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21日目:SPが減るとなんか切ない

 ゆらゆらと揺らめく青と赤の炎は、決して混ざることなく絡み合っている。

 ちょっと面白いなあと思ってそれを眺めている僕の横では、ご機嫌なテトが「はやくうまれてこないかなー」と目を輝かせていた。ソウさんのところの赤ひよこさんのときみたいに、「お誕生日おめでとう」が言いたいらしい。

「テト、生まれてくるのは3日後だって」

 みっかごー?

「……テトがあと3回寝たら?」

 わかったのー。

 納得した様子のテトさん、そこでようやく卵石の前からどいてくれました……でもまだ未練がありそうな様子。卵石はまだ表面の石がぼろぼろ零れ落ちているような状態だからね。ずっと見ているわけにもいかないし、村長さんのところのお手伝いさんたちがさっきからそわそわとこっちを気にしている。みんな間近で見たいんだろうなあ。


「ほらテト、村長さんがくれた箱に何をいれるのか教えて!」

 あのねー! たからものー!

 とりあえずテトをここから遠ざけるために提案してみると、途端にぱあっと明るい顔をして即座に思考を切り替えた。うん、テトさん素直で助かるなあ。

 テトが意気揚々と室内に戻ると、箱はイオくんが中身を出して【クリーン】かけてくれてたよ。中にはいっていた綿は別途使えるらしく、お手伝いさんたちがぱぱっと持ち去ってくれた。そして、庭の石周辺にはあっという間に人の壁ができた。みんな、テトに気を使ってくれていたらしい。

「ほら、テト。何入れるんだ?」

 イオくんが箱をテトの前に置く。テトは「えっとねー」と少し考えたあと、まずキラキラした薄い布のようなものを取り出した。

「あ、神蛇さんの抜け殻」

 これねー、きらきらだからおきにいりなのー!

 キヌタくんの秘密基地でもらったやつだね。テトはその抜け殻をそーっと箱の隅っこへ入れる。箱の中に入った自分の宝物に、大変満足そう。

 それからまたにゃっと呪文を唱えて、テトが次に取り出したのはテトビタDの瓶だ。ミィティさんが作ってくれたこのかわいい瓶、僕も大事に持ってるけど、確かに宝箱に入れるにふさわしい物だ。

 これねー、テトいるんだよー。

 と瓶を咥えて僕に見せてくれるテト。僕も持ってるから知ってるんだけど、あまりに嬉しそうに見せてくれるので「うんうん、かわいいねー」とにっこりしてしまう。テトはその瓶をイオくんにも見せに行って、「テトにそっくりだよな」と撫でてもらったことでようやく満足したらしい。そーっと瓶を箱の隅っこにしまい込む。


 あ、フレンドメッセージ。

 テトの宝物談義にはイオくんに付き合ってもらうことにして、僕はこっちをチェックしよう。テトたちから距離を取って……画面確認っと。

 届いていたのは、アサギくんからポータルのURLと、プリンさんからの美味しいお刺身を出してくれる店の情報と……如月くんがオーレンさんに便利な魔法を教わったってメールも来てる。へー、複製魔法ってオーレンさんからも教えてもらえるんだ。ラリーさんが使ってたやつだよね。

 ふんふん、自作のものなら何でも複製可で、多少耐久や能力が落ちる。如月くんの作ったポーションは複製魔法で複製すると、回復量7割で複製できると。材料費がかからないから、旅に出て荷物増やしたくないときなんかは便利そう。でも使用期限が1時間とかだから、飲む直前に複製して飲まないと消えちゃうらしい。インベントリに入れれば時間停止するけど、それでも1時間の縛りは微妙だなあ。ポーションだけでなく食べ物系はぜんぶこの期限が付く、と。

 武器とかアクセサリとかを複製したものは、流石に使用期限はないけど、耐久がかなり低く複製される。性能も落ちるし、耐久は減るしだから、防具類に使うのは無謀そうだ。それこそ、戦ってて大事なとき剣が壊れそう! みたいな切羽詰まったときに一時的に複製してそっち使うとか……? 僕は必要ないかなあ、今のところ便利そうな使い道が思いつかない。


 ……あれ。こっちの新着はなんだろう。

 ああ、「売買」のタブだから、レストさんからの業務連絡かな? たしかこのタブでは、お店と納品者の間でテキストチャットができたはず。

 ふむふむ。テトビタDの売れ行きが好調で? というか絶好調で? 明日にでも在庫無くなりそうだからメッセージに気づいたら追加納品頼む……? ミィティさんが周囲に大絶賛して回ったせいでめちゃくちゃ人が来るとな?

「……イオくーん、僕ちょっと部屋でテトビタ作って来るねー。なんか追加納品希望が」

「大丈夫かそれ。ラリーがダースで買ってないだろうな?」

「なんかミィティさんが周囲に宣伝しまくってるっぽいよ」

「ああ……」

 イオくんはなにか納得した様子で、行って来いと送り出してくれました。


 さて、それにしても予想よりだいぶ早いなあ、前回ポーション瓶で5つ分くらい納品してるんだけど……。まあ、試しに1本だけ飲んでみようかなって人もいるか。その中で一部の人たちが常連になってくれれば御の字ってやつだね。

 そうと決まればじゃんじゃん作って、多めに納品しなきゃ。えーと、まずは【アクアクリエイト】して、それを【純化】して、マギプランツの粉を適量溶かしたら、更に【ピュリファイ】をかけて……。

 作業自体は慣れたものだから、流れ作業でできてしまう。ポーションの空き瓶に【クリーン】をかけて中身を移して、っと。相変わらずきれいな金色の水だなあ。これ一応聖水なんだってことを忘れそうになるよ僕は。とか思ってたら<聖水作成Ⅰ>のレベルが上がる。よしよし。

 更に数をこなして行くと、ちょうど10回目の水に【純化】をかけたところで、<原初の呪文>のレベルがようやく10に届いた。

「お、やった!」

 基本スキルのレベルMAXまで来たから、次は発展スキルが出ているはず。作成途中の聖水を作り上げてから、いそいそと取得可能スキルの一覧へ。


 相変わらずものすごい量のスキル名がずらっと出てくるので、キーワード検索に「原初」と入れて検索……あ、これだ!

「<原初の魔法>。SP30……うん、知ってた!」

 基本スキルがSP20だったんだから、そりゃ発展スキルは30行くよねー。正直<原初の呪文>だけでも超絶便利だけど、発展スキルを取らないという選択肢はない。僕の現在のSPは……42! 足りる! ……あ、でもちょっと待って。一旦納品してからにしよう。レストさんが待ってるかもだし。

 売買のタブから、納品ボタンを押して納品用インベントリにテトビタDを10本入れて、決定。これでレストさんが納品に気づいたら受領してお金を振り込んでくれる仕組みのはず。一応メッセージのほうにも10本入れときました! って残しておいて……。

 あれ、ここに表示されてる金額ってもしや売上? 結構な金額が入ってますが……! これどうしよう、共有財布に入れられるかな……と画面を色々見ていたところ、部屋のふすまが開いてイオくんとテトが入ってきた。

 ナツいたー!

 と駆け寄ってくるテト、かわいいの塊かな? 続けて入ってきたイオくんの手には、小さな魔石がいくつか握られている。


「イオくんそれどうしたの?」

「村長にもらったんだが、使い道がわからん。空の魔石だそうだ」

 空? ああ、そういえばお湯を汲み上げてた魔道具に使われていた大きな魔石も、ほとんど空っぽだったってテトが言ってたし、使い切っちゃったってことかな。とすると、補充ができるのかって話になるね。

「その石に魔法を放てば充電されるかな?」

「わからん。ナツが聖水を作ったときに水に魔法を込めるってやつをやってたから、もしかしてナツならできるかもしれないと思って、持ってきた」

「なるほど」

 確かに僕ならできるかも? でもその前に相談したいことがありますよ、イオくん。

「ちょうどよかった。今<原初の呪文>のレベルがMAXになって、発展スキルの<原初の魔法>が出たよ!」

「お!」

 どれどれ? と僕のステータス画面を覗き込んでくるイオくん、消費SPの数字を見てうげえ、って顔をした。このゲーム比較的SP貯めやすいけど、こういう消費の大きいスキルも多いよね。

 なになにー?

 とイオくんと僕の間に挟まりに来るテト。君はこの画面見てもわかんないと思うけど一応<原初の呪文>が強くなったんだよーと伝えておく。テトにとって<原初の呪文>は【適温】と【足場】だからなあ、強くなったと言ってもわからないだろうけど。

「呪文がSP20 で、魔法がSP30か。<守護の心得>も+10は必要だよなやっぱり」

「イオくんのスキル、最初の基本スキルの段階でSP30じゃなかったっけ? 発展スキル、やっぱり40になるよね……」

「50になる可能性すらある。俺は当分SP貯蓄だ」

 いざ取れる! ってなったときにSP足りないともどかしいからね、それは仕方ないよ。


「じゃ、とりあえず取得するね、<原初の魔法>」

「おう」

 ちょっとドキドキしながらも<原初の魔法>を取得。<原初の呪文>は<原初の魔法>に上書きされる。えーと、このスキルでできることは……。

 一通り確認してから、結果としてなかなか良さそう、という結論に達したけれども、ごっそり減ったSPに少しさみしい気持ちになる僕である。

「えっと、<原初の魔法>では、呪文を唱える前にあらかじめ決めた組み合わせをセットすることで、特定のキーワードを唱えて連続発動することができます」

「例えば?」

「例えばだけど、キーワード『耐毒』に、【抗毒】【浄化】【解毒】とかを適当にセットすると、【耐毒】と唱えるだけでその3つの効果が同時発動する……のかな?」

「お!」

「今レベル1だから1個しかセットできないけど、レベルが上がるとセット数が増えたり、セットできる呪文の個数が増えたりするっぽい!」

「いいじゃん!」

 イオくんからもなかなか好評のこの<原初の魔法>、僕的にもかなり良い感じではないかと思われるんだけど、いかんせん便利な組み合わせというのがパッと思いつかないという……! 何かありますかテトさん! と無茶振りしてみたところ、あしばいっぱーい? だそうです。いっぱいはまだ無理かなー。


「なんか便利そうな組み合わせある? イオくん的に思いつくものあったら教えてほしい」

「色々できると思うんだが、今セットできるのは1つだけか……。何個まで呪文セットできるんだ?」

「えーと、現在2つだけ!」

「んー、スキル経験値は普通に単独の呪文を使っても上がるんだよな? それならレベル上げてもっと多くセットできるようにするのが先じゃないか」

「あー、たしかに」

 数が多い方ができること増えそうな気がする。でも、なんてこと無いやつでもいいから1回セットしてみたいなー。一応、セットしても自由に組み替えできるらしいし……!

「試しに! 試しに一個だけ……!」

 後でもっと便利なものに変えるという前提で、キーワード『向上』に、【俊敏】と【頑丈】とかどうだろうか。【俊敏】はイオくんが20秒ほどすごく速く動けるやつで、【頑丈】は今思いついたから使ったこと無い。でも多分これはいけると思うんだ……!

「良し! イオくん試しに今セットしたやつ使ってみるから、どんなバフついたか教えて!」

「よし来い!」

「行くよ、『向上』!」

 ユーグくんが張り切ってぴかっと光り、イオくんに向けてその光が飛んでいく。ステータス画面を開いたイオくんは、自分にかかっているバフを確認して一つ頷いた。

「速度UP20%20秒と、魔法防御力UP10%20秒だな」

「え、魔法防御力の方なんだ?」

「呪文何だった?」

「【頑丈】。物理防御力のほうかと思ってセットしたんだけど」


 イメージ的には絶対物理防御力の方だと思うんだけどな。なんで魔法防御力になったんだろう。首をかしげていると、「多分」とイオくんが口を開く。

「物理と魔法、弱い方の防御が上がったんじゃないか?」

「あー、なるほど……!」

 確かに、頑丈ってことは倒れないということだから、不足している方を底上げというのはあり得る。でも、どっちも20秒かー。

「うーん、効果時間延長欲しい……!」

 1分位になったら実践でもかなり使えると思うんだけどなあ! スキルレベル上がったら、その辺どうにかなりませんかね?

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― 新着の感想 ―
[良い点] テトの宝物は思い出も詰まってる素敵な宝箱! これからも少しずつ増えていくんだろうな〜 宝物って中身眺めてるだけでも楽しいし、 他は何を入れたのか、また教えてね!
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