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毎日「はじめまして」と言う

何を言っているかわかんなかったがこれが現実だ。

信じたくなくて、頬を何回もつねった。

よく見るアニメほどではないが何回もつねった頬は赤くなっている。

つねっても変わらない現実に悲しんで、嘆いて…さっきまで俺が好きだといっていた欅色の空は今の俺の心を表しているようなくもった星一つない夜空に色を変えていった。


「うっ…」と聞きなれた声に濁ったフィルターがかかったような声を聞いた。

確信した。澪奈が起きた。

前と同じ顔で頭に巻いている包帯と俺を忘れているという事実を除いてこちらをじーっと見ている。


生きてこちらを見ているとりあえずの安心感なのか

もう俺を思い出さないという悲しみなのか

目頭が熱くなって、喉がキューと締め付けられて…

目が潤んでいる俺の錯覚なのかもしれない。

澪奈の目も俺と同じように潤んでいて「翔太…」と小さく口を動かしたように見えた。


起きた澪奈に混乱させないように少しづつ状況を医師が伝えたあと、聴診器で胸の音を聞いて

念の為と言って頭のレントゲンを撮った。

「1週間後には退院できるでしょう。」と言った。

俺は澪奈の友人だということにしてもらった。

どうせ思い出せない思い出ならこのままフタをした方がなんだか楽だと思った。

正義感の強かった澪奈が聞いたら怒るだろうか。

もっとも記憶が無くなった澪奈にそんなものを求めても仕方がないのだが。


医師の宣言通りに澪奈は1週間後に退院した。

退院してからは俺の家から徒歩十分のところにある澪奈のアパートに連れていった。

朝に医師の説明を受けていたので自分に置かれている状況はわかっているのか妙に落ち着いていた。

…違和感を感じるほどに。


一日ごとに記憶がリセットされる澪奈に俺は毎日会いに行った。

いつも、澪奈が起きる時間はだいたい一緒で俺はその時間に合わせてチャイムを押した。

いつもと同じ…俺は毎日澪奈に「はじめまして大澤翔太です」と言う

澪奈の病気を手短に説明し最後に「俺は澪奈の友人だ。」と言った。澪奈が病院で起きて俺の方を見て

「あなたは誰?」と聞いてきた時に出来た心の切り傷に自分で塩を塗っている気分だった。


俺は事情を説明して今は店を休んでいる。

これも休暇だと自分に言い聞かせて澪奈の家の中で話していた。



澪奈は自分の友人関係、職業を毎日俺に質問してきた。愛していた人だ。飽きたりなんかはしない。

まぁ、寂しくないというのは嘘でも言えないのだが。


なんかあったらコメントよろしくお願いします!!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 途中で詰まらず、主人公となる方の心情表現がとても分かりやすく、サクサク読める感じがとても良いと思いました!! [一言] 今後の更新楽しみにしています。
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