表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/329

3日目:レベルを上げる


 なんか小難しいシンクロ技術によって、イオくんと僕のアカウントは連携されてタイムラグをほぼゼロにできる。リアル10分後にギルドの二階で目覚めた時、横でイオくんも同時に起き上がった。

「おはようイオくん。ご飯食べよう」

「おう。昨日と同じでいいか?」

「スープ食べきっちゃうけど大丈夫?」

「夕方からまた作るし、問題ない」

 と言うわけで、本日の朝ご飯もシャケおにぎりと塩スープ。あ、味噌あるから次は味噌汁作ってもらえるじゃん、やったね。


 ゲーム内3日目の起床時間は午前7時。

 ゆっくり朝食を取って、どこのフィールドに行くかを話し合う。ツノチキン連戦行ってもいいけど、南と東の草原はまだ行ってないし、どっちかにしようかと言う話になった。

「アーダムが教えてくれたけど、東はイビルドッグ、南はロックタートルだ。ロックタートルのほうが経験値効率がいいけど、岩だから物理攻撃がほぼ入らない。ナツ向けの敵ではあるな」

「イオくん昨日、ソロ狩りしたよね。経験値入った?」

「2・3匹しか狩れなかったし、レベルはどっちも上がってないぞ」

 どっちも、というのはプレイヤーレベルと職業レベルのことだ。プレイヤーレベルの方は今までと同じ感じで上がっていく(必要経験値は当然上昇する)けど、職業レベルは職業名とレベルの下に1本の経験値バーが追加されて、戦闘やスキルの使用でだんだん黄色に染まっていき、1本満タンになったら職業レベルが上がってバーは0に戻る、という仕組み。


「ん-、経験値もいいけどイオくんが戦えないのも微妙だね」

「じゃあ、イビルドッグ行くか。火属性だから<風魔法>以外使えるし」

「そうしよう。<土魔法>も上げたいし」

 昨日戦ったバイトラビットもツノチキンも風属性だったから、<火魔法>ばっかり上がって<土魔法>がさっぱり上がってない。火<水<土<風<火という属性関係図なので、火属性には<水魔法>が弱点2倍と<土魔法>が等倍ダメージだ。同じ属性だと、苦手属性ほどじゃないけど多少の軽減はあるらしいし。

 剣を買っても100,000Gは共有財布にお金が残っているので、心に余裕もある。朝ご飯を食べ終わったらギルドの外に出て……む、この匂いは!

「テールさんの屋台!」

「お、先に肉売るか」

 当然、それが先だね!



 テールさんは大喜びでツノチキン肉を買ってくれた。

 どうやらテールさんのところに持ってくれば無限に買ってくれるっぽく、金策としても良いらしい。僕たちの場合はイオくんが<調理>で使うから、半分くらいしか売ってないけど、1つ2,200Gで31個売れば68,200G、悪くないお値段だね。

 待望の塩焼きを10本買い取って、1本ずつ食べてみた。タレはタレで美味しいけど、塩は塩で美味しいものです。ツノチキン連戦しんどかったけどやってよかった! 忘れてた<鑑定>を今更かけると、塩焼きは★4,タレの方は★5だった。特に食べたからと言ってバフとかはつかない。いずれよくあるバフ料理とかもできるようになるのかな?


 お金は大事だけど、緊急時以外はお守り作りで缶詰とかしたくないし、僕たちには優先事項もある。とりあえず今日は、東の平原でレベル上げして、イオくんの魔力を上げないと行けない。

「あ、アーダムたちになんか差し入れするか」

「いいね!イオくんのおにぎりとか喜ばれると思う」

「えー、さすがにそこは市販のものにしようぜ」

「テールさんとこで買ったタレの方の焼き鳥、まだ量あるよ。これ5本くらい差し入れしとく?」

「それが良さそうだな」


 というわけで東門へ。今日の門番さんは、サームくんを背負って壁の上に登ってきてた若い兵士さんだ。

「おはようございますー!」

 基本の元気なご挨拶をしたところ、「ああ」とすぐ僕たちのことを思い出したらしい兵士さん。多分高い所好きな人と思われてる。

「おはようございます、アーダムは詰め所にいますよ」

「焼き鳥差し入れしておきますのであとで食べてください」

「おお、それはありがとうございます」


 そういえばこの人の名前聞いてない……けど今更名乗るのもなんかなあ。こういう時どういう対応すれば名前聞けるんだろう。あとでイオくんに話術講座でも頼もう。

 そのイオくんは詰め所の扉をノックして、アーダムさんを呼び出している。今日、ソルーダさんはいないんだろうか、剣買えましたよーって報告したい気持ちもあるんだけど。

「おう、イオとナツだな。何かあったか?」

「少しだが差し入れを。今日ソルーダはいないのか?」

「ソルーダは午前中南だ、午後にはこっちに来る予定だな」

 お、なるほど。それなら午後に戻るようにすれば会えそうだね。お礼言えそうで良かった。


「アーダムさん、これこの前の焼き鳥です!5本で足りますか?」

「おう、悪いな」

 詰め所にはこの前いた女性兵士さんはいなくて、代わりに初老の男性が一人。何人か入れ替わりでお休みを取ってるっぽいね。

 焼き鳥の包みを渡して、イオくんが軽く東の草原に出る魔物について聞き込みをしてから、僕たちは東門を出た。なんでも、イビルドッグは10匹倒すごとに親玉のような敵――イビルドックチーフ、というのが出るらしい。普通のイビルドッグより体が大きいのでわかりやすいという話だった。

 このチーフは、倒すと経験値も多い上に、稀に魔石を落とす。魔道具の動力になる魔石だね。今後イオくんが多分魔道コンロを買うだろうから、いくつか確保したいところだ。


「休憩中に軽く掲示板に目を通したけど、早い奴はもう隣のニムについたってさ」

「へー!結構歩くんだよね、早いなあ」

 僕は掲示板をチェックするのは面倒だから、どうしても知りたいものがあったときだけキーワード検索するけど、イオくんは色々情報を仕入れているっぽいな。

「南の方ででかいロックタートル狩ってオアシスみたいなところ見つけて、早速取り残された住人たちを救ったパーティーもいるらしい」

「すごいじゃん」

「機織りのばあさんに弟子入りしたプレイヤーもいるぞ」

「ガッツあるねー」

「<調薬>持ちのプレイヤーが、HPポーションの効力を高める方法を発見したとかで注目されてるな。あと、図書館はイチヤにはないらしい」

「色々情報出てるんだ」


 当たり前だけど1人1人のゲームプレイがかなり違ってて面白い。すでにニムに到達したって人は、すべての街を回るつもりなのかな? それはそれでなんか楽しそう。

「星級の話も、ギルドの資料室で知ったってプレイヤーが掲示板に情報載せてるな。イライザと知り合いになったって報告もちらほら」

「クエストの話は?」

「今のところない。っていうか、多分前提条件が結構あるぞあのクエスト。ハンサと知り合いとか、<彫刻><魔術式>持ちとか」

 それもそうか。ラタのお守りを作れない人があのクエスト発生させても仕方ないし。


 イオくんは他にも、ギルド西通りの飲食店でアルバイトできたトラベラーさんが料理人さんにつまみの作り方を習って<調理>を自動取得した話とか、スペルシア教会で炊き出ししたトラベラーさんがゴーラの教会に紹介状書いてもらった話とかを教えてくれた。

 アナトラって本当に人によって全く違うイベントが起こるらしくて、純粋にすごいなーと思う。プレイヤーが全員主人公みたいなもんだもんね。

 そんなことを話している間に東の草原の真ん中あたりにたどり着いた。この辺なら他のプレイヤーさんも少ないし、良い感じだ。

「さ、それじゃイオくんも<感知>上げないと。僕は<識別感知>と<罠感知>発動っと」

「目標は俺の魔力15まで。よし、行くぞ!」



「ナツ! チーフ来た!」

「了解! ウェルカム経験値!」

 イビルドッグの攻撃は、バイトラビットと同じで直線的だから特に警戒しなくても大丈夫。群れでつるんでいるから、1匹攻撃したらその群れの仲間たちは同時に敵対するけど、他の群れから救援がきたりはしない。おのれツノチキン。

 イビルドッグの群れは3~5匹程度なので、さほど苦労せず10匹倒してチーフを出現させられる。チーフはさすがに強いけど、倒すと本当に経験値が美味しい。と言うわけでさっきからチーフ狙いで、これで3匹目のチーフ出現だ。

「<鑑定>。……イオくん、チーフレベル5!」

「さっきのより1レベル高いな。<ロックオン>!」

 イオくんの<ロックオン>は<挑発>からの派生で、相手の興味を自分にひきつけ、相手から受けるヘイト量を増やす効果があるらしい。これで僕が弱点属性の魔法を撃っても、めったなことでヘイトがはがれることは無い。

「【ウォーターアロー】! 【サンドアロー】!」

「バウッ!」

「【連撃】!」

「ギャウンッ!」


 どっちかと言うと物理攻撃の方が効くんだよね、イビルドッグ。素早くはあるけどバイトラビットほどじゃないし、攻撃力もツノチキンほどじゃない。多少強くなろうとも、今の僕たちなら危なげなく狩れる感じだ。

「【アクアウォール】!」

 イオくんと、イオくんにとびかかるチーフの間に妨害系ウォール魔法を出現させると、まっすぐそれに突っ込んだチーフがキャンキャンと情けない声を上げた。鳴き声かなりリアルなんだけど、これ犬好きは攻撃しづらい人もいそうだなあ。僕は犬好きだけど魔物と割り切れるので大丈夫だけど。

 <水魔法>を使いまくった地面が結構濡れているので、イオくんに【サンドウォーク】をかけて歩行を補助。お、これで<土魔法>がレベル3まで上がった。順調順調。


「【ダークアロー】!」

 覚えたばかりの<闇魔法>と<光魔法>は、他の属性の魔法よりちょっとだけクールタイムが長い。なんでかなと思ってたら、<闇魔法>は低確率で敵に光属性封印状態を、<光魔法>は低確率で敵に闇属性封印状態を付与することがあるっぽい。付加価値があるからちょっとクールタイムが長くなってるんだろう。

「【ライトアロー】!」

「ナツ、リジェネくれ!」

「了解、【ファイアヒール】!」

 イビルドッグは火属性だから、攻撃のすべてに若干の火が乗る。直接攻撃が当たると、知らないうちに火傷ダメージやら延焼ダメージやらが乗るんだけど、<火魔法>の【ファイアヒール】をかけ続けることで炎系状態異常は全部無効化できる。なんか、火を使って回復させる魔法だから、敵が火を使ってくるとその力も回復用に変換しちゃうらしい。

 いくら身体保護のお守りがあっても、しょっちゅう異常状態になってたらすぐ無効8回に届いちゃうから、この方法を取れるのはかなりお得だ。

 ちなみに、これ気づいたのイオくんなので天才だと思います。


「よっと!」

 イオくんはラウンドシールドを使って、器用にチーフの顎を殴り飛ばす。豪快にノックバックしたチーフのHPバーはあとわずか。ということは。

「【ウォーターアロー】!」

「【斬撃】!」

 畳みかけて終了、っと。


『職業レベルが上がりました』


「お! 職業レベル上がった!」

「俺も。やっぱアーツ使うか戦闘スキルの習熟度が上がるかだな」

「PPは職業レベルが上がればもらえるんだね。……あ、PP2振られてるよ」

「もらえるPPも2だから倍だな。転職したおかげか。ラッキー、目標達成」

 プレイヤーレベルは上がってないけど、職業レベルの方は上がってPPをもらえている。これ、プレイヤーレベルが上がってもPPもらえるのかな?要検証。

 僕ももらったPPは即座に器用に入れちゃおう。

「もらったPP魔力に入れて、俺の武器デビュー戦ってことで」

「いいよー。午前中はレベル上げにしよう」


 昼までに何匹チーフと戦えるかが勝負だね!


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ