表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
151/338

18日目:テトの首輪会議

 ナツー、ナルとあいたいのー。

 と、おねだりしながらスリスリしてくる巨大白猫、朝からかわいいなー。とほんわかしながら起き上がる。

「テトおはよー。ナルのところ行くの?」

 あのねー、ナツとイオごあいさつしてるからテトもするのー。

「ああ、ゴーラ行くよーのご挨拶だね。OK、それなら今日はまずナルに会いに行こうか。テトの首輪も依頼しないといけないしね!」

 わーい!

 喜びのあまりぴょいんと飛び上がったテトさんは、そのまま隣で寝ていたイオくんのお腹の上に思いっきり着地した。「ぐえ」と滅多に聞けない声がイオくんの口から出たぞ今。

「……おい流石に朝から暴力は勘弁しろ……?」

 もしかしてログインと同時にお腹にダメージだったんだろうか、それは災難だったね……。テトは自分がイオくんを踏んづけたことなど全く認識していないので、とっても呑気に「イオー、おはよー」とすりすりしている。うーん、すごく僕の契約獣って感じ!


 昨日はレストさんのお店を出てからトラベラーズギルドへ向かって、作業場を借りて納品用のテトビタDをしっかり作った。事前にMPポーションを買い込んでからの作業だったので、納品分を作り終わったら普通の聖水も何個か作ってストックしておく。<聖水作成>スキルは無事に4にあがって、SPが2増えたのであった。

 ……まだまだ足りないんだけどね!

 <原初の呪文>のSP貯める前に、上位魔法取っちゃってそっちをレベル10まであげたほうが早いかもしれないなあ。正道外れたところを旅する予定だから、戦闘はガンガンするだろうし……。

 うーん、と唸っている間に、テトを「このやろうめ!」と撫で回していたイオくんがダメージから復活したらしい。とりあえずはいつものように、ギルドのフリースペースへ移動して朝ご飯を食べようか。



「ナツさん、イオさん、テト、いらっしゃーい! 今日はどうしたのー?」

 シーニャくんのお店に入ると、元気な声が歓迎してくれた。昨日も訪問したから、連日すみませんねって感じに申し訳なく思いつつ、「おはようございまーす!」と挨拶。

 開店と同時の入店だったから、他にお客さんはいないみたいだ。これならテトの首輪についてシーニャくんに相談しても大丈夫かな?

「シーニャくん、実はテトの首輪について相談に来たんだけど……」

「あ、首輪作るの? どんなのがいいー?」

 サンプル持ってこようか? と聞いてくれるシーニャくんに、イオくんがテトが選んだ組紐をさっと取り出して見せる。

「紐はこれだ」

 ナツのいろなのー。テトえらんだんだよー。

 とドヤ顔でそんなことを言っているテトさんである。うーん、うちの子ちょっとかわいいが過ぎるな。良い子良い子。

「へー、きれいな紐だね! ……うん、強度も問題無さそうだし、これで作れるよー。あとは合成素材をどうするかだねー」

「合成素材?」

「えーと、これは素材としては布に属する素材だから、強化素材も布に対応しているやつだけ選べるよ。この組紐だと……品質の合計が★15まで、素材合計3つまでかな?」


 あ、なるほど。武器の強化と同じようなシステムかな?

 でも3つで15以下ってなると……1つ★5くらいを想定してる感じか。ラメラさんの鱗とかは……あ、これ布対応してない……っ!

「トレントの素材、新緑の若葉が★5で布対応だな」

「イオくんさすが! すっかり忘れてたけどそんなのもあった!」

「忘れてんなよ」

 いや、だって結構昔のことのように感じるからさ……。サンガに来てからイベント山盛りで、毎日があっという間に過ぎ去ったせいです。

「他に布対応は……あ、神蛇さんの脱け殻とソウさんの羽が行けそう」

 僕がインベントリから取り出して並べた素材を見て、シーニャくんは「ええ!?」とびっくりしたような声をあげた。あっ、そういえば珍しい素材なんだっけ……! 

 ちなみにソウさんの羽は、ソウさんに赤炎鳥の卵石を届けたクエストの成功報酬でもらいました。知らない間にインベントリに入っててびっくりしたんだよこれ。共有インベントリに3枚入ってたから気づくのが遅くなったんだよね。ちなみにこれは★5で、脱け殻のほうが★7。


「ちょっとナツさーん。そんな貴重なものさらっと出さないでよー。あんまり見せびらかしたらだめだよー」

「ごめんごめん。つい勢いで……テトどっちがいい?」

 シーニャくんが注意してくれたのは、多分珍しいものは盗難の危険があるよとかそういうことだよね。この世界いい人ばっかりだから、警戒心あんまり抱けないんだけど……今後は気をつけます……イオくんもなんか呆れた顔してるし!!

 とりあえず話をそらそうとテトに話しかけると、テトはむむむーっと2つの素材を見つめた。すんすんと匂いを嗅いで、じーっと素材を見つめたあと、テトはにゃ! とソウさんの羽の方をてしっと抑える。こっちが良いという意思表示だ。

「ソウさんの羽がいいんだね?」

 おそらとぶのすきー。

 そっかー、テトも翼を授かりし者だからねー。じゃあ脱け殻の方はさくっとインベントリに戻して、っと。

 ちなみにこの青炎鳥の羽の効果は、魔力に対する何らかの良い効果、及び炎鳥に遭遇しやすくなる効果の2つ。つまりこの羽を使ってたくさん炎鳥に出会って、たくさん卵石を配ってね! という意味だろう。そういう意味でもこの羽を表に出しておくのは良いことだ。


「えーと、これで合計★10だから……あと1ついけるけど何かあるー?」

 シーニャくんが問いかけるけど、他のアイテムで布に対応している強化素材ってなかなか無いんだよね。ウォータースパイダーの糸とかポイズンシープの毛は布対応だけど、どっちも品質★3だしなあ。

 僕が一人で唸っていると、イオくんが代わりに口を開いた。

「この店で素材を売ってたりはしないのか?」

「あ、一応あるよー」

 え、あるんだ。……イオくんよくその可能性に気づいたね! さすが僕の親友賢い! えらい!

「でもその羽や若葉ほどよい素材じゃないかなあ。★5の素材だと……この辺だけど、そんなに良い効果がつくものじゃないし、おまけ程度だよー」

 と、シーニャくんが見せてくれた素材の一覧は、お品書きになっていた。イオくんといっしょに一つ一つ確認して、どれが良いかなーと話をする。おまけ程度の効果とシーニャくんは言っていたけど、素材は合成して初めてどんな効果が付くか判明するらしく、新緑の若葉と青炎鳥の羽は合成された履歴がないから、どんな効果が付くのかはわからないんだって。

 で、お品書きにまとめられているのは、今まで合成された履歴のあるものだけ。あ、ポイズンシープの毛もあったけど、毒無効かあ……テトは戦わないからあんまりいらないなあ。

「んー、強いて言うならこれかな? ツノチキンの羽」

「どれ? ああ、ダッシュ速度上昇か……悪くないな」

「あー、それねー。瞬間速度の上昇だから、実は3秒くらいしか持たないんだよねー」

「3秒……」

 うーん、確かに微妙……! なんかどれもそんな感じに絶妙に足りない感じの効果ばっかりだなあ。


「テトどんなのがいいとかある?」

 決定打に欠ける為、テトに話を振ってみると、のほほーんと日向ぼっこをしていたテトさんはどれー? お品書きを覗き込んだ。そのままふんふん鼻歌を歌いながら目を通していく。今日のお歌は「ぽーかぽか♪ おーひーさまー♪」だそうです。いつかこの歌全部イオくんにも聞かせてあげたいよ僕は。

 やがてテトは目録の中からぴんと来たのがあったのか、これー! と元気に前足でタッチ。

「……白八重花のドライフラワー? これでいいの?」

 しろいのー。おはなー。

「そう言えばテトは白いの大好きなんだった。イオくんこれどうー?」

「甘い香りでリラックスできます。……テトお前、これ以上気を抜いてどうするんだ……?」

 あまいのー?

「お花食べちゃ駄目だよテト……」

 むー。たべないのー。

 にゃー! と抗議の声を上げるテトである。


「白八重花? ちょっと待ってねー、えーと、こっちの棚に……」

 シーニャくんは早速そのアイテムを持ってきてくれて、これだよーと僕たちの前に置いた。リアルで言うところの椿……? 椿とバラの中間みたいな感じの花かな。真っ白で丸い花びらだけど、大きさは通常の椿の倍くらい大きい。大輪の花だ。

「<鑑定>。……あ、イオくんこの花、良い香りで契約獣の機嫌を保つって書いてあるよ」

「今より陽気になるのか……?」

「拗ねにくくなるのかもしれない」

「……よし、許す!」

 昨日盛大に拗ねられた記憶が頭をよぎったらしいイオくん、少し迷った後に採用を許した。そしてイオくんが許すというときには「ゆるされたー!」と答えるテトさんである。僕とイオくんのやり取りでいつの間にか学んでいるのでうちの子本当に賢いと思うんだ。

 そんなテトをじっと見つめて、

「今より呑気にはなるなよ?」

 と真顔で言い聞かせるイオくん。別に呑気になっても良いと思うんだけどねー、と言ったら、ナツみたいなのが2人になったら大変だろうが、と返されました。し、失礼な……! 僕そこまで呑気じゃないはずだよ!?


「じゃあ合成はこの3つで、首輪はこれね。2・3時間貰えれば作れるけど、どうするー?」

 すべての材料を引き取って言うシーニャくんに、僕は今日のもう一つの目的の方を話すことにした。テトはナルに会いたいって言ってたけど、僕とイオくんにも会いたい人がいるのだ。

「ハイデンさんのお見舞いに行くので、ナル貸してください!」

「あ、また連れてってくれるのー? 助かるよー!」

 そう、ハイデンさんはまだ入院中で、当面安静にしてなきゃいけない状況。ご挨拶しようと思ったらお見舞いに行くしか無いのだ。思えばナーズさんには会えたけど、ミーアさんとレーナさんにはまだ会えてないし、ハイデンさんに会いに行くついでにその2人の情報も集めたいところ。ハイデンさんが知らない場合はナーズさんのパン屋さんまで聞きに行くことになるかな?

 テアルさんにもできればご挨拶したいけど、あのお屋敷にもう一度行く勇気はないし。ここはハイデンさんに挨拶するついでに、テアルさんにも会ったらお伝え下さい、で済ませたい。

 シーニャくんは快く承諾してくれて、奥の部屋からナルを連れてきた。だいぶ元気になったように見えるナルだけど、本格的な体力づくりはこれからなんだって。特にナルはフォレストシーカー、森を探索する事が役目の契約獣だから、木に登ったり草むらを探ったりするのが好き。今の状態だとまだ木登りは難しいみたい。


 ナルー。げんきー?

 にゃんにゃーっとご機嫌にナルに駆け寄ったテトに、ナルは「チュ、チュチュー」ってな感じに言葉を返している。前回会ったときよりだいぶ声も元気そう。

「あれからトラベラーさんも2人位協力してくれて、ハイデンさんのお見舞いに連れてってくれたよー。契約主と契約獣はあんまり長く離れていると不安になっちゃうから、本当に助かるよー!」

 お、如月くんかな? 前にハイデンさんのお見舞い行くとか言ってた気がする。

 おいしいのー。あとでマロングラッセわけてあげるねー。くりはとってもおいしいたべものなのー。とテトが喋っているのに、ナルがなにやら相槌を打ったり反応したりと、やっぱり仲良さそう。微笑ましいなーと僕が見ていると、イオくんが2匹に近づいていって、ナルをぽすっとテトの背中に乗せた。

「よし、ハイデンの見舞いに行くぞ」

「チュ!」

 わーい!

 密かにかわいい生き物好きなイオくんなので、きっとテトの背に乗るナルの素敵なスクショを撮ってくれているはずである。

 後で回してもらおう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] テトの可愛さがクリティカルヒット! 飼い主思いでノリ良くって賢い! もう、萌えるしか無い!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ