15日目:聖水も聖水(?)も出来ました。
なんとなーくコツを掴んでから約30分ほど。
ようやく「魔力を込める」が成功したのは、授業開始から2時間半くらい経ってからのことだった。
「で、できたー!」
とバンザイした僕に、「おぉー」と拍手してくれるレスト先生である。
「な、長かった! 出来た! やっと出来たよー!」
「お疲れさん。ようやく成功したなぁ」
まさかのイメージでつまずいたんだけど、すごくスピードが速いものっていうとあんまりぱっと思いつくものが無かったんだよねー。レーザーとか言っても具体的なスピード感がよくわかんないじゃん。それで、とにかく速いものを色々思い出しつつ頑張ってたんだけど、最終的にイオくんの右ストレートパンチのイメージで水に魔法をぶち込むことに成功したのである!
ここにいなくても頼れるとは、さすがイオくんイケメンの鑑だね!
「もうスキル取れると思うぞぉ。ほれ、紅茶お代わり」
「うぅ、ありがとうレストさん……。もうなんかポーション飲みすぎてお腹がたぷたぷしてる気がする……」
何本MPポーションを飲んだことか……! 今日砦に行くからってたくさん準備しておいてよかったよ。僕がぐでーっとしている間に、レストさんは僕の作った聖水をちゃんとした瓶に入れてくれた。初めて自分で作ったやつだと思うと、ちょっと嬉しい。
よし! じゃあ早速スキルを取るぞ!
「えーと……あ、これ基本スキルなんだ。<聖水作成Ⅰ>……SP20……っ!」
知ってたけどめっちゃSP重いな!
いや、でもこれは基本スキルだから、SP増えるから……!
「……レストさん、ちなみに<聖水作成Ⅰ>って発展スキル何が出るの?」
「あぁ、<聖水作成Ⅰ>はレベル10になっても次のスキルは出ねえよ」
「えっ」
「ナツが<上級光魔法>で【ピュリフィケーション】を覚えたら<聖水作成Ⅱ>になって、レベルも1になる」
「え、自動習得? 浄化系魔法の習得が条件なんだ?」
「そう。だから<聖水作成Ⅱ>がレベルカンストして無くても、先に【ハイピュリフィケーション】を覚えたら自動的に<聖水作成Ⅲ>のレベル1に切り替わる」
「つまり、次のスキルを取得するためのSPを気にしなくて良いってことか……、それならお得!」
今SP30しかないから20使うのものすごく痛いんだけど、それ以降自動習得だというのなら総合的に見ればお得。よろしい、それなら取得だ!
「30まで溜めたSPが瞬く間に10になったこの虚しさ」
「それなぁ。でも、どうせなら<生産者の心得>取っといたほうがいいぞ? すべての生産の成功率が上がるから、腐ることねえし。発展スキルになると更に成功率と品質が上がるから、長い目で見るとさぁ」
「SP……! いや、でも取りましょう! 取りましょうとも!」
これはイオくんも持ってたスキルだから、きっと役に立つやつだし。もう勢いで取るしかない。残りSPは7……1桁かあ! 頑張ってまたSPをストックしておかないと。
「レストさん、教えてくれてありがとう。ついでにもう一つ聞きたいんだけど、品質の良い水ってどこで手に入るかな? お店で売ってる?」
今まで色んな店を見てきたけど、ただの水を売ってる店は無かったような気がするんだよね。僕が見落としてるだけかもしれないし、レストさんが利用してる店があるなら聞いておこう。
そう思って質問してみると、レストさんはけらっと笑う。
「いやぁ。川の水でも水道の水でも、<水魔法>で出した水でもいいけど、要は不純物を取り除けば品質が上がるから、沸騰させた水蒸気を水に戻したり、ろ過したりすりゃあいいんだよ。それ以外だと、水源に近い水は品質が良いらしいけど」
「あー、なるほど」
沸騰させた水蒸気を水に戻すって、理科の実験とかでフラスコから管を通して冷やして水に……ってやつだっけ? なんかそういう実験の図解は見たような。でもあれって普通にやろうと思ったら道具が必要だし、手軽じゃないな。
そうするとろ過の方が現実的だけど……。
僕には<原初の呪文>があるから、もっと手軽に品質を上げられるんじゃないかな。うーん、普通の水からゴミを取り除くイメージ……なんかいい感じの二文字無いかな……。
<原初の呪文>に持続性はないけど、【解毒】でもわかった通り、取り除いたものが戻ることもない。【加熱】した水は放置すれば冷えていくけど、その水を保温すれば温度はキープされる。多分、ゴミを取り除いて水をきれいにできたなら、その水が以前の状態にすぐ戻ることも無いと思うんだよね。
うーん、【浄化】だとなんか余計な力が入りそうだし、ただ水をきれいにするだけならちょっと違う気がするなあ。もっと単純に……【純化】とかどうだろう? 細かいゴミが消滅して純粋な水だけが残るイメージで……。
「【アクアクリエイト】、そして【純化】」
とりあえず眼の前にあるビーカーに水を出して、それを【純化】してみる。
通常【アクアクリエイト】で出した水の品質は、★3均一だったはず。【純化】にどれだけの力があるかわからないけど、ユーグくんを水に向けたら、一瞬ぱあっと青白く輝いたので、何かしらの変化は起こっているはず……!
「<鑑定>。……よし、★6! ろ過しなくてもこれで品質は上げられるね」
「いやいやいやいや。ナツ、お前さぁ……、その鑑定結果ちゃんと見ろよぉ」
「え? より純粋な水に近づいた水、ってなってるよね」
「そこじゃねえんだわ」
え、じゃあどこ?
「あ、名前か。純水? なにこれ、ただの水と違う……?」
「まあ水の一種だとは思うけどなぁ。俺も純水とやらで聖水作ったことはねえな」
「う、うーん。聖水が作れないと困るね。ちょっとやってみるか……」
もう<聖水作成>スキルは取ったから、これでさっきよりは簡単に聖水を作れるはず。今出来た純水とやらにマギプランツの粉を……もう感覚で覚えたから僕の持っている木製スプーンで3杯。よーくかき混ぜて溶かしてから……よし、いくよユーグくん!
「【ピュリファイ】」
喰らえ、イオくんの右ストレート! の、ごとく速い魔法を!
スキルを取得したお陰でさほど苦労もなく成功し、聖水はキラキラと<光魔法>を吸収した。……うーん? ちょっとだけ色が違うような。
「黄色?」
「あー、いや。多分<光魔法>の色だから、金色じゃねえかなぁ」
「ああ、なんかエフェクトの」
この世界の魔法はそれぞれの属性に対応した色がついていて、演出というか、エフェクトで派手に輝く。<光魔法>が金で<闇魔法>が銀だ。そのため、一番高度な魔法として人気が高いのは<闇魔法>となっている。次点が<光魔法>。
統治神スペルシアの持つ空間魔法は、<闇魔法>を極めた先にあるという。そのため、現在首都ナナミの王宮で一番偉い魔法士さんも<闇魔法>を極めし者なのだとか。統治神由来のものが一番人気なのは当然で、銀も最も尊き色とされているしね。
「うーん、ほんのり金色の聖水……ご利益ありそうじゃない? どう思うレストさん」
「いやぁ……あのなナツ。聖水って飲めるんだぜ?」
「……え、飲むのこれ」
「ちなみに普通の聖水、ちょっとシュワッとするだけの水な」
「ちょっとシュワッと」
……炭酸っぽい気泡は見えないけど、炭酸なのか。つまりこの色付き聖水もシュワッと……あ、待ってその前に<鑑定>しなきゃ。
えーと、「聖水(改)」名前は可変。効果は、呪い解除(軽度)、浄化、アンデッド特効付与、眠気覚まし、疲労回復、気力回復……?
「まっ、え!? 栄養ドリンクだこれ!?」
主にラストの3つ! なにそれバフ? それともなんとなくそういう効果があるような気がするだけのやつ? 1人で混乱していたところ、レストさんも<鑑定>したらしく、むむっと眉間にシワを寄せた。
「ナツ、これ薄めないとのめねえぞ」
「むしろ薄めていいの!?」
「や、だって<鑑定>結果に……さてはお前<鑑定>レベル上げてねえな?」
「<総合鑑定>のレベルなら9だよ」
「1足りねえ!」
惜しい、と言いながらレストさんが教えてくれたんだけど、<総合鑑定>レベルが10を超えると、鑑定したものに不具合があったとき教えてくれるらしい。それで、レストさんの<鑑定>結果の方には、このままだと味と効果が強すぎるため、10倍希釈が妥当と書いてあるのだとか。
「希釈……、つまり、カルピスの原液扱いかあ」
「言ってる意味がわからんけど、まあとりあえず普通の水で薄めてみるかぁ」
「純水で薄めなくて良いの?」
「それ使ってこの濃さになったんなら、原因はその純水とやらだぞぉ? 追加して更に濃縮したらどうすんだ」
「確かに」
うーん、レストさん頭が良い。イオくん並みに頼れるな。
レストさんは恐る恐るコップを2つ用意し、それにきちんと計量しながら10倍に薄めた「聖水(改)」を作った。色は薄まらなかったのでなんとなく黄色というか金色のままだ。それを片方僕に差し出して、片方はどうやら自分で飲んで見るらしい。
「大丈夫それ? 具合悪くなっても僕責任取れないから、まず僕が飲むよ?」
「大丈夫だって。飲めるって鑑定結果出てるしさぁ」
具合が悪くなるようなものなら、ちゃんと鑑定結果に出るらしい。知ってたけど、改めて便利だな鑑定。
「じゃあ、せーので」
「おぉ。せーの」
いざ! とぐっとコップを傾けた。
シュワッとした炭酸の舌触りに、柑橘系というかやや人工的な味が広がる。ゴクリと飲み干せば、たしかにこれを原液では飲めないだろうなというのは納得だ。そしてこれ、普通に美味しい。美味しいけど、どう考えても栄養ドリンクの味。
「くせになる味だなぁ?」
レストさんが気に入ったっぽい。実は僕も割と好きです。
イオくんには、元気なのに栄養ドリンク飲んでると逆に体に悪いんじゃね? 的なことを言われるんだけど、たまにあの人工的な味がすごく欲しくなる時もあるのだ。まあ小さい割にお値段が高いから、ちゃんとしたやつはめったに買わないけどね。
「うわあ。すごいものを作ってしまったかもしれない……! レストさんステータス確認して! バフすごい」
「おぉ? やる気UP、集中力UP、HP自然回復量UP、効果時間1時間……やべえ薬じゃねえのこれ」
「やべえ薬だよ……!」
ステータスは一切上がってないので、ステータス系の補正は全く無い。でもさっきからなんかやたらと何でも出来るような前向きな気持ちになってる……! そう言えば光魔法は精神に作用する状態異常を回復できるんだったっけ、つまり精神に多少関与出来るということか。
「ナツ、これ売らねえ?」
「だ、駄目な気がする! 徹夜で仕事したがる人たちが買い占めに走る気がする!」
「あぁ……。死人が出るなぁ」
「どうしてもって言うなら個数制限つけて、効果切れるまで重ねて飲まないようにしないとまずいと思う。なんか妙な無敵感が出てくる……!」
「1本3,000Gくらいで、1人1日1本までで」
「そのくらいなら……まあ……」
「俺の店ならそんなに客も来ねえし、試しに置いてみるだけでも。瓶は用意するとして、ラベルと商品名がいるなぁ」
「商品名……」
元気が出るものっていうと、リアル世界ではビタミンなんだろうけど。こっちの世界ってビタミン通じるのかな? 通じるなら、他の元気が出そうなものと組み合わせてなんとなく栄養ドリンクのパロディっぽい名前にしたら、トラベラーにはすんなり通じそう。えーと、元気が出るもの、元気がでそうな存在……。
「ひらめいた! テトビタドリンク!」
「長えよ」
今後は多分1日おきくらいで更新していくと思います。




