あの娘とスキャンダル
ある日、ネットニュースを見ていたら、優佳のスキャンダル記事が掲載されていた。『某男性アイドル!熱愛発覚!?相手は人気グラビアアイドルか!?』
相手は、ネットでは手癖が悪いと評判になっている男だ。
ピロピロピロン♪あの3人以外からはめったに電話がかかってこない俺のスマホの着信音がなる。
「優佳、大丈夫?」
「うん。あの記事見たんだよね…」
「ネットニュースで見ただけだけどね。」
「信じて!あの記事、でたらめなの。私、今は光司一筋だから。」
「もちろんだよ。」
「それより、芸能記者に囲まれたりしてない?」
「今も家の前で張ってるみたい。ごめんね。光司のところに行けなくて…」
「うん。さみしいけど、こうして声も聴けたから僕は大丈夫だよ。」
「あのね。聞いてくれる…。」
「うん。なんだい。」
「デビュー当時、私仕事が全然なくて…そんな時、某アイドル番組を担当しているプロデューサーから誘われたの。俺に抱かれれば番組に出演させてやるって。グスン。
響子さんはずっとデビュー時から面倒を見てくれてたんだけど、当時はまだ、響子さんが担当する大勢のタレントの一人で、その時は響子さんもいなかったから止めてくれるひともいなかったの。グスン。
嫌だった。でも仕事がないし、事務所のみんなにも迷惑かけられなかったし。それが私の初めてだったの。ただ痛いだけ。最悪の初体験よ。グスン。」
優佳の声が涙声になる。
「あの…優佳、俺、おまえの昔の事なんて気にしないから。」
「わかってる。でも、いいから聞いて。
私、その後、番組に呼ばれるようになって仕事も増えたの。プロデューサーにも何回か抱かれた。で、その番組が今回のスキャンダルの相手が所属していたグループの番組で、彼に会ったのもその番組が初めてだったの。彼、本番中も欲望のまなざしで私を見つめるの。私は嫌悪感しか抱かなかった。
何回か彼の誘いを断ってたら、彼、私を抱かせろとプロデューサーに要求したみたい。ズズッ」
鼻をすする優佳。
「ある日、そのプロデューサーが私を呼び出したの。多分、飲み物にクスリを入れてたんだと思うんだけど、わたし眠ってしまって…
気が付いたら裸にされて、彼がヘコヘコ私の上で腰を振っての。自分本位でぜんぜん気持ちよくともなんともなかった…。
彼はすぐ達したわ。私、煙草を取りに立った彼の股間を思いっきり蹴飛ばして逃げたの…。」
少しの沈黙の後、優佳はつづけた。
「それから彼の番組には呼んでもらえなくなった。でも知名度も少しずつ上がって仕事がもらえるようになったの。
私、後悔してない。してないつもりだったの…でも光司と出会って…。」
優佳が一息つく。
「こないだ、久しぶりに彼と番組で共演したの。顔も見たくなかったけど、仕事だから。
で、収録の後、スタッフとお食事に行きましょうってことになって…響子さんは打ち合わせで少し遅れるからって…で、その場に彼も来ていたの。
前の経験があったから、私、飲み物にも食べ物にも手を付けなかったの。
そしたら、スタッフが用事があるからって席を立つの。彼以外全員が…
そして二人きりにされちゃって、そして彼、『しばらく見ない間にいい女になったな。またやらせろ』って言うの。
私、逃げたわ。逃げて店を出たところで写真を撮られたの。」
声に激しさが加わりだした優佳。
「それでも私、逃げたわ。逃げ切ったの。本当よ!光司に会ってからあなた一筋なの。信じて。」
「わかってるよ。優佳は俺以外の男に抱かれたりしない。」
「どうぜ彼の事務所がそんな写真もみ消すだろうって思ってたの…。でも出版されちゃった…。私は全否定したのに、向こうは交際を匂わすような発言して。どうして…」
その日、俺は一日中、泣き続ける優佳の話を聞いていた。