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うさ耳会長と、ハロウィン祭

 うちの学校には素敵な会長がいる。

 文武両道で硬派な和風美少女ぐらいならまだいそうなものだが、会長にはもうひとつ、一番重要なポイントがある。


「はい」


 笑顔で俺にオレンジでごつごつした球体を渡す会長の耳にそれが生えて、とうとう一年が経ってしまったのだなと今更ながらに実感する。

 それ、というのは当然――会長の艶やかな黒髪に居座る、ふわっとまっすぐに立っている二本の――うさぎのように長い耳だ。


「会長」


 力無く俺が会長を呼ぶと、ぴくぴくとうさぎ耳が動く。

 ただの飾りではない。

 ナマモノなのだという証明に、慣れた俺だって毎日頭を抱えている。


「ほら、観念しなさい。

 似合ってるわよ」

「似合うとかじゃなく、どうして会長の仮装を止めたら、俺が仮装することになるんですか」


 去年会長がパンプキンマンの仮装をしたことは大きな話題を呼び、今年のハロウィン祭――もとい文化祭では会長にどんな仮装をさせるかで投票まで行われるところだった。

 それを俺は予算を盾に却下したわけだが、なにより会長の思いつきでゲームをすることになってしまったんだ。


 ルールは文化祭期間内にパンプキンマンのコスプレをした俺の被るカボチャを割った部活は予算倍額っていう、俺には迷惑極まりないものだ。


「まあまあ、終わったら御褒美あげるから」

「ご褒美?」


 なんだ、と俺が問い返す前にふわりと柔らかな、会長のシャンプーの香りがすぐ目の前で香る。


「会――」


 楽しげに瞳で笑う会長は、俺が最後まで口にする前に、俺にオレンジ色の目隠しをする。


「心配しなくても、あなたのカボチャは私が守り通すよ。

 だって、あなたは私の大切な会計だもの」


 オレンジ色の中にある小さな覗き窓から見た会長は、いつも通りに頼もしく、いつもよりも小さく見えて。


「会長?」


 そのまま小さなうさぎに姿を変えて、いなくなってしまいそうで。


 思わず俺はそれに手を伸ばしていた。


「っ」

「会長、ひとつだけいいですか」

「なに?」

「――その格好は」


 これまであえて触れずに置いた事項に、会長を壁に追い詰め、問い掛ける。

 会長は、普段の制服の上からピンクのフリルエプロンをつけて、同色のレースのカチューシャと何故か竹箒を手にしている。


「ふふん、可愛いでしょ」


 得意げな会長と同じく頭の上でぴくぴくとうさぎ耳も動く。


「あ、仮装じゃないよ。

 これは今朝友達がくれた作業着だから」


 会長はまったくわかってない。


「メイドはやめてください」


 違うと言っているがこれではあまり変わらない。

 俺が反対した意味がないじゃないか。

 会長のメイド姿なんか晒したら、誰がファンの暴動を止めるというのだ。


 カボチャ頭のまま苦悩する俺を会長はうさぎ耳を揺らして、面白そうに眺めていた。




 今日も学校は平和だ。

いかがでしたでしょうか。

ハロウィンでカボチャのおばけは外せないと思うため、主人公が強制仮装。

それだけではつまらないので会長にもオプションを追加してみました(笑)

少しでも楽しんでいただければ幸いです。

読了有難うございました。


(2009/10/30)

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