしまって、ちょっと体勢を崩したくらいですぐ立て直してしまう。な、なるほど相性が悪い。

「ナツ、ウォール張れ!」

「【アクアウォール】!」

「俺の前じゃなくて自分の前に!」

「えっ!? ちょ、【ライトウォール】!」

 急いでアーツを繰り出した直後、どかんと衝撃が走った。チーフがものすごい勢いで前方に炎を吐き出したのだ。これが危惧していた全体攻撃……!


「あっつ!」

「HP回復しとけ!」

 【ライトウォール】では若干防ぎきれなくて、あっという間にダメージを負う。火傷ダメージはすぐにお守りが回復してくれたけど、さっきの炎結構広範囲だったし、僕のHPは3割減った。

「あれ連発されるとまずい!」

 自分に【アクアヒール】をかけつつイオくんのHP……は、全然大丈夫そうだから良かったけど! 冷静に盾を使って飛びかかってくるチーフをいなしつつ、イオくんは蹴りでチーフをふっとばした。距離を取ったとも言う。

「火吐く前に前足で地面3回くらい掻いてたから、多分あれ予兆だな。ナツなんか回避方法考えてくれ」

「えーと、地面……掻けなくすればいいのでは!」

 体勢を立て直してまたこっちに向かってくるチーフのHPは7割ほど残っている。【ミスト】のクールタイムはあと少しで終わるから……。

「こんなときこそ<原初の魔法>! 【散水】! 【凍結】! そしてイオくんに【サンドウォーク】!」

「天才!」

 お、珍しくイオくんにストレートに褒められたぞ!


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