トンボ眼鏡のどブスな悪役令嬢!婚約破棄される
辺境伯一族の恋物語で、レイシィ編です。
こちらだけでも読めますし、気になる方は、
「なんて素敵な悪役令嬢」と「悪役令嬢の姉リディアの恋」を読んで頂けたら嬉しいです。
私は今、婚約者のウィリアムから婚約破棄を突きつけられている…。
物語ではよくありますよねぇ。
物語と、ほぼ似ていて、驚きで声が出ない。
私はレイシィ・フェルゼン15歳で御座います。
今夜の舞踏会の参加者は声も出さずただ見守っている。
それもそのはず、今夜、レイシィをエスコートするはずの婚約者が迎えにも来なかった為、レイシィの兄がエスコートで来ていて、アホな王子の大切な妹への婚約破棄騒動で、兄は冷気を漂わせているから。
「レイシィ、お前は悪役令嬢だ!どうして罪もない弱いキャロルを虐めたり、毒殺までしようと出来るんだ!?」
『…訳分かんないです…私何もしてません…』
心の声が漏れそうだったのを必死で堪えた。
「私、いつも虐められ辛かったし、毒入りお菓子まで贈られて…。
怖かったです!」
ピンクのふわふわカールの髪に、おっぱいをこれでもかと持ち上げる仕様の服を着て、胸を腕に擦り付け目をウルウルさせているぶりっ子のキャロル嬢。
「お前とは婚約破棄して、俺はキャロルを新しい婚約者にする!」
ウィリアムはキャロルを抱きしめ冷たく言い放った。
「分かりました」
そう言うとレイシィはドレスの隠しポケットから一枚の紙を取り出した。
婚約破棄証明だ。
「こちらにサインをお願い致します」
「用意が良いじゃないか。今回だけは褒めてやろう」
書類を読まずにサインをしたウィリアム。
「枢機卿様、婚約破棄を認めるサインをお願いします」
レイシィは今夜特別に招かれていた枢機卿にサインをお願いした。
「レイシィ嬢、宜しいのですか?ウィリアム様もこちらの内容で宜しいのですね?」
一応意思を確認してくれた。
「はい、謂れのない罪をなすりつける様な方を伴侶には到底できません」
「もちろんだ!早くサインしてくれ。俺はトンボ眼鏡どブスより、可愛いキャロルを妻にしたいんだ!」
兄が怒りに震えている。
斬りつけたり、殴り掛からないでよ。
兄の手首をギュッと掴む。
レイシィの見た目は大きな眼鏡を付けていて、胸もキャロル程ない小さな胸だったので、ウィリアムは自分の隣に立つレイシィが嫌でたまらなかった。
それを聞き枢機卿はサインをした。
「貴方方は晴れて婚約破棄となり、この瞬間から繋がりも消えました。
お互いにお幸せに…」
国王夫妻が入場すると、静まりかえっている会場に不思議がった。
「どうしたのだ?何故音楽すら流れておらぬ?」
国王は不思議そうに聞いた。
「父上!今俺はレイシィと婚約破棄しました。だからキャロルとの婚約を認めて下さい!」
ウィリアムは父の前に立ちお願いした。
「はぁ?どういうことだ!!」
国王はウィリアムに怒鳴った。
「こ、婚約破棄を告げると書類をあの女が持っていたので、サインをし、枢機卿が居たのでサインを貰いました。
父上のサインも下にありましたよ」
「お前は書類の内容をちゃんと読んだのか?」
目を見開いて王子を見つめて問いかけた。
「???いえ、父上のサインだけ確認して本物だと分かったのでサインしました」
「この馬鹿者!!」
国王は椅子から勢いよく立ち上がり耳がキーンとするほど大きな声で怒鳴った
「何故ですか?
父上のサインも確認しました。
俺はあんなトンボ眼鏡ブスが妻になるなんて耐えられません!!」
怒鳴る父に不貞腐れ、人前だというのに言い返した。
国王は息子の話を無視して枢機卿に話しかけた。
「その書類、無効にする事は出来ないのか?」
国王は頭を抱えながら枢機卿を見た。
「出来ません。サインする前に私は確認致しました。
神のペンでサインしております。
何人も無効にする事は出来ません」
レイシィは一歩国王の前に出た。
「国王様、お約束は守って頂きます。
我が領地の隣にある王家所有の荘園の所有権は我が領地の物になります。
変更手続きはウィリアム様と枢機卿様からサインを頂いた時に執事が変更に行きましたから安心されて下さい。
変更手数料は後ほど請求させて頂きます」
レイシィは国王にお辞儀した。
「何のことだ?
なんで王家所有の荘園がお前の物になるんだ?
泥棒か!?」
「泥棒だなんて失礼な。
婚約破棄の書類にもはっきり書かれていますわよ。
ウィリアム様から婚約破棄を申し出た場合お詫びとして荘園を譲ると。
私自身貴方との婚約は何度もお断りしましたが、どうしてもと言われ、書類作成をして、国王様がサインされていたのです」
「この婚約はお前が望んだのでは無かったのか?」
「馬鹿な事を言わないでください。
だいたい書類にサインする際に隅から隅まで読まない貴方がおかしいんです。
いいえ、実際貴方は、馬鹿なんですよね。
お馬鹿なキャロライン様と、どうぞ、お幸せに」
「私も確認しましたよ…本当に良いのですか?と」
枢機卿はウィリアムに言い放った。
ウィリアムは顔を青くしたり赤くしたり忙しくしていた。
国王自身は自分が決めた婚約を息子が勝手に婚約破棄するとは思っていなかった為、荘園譲渡やサインまでして書類をレイシィに渡していたのだった。
「ぷーっ!あははー!!」
静寂をぶった斬る様な笑いの主がいた。
帝国からの留学生のアランだった。
「レイシィ嬢って最高な女だな!
俺の嫁に来いよ!
幸せにしてやるぞ!」
黒髪黒い瞳の青年はレイシィに手を差し出した。
「お断りします。
私は男性に幸せにしてもらうより、してあげるんです。
私にはその能力がありますから」
アランはレイシィの言葉に呆気に取られた。
普通の女なら、俺が守る、俺が幸せにすると言われたら喜ぶのに、逆に幸せにするって言う女がいたからだ。
こんな女がいること、こんな素晴らしい女と一生居たいと思った。
「レイシィ嬢、俺と結婚してくれ!」
アランはレイシィに跪いて言った。
「お断りします」
レイシィも笑顔でお断りした。
「お兄様、帰りましょう」
レイシィは兄の手を取り会場を後にした。
残されたウィリアムとキャロルは国王夫妻から勝手な婚約破棄と断罪をした事をこってり絞られた。
アランは学園生活を続けながら休みの日には必ずフェルゼン辺境伯領に赴きレイシィに会いに行き愛を説いた。
最初の頃は、
「また来たの?」
とレイシィに言われながら、日々が過ぎ、アランが来るのが当たり前になり、学園を首席で卒業した日にあらためて、レイシィにプロポーズして2人は結ばれて帝国に戻っていった。
レイシィは陰に日向にアランを支え3人の子供達を育て上げ帝国では白銀の薔薇と呼ばれていた。
眼鏡を外したレイシィは実はかなりの美人だったのだ。
目も悪く無いのに瓶底トンボ眼鏡を何故つけていたのかアランが聞くと
「だって見た目を気にして私を選んで欲しく無いし、馬鹿な男から身を守る為ですわ。
素顔は家族と好きな人以外に見せる気になりませんし」
素顔で微笑む側にいる女性の言葉に幸せを貰っていると実感して身悶えるアランだった。
もちろん言葉通り、アランはレイシィに一生、帝国一幸せにして貰っていた。
仲良し夫婦は帝国でのお手本夫婦と呼ばれていた。
これから二十数年後、レイシィの姪や一族を巻き込んだ国王になったウィリアム国王一家が罷免され、投獄されるとは今は誰も知らないお話です…。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
評価頂けると、次の作品作りのパワーになりますので、よろしくお願いします!
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