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18日目:如月くんの行動力

 ミミムちゃんのお母さんの妹がササラさんだということが発覚しました!


 実は彼女の両親以外の親戚や血縁者に対しての調査は、まだ始まったばかりで何もわかっていなかったらしい。つまり新発見の情報なわけである。

 そうなんだー? って不思議そうにしていた僕に、オーレンさんが説明して曰く、目覚めてすぐの2人は何が起きたか理解できずに警戒していたため、ほとんど聞き取りが出来てなかったそうだ。ようやくオーレンさんへの警戒を解いて名前を教えてくれたのは、なんと今朝のことだとか。

 それからすぐにフィズくんの身内は探し出せたし、ミミムちゃんのご両親がサンガを出ていることまで突き止めたのなら、情報早いほうだね。

「ササラおばちゃんはね、ミミムの靴を作ってくれたの。これだよ」

 ちょっと自慢げに自分の靴を見せてくれるミミムちゃん。可愛らしいドヤ顔ににっこりである。ちんまい靴は明るい茶色の丸くて女の子っぽいやつだった。うーん、冒険靴とは違いすぎて、ササラさんの作だね! とか断言できないのが残念だな。


「偶然だねえ、僕のこの靴もササラさんのところで買ったんだよ」

「ササラおばさんが作った靴?」

「イチヤから来たからね!」

 実際ササラさんが作った靴なのかはわからないけど、ササラさんのお店で買ったのは間違いない。ミミムちゃんがちょっと僕たちと会話する気持ちになってくれたので細かいところは良いのだ!

「おばさんとお母さんは靴職人なんだよ。お父さんはね、カバンを作ってるの」

「そうなんだ、すごいね! それならやっぱりイチヤに居るかもしれないね。ササラさんの靴屋さん、ミミムちゃんのお母さんと一緒にやってるのかもしれないよ」

「ほんと?」

 ここにきて初めてミミムちゃんが少しだけ笑顔になった。ドワーフの子ども、本当にお人形さんみたいでかわいいなあ。フィズくんと比べるとだいぶ小さいミミムちゃんだけど、2人は同い年なんだってビストさん情報があったよ。


「一回情報収集出来たらいいんだけど。如月くん、イチヤにいる相棒さん……えっと、睦月くんだっけ? 調査を頼めないかな?」

「いやー、賭けてもいいんですけど、あいつササラさんの店知りませんよ」

「そんな自信満々に言われても……!」

「自信ありますね!」

 うーん、如月くんと睦月くんの関係性謎……! いやなんとなく察せるけども! でも一応確認とかしませんかね如月くん!

 と説得したところ、如月くんは「じゃあ念の為」と言ってフレンドメッセージを送っていた。これでササラさんのお店知ってたらこの問題は結構前進すると思うんだけどなー。残念ながらショップカードはメッセージに添付とか出来ないんだよね。

「ログインしてるからメッセージに気づいたら返事来ると思います」

 と如月くんが言うので、少しの間返事待ちすることに。睦月くん早く気づいてー! と念を送りつつ、少しの間子どもたちと遊ぶことにした僕たちだった。



 睦月くんからの返信があったのは、それから30分後くらいだった。

 僕がミミムちゃんに絵本を読んで、如月くんがフィズくんと庭で追いかけっこをしている間、イオくんがオーレンさんにレーナさんから聞いた学校計画の話をするという、てんでばらばらな時間を過ごしていた最中のことだ。

「だめですね、やっぱあいつササラさんの店知らないみたいです」

 という言葉とともに室内に戻ってきた如月くんは、しゃがんでミミムちゃんと目を合わせた。

「ミミムちゃん、よかったら俺と一緒にイチヤに行く?」

「……イチヤ?」

「そう、ササラさんの所」

 如月くん、すごくお兄ちゃんっぽいな。これはもしかして弟か妹が居るタイプかも。いつの間にかフィズくんもすごく如月くんに懐いていて、しゃがんだ如月くんの背中にていっとしがみついている。そのフィズくんが、

「如月兄、ちょーいいやつだぞ! しんよーして大丈夫だと思う!」

 とか言っている。……小さい子供に好かれるタイプ……! 羨ましい……っ! 10歳以上年下のいとこに呼び捨てにされた上に「おやつ分けてやるよ!」とか言われる僕と大違いですね……って言ってて悲しくなってきた。一度でいいから夏樹兄とか呼ばれたい。小さい子から尊敬の眼差しで見られたい……!

 そんな気持ちを噛み締めていると、ミミムちゃんは迷うように僕を見上げたので、僕も力強く頷いておく。

「如月くんは頼りになるよ!」

 実際結構お世話になってるからね! 僕が!


「あ、いやよく考えたら俺が転移装置でイチヤに飛んで、ササラさんに伝えるのでもいいのか。小さい子供を連れて馬車に乗るよりはそっちのほうが確実ですかね」

「なるほど如月くん頭いい。ササラさんがミミムちゃんのご両親に連絡取って、サンガに戻るよう言ってくれるかもしれないし、そっちのほうがいいかも」

 子供が3日間馬車に揺られるの結構しんどいよねー。キヌタくんは楽しんでたけど、ミミムちゃんは見るからにインドア派っぽいしなあ。戸惑っていたミミムちゃんが、その提案にちょっとだけ安心したような顔になったのがわかる。そうだよね、いきなり今日知り合ったばかりのトラベラーと旅するなんて、流石にちょっと怖いか。ミミムちゃんは女の子だし、女性と一緒ならまだもうちょっと安心できるかもだけど……。

「ありがたいですが、お願いしても良いんですか? 如月さんもイチヤからサンガに来たのですよね、戻ることになりますが……」

 ミミムちゃんに変わってするっと会話に入ってきたのはオーレンさんだ。申し訳無さそうな表情だけど、転移装置は1日1回無料で使えるから、トラベラーにとっては戻ること自体は苦じゃないよね。1日で往復しようと思ったらそれなりの使用料を取られるけど……えーと、正道がつながっている街から街へは1回100,000Gで、正道がつながってない街へは1回200,000Gだったかな?

 多分もう少し金策とかが充実してきて、お金がたくさん稼げるようになったらこの出費もそんなに痛くないんだろうけど、今は結構痛いかなー。そうすると、今日イチヤに飛んで、明日戻って来る感じになるね。


「戻ること自体は問題ないですよ。転移装置が使えますから。オーレンさん、できればササラさんに事情を伝える手紙とか書いてもらえるとありがたいです」

「ああ、もちろん一筆書かせていただきます。……ミミム、あなたもササラさんにお手紙を書いてくれませんか?」

「お手紙、書く」

 こくっと頷いたミミムちゃんが、両手をぐっと握りしめた。がんばるのポーズである。この2人からの手紙もあれば、ササラさんも信じてくれそうだね。

「如月くんさすが、行動力がある。僕たちも一緒に行ったほうがいい?」

「ああ、いえ。ナツさんたちゴーラ行くんでしたよね? 俺はほら、ただ待ってるだけなんで、時間を有効活用というか。ちょっと物陰からあいつの様子見たい気持ちもありますし」

 遠い目をする如月くんである。そんな物陰から見守らなくても普通に会いに行けばいいのに、と口にした所、いやいや、と首を振られた。

「あいつ甘やかすとつけあがるんで!」

「犬のしつけみたいな話してる!?」

「犬ならまだ覚えるだけマシと言うか……」

「学習しない感じの話してる……!」

「駄犬なので……」

「結局犬の話してた!? あれ-!?」

 あ、そういえば犬系獣人さんなんだったっけ? そ、そういう話だよね多分。うん。多分!


 ま、まあなんか不安な話があったような気もするけど、結局如月くんが転移装置でイチヤに向かって、ササラさんにオーレンさんとミミムちゃんからの手紙を届けるってことで話がまとまった。丸く収まりそうで良かった、これでミミムちゃんの親族だけ見つからないままだったりとかしたら、気になってなかなかゴーラ行けないからね。

 オーレンさん家をおいとまして、ミミムちゃんとフィズくんにも手を振って一旦ギルドまで戻る。転移装置はすでに登録しているから、イチヤとサンガ間は問題なく使えるはず。

「じゃ、俺はさっそく行ってきます! ナツさん、イオさん、ゴーラ行き楽しんでください、またどっかで会いましょう!」

 と爽やかに告げる如月くん。待って何か忘れてる気が……あ、家の新入社員。如月くんにも懐いてたから、このままお別れさせるのは酷というものでしょう。


「テトー! 如月くんにご挨拶してー!」

 なぁにー?

 僕が呼ぶと、ぴょいんとブローチから飛び出す白猫。ギルドに居るとわかると、すっ……とおすましポーズを取るのは、前にはしゃいで怒られたことを覚えているから……かな? うちのテトは本当に賢い子です。

「如月くんはこれからイチヤに行くから、ここでお別れだよ。僕たちも明日にはゴーラに向かって出発だからね」

 おわかれ……?

「うん、また会うと思うけど、しばらくはバイバイだから、ご挨拶して」

 きさらぎー! なんでー? いっしょがいいのー!

 にゃーっ! と抗議の声をあげつつめちゃめちゃに如月くんにすり寄るテトさん、如月くんはよく撫でてくれる人だから好きらしい。もふもふとまとわりついてやだやだーってしているけれども、流石にパーティーメンバーでもないのにずっと一緒は無理だからなあ。


「もしかして俺めちゃめちゃ別れを惜しまれてます……?」

 不思議そうに言う如月くんに、

「めっちゃやだやだって言ってる」

 と翻訳すると、照れてたよ。最後に力強くテトをもふって、満足げに「じゃあまた会いましょう!」と爽やかにイチヤへ向かう如月くんなのだった。

 ナツ……きさらぎいっちゃったの……。

 しょぼーんとするテトさん、お気に入りの撫で要員を失った悲しみの表情である。うるうるした眼差しで僕とイオくんに交互に懐いて慰め撫で待ちしている。

「またどこかで会うだろ、その時に構ってもらえ」

 お、イオくんが慰めた。さすが身内には甘いイオくん、さっきまで子ども相手に人見知りしてたとは思えない優しさが見えますね……!

「そうだよー、如月くんとはまた後で一緒に遊ぼうねー。僕たちはゴーラにいくから、それより先にプリンさんとまた会えるかなあ」

 ピーちゃんせんぱいー。

「先輩なの!?」

 なんか思いもよらない呼び名が飛び出したのでちょっと驚いたけど、ピーちゃんが頼れる先輩なのは正しいので、まあいっか!

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