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16日目:プリンさんの出発

「わあ、すっごいもふもふね! やっと会えて嬉しいわ、テト!」

「モフモフヨー!」

 歓喜の声を上げたのはプリンさん、そしてピーちゃんである。特にピーちゃんは「モフモフ! モフモフ!」と叫びながらテトの周りをぐるぐる回り、最終的にぽふっとテトの頭の上に身を沈めた。謎に自慢気にむふーっと胸を張る鳥さん、かわいいな相変わらず。

「テトチャン、モフモフヨ! ステキ!」

 ありがとー。ピーちゃんもいろがきれいですてきなのー。

 とかなんとか、仲良さそうな会話がかわされている。猫と鳥だから相性的にどうだろう、とちょっとだけ危惧してたんだけど、心配ないみたいで僕は一安心だよ。

 プリンさんもにっこにこで「大きな子もかわいいわね!」とスクショタイムっぽい。まあ僕もスクショしますけど! だって巨大猫の頭上に鳥さんだよ、かわいいじゃん!


「少し会わない間にプリンさんも大分装備変わったねー」

「そうなの。頑張って色々揃えてみたわ、まだ改良の余地はあるけど、大分パフェっぽさがましたと思ってるの」

 その場でくるりと回ってみせたプリンさんである。リンゴモチーフの髪飾りとか、イチゴモチーフのペンダントとか、よく見れば上着のボタンもさくらんぼの形だなあ。服は白とピンクベースのブラウスに、茶色と黄色の中間くらいの色のスカート……フレークと生クリーム、そしてジャムとか、そんなイメージだろう。

「確かにパフェ感増したかも」

「でしょう?」

 僕の言葉ににこやかに微笑むプリンさんである。

 ところで、今日は如月くんと待ち合わせて、マロネくんと縁があるらしいサラムさんのところへ行く事になっていたはず。ここにいるということは、プリンさんも一緒に行くのかな?

 と思っていると、如月くんと目が合った。

「あ、違いますよナツさん。プリンさんが今日の午前の乗合馬車でゴーラに行くから、お二人にも挨拶したいって話になったので連れてきただけです」

「くっ、如月くんにもあっさり心読まれる……!」

 おかしいよ、僕の回りに居る人達なんでこんなに察しが良いんだ!


「ゴーラかー! 海だねプリンさん! 魚介の宝庫!」

「そうなのよ、タイミングよくクエストを拾ったから先に移動するわ。ナルバン王国の東の端から、西方向へ地図を埋めて行こうと思うの」

 朗らかに笑って、プリンさんは続ける。

「ナツくんにはサンガのお店情報を色々教えてもらって助かったから、挨拶をして行こうと思って。今度は私がゴーラのお店をリサーチしてメッセージ入れておくわね!」

「わー、それめちゃくちゃ助かる! よろしくお願いします!」

 プリンさんとは、タイミングが合わなくてグロリアさんのお店にいったとき以降は一緒に行動できなかったんだけど、フレンドメッセージのやり取りは結構してたんだよね。リィフィさんの屋台の飴とか、ラリーさんのグルメガイドとかもめちゃくちゃ食いつかれたっけ。あれから妖精の朝市にも行けたって話は聞いてた。

「ゴーラまで行くと敵がちょっと強くなるらしいけど、契約獣は増やさないの?」

「強化が足りてないのよね。石が足りなくて」

 ほう、とため息を吐くプリンさんである。

「ゴーラにいったらまずクエストをこなして、石を貯めてガンちゃんの強化を終わらせて……それから新人さんを召喚チャレンジかしら。一応、召喚術による召喚は場所の影響を多少は受けるらしいの。だから海辺でなら水属性の子が来てくれるかもしれないと思って」

 ピーちゃんは風属性で、ガンちゃんは土属性だからね、とプリンさん。なるほどー、そう言えば家のテトも風属性だから、同じ属性同士で意気投合したのかなあ? 翼を授かりし者同士、通じ合うものがあるのかもしれないね。

 非戦闘用の契約獣たちなら、属性とかあまり気にしなくて良い要素だけど、戦闘用となるとそうは行かない。敵の属性に合わせてメンバーを入れ替えたりしないといけないから、なるべく属性はバラけてくれたほうがありがたいらしい。


「こういうのは縁だから、本当はどんな子が来てくれてもいいんだけどね。どうせなら役割が被らないほうが、みんなに活躍の機会があって良いとも思うし」

「なるほど。水属性でなくても、今いない属性の子が来てくれたらいいね」

 一応プリンさんが全属性使えるはずだから、被っても問題ではないか。

 そんな話をしていたところ、テトの頭の上から華麗に飛び立ったピーちゃんが、くるりと空中で一回転して今度は僕の頭の上にぽすっと収まる。

「ナツー、テトチャンヨイコネー」

「でしょー。自慢のうちの子です」

「ナカヨシー?」

「仲良しだよ!」

 なかよしなのー。

 んにゃっ! と一声鳴いて、テトがぼくにすりーっと体を寄せる。それを見ていたピーちゃん、さらに続けた。

「ナツハ、ピーチャントモナカヨシヨー?」

「仲良しだねえ」

 ピーちゃんもとても良い子ですから、もちろん。うんうんと頷きつつ頭の上のピーちゃんを撫でると、テトはなぜかショックを受けたような顔をして、にゃにゃにゃにゃーっと一気にまくし立てて、曰く。


 テトのほうがなかよしだもん! ナツはテトのけいやくぬしさんだもん! テトいちばんなかよしだもんー! 


 だ、そうで。一生懸命ぽすぽすと僕の背中に頭突きをしているテトさん、とても可愛いと思います。ちゃんと手加減してくれる優しさ、テト良い子だなあ……あれ?

「……テト、なんか温かい?」

 思わずぎゅーっと抱きしめてテトの体温を感じてみる。気のせいかな、天日干しした布団みたいなじんわりとした温かさを感じるような……? テトは途端に機嫌を直して尻尾をぴっと立てた。

 ぬくぬくー。

 にゃはーっと笑顔のテトだけど、温かさの原因は……あれかな、ツノチキンの楽園で小屋から見つけたなんとかの卵石。あれをテトの収納に入れっぱなしにしてるんだったっけ。

「ちょっと<鑑定>してもいい?」

 いいよー。

 というわけで<鑑定>っと。……んー? 「???の加護」って、ステータスのところに表示されるんだけどこれ表示位置的にバフ……だよね? まあ加護ってからにはなにかしら良い効果だと思うんだけど。

 じーっとテトを見てみると、なんとなーく毛艶がよいような……? 目がキラキラしているような……ってこれはもとからか。違いはよくわからないや。

「……ま、いっか!」

 良い効果なら放置しててもいいでしょう! これがデバフだったら速攻解除しなきゃってなるところだけれども。


「ピーチャンモチョットオモッタワー! テトチャンアッタカイノヨー」

「だよねー。まあモフモフだから温かいのもあると思うけど」

「モフモフー!」

 ピーちゃんはモフモフという単語が気に入ったらしく、楽しげに叫びながら今度はプリンさんの肩にぴょいと飛び乗る。満足そうだ。

「じゃあ、私達はもう行くわ。住人さんたちにも挨拶して回らなきゃ。ゴーラでまた会えたらいいわね」

「マタネー! ナツー、テトチャン、ツイデニイオモー」

「ついでか」

「イオくんさっきから一言も喋ってないからね!? そういうところだぞ!」

 これだから人見知りは! ちょっと会わないとすぐ好感度リセットされるんだから! まあでも誰にでも愛想の良いイオくんとかちょっと解釈違いなので良しとします。

 プリンさんとイオくんは互いに軽く会釈をし合って挨拶終了の様子だ。まあ、イオくんにしては無視しなかっただけ良い反応だよ。ピーちゃんはちゃんとイオくんの頭にも乗りに行って、「マタネー」と言ってくれたので、イオくんは満足そう。

「キサラギー、マタネー!」

「如月くんもまた何かあったら連絡するわね」

「はい、ゴーラまで気をつけて、良い旅路を!」



 プリンさんを見送ってから、さて、それじゃあ僕たちも行きますかってことになって、ギルドを出た。

 目指すのは、まずシスイさんから紹介された焼き菓子の店「スイートメロウ」。まずは手土産から買いましょうって話だ。ついでにその近くにあるサンガで一番美味しいパン屋さん「スターブレッド」にも足を運びたい。

 ショップカードはレア以外のものならお店で直接カードをもらうことで複製回数が増えることがわかったので、ためらわずに如月くんに渡しておいた。

 稀に、カード持ってないと入れない店とかもあるらしいからね。

「ナツさんたちと一緒だと白地図埋まるからありがたいですねー」

 なんて如月くんもにこにこである。 ショップカードがもらえることについては、判明した時掲示板がかなり荒れたらしい。もらえるならたくさんもらっといて配りたかった! という方向で。僕も複製は1回しかできないと思ってたから、その気持もわからなくはない。でも、結局キラキラのレアショップカードは複製できないんだよね。


 さて、目的の店は水辺通りから更に西方向に伸びる、小さな路地のような場所にあった。名前は特に表示されなかったから、多分無いのだと思う。パン屋さんの前に出ていた看板によると、この店は朝8時開店で午後3時閉店というサイクルらしい。

 すでに朝一番のピークは過ぎたところなのか、店内にお客さんの姿はまばらだ。そして商品もかなり減っていて、ここからまたお昼に向けて焼き立てのパンが並ぶのかな、と思われる。それにしてもパンの焼き立ての匂いってめちゃくちゃ美味しそうで、ついふらふらとお店に近づいてしまうよね。

「わー、このパン星型だ! 見て見て!」

 店に入ってすぐの、一番目立つところに置いてあったパンを見て思わず声を上げる僕である。

 おほしさまー!

 テトもぴょいっと僕の横にお座りして目をきらきらさせた。星型のパンには砂糖がたっぷりふりかけてあるのがわかるので、このパンは間違いなく甘い! と察したらしい。テトは頭が良いのである。

「テト食べるのか? ナツは?」

「食べる! ありがとうイオくん!」

 食べ物は共有財布から買うので、イオくんが木製のトレイとトングを持ってきてささっと人数分のパンを確保した。こういう形式のパン屋さんって日本特有のような気がするんだけど、各国サーバーによってパン屋さんの購入方法も異なるのかなあ。


「俺フランスパン欲しい。5本くらい買っていいか?」

「いいよー! イオくんの好きなように買っちゃって」

 料理はイオくんの領分なので、僕は余計な口出しはしない。いつも美味しい料理ありがとう。フランスパンだと、シチューのお供かな? それともフランスパンサンドでも作るのかな、楽しみ!

「俺も惣菜パン買い込もう。あ、ナツさんこっちにショップカードありますよ」

「やった、ありがとう如月くん! もらっていこうっと」

 複製回数を増やすために、数を補充っと……あんまり取ってくのもお店の迷惑だし、2枚くらい足しておこう。

 イオー、これー。これたべてみたいのー。まるくてしろいのー。

「テトこれがいいのか? 普通の白パンだから甘くないぞ」

 しろいのがいいのー。

「まあ無難な味のパンだし買っておくか……」

 ……イオくん、無駄ににゃあにゃあ主張するテトの意図を正しく読み取っている。甘い、甘いよ社長、社員に対する福利厚生が手厚すぎるよ! とても良いと思います!


 そんな感じに僕たちがパンを選んでいると、店の奥の方の従業員用の出入り口から店内に入ってきた人物が、僕たちの姿を見て「お」と声を上げたのがわかった。

「ナツさん、イオさん、如月さん。買い物ですか」

 穏やかな声をかけてくれたその人は、白と黒のぶち模様の猫耳を持っている男性。一瞬名前が出てこなかった僕とは違い、隣の如月くんが明るい声を上げた。

「ナーズさん! もう具合大丈夫なんですか?」

 あ、西の砦の生存者さんだ! 

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