15日目:レストさん家を訪問
いつも誤字報告ありがとうございます。
ランダム報酬チケット、気になったので全員で破ってみたんだけど、結果はなかなか良い感じだった。
「僕はスキル講座の受講券だね。ナツくんがレアなスキルを教えてもらったのはこれかい?」
「あ、シスイさんいいなー。そうそう、それで<原初の呪文>を教わったんです。僕ももう1回くらい受けたいんですよね、スキル講座」
「ナツどうせまたランダム講座に賭けるつもりだろ、やめとけ。俺は装備品だな、靴か……」
イオくんが当てた靴は、「呼応の靴」というもので、なんとパーティーメンバーのいる場所に1日3回までワープ出来るというちょっと珍しい靴だった。パーティーメンバー限定なので、イオくんの場合は僕のところに一方的に転移出来る靴ってことになる。
「僕が迷子になったらイオくんが助けに来てくれる、ってことか」
「共倒れになるパターンだなそれ」
真顔で言われたんだけど、たしかにそのパターンになりそうなので使い道があんまり無いかも。デザインはシンプルな感じなので使いやすそうではあるけど。
「俺は帽子装備ですね。即死無効はありがたいです」
如月くんの帽子はカウボーイハット系のちょっとおしゃれなやつだった。即死無効は前衛には重宝されそうな効果だ。
「私はホテルの宿泊券ね。これって宿泊後にステータスボーナスがつくやつよね!」
「宿グレードB以上でつくはずですよ」
「Aだわ。素晴らしいわね!」
宿にグレードなんかあったんだ……? 僕たちが前に泊まった緑水亭はどのくらいだったんだろう、と思って街の地図から情報を調べてみたところ、あそこもグレードAだった。ってことは美月さんもステータスオール+5のボーナスだね。
宿グレードはS~Cまであるらしいんだけど、Sってなったら王室御用達レベルかなー。流石にドレスコードとかありそうだから無縁の世界かも。
「えーと僕は……なにこれ」
最後に僕がチケットを破ると、手元にカゴに入った果物が5個ほど現れた。真っ白の……形はリンゴっぽいけど香りは桃っぽい感じ……? <鑑定>っと。
「白水桃、品質★8。竜の大好物だって、ラメラさんのお土産にしよう」
「へー、初めて見るものだな」
「残念ながら魔力がふんだんに込められているので人間には美味しくないって」
美味しかったら嬉しかったのになー。
全員の報酬を確認したところで、今回は解散。
このクエストの続きがあるようならまた集まりましょう、ということになった。如月くんから、「マロネくんの関係者のところいつ行きますか?」って話があったんだけど、今日の午後はレストさんのところで聖水作りを習う予定だし、そのあとはリアルのお昼休憩に入っちゃうからなあ。
「リアルで午後1時くらい?」
「そうだな。如月のところと連結したままにしておけば時間帯は合わせてくれるはずだ」
「リアル午後1時ですね、了解です。ログイン時間は8時くらいで、ゆっくり朝食とってから行く感じでいいですか?」
「OK」
というわけで、明日の予定はこれで決定。午前中で解決するようなら、午後は川下りツアーにいい加減行きたい気持ちがあるね。川魚の直売所を知りたいし、屋形船での料理に何が出るかも気になるので。
「ところで如月くんの相方さんは、まだイチヤ?」
「あー、なんか農家の立て直しを手伝うことになっちゃったらしいですねー。少なくとも1週間はかかるクエストらしいんで、それが終わってからだから、当分先かなと」
「へー」
「あいつ人情物に弱いんで絶対放置できないですし」
仕方ないやつ、と言いながらも如月くんが遠い目をしている。これはどこかでイチヤに迎えに行ってあげるのかな……? 僕相方さんには会ったこと無いけど、なんとなく2人がどういう関係性だかわかった気がするよ。
*
お昼ご飯は、「南西の風亭」へ向かって本日の定食をいただくことにする。
美月さんにもらったパン屋さんも行きたかったんだけど、今日はイオくんが「米の気分」というので、パンはまた後ほどということになった。僕もお米食べたかったし。テトは上機嫌で僕にまとわりつきながら歩いているので、僕は躓きそうでちょっと怖い。
「そういえばイオくんが強いの歌を歌ってたよ、テト」
「何だそれ聞きたい」
うたうー?
「テトが歌ってくれるって」
「頼む」
イーオーはつっよーい♪
にゃっにゃーにゃんっにゃー♪ と歌うテトである。モンブランの歌とは確実に違うリズムなんだけど、イオくんにはたして歌詞は伝わるんだろうか。まあ普通に無理か。
「よくわからんけどなんとなくポジティブな歌なのはわかった。ナツの歌はないのか?」
「無いかな……」
こんどつくるー。
作ってくれたらいっぱい撫でるので頼みます。
気を取り直して本日の定食は、「アジフライ定食」「チキン南蛮定食」「野菜と豚肉のスタミナ丼」の3種類。この世界の人たちは丼飯に抵抗が無いからありがたいよ。
「テトどれにするー?」
しろいのー。
「チキン南蛮かな? タルタルソースだよね多分」
「俺はスタミナ丼にするかな」
僕とイオくんは魚より肉派だからねー。というわけで前回同様にイオくんが購入して運んでくれるので、僕とテトは2階に上がって席を取っておく。相変わらずこの店は良い風が入ってきて気持ちいいなあ。
イオくんがすぐにトレイを持って来てくれたので、食事を取りつつ午後の予定を確認。
「僕がレストさんに聖水の作り方習ってる間、イオくんたちどうする?」
「北門近くだし、レンタルキッチン借りて甘露煮作る」
「テトは?」
くりー!
「テトは甘露煮がいいそうです」
「おう、俺が面倒見てるから、ナツは心置きなく習ってこい」
ぐ、ぐぬぬ。そりゃ僕と一緒に来ても暇なだけだけど、テトを取られたみたいな気持ちでちょっとだけ悔しいぞ。イオくんと栗に負けた……!
甘酢だれたっぷりのジューシーなチキン南蛮は、作りたてのあっつあつにこってりとしたタルタルソースがよく合う。このお店のタルタルソースは玉ねぎのみじん切り入りかな? チキンにたっぷりつけていただくのが美味しいし、このお店はタルタルソースを別の皿にたくさんつけてくれているので大変ありがたいです。
タルタルが途中で無くなったらちょっと悲しいのだ。
「テトもお食べー、熱いからちょっとまってね。……【適温】!」
わーい。てきおんー!
猫舌のテトは僕が【適温】を唱えた食べ物はすぐ食べていいやつ、って覚えているので、早速かじりついている。しろいソースおいしー! だそうです。タルタルソースが美味しくないワケがないので、あとでイオくんに作ってもらおうねー。
「あ、そういえば美月さんとシスイさんからショップカードもらったよ! 美味しいパン屋さんとお菓子のお店」
「ナツが好きそうなラインナップだな」
「そうそう、その時聞いた美月さんのスキルの話が、ちょっと面白くてさ」
食べながら、美月さんが<バードフレンドリー>のスキルを取った話をする。街中の鳥に餌付けし続けたら鳥からの好感度が上がって何を言っているのか分かるようになった、って話だったけど、これって隠し要素っぽいよね。
「鳥の噂でショップカードが手に入るならお得だな……」
「ねー! イオくんも餌付け出来そうだと思ってさー」
「しねえけど」
「ですよね」
まあイオくんが欲しがるようなスキルじゃないのは知ってた。
さて、お昼を食べ終わったら来た道を戻って、再び北門付近へ向かう。イオくんたちが「じゃあ甘露煮作っとくから」「くりー♪」と楽しそうに新人通りへ向かい、僕はレストさんの店舗へ向かうのである。
住宅街のど真ん中にあるレストさんのお店は、店舗兼自宅になっている。店からではなくて裏側に回り込めば、普通に呼び鈴がついている住宅の玄関だ。そのチャイムを鳴らして……あ、そうだ。聖水の作り方習うわけだからなにか手土産を……ジンガさんへの手土産を買った時に一緒に買いだめしておいた金平糖でいいかな? これ色合いも瓶もきれいだし、ちょっと高級に見えてお得感があるんだよね。
少し待っていると、すぐにドアが開いてレストさんが中から顔を出す。完全に部屋着って感じのだぼっとしたシャツ姿だ。
「よぉ、来たかぁ。上がれよ」
「おじゃましまーす! あ、これよかったらどうぞ!」
「おぉ、金平糖。美味いよなぁ」
テアルさんのところにお邪魔したときは、お守り渡すの忘れそうになったから、手土産は先に渡しておく。僕は同じ過ちを繰り返さないのである。あ、お守りといえば、いくつかストックがあったはずだから追加で渡そうかな……防火のお札! ★2だけど、これなら多分喜ばれるでしょう!
「あとこれはおまけ!」
「お札かぁ? いやこっちがメインだろどう考えても。サンキュー」
「それ半年しか持たないから。せめて品質★3にできたら1年持ったんだけど」
そういえば僕は基本、年上には敬語! って思って話してるんだけど、レストさんには敬語使わずに気楽に話しちゃってるな。なんかすごく話しやすくてつい……、まあ、レストさん気にしてないみたいだし、いっか。
「俺は紅茶派なんだけどなぁ、愚弟は珈琲派だろ。昨日は何も考えずに紅茶出したけど、ナツはどっちがいいんだ?」
「僕はストレートなら紅茶、ミルク砂糖入りなら珈琲かなー。基本美味しければどっちでも良いよ、イオくんは珈琲派だけど。昨日の紅茶美味しかったよ!」
「そんじゃ、昨日のと同じのでいいか」
どうぞーと中に通されて……ここも土足かあ。【クリーン】をかけておかなきゃ。
レストさんの家はビストさんと二人暮らしだそうで、入ってすぐは日当たりの良いリビングだった。廊下を右に入ってすぐの部屋がレストさんの部屋だそうで、そこに通される。全体的にすっごくシンプルな感じの部屋で、強いて言うなら落ち着いた緑や茶色の家具が多い。
「とりあえずそこのソファに座ってくれー。今紅茶持ってく」
「はーい。なんかお菓子出しておくねー」
さて、本日のお菓子は……。
とっておきのマフィンでも出しますか!




