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20日目:陽キャパワーこわ……!

 走ってきた2人のプレイヤーは、男性がアサギさん、女性が雪乃さんと言った。

 アサギさんは「敢えて身長を低くした」と豪語する猫獣人。小柄でツリ目、色合いは名前通りの浅葱色。髪は猫っ毛にして、耳大きめ、年上に可愛がられそうな感じの男性。

 雪乃さんは髪も肌も真っ白で、目だけ氷を連想させる水色の瞳という、いかにも雪を連想させるカラーリングの鬼人女性。背もすらっと高く、どちらかというとかっこいい感じの印象だ。

 そんな二人が叫びながら走ってきたのには理由があって、通りかかったトラベラーを絶対に鬼人さんたちの集落に招きたかったから、なんだとか。


「クエストでトラベラーを5人呼び込まないと進まねーんだ! 助かったマジで!」

 とアサギさん。

「いやー、掲示板で呼びかける準備してたんだけど、手間が省けてよかったよー」

 と雪乃さん。

 あ、こっちも一応ざざっと自己紹介はしたよ、僕が。

 2人は特にパーティーとか知り合いではなくて、たまたまサンガを出る時に同じタイミングで東門を出たから一緒に旅してきただけなんだそう。サウザン川の南側に行きたくて、二人でイカダを作ってわざわざこっちに渡って来たらしい。なぜかと言うと、雪乃さんがサンガで仲良くなった住人さんに頼まれて、鬼人の集落を探すというクエストをうけていたから。

「かわいい女の子におじいちゃんに会ってみたいの、とか言われたら断れないじゃんねー。でも一人で森抜けられる気がしなかったからさー、もう必死にアサギに頼んで一緒に来てもらったんだよ」

「へー、なるほど!」

「まあ俺も集落があるなら行ってみたかったしなー。でもいざたどり着いたらいきなりクエスト始まって、トラベラーを5人、里に集めよう! とか言われてさ」

「幸い、私とアサギもカウントされたから残り3人だったんだよ。そこにちょうど3人組が現れるなんて超絶ラッキー!」

 おお……。僕の<グッドラック>さんももしかして仕事したのかな? 僕たちだって普通にクエストこなしにきただけなんだけど、アサギさんたちのクエストも進むなら一石二鳥だね。


「えっと、アサギさんたちはいつたどり着いたんですか?」

 とりあえず質問してみると、アサギさんは手をひらひらさせながら笑う。

「アサギでいいって! さん付けむず痒いし」

「えーっと、アサギくん」

「くん付けマジか。超新鮮!」

 けらけら笑うアサギくん、これは陽キャ、間違いなく陽キャ……! どうしようこっち全員どっちかというと陰キャだ……! いや、でもイオくんは誰とでも会話できるからいいとして、僕も頑張れるとして、雷鳴さんは……テトの後ろに隠れてる……!

「俺達がついたのは2日前だなー。夜直前に着いたから取り合えず塀の中に入れてもらってテント張って、昨日1日使って住人たちと会話して現状把握して……って感じ?」

「今日も村長に話聞いて欲しいものとか確認したりしててね。夜になったらスレッド立てて人を呼び込んで、ついでに不足しているものを持ってきてもらおうかって話してたところなの」

「なるほどー。ちなみに、里には今何人くらい居るんですか?」

「やだ、なっちゃんタメ口でいいって! あ、なっちゃんって呼んでいい?」

「すでに呼んでから許可をとる……だと……!」

 戦慄の陽キャ……! まあいいですけど!

「里の人数は……えーっと、200人くらいいるらしいけど、昔はもっといたって聞いたよ」

「200人……」

 ドロガさんは、昔は600人くらい住んでたって言ってたっけ。かなり減ってしまったようだけど、10年という経過年数を思えば、そうなっても仕方がないのかな。食料問題とか、魔物が襲ってくる危険なんかもあるんだろうし……。


 そんな会話を主に僕がしつつ、里の門までたどり着いた。門っていうか……石の塀を一部だけ木材にして、そこが開くようになっている。僕の腰くらいまでの高さしかないから、あんまり門っぽくはないんだけど、ここが唯一の出入り口だそう。苔とかびっしりなんだけど、ここ開くの? と思っていたら、アサギくんが軽くひょいっとそこを飛び越えた。

「かんぬき抜けば開くんだけどさ、サビがきつくて開けるの大変だから、飛び越えてくれよ」

「え、それでいいの?」

「いーのいーの。ほら、うっかりこういうの開いてたら、子供とか外に出そうで危ないだろ?」

「それはたしかにそう」

 でもそれって門の意味ある……? と思った僕を尻目に、雷鳴さんとイオくんが続けてひょいひょいと塀を乗り越えていく。雪乃さんは一度塀の上に登ってから飛び降りた。僕は、えーと。

「テトー、あそこの塀をぴょいっと飛び越えて中に入ってー」

 いいよー!

 自力で乗り越えるなんて無謀なチャレンジはしない。ということで、さくっとテトにお願いして軽く飛び越えてもらった。テトは頼られて嬉しいようで、ついでにサービスとばかりにばさっと羽を広げ、すいーっと小さく円を描くように軽く飛んで見せる。そしてイオくんの隣に着地して、渾身のドヤ顔を披露するのであった。

「テト凄いねー、スムーズな着地、さすが翼を授かりし猫!」

 えへへー。

 めいいっぱい褒めつつ撫でると、テトは満足そうにごろごろと喉を鳴らす。隣でイオくんが「甘やかすなよ」みたいな顔をしてるけど、せっせと甘味を貢いでいるイオくんにそんな顔されましてもね。


「お、クエスト進んだ!」

「やったあ!」

 と喜ぶアサギくんと雪乃さんを横目に、僕たちは周辺をぐるりと見回す。石の塀で囲まれている範囲が、思っていたより広いみたいだ。さっそくこちらを伺う子どもたちの集団や、なんだなんだと寄ってくる人も居る。槍をもっている人たちは、自警団とかかもしれない。

「こんにちはー、今この2人に案内されてきましたー!」

 と元気に声をかけてみると、警戒していた表情が少し柔らかくなった。やっぱり、街で言うところの門番さんの立ち位置の人っぽいな。がっしりと大柄でいかにも強そうなその鬼人さんに、アサギくんが明るく声をかける。

「イナバさん、俺達と同じトラベラーだよ! これで正道まで枝道を作れるぜ!」

「ほ、本当なのか。そんなことがあり得るのか……?」

「昨日から言ってるじゃん! 村長さん今いる?」

「屋敷に」

 おお、2日前の夜に里に着いたにしてはめちゃめちゃ馴染んでないか、アサギくん。凄い、コミュニケーションが円滑……!


「みんなー、一旦村長に紹介するから着いてきてー!」

 と仕切ってくれる雪乃さんに付いて歩くと、里のあちこちから好奇心に溢れた視線を感じた。嫌な感じじゃなくて、わくわくそわそわって感じ? 人が来たのも久しぶりだろうから、話をしたいとかかな。そう言えばサンガで預かってきた差し入れの箱、村長さんのところに行くならちょうどいいから渡そう。

「村長さんってことは、ここは村? 村の名前とかある?」

「あ、昔は月影村って言ったんだって。今はその名前は捨てたって言ってるけどねー。村長っていうか、里の代表っていうか? まあ呼びやすいから村長さんって呼んでるんだー」

「そうなんだ」

 もしかして雪乃さん、あだ名のノリで勝手に村長呼ばわりしてる? 有り得そうだなあ。まあでも、この2人が村長って呼んでるなら、僕たちもそれでいいか。


 ともかく、偉い人に会いに行くなら礼儀も大事だ。僕は一旦テトから降りて、一緒に歩こうねー、と誘って歩き出す。テトは「おさんぽー!」と、ご機嫌に僕の右側に寄り添ってついてきた。

 前ゆく2人の後をついて歩いていると、すすすっと僕の左横に寄ってきた雷鳴さんが、

「ちょっと口を挟めなかった。すごくぐいぐい来る人たちだ」

 と感心したようにつぶやいた。あ、そういえばイオくんも雷鳴さんもさっきから一言も喋ってないね。何となく僕が会話してたけど、別に僕が代表にならなくても良かったのでは。

「大丈夫ですよ雷鳴さん。イオくんもしゃべってないので」

「確かに」

「イオくんああ見えて人見知りなんですよね」

「そんな印象はなかったけど。それよりもナツがあまりにも自然に会話するからつい任せてしまった」

「僕、割としゃべれる陰キャなので」

 ぐっと右手をにぎりしめて胸を張った僕に、雷鳴さんはちょっとだけ笑ってくれた。たいてい無表情の雷鳴さんなので、笑ってくれるとちょっと嬉しい。

「ナツは陰キャじゃねえだろ」

 と、テトの向こうからイオくんも会話に混ざってくる。

「えー、でも僕アサギくんたちほどのコミュニケーション能力はないよ」

「あれほど極端なのは才能だろ」

「それは確かにそう」

 なんなら数年来の友達であるかのようにあだ名でいきなり呼ばれたからね僕。なっちゃんって、実は小学校の時のリアルなあだ名なのでちょっとドキッとしたのは内緒だ。


「テト、これからここの村長のところへいくから、ナガレから預かった箱届けてやれよ」

 おしごとー!

「ナガレ……誰それ」

「……布とか色々預けてくれた爺さんいただろ。俺は名乗ったし名前もらったぞ、ナツの住人一覧にも載ってるはずだ」

「いつの間に……!」

 あれ? 僕あのお爺さんの名前聞いたっけ? いや、旅に出る前だから余計なクエスト拾わないように聞かなかった気がする。イオくんは聞いてたかー、でもよく考えればそれもそうだね、せっかく預かった荷物を「誰だかわかんない人からの差し入れです!」っては言えない。うわー、僕あの時めちゃドヤ顔で名前は聞かないのが正解……! とか思ってたんだけどなー!

「ナツはどうせクエスト拾わないように聞かなかったんだろうけど」

「心読むのやめよう!?」

「<グッドラック>があるからな、ナツが聞いてたらもっといろいろ拾ってたかもしれん。お前はそれでいい」

「慈愛の眼差しで見られてますが!?」

 くっそー、イオくんめっちゃ適当なフォローするじゃん……! とぐぬぬしていた所、雷鳴さんが僕とイオくんを交互に見て、うむ、と頷く。

「仲いいね」

「仲良しです!」

「おう」

 テトもー! テトもなかよしー!

 まあこんなノリで5年近く親友やっておりますのでそこはね。テトも仲良しだよーと撫でつつ、横目で里を観察してみることにしますか。


 鬼人さんの里は、200人住むには十分な広さがあるようで、今僕たちが歩いている方向へむけて緩やかな丘になっている。高い方にはちょっと立派なお屋敷が立ち並んでいるので、多分、村長さんとかをはじめとした里の重鎮が住んでいると思われる。

 出入り口の門があったあたりは、長屋っていうか、木造の小さい家が連なっている感じの建物だった。あとは共同の炊事場も見えた気がするし、サウザン川の支流がここまで伸びているようで、細い小川も里には流れている。その辺には洗濯物を干している物干し竿がずらっと並んでいて、鯉のぼりを連想してしまった。

 小川の向こう側には畑も見えたので、雷鳴さんが目を輝かせたのがわかる。根菜ぽいなあ、米じゃないんだなと少し意外。こうしてみると、田舎の素朴な地域の村って感じだ。子どもたちも結構居るし、住人さんもあちこちで仕事をしているのが確認できる。

 ……布は確かにボロに近いかもしれない。無事な布地を一生懸命つなぎ合わせている感じ。ナガレさんに預かった布、すごく喜ばれそう。

 イオくんと色々買ってきたし、テトも張り切ってたくさん運んでくれたから、喜んでもらえるといいなあ。

 そんなことを考えていると、僕たちを振り返った雪乃さんが「ここだよ!」と一つのお屋敷を指さした。


「こちら、鬼人の里、村長のイズモさんのお宅です!」

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― 新着の感想 ―
[良い点] ナツとイオ君、テトの仲良し肯定の流れ!好き! 皆仲良し!良き!
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