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2日目:ツノチキン


「一瞬でお腹空くのって理不尽!」

「それな」


 さて、ギルド2階の宿泊場所は、だだっぴろい体育館みたいなところで全員雑魚寝スタイル。1階で受付するとブランケットを借りられて、2階の開いているマットの上で寝ころんでブランケットをかぶれば就寝判定される。

 ログアウトするか時間を飛ばすかのウィンドウが表示されるから、朝7:30まで時間を飛ばす方を選択すると、一瞬意識が沈んですぐ浮上するというわけ。そして、目覚めると朝で、お腹が空いている。すごく理不尽!

 横になったばっかりのマットから起き上がり、ブランケットをたたんで返却箱へ。ギルドには併設の酒場や飲食店はないけど、その代わり打ち合わせや軽食を食べるのに自由に使っていいフリースペースが用意されている。1階の受付カウンター類が並んでいるところから通路を通ってそのフリースペースへ向かい、一応仕切りがあって半個室っぽくなっているスペースで朝ご飯を用意。


「イオくん、昨日のスープ食べていい?」

「おー。朝飯おにぎりでいいか?」

「素晴らしいね!」


 シャケのおにぎりは良い物です。海苔が無いのはちょっとだけ残念だけど、細かいことはいいんだよ。

 そういえば昨日の片づけの時も使ったんだけど、<風魔法>の【クリーン】はすっごく便利な魔法だった。なんでも綺麗にしてくれるというやつで、テーブルやお皿のみならず服や床、とにかく何にでも使える。現実世界に欲しい。

 今日の朝ご飯は、イオくん作成のスープとおにぎりで美味しくいただいて、満腹度も十分。昨日作った食のお守りは、効果が微妙だから一応僕が持つことにした。満腹なので、魔法防御力が20から22になるはず。でもこの満腹度って、マスクデータなんだよね。数値化されていない項目だから、どのタイミングで満腹じゃなくなって効果が無くなるのかわかんないな。

 ちなみに、作ったオリジナル魔術式はきちんとカテゴリが分けられて<魔術式>スキルに収録されていた。これでいつでも作れるね……食のお守りは多分今後作られることはないけど。

 ご飯を食べながらイオくんにお守りの話をすると、頑健のお守りは装備を変えたらぜひ使ってみよう、ということになった。金運上昇についてはギルドへ素材を売却するときに使うことで決定したので、売却窓口になるパーティーリーダーのイオくんに渡しておく。★1が収入10%UPで効果5回、★2の方は収入13%UPで効果7回。イオくんのことだから、★1の方から使っていくんじゃないかな。


 美味しい朝ご飯を終えて、ギルドを出ると良い天気だった。

 改めて自分のステータスを確認して、軽く現状を把握する。


ナツ プレイヤーレベル8 魔法士レベル8

HP:100 MP:280

筋力:5 物理防御力:10 魔力:28 魔法防御力:20

俊敏:10 器用:10 幸運:18

残りPP:3

<水魔法>レベル3 【ウォーターアロー】【アクアクリエイト】

<火魔法>レベル7 【ファイアアロー】【イグニッション】【ファイアウォール】【パワーレイズ】

<土魔法>レベル1 【サンドアロー】【サンドウォーク】

<風魔法>レベル2 【ウィンドアロー】【クリーン】

<MP回復量増Ⅰ>レベル6 <彫刻>レベル5 【フリードロー】

<魔術式>レベル3 <感知>レベル6 <鑑定>レベル5

残りSP:28

アクセサリ:「食のお守り」 お腹が空いているとき、素早く動けるようになる。満腹の時、魔法防御力が上がる。(現在:魔法防御+2)(1日目/7日)

「-」「-」

装備:初心者のローブ 初心者のブーツ 初心者の冒険服一式 初心者の短杖


 お守りの効果はステータスの数値に反映されないみたいで、実際の数字は自分で計算して把握しといてね、って感じ。装備品は今、全身初心者のナントカ装備……特に効果もないし、耐久値が無くて永遠に使えることくらいしか利点が無い。

 いつの間にか覚えていた<火魔法>の【パワーレイズ】は、一定時間自分の筋力を+5するバフスキルだ。今なら+5でも恩恵が大きいけど、多分すぐに上位互換が来ると思う。僕はこれを自分に使えば筋力が夢の10に届くわけだけど……まあ、いらない! 力仕事はイオくんにやってもらうし!

 PPが3余っているから魔力に突っ込んでもいいけど、僕の攻撃力が上がり過ぎてもイオくんがヘイト取るのに邪魔になる。正直昨日の<彫刻>を考えると、器用がもう少し欲しい。転職してPPが貯まったら振り分けよう。

 とか思ってたらイオくんも「器用欲しい」と言い出したので、同じことを考えてるっぽいな。

「さて、今日はツノチキンに行ってみようと思うんだが、いいか?」

「賛成であります!」

 と言うわけで、昨日と同じく西の門へ。草原の奥の方にある森に、テールさん曰くツノチキンがたくさん生息していた、とのことだった。レベル上げも必要だけど、それ以上にお肉が欲しい。鶏肉なんていくらあっても困らないし、イオくんの<調理>レベルあげにも必要だもんね。


 西門の門番さんにご挨拶してから森へ向かって一直線に進んでいくと、背の低い木々に覆われた森が見えてくる。目的地はここで間違いないだろう。

「<感知>」

 おお、森の中にたくさんの点が見える。これ全部ツノチキンだったら助かるなあ。

「テールさんが、ツノチキンは強いって言ってたよね。とりあえず1匹ではぐれてるのを狙っていこう」

「おう。ポーションは共有インベントリにあるからいざとなったら使えよ」

「わかった」

 来る途中でHPとMPを100回復するポーションを5本ずつ買っている。

 どちらも★1でお値段も1個300Gとお安いけど、★2を買うと両方200回復700Gなので、回復量を考えても★1の方が少しだけお得だ。その分、ポーション使用のクールタイムには引っ掛かりやすいけど<水魔法>レベル7で体力小回復の【アクアヒール】を覚えるはずだから、そこまでいけば何とかなると思う。


 さあ、では、いざ森へ!



「ナツ! ポーション! ポーションくれ!」

「HPポーション使用、対象イオ!」

「あっぶねー!超ギリ!!」

「【ウィンドアロー】! ……頑張れイオくん! 生きて! イオくん死んだら僕も死ぬから!」

「そりゃこの状況で前衛死んだら後衛無理だな! っし、【強撃】!」


 ちょっと一言言っていい?

 ツノチキン、鬼か!!!!!!


「ナツ! とにかく数減らせ! ファイアレインまだか!?」

「範囲攻撃はクールタイム長いんだよー! 【ファイアアロー】!」

 ぎゃあぎゃあ言うのも無理はない、何しろ敵対しているツノチキンの群れは優に10匹超えだったからね! 必死に数を減らして、イオくんが自前のHPポーション飲み切って何とか今4匹まで減ったけど!

 最初は1匹ではぐれているツノチキンに攻撃を仕掛けて、途中まで順調に削ったんだけど。もう少しで倒せるってところで3匹のツノチキンの群れがやってきて、戦闘を視認した瞬間襲い掛かってきた。


 そう、ツノチキンは仲間が戦ってると加勢してくるタイプの敵だったのだ!

 そりゃ強いと言われるわけだよ!


 一気に4匹になった敵を何とか減らしても、また次の群れが合流して、さらにまた減らしても合流して合流して……永遠に終わらないんじゃないのこれ!? って思ったけど、<感知>によれば今相手にしているのが合流できそうな範囲内にいる最後の群れだった。こいつらさえ倒せれば生き残れる。はず!

「【連撃】ッ!」

「イオ君、レイン行ける!」

「頼む!」

 残りのツノチキン3匹、イオくんが上手に誘導してその3匹を近くに寄せる。そのあたりを狙って、<火魔法>レベル8で覚えた範囲魔法、【ファイアレイン】を放つ。

「行け! 【ファイアレイン】!」

 この魔法、空から雨のように炎が降り注ぐという演出はめっちゃ綺麗なんだけど、うまくすれば5~6匹の敵を巻き込める程度の範囲魔法だからか、クールタイムが長いしコストも重い。ツノチキンが風属性じゃなかったら倒しきれなかったかもしれない。


 断末魔の叫びを残してツノチキンが光の粒になって消えた時、僕のMPは3だった。もうこれ以上無理だったよ、終わってよかった!

「お、終わったー!」

 イオくんも両手をあげて万歳のポーズだ。いやもうマジでしんどかった。

「イオくん、出よう! 早くここ出よう!」

 またあんなことになったらたまらない。ボス的な1段階強い敵がいたりしたらもう無理。いやこっちから仕掛けない限り攻撃してこないのは分かってるけど、例外がいたら困るからね。

 周囲を警戒しつつ、僕たちは素早く西の草原へ駆け抜けた。


「あーしんどかった!」

「今日はもうツノチキンはやめとくか、あれをもう一度繰り返すのはキツイ」

 真顔で言うイオくんに「そうだね」と僕も頷いて、セーフエリアの丸太型のベンチに並んで座った。とにかく無事に戻れてよかった。

「おかげでレベルは10になったみたいだね。一旦イチヤに戻って、お茶しよう。どこかにカフェってなかったっけ……」

「そうだな、ナツがお菓子の店聞いてただろ、あの辺にあるんじゃないか? 空白地だし、地図埋めに行くか。ポーションどのくらい余ってる?」

「HPポーションは0。MPポーションは1つ。HPの方使い切っちゃったし、どこかで買わなきゃ」

「おう。じゃあ、まずはテールのところに行ってツノチキン居たぞって報告と、多少売ろう、山ほど肉がドロップしたから」

 共有インベントリで確認すると、ツノチキンの肉は61個だった。戦闘中に<鑑定>で確認したんだけど、ツノチキンを1匹倒すと肉が3~5個の間でランダムに落ちるらしい。ログを確認すると15匹も倒していたから、平均4つドロップかな。

 時計を見ると……おお、1時間くらい戦ってたみたいだね。ゲーム内時間は9時半過ぎだ。1時間でレベル8からレベル10に上がったんだから、効率がよかったというべきなんだろうか。


 ステータスを確認すると、カンストした基本スキルや、新しく覚えたアーツがちらほら。あとは<感知>がもう少しで10になるから、帰り路もずっと<感知>発動しながら帰ろうかな。

 何が条件なのかわからないけど、<魔力制御>とか<節制>とか新しいスキルがけっこう増えている。あとでじっくり確認したい。

 ついでにパーティー編成画面からイオくんのステータスもチェック。

 イオくんはツノチキン戦で集団のヘイトを集めるためにめちゃくちゃ<挑発>を使ってたから、そのおかげか<剣術>と<挑発>がレベルMAXになっていた。めちゃくちゃ長い連戦だったけど、ものすごく色々上がったなあ。

 疲れ切ってだらだらと門まで帰ると、街中に入る直前に<感知>のレベルが上がってMAXになった。やったね。


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