ヲ モ
はなちゃん、暴走!?
きらりは感動のあまり、一瞬どう受け止めていいかわからなかったみたい。ちょっとの間黙っていた。
そして。
「……え?」
聞き返すきらりの表情は『意味わかんないんだけど』の顔だ。感動してたんじゃなかったの?
なら改めて感動させてやろうじゃない。もう一度とっくりと聞かせてやろうじゃない。
「きもだめし部よ! き・も・だ・め・し!」
もう一度、ゆっくりはっきりきっぱり言うと、きらりはパッと表情を輝かせた。やっとわかったようね。
「……あ! あぁ! お化け屋敷とか?」
きらりは『やっとわかったぁ』的な表情で、聞き捨てならない事を言った。
「は? 何言ってんの?
お化け屋敷と一緒にするとかありえないんだけど」
当然あたしの声も尖ってきてしまう。こんな常識も知らないなんて、きらりはほんとどうかしてるよね。
「え? え? そ、そんなにキレなくても……」
だがきらりはまだ事の重大性がわかっていないみたいだった。
「一緒にしないでって言ってんの。
お化け屋敷なんて単なるアトラクションでしょ? いつ行っても同じタイミングで同じものが出てきて。
あんなの子供だましよ!」
なんでこんな当たり前の事を説明しなきゃならないんだろう。そんな苛立ちも加わって上機嫌になっていたあたしの気持ちはすっかりとげとげしくなっていた。
「そっか! きもだめしだと、お墓とか廃校とか、本物が出そうなところでやったりするもんね。
きもだめし部って、もしかしていろんな心霊スポットとかそういうのを調べたりするの?
心霊現象とか、ちょっと怖そうだけど……」
きらりはあたしのとげとげにはお構いなしに、今度は真逆に振れた事を言った。あたしの心の核心を突いてきた。
「ちょ、ちょっときらり、心霊現象様の事は、さすがに部活ごときで研究するのはおこがましいよぉ。
心霊スポットとか、きもだめしフィールドで使わせていただいたりできたら最高だけどぉ……。
さすがに、恐れ多いじゃん……?
あたしも、いつかは心霊現象様につりあうくらいのレベルになりたいけどぉ……」
平静さを保てず、どうしてももじもじした口調になってしまう。
やばい、頬が熱い。胸がどきどきして、身の置きどころもないくらい恥ずかしいって言うか。
心霊現象様の事を口に出すだけでもう、なんか尊くてもったいなくて死にそう。
「はなちゃん、今度は完全にデレてる……」
「とにかく! まずは! 部活を立ち上げて!
きもだめしの魅力を遍く世界に知らしめるのよ!」
何故か少し引き気味のきらりに、あたしは力を込めて言った。
「そ、そうだね。面白そう……。だけど、どんな活動をするの?
暗いところで歩く練習とか? 驚いても腰抜かさない練習とか?
あと、あと、逆に効果的におどかす練習?」
思った通り、きらりは活動内容に興味を持ち始めたみたい。でも、やっぱり発想は素人どまりだわ。
「そういう実戦練習も大事だけど、まずは自分が『何きも』なのか知るところからかな」
「……何きも?」
きらりがきょとんとして聞き返してきた。ほんとこの子、何にも知らないんだね。
「きもだめしマニアにもいろんなタイプがあるのよ。
撮り肝、音肝、歩肝、前肝、後肝、模型肝、描き肝、妄想肝、VR肝、蒐集肝、お払い肝、地図肝……。
ざっと挙げてもこのくらいはあるわ。ほんとはもっともっとあるけどね!」
「……は?」
きらりはまたも『意味わかんないんだけど』の顔で聞き返してきた。あぁもう、世話の焼ける子ね。
「だからぁ!
撮り肝、音肝、歩肝、前肝、後肝、模型肝、描き肝、妄想肝、VR肝、蒐集肝、お払い肝、地図肝とかいろいろあるの!
ちなみにあたしは、撮り肝、歩肝を中心に、妄想肝、地図肝あたりがメインの守備範囲かな」
詳しい事は少しずつ教えていくしかないかもね。活動をしていけばいくらきらりでも覚えるとは思うけど。
「よくわかんないけど、なんか面白そうだね」
さっきからこの子「面白そう」としか言わないけど、ここはきらりを引きずり込むチャンスね。どうせ関わってくるんだろうけど、きっかけはいつもこっちが作ってあげなきゃいけないし。
「でしょでしょ!
よし、きらりも入部決まりね!」
「……え?」
きらりがまた聞き返す。どうせ入りたいんだろうに、どうしてもあたしに頼まれて仕方なく入った、みたいにしたいんだね。
「だってきらりも今は帰宅部でしょ?
ね、一緒にきもだめし部作ろうよ!」
「え、ちょっと待って……」
その時、教室のドアがガラリと音を立てて開いた。
誰よ全く。もう少しできらりを落とせるところだったのに。
はなちゃん派は評価!
きらり派はブクマをお願いします!
あ、もちろん両方も可(笑)