青いバラ(老婆が語る童話シリーズ)
最強と呼ばれる一人の男がいた。男は、とある女性に恋をした。
何度も、何度もプロポーズをした。
でも、そのたびに断られた。
何回目だろうか、また男はプロポーズをした。
女は、「本当に結婚したいなら、城をちょうだい」といった。
男は、今までの依頼で手に入れたお金で、城を建てた。3年かかった。
男は女に会いに行った。
「城を建てたので、あなたにプロポーズをしに来ました」、と。
女は、「雲の上に、家を作ってちょうだい」といった。
そんな技術は存在しなかった。
男は、今まで貯めてきたお金を使って、技術者に、雲の上に家を作ることができるような技術を開発させた。15年かかった。
男は女に会いに行った。
「雲の上に、家を建てました。あなたにプロポーズをしたいのです」と。
女は、「世界中の植物を集めてちょうだい」といった。
男は、必死になって、世界中の植物を集めた。
世界中を巡り、見たことがないと思えば、どのような植物であろうと、手に入れた。10年かかった。
男は女に会いに行った。
「世界中の植物を集めました。プロポーズを受けてもらえませんか」と。
女は、「青いバラを持ってきてちょうだい」といった。
男は困り果てた。青いバラなど、世界中巡っても存在しなかった。作り出そうとしても、今までの女の願いをかなえるために、お金は使い果たしてしまった。
それでもあきらめたくなくて、自分で必死になって研究した。
とうとう、青いバラを作ることができた。10年かかった。
男は、もうこれで女に認めてもらえなければ、どうすることもできない、あきらめるしかない、と思っていた。
男は女に会いに行った。
「青いバラを持ってきました。あなたと結婚したいのです。しかし、こんなにも年を取ってしまいました。もう、あなたが受けてくれないのであれば、これで最後にする予定です。もちろん、あなたに差し上げたものは、そのままでかまいません。ただ、結婚する気がないのでしたら、そうおっしゃってください」、と。
女は、渡された青いバラを見つめながら、「本当に、全ての願いをかなえるとは思っていなかったわ」、といった。
「まだ、結婚したいと思っているの?」とも。
男は、「まだ結婚したいと思っています、あなたさえよいのであれば」、そういった。
女は、「私と結婚できるのであれば、全てを捨てられる?」と聞いた。
「捨てられる」、と答えた。
女は笑って、「ありがとう」といった。
「城は、これから戦争が起こるから。雲の上の家は、これから自然災害が起こるから。世界中の植物と青いバラは、私と同じくらい生きられるように、あなたの命を伸ばすため」
そう言って、女は手を広げて、光を放ち始めた。男はただただ困惑していた。
光が収まったとき、男は、人間ではなくなっていた。何が変わったのかはわからない、だが、明らかにいままでの自分とは異なっていた。
「これで、あなたは私とおなじくらい生きられるわ」と女はいった。
そうして、「私からもお願いしたいの。こんな無茶な願いを、理由も言わずにするような者だけど、結婚してくれないかしら?」といった。
男は、「よろこんで」、といった。
こうして雲の上に、家ができた。そこには2人が仲良く暮らしているらしい。家がある雲が頭上を通ると、たまに、笑い声が聞こえてくるそうだ。
暖炉の中で薪がはぜる音が聞こえる。風の音がビュービューと聞こえてくる。子供たちが、
「2人はまだ生きてるのー?」
「なんで城が必要だったのー?雲の上の家だけでいいじゃん!」
なんて聞く。
私は、「さあねえ、どうだろうねえ。誰も確かめたことはないから、わからないけどねえ」、と答えた。