生きているのに……。
これは2話に当たるんですが1話を別で作ってしまいまして…。
もし1話からみたいという方がいましたら(多分居ない)
私のホーム画面?に別でありますので…
紛らわしくてすいません
お願いだ無事でいてくれ。
何も代償がないとは願わないから…
せめて、せめてもう一度その笑顔で……翔太って笑ってくれ。
病院に着いた。
受付の人に病室の番号を聞いた。
看護師の人に走らないでくださいと言われたがそんなこと気にしてる余裕なんてない。
病室だ。
ドアの横のプレートには〈藤野 澪奈様〉とかいてあった。
一刻も早く会いたいはずなのに。
ドアを開ける手が震えて…
汗をかいて暑いはずの体は首元と指先が妙に冷たくて…
このまま本当に澪奈の笑顔が見れないかもしれないと思ったら急に怖くなって…
でも、現実は変わるわけない。
少し重い引き戸を開け部屋に入る。
白と黄土色のフローリングでまとめられた少し広い部屋に、
消毒の匂い…俺の嫌いな匂いだ。
それから澪奈。
水色っぽい病院の服を着て……
眠っているのか?
よく医療ドラマで見るような呼吸器?のようなものをつけて……
ゆっくりと曇って、また透明になっていく呼吸器を見て俺はへなへなとその場に座り込んだ。
まだ生きている。
座り込んだ俺を見て澪奈の隣に座っていた医師が「大丈夫ですか?」
と聞いてきた。
俺はコクコクと頷き、少ししたあと立ち上がった。
息を飲み、医師に聞いた。
「ッ澪奈は、澪奈は大丈夫ッなんでしょうか?」
ずっと走ってきたんだ。
ここに来るまで、澪奈の曇る呼吸器を見るまで喉の乾きなんて忘れていた。
きっと慣れているんだろう。
俺の声を聞いた医師は水を渡しながら、笑顔で言った。
「生きていますよ。五体満足でちゃんと。」
「ッありがとうッ ありがとう。」
俺は何度も礼を言った。
泣きながら…何度も何度も。
俺が落ち着いた頃だろうか、
澪奈が眠っているベッドの横にある窓からは赤いような橙色のような俺の好きな色の空が見えた。
なんで好きなのかは分からないが。
下げていた頭をあげるとさっきまで落ち着いた笑顔で話していた医師は曇った表情になっていた。嫌な予感がする。
「落ち着いて、聞いてください……。」
少し言葉の理解が遅れた。
なんでだろう。今生きているのに?ちゃんと息もして、澪奈の顔も、手も足も、何もかもあるのに…。
「藤野さんは、身体的には特に問題はありませんでした。
ですが、事故の時頭を強く打ったせいで脳に異常があります。
命に別状はありません。」
その後、医師は一呼吸した後また話を続けた。
「極めてまれな症状です。今のところ様子を見るしかできることはありません…。頭を強く打ったことが原因でしょう。
藤野さんは〔記憶維持機能低下症候群〕です……。
彼女はこれから記憶を維持することができません。きっかり一日、日付けが変わる午前0時0分で記憶がリセットされます。
ご飯を食べる、ペンを握る。などの日常的なことは覚えているようです。ですが、今までの人間関係や自分の名前などは全てリセットされ、これからも記憶することができません。」
稀な症状だから医師も落ち着けないのだろうか。
俺の顔を見ることなく話していた。
俺が理解なんて言葉からほど遠い場所にいるとも知らずに…。
「アメリカで〔記憶維持機能低下症候群〕になった方はいつもと同じ生活をすることで治ったそうです。治った、と言っても過去を思い出すことはありません。治ってからの記憶維持は出来たそうです。今は麻酔で眠っていますが、もうじき目を覚ますでしょう。」
何を言っているかわからなかった。
記憶維持低下なんだって?そんなの聞いたことないぞ?
記憶がリセット?思い出すことはない?
なんだよそれ。なんかのアニメかよ…。
なぁ、教えてくれよ澪奈…
お前は今そこで何をしている?
何かあったらコメントよろしくお願いします。