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恋愛早送り

作者: 野郎数学徒

中三の俺、年齢イコール彼女いない歴の記録を現在進行形で更新中。成績は二年半ずっと学年一位、学校の校友会から優秀生徒賞をもらい、今年特待生徒にも選出された「生ける伝説」。私立中高一貫校にいるので、今は丁度受験がなく中だるみの時期。高校受験しないヤツは彼氏彼女ばかり作っている。やつらは非効率的である。中三の時の恋愛なんてたかが知れていて、どうせ高校のどこかのタイミングで別れる。そんな、結婚に全く繋がらない恋愛における時間と金銭の消費は無駄であり、そんなインスタントな空費をするほど自分は馬鹿ではない。しかし、周りは恋愛している。昼食後、自分が一人で、自分のことを知らない高校生が多く行き来する高校棟の自販機の長椅子で寝転んでいても、クラスのヤツがたまに来て、「お前いつも昼いないと思ったらこんなとこにいたのかよ」と話しかけて、学年でずば抜けた、孤高の存在である自分の唯一の至福のプライバシーを侵害しやがる。どうやら、彼女のために飲み物を買っているのだという、くたばれ。そういうことやってるから、校内テストで俺より下の成績なんだよ、という蔑みの言葉が喉仏まで出かけたが、そこは聡明になって、へえ、って言ってやった。そうだ、へえ、なんだよ。どうでもいいんだよ、そういう、無理にさ、国語とかで「おもいでぽろぽろ」見させられてさ、これで生徒が恋愛に興味持つだろうとかいう慶応卒教師の思惑にまんまと引っかかり、中三になったんだから恋愛しなきゃっていう一種の強迫観念を自分で勝手に作って、結果的に手のひらで転がらされているような感じでさ、一瞬の恋愛経験だけを求めてさ、アホちゃうか。あいつらはアホなんだよ、俺と違ってさ。違うんだけど、そうだけど、負けを認める訳じゃ無いんだけど、俺、恋愛、興味ある。

でも、せっかく恋愛するんだったら、できるだけ楽して恋人を見つけたい。何なら、告白はしたくない。だって、俺って学校では孤高の存在なんだし、告ったら俺以外の、「おもいでぽろぽろ」で転がされている一般生徒と同じに成り下がり、周りの教員からも「あの、あいつも恋に恋する時期を迎えたんだ、思春期だな」とか裏でほくそ笑まれるんだろ、絶対。俺は周りとは違う。だから、告白はしない、これだけは貫く。

まず、クラスで一番モテない女子を狙おう。うーん、いた。帰国子女のあいつ。中一の時そこそこ仲良かったし、英語選抜クラスにいて、何か他の生徒と距離があるし、何より所詮英語だけの奴だからちょろいでしょう。しかも、そういえば、最近彼女から好き好き光線を感じる気がしてきた。これは、相手も、そうだ。これで相手は決まった。

まあいいか。今日は月曜なんで、ぷりんてぃんのミメコヒメの配信があるから、それを聞いて、寝よう。


朝になった。今日はいつもより一時間早く起きたんで、何をしよう。そうだ、パズルを作ろう。

いいのができそうだ。ところで、俺は何でこれ作ってんだ?そうだよ、そうそう、自分の脳は賢いからさ、僕は無意識のうちに、このパズルを使って彼女に告白をするっていうんで、朝早くからパズルつくってんだよ。そういうことか、気づかなかったなあ。さすが、すごいや、俺の無意識。

よーし、「午後四時に高校棟自販機の下で待ってる」という内容の暗号を作った。俺は「一便」のバスで学校に登校するんで、クラスの誰よりも早く登校する。朝七時半、学校に着いて、ダッシュで教室についた。彼女の席を見つけ、その中に暗号パズルを伝えた。僕はその後、隠れるように高校棟・図書館の下の男子トイレの、洗面台に一番近い、自分がここ半年間私物化している男子トイレの個室に入り、一時間入り、「ガラスの仮面」を読んで時間を潰した。なんでって、教室のそばでうろちょろしてると、周りから不審に思われるでしょう。


一時間後、教室に戻る。明らかにクラスメートが自分の方を見ている。なにあいつゲロったの?は?違うし。別に恥ずかしがってなんかねえし。ゲロってなんかねえし。机の中に暗号パズルおいて、一時間男子トイレにこもっただけだし。まあ、気にしないんで。そんなこんなで授業が始まった。


帰りのHRが終わった。自分が指定した午後四時に時計の針が近づく。周りが、「お前今日の午後四時どうすんの?」と口々に聞いてくる。「は?帰るし。でもわかんない」と言ったけど、本当にどうしようかわかんない。でも、あと二分で四時になる。なる。なる。気づいたら自分は、中・高の校舎と信号挟んで隣にある大学を歩いていた。俺は、自分で作った約束を、ばっくれた。そこで10分くらい時間を潰していたら、向こうから、例の、帰国子女の「彼女」が、帰りのバスに乗るためロータリーに向かっていて、すれ違った。怒ってたけど、その怒った顔さえかわいい。


その夜、午後四時に「彼女」と自販機で自分を待っていたクラスメート経由で、「彼女」は自分のメアドをゲットし、彼女からメールが来たんで、告白したら、いいよ、と返信が来た。うっしゃー!


ここから、自分は、学校では、二人は付き合ってないんで、軽く話をしたり、「彼女」の弟を無視したりする程度だが、メールでは頻繁に気持ち悪い連絡をするという、どこからどう見ても超ラブラブで熱々なカップルになった。その状態を半年くらいやったら、「彼女」は、その相談相手と付き合っていた。

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