表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
173/380

19日目:旅は道連れと言うからね。

 雷鳴さんはイオくんの特製スープを3回おかわりして、おにぎりを3つほど食べたところでようやく満足した。

 お腹空いているならパンより米! と主張したのは僕だけど、遠慮のない食べっぷりが見ていて気持ち良いくらいだったね。

「ありがとう。何か対価になるものがあれば渡すけど、欲しいものある?」

 と真顔で聞かれたけど、それについては軽く断っておく。あんなふらふらな人を放置できないから食べさせただけであって、対価欲しくて助けたわけじゃないし。

「雷鳴は<収穫>スキル取っておけよ。その辺に食えるきのことか木の実とか色々あるから」

「いやあ、そんな便利スキルがあるとは知らなかった。<収穫>か……SP3なら……ギリギリ……」

 あ、魔法槍士の雷鳴さんはやっぱりSP枯渇してますね……!

 アナトラは兼業になるとSPが厳しくなるからスキル厳選が必要になってくる。僕みたいに魔法専業だとそうでもないけど、魔法剣士系は特にカツカツと聞くよ。如月くんも大変そうだったしねえ。


 色々と雑談をしたんだけど、雷鳴さんはイリュージョンアースからの移住組だった。結構長く遊んでたけど、人が増えすぎて面倒くさくなったので、体験会の感触がよかったらこっちに移住するつもりで始めたとのことだ。

「思いがけず楽しいからほぼ間違いなく移住する予定」

 とのこと。ソロで気ままにできるのが良いらしい。

「あー、あっちとにかくプレイヤー同士の交流ありきですからねー」

「すごくほっといて欲しい」

「わかる」

「これでアナトラで農業ができるなら迷いすらしなかったな」

「農業かあ。イチヤには果樹園あったけど、プレイヤーには開放されてないですからねー」

「アプデ期待」

 ってな感じに雷鳴さんと雑談していたら、僕と雷鳴さんとの間の隙間にテトが無理やりぐりぐりっと体をねじ込ませてきた。

 にゃーっ!

「テト、どうしたの急に」

 ナツのおとなりはテトなのー!

「くっ、かわいいな家の猫! よしよし良い子良い子」

 どうやら僕の右隣にイオくんがいて左隣に雷鳴さんがいたのでテトも隣がいい! ってなったらしい。そしておそらくテトの中ではイオくんのほうが格上認定されているので、雷鳴さん側に割り込んだということだろうね。うん、かわいい!


「いやあ、ずいぶん懐いてるんだね。契約獣ってこんな感じなんだ」

 と、無理やり横にずらされた雷鳴さんは感心している。まあうちのテトが特別人懐っこいという可能性も高いんだけどねー。懐っこい猫なんてご褒美でしかないのでつまりテトは最高ということなのだ!

「あれ、雷鳴さんイチヤからまっすぐここまできたってことは、契約獣見てない感じですか?」

「見てない。公式サイトで存在は知ってたけど。いいな、ゴーラついたら僕も見に行こうかな」

「サンガ行かないんだ」

「ここまで来たら戻りたくない」

 なんか雷鳴さんってゆるいのかと思えば妙に頑固な感じだなあ。あんまり周りにいないタイプかも知れない。


「ところで、イオとナツはゴーラへ向かってる?」

「一応は」

「寄り道予定かな?」

 おっと、一応って受け答えでその返答がくるってことは、頭の回転早い人だな。賢い! 

「サンガで頼まれて、鬼人さんたちの集落を見に行くんです」

 と僕が言うと、イオくんもそれに付け足した。

「クエストでな。一応届け物とかも色々預かってきてる」

「へえ、どのあたり?」

「もうちょい東方向だな。おそらくあそこにある高い山が火山で、その麓に集落があると聞いている」

 イオくんがすっと指さした先には、僕ぜんっぜん気づいてなかったんだけど、たしかに高い山がひとつそびえ立っていた。ヨンドの方向が連山なら、こっちは富士山みたいにぽつんとある感じ。現在地が森の中だから見えにくいのに、むしろイオくんよく気づいてたなあ、と思ってしまう。

 山って数え方何だっけ? 一峰? 一座? あとで確認しとこう。 


「火山か……」

 雷鳴さんはイオくんの指さした山を見上げて、ふむ、と大きく頷いた。興味あるのかな? 

「あの山頂の形からすると過去に噴火はしているはず……。火山灰土壌は水はけが良くてサツマイモの栽培に向いてるんだったかな」

「農家の人の考え方してる……!」

「根菜は試してみる価値がある。同行しても?」

 最後のは僕たちへの問いかけだ。本気でこの人農業のために火山の麓行きたいのかな……? と思いつつ、イオくんに視線を向けておく。僕は問題ないと思うけど、イオくんはどう思う? という視線だ。

「鬼人の集落までなら、構わんぞ。その後は俺達にも予定がある」

「もちろんそれで問題ないよ」

 じゃあよろしく、と軽く言いながら雷鳴さんはイオくんに対して連結の申請をしたらしい。僕たちのパーティーと連結することで、一応お互いの状態を知れたり位置情報が獲得できたりするので、はぐれても安心だ。

 よろしくーとにこやかにしている僕たちの間で、テトさんだけがちょっとだけ不満そうにむむむーっとしている。どうしたの? って聞いてみると、らいめいはナツのことなでたのにテトのことなでてくれないのー。と拗ねている様子……。本当に君は全人類自分を撫でるべきだと思ってるな!

「雷鳴さん、よかったらテトのことを撫でてよろしくって言ってあげてください」

「うん?」

「なんか僕は撫でたのにテトを撫でてないことについてご不満なので」

「ご不満なんだ……?」

 繰り返した雷鳴さんは、その後ちょっと笑ってからテトを無事に撫でてくれました。とたんにごろにゃーんと満足そうにするテトである。



 さて、魔法槍士の雷鳴さんが前衛に入ったので、後衛の僕はテトに乗って移動することにした。フォールバードの生息地をようやく抜けたからだ。<迷彩>スキルのレベル上げもしたいし、何よりテトがものすごく期待している瞳で見てくるので……これを僕は無視できない……!

 そう言えばテトに乗ってない時、僕が見つかる確率は低いけど0ではなかった。でもテトに乗ってると0なんだよね、<迷彩>だけじゃなくてテトがなにかしてくれてるのかな。と思ってこっそり聞いてみたら、「みえづらくしてるのー」とのお返事だった。

「見えづらく……<空間魔法>?」

 くーかんまほう。べんりー。

「そうなんだ。ありがとう、助かるよー」

 ナツまもってあげるのー!

 僕の褒め言葉に満足げなテトさんは、弾むような足取りで前を行くイオくんたちを追いかける。雷鳴さんがいるから、<原初の呪文>は使わないようにして……あ、そうするとしばらくスキルレベル上がらないだろうし、上位魔法のスキル取っちゃったほうがいいかな。

 うーん、ここは雷鳴さんもいることだし、<雷魔法>とってみますか! 気になってたし、氷はイオくんの剣が一応氷属性だからあとでもいいかなって感じだし、<樹魔法>はいまいちイメージし辛いから先に情報収集したい。SP5も必要だから気軽に全部取ろう! ってはできないしなあ。

 さて、それじゃあ取得、っと。


 <雷魔法>を取得すると、アーツに【サンダーアロー】と【スパーク】が追加される。おなじみアロー系魔法は基本の攻撃魔法なので良いとして、【スパーク】っていうのはなんだろう、と説明を読む。

 火花を散らす……? 色も変えられます……っていうのは別にいらないけども。何のために使う魔法なんだろうこれ。色とりどりのスパークを散らしたら綺麗そうだけど、そういう娯楽要素でいいんだろうか。

「イオくーん、今<雷魔法>を取得して【スパーク】ってアーツを覚えたんだけど、火花を散らすアーツってどういう用途があると思うー?」

「ここに敵が居るだろ? 眼前にばしっと火花散らしてやれよ」

「あ、なるほど!」

 さすがイオくん頭が良い! そんなさらっと答えがもらえるとは思わなかった。そしてすぐそこにいた敵はまたしてもミニウルフである。今ならまだ死角から攻撃できそう。

「えーと、敵は3匹かな? せっかくだし【スパーク】やってみていい?」

「おう」

「アローも見せて欲しい」

「了解」

 雷大好き雷鳴さんからもリクエストいただきました。じゃあ、まだ見つかってないのでここから……ユーグくん、ミニウルフの目をしっかり狙っていくよー。


「【スパーク】!」


 ギャンッ! とめちゃくちゃ痛そうな悲鳴が響いた。瞬間、残りの2匹がこっちに気づいて身を低くする。ちゃんと【スパーク】は目に当たったみたいで、敵を<鑑定>すると盲目の状態異常が1分と表示された。1分! 長いな! これは使えるかも。

「右のミニウルフに【ブラインド】!」

「よし、【強撃】!」

「おお、デバフいいね。<闇魔法>まだレベル7なんだよなあ……【アドフレイム】、【突撃】」

 雷鳴さんは魔法槍士らしく、槍に属性を付与してダメージ量を上げている。ミニウルフは闇属性だから、<光魔法>を使うべきなんだろうけど……取ったばかりの<雷魔法>を使おう。

「いくよー、【サンダーアロー】!」

 試しに撃ってみた【サンダーアロー】の威力は、弱点属性ほどじゃないけど、なかなか強い。闇属性に対して【ライトアロー】は100、他の属性魔法が70のダメージを与えるとしたら、90ちょいくらいのダメージ量って感じ。<雷魔法>の攻撃は全て、稀に麻痺状態を付与するものなんだけど、そのせいでクールタイムは少し長めだ。

「【ロックオン】、【ヘイトスティール】」

 即座にヘイトを吸ってくれたイオくんに感謝しつつ、バフをもりもりかけていく。雷鳴さんにも多少かけたいところだけど、イオくん優先で。<風魔法>の【ヘイスト】は俊敏足りねえとぼやきがちなイオくんには特に喜ばれる。


「【ウィンドアロー】、【ダークアロー】」

 ここぞとばかりにイオくんの影から魔法を打ちまくっている雷鳴さんだけど、その威力はそこまで高くない。僕の7割~8割って感じかな。……いや待って、雷鳴さんは魔法槍士なわけだから、そう考えると結構強いのか。魔力どのくらいなんだろう? 魔法剣士系のステータスビルドは、筋力優先でPP振って魔法は補助に使う構成が主流だったはず。

「【ミスト】!」

 さっき【ブラインド】をかけた敵が立ち直りそうだったので、再び視界を奪っておく。同時にイオくんが危なげなく1匹目のミニウルフを倒した。

 集団で来るしアクティブだから強い敵ではあるんだけど、流石に前衛も増えた上に1匹集中砲火していけば危なげない感じだ。レベルも格下になるし、倒しやすいな。

「【サンドウォーク】っと、間違えた。<土魔法>は上級になってるから、他の使わないと」

「雷鳴さん自分にバフ盛って!」

「忘れてた。普段そんな余裕ないけど、確かに」

 なんてアドバイスを挟みつつ、雷鳴さんも危なげなく前衛をこなしていく。戦闘系のスキルは、意識して使わないと全然レベルが上がらないからなあ。というわけで対峙しているミニウルフのHPが半分を切ったのを確認して、僕も大技を撃たせてもらおう。

「【魔力強化】からの【ライトランス】!」

 見よ、魔力46上級魔法士が放つ弱点属性の単体攻撃バフ盛りバージョンを!

 ユーグくんが普段の1.5倍はでかい光の槍を繰り出して、ドカンと魔法らしからぬ音が周囲に響き渡った。


 ミニウルフの残りHPは無事に粉砕されました。

 ……いやちょっと待ってオーバーキルじゃないこれ? なんで急に魔法の威力上がった!?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ