タ オ
新キャラ登場!
その名も……!
「おーいお前ら、下校時刻とっくに過ぎてんぞ? 帰宅部は帰れー」
声の主は龍川哲先生。クラス担任ではないけど、数学の担当で面識はある。数少ない男性教師という事もあって、気さくな人柄の龍川先生は生徒達からいじられ……人気がある。
「あ、てっちゃんだ、やばっ!」
きらりが慌てた声を出した。きらりは龍川先生が苦手なのだ。その理由はすぐにわかると思う。
でも、苦手だという割に『てっちゃん』って呼んでるし、龍川先生に用事がある時、きらりのスカートの折り数は二つ増える。なんでだろ。
「山田ー。俺、これでも教師なんだけど?
いつになったら『龍川先生』って呼べるようになるんだろうなぁ?」
「あ、先生ダメだよ、きらりを苗字で呼んだら!」
きらりが龍川先生を苦手としている理由がこれだ。きらりのフルネームは、山田きらり。
きらりはファーストネームは気に入ってるみたいなんだけど、苗字はあまり好きじゃないらしく、苗字で呼ばれる事を極度に嫌うのだ。
まぁ確かに、きらりが思い描くお嬢様っぽさは、その苗字とは相容れないんだろうなぁ。
あたしはファーストネームが『花子』だから、きらりのその気持ちはあまりよくわからないけど。
「……え? はなちゃん何言ってるの? わたし呼ばれてないよ?」
空とぼけるきらり。自分が『山田』である事がほんとに嫌なんだね。
「ほら先生、きらりは名前呼びじゃないと受け付けないんだから!」
「そーかー。山田ー。
それならなおさらちゃーんと『龍川先生』って呼ばないとなぁ山田ー。
自分が呼んでほしい呼び方されたいなら、相手もちゃんとリスペクト……ってガン無視か」
龍川先生、わざときらりの苗字を連呼してる。そりゃあ無視されて当然でしょ。面白いけど。
「ふん、だ」
きらりはぷいっとそっぽを向いた。
……でもこれ、自分が可愛く見えるように計算された動きだよね? 中学時代から得意だったやつ。
「ほらほら、きらりもむくれないのー」
一応、形だけでもきらりをとりなして、あたしは龍川先生に向きなおった。
龍川先生には利用価値がある。こんな事でへそ曲げられたら協力を得られないかも知れない。
「……でさぁ、龍川先生、実は相談があるんですけどぉ」
あたしが龍川先生にそう持ち掛けると、先生は明らかに警戒した表情になった。
「東雲が相談?
……いやな予感しかしないんだが」
え、なにそれ失礼。
でもまぁ我慢我慢。なんとか龍川先生を味方に引き入れないと。
「えっとぉ、実はあたしたち、新しい部活を作りたいんです!」
「え、ちょっとはなちゃん、あたしはまだやるって言ってな……」
「部活を作るには部員が最低五人と顧問の先生が必要なんですよね?」
きらりの抗議を無視してあたしは話を続けた。だってどうせきらりは関わって来るに決まってるもん。
今はこの龍川先生をどう顧問に引っ張り込むか……。そこに集中しなきゃ!
……でも。
「そうだな。でも俺は顧問は出来んぞ?」
「えー、なんでですかー?」
「どうせめんどくさいからでしょ!」
きらりがそっぽを向いたまま言った。
「きらり! ここで先生にへそ曲げられたら顧問になってもらえないよ!」
そうなのだ。部活を作るには、絶対に顧問がいる。龍川先生ならあんまりうるさい事言わなそうだし適任だと思うんだけど。
「いーもん。てっちゃんなんかが顧問なんてやだもん」
また出た。きらりの『お嬢様風のわがまま態度』。こんな拗ね方が通用するのは小学校低学年くらいまでだと思うんだけど。
「おーそうかぁ。喜べ山田ー。
俺はそもそも教務主任! いっそがしいからなぁ。
部活の顧問はやらねえ事になってんのー」
「え。そんなぁ……」
あたしは正直、がっかりした。なんだ龍川先生全っ然使えないじゃん……!
「まぁ、東雲。部活を担当しておられない先生もいらっしゃるだろうから、探すのを手伝ってやるくらいはしてやるよ。
もちろんまともな内容の部活なら、って話だが。
で? どんな部活だ? 部員は集まってるのか?」
龍川先生とあたしの会話を聞きながら、きらりはずっと口をとがらせていた。きらりはあたしが苗字で呼ばれてると、いつも少し不機嫌になる。
でもでも、そんな事を気にしてる場合じゃなかった。なんか龍川先生、協力してくれそう!
「『きもだめし部』です! 部員はあたしときらり!」
「え、他いないの?」
思わずふくれっ面を忘れて聞き返すきらり。龍川先生は肩をすくめてため息をついた。
「……さて、ツッコミどころが満載すぎて、どこから処理していけばいいかねぇ。
まぁ、一言で言えば、アウトだ」
龍川先生は、当然って顔であっさりと言った。
龍川先生が好きだ! という方は感想を!
キライだ! という人はレビューを!
もちろん両方も可(笑)