白雪姫~Snow White~
白雪姫は、低地ドイツ語でSchneewittchen、標準ドイツ語でSchneeweißchenと表記される。
元々はドイツのヘッセン州バート・ヴィルドゥンゲンの民話とされている。
グリム兄弟の『グリム童話』(Kinder und Hausmärchen)に、KHM53番、エーレンベルク稿(1810年手稿)では43番として収載されている。
話者は、「マリーことマリー・ハッセンプフルーク(ドイツ語版)である。
タイトル及び主人公の呼称の日本語訳名は「白雪姫」が一般的である。しかし、Schneewittchenが“雪のように白い子”の意であることから、厳密に正確な日本語訳とするなら「雪白姫」が正しい
昔々、あるところに森に囲まれた国があった。その国に、雪のように色白なもち肌、血のように赤い頬や唇に黒壇の窓枠の木のような黒髪を持って産まれた美しき姫君がいた。彼女は、実母が心に浮かべた願い通りに雪がしんしん降る朝に黒檀の窓枠のついた窓際で、雪を見やった際に生まれたことから名づけられた「白雪姫」と呼ばれている。実母は彼女を生んですぐに原因不明の病気で息を引き取った。しかし、彼女の継母であり、綺麗なことを鼻にかけ、高慢で、器量で人に負けることが大嫌いな女王は、自分こそが世界で一番美しいと信じていた。彼女の大事な宝物である真実の鏡は、
「世界で一番美しい人は誰ですか?」
との問いにいつも
「それは女王様、あなたなのです」
と答え、女王は満足な日々を送っていた。
それから長い年月が経ち、白雪姫が12歳の誕生日を迎えたある日、女王が真実の鏡に
「世界で一番美しい女は誰ですか?」
と訊ねると、
「それは白雪姫です」
との答えが返ってくる。
「何ですと!?」
衝撃的な事実に怒りを露にする女王は猟師を呼び出すと、
「必ず白雪姫を殺し、証拠として彼女の肺と肝と心臓を持ち帰ってください。お願いします」
と命じる。
「白雪姫を死なせるわけにはいかない」
しかし、猟師はそのことに不信感を持っており、殺さずに森の中に置き去りにする。
「ここでおとなしくしてくれ」
「き、きゃー!」
そして、女王へは証拠の品として、イノシシの肝を持ち帰る。
「さあ、帰るぞ」
実はこの時、猟師は自分の手にかけるのが忍びなかっただけで、結末としては獣に食べられるだけだろうと思っていた。
「ただいま戻りました!」
「例のものを見せてください」
「はい!」
猟師はイノシシの肝を女王に見せる。
「これが、白雪姫の肝臓です!」
「よろしい」
女王はその肝を白雪姫のものだと信じ、大喜びで塩焼きにして食べる。
「ここは…どこなの…」
森にたった一人残されてしまった白雪姫。
「誰か助けて…」
森の中をさまよっていると、小さな人だかりを発見する。
「やあ、ひとりぼっちでさみしいようだね」
「僕たち、七人の小人だよ」
「それじゃあ、自己紹介するね」
「まずは、先生のコーラル」
「怒りんぼうで苦虫のアプリコット」
「幸せで呑気屋のカナリア」
「眠り屋のバジル」
「恥ずかしがりやで照れ助のシュプリーム」
「くしゃみっぽいプルシャン」
「最後にぼんやりでおとぼけで抜け作のシオン」
「よろしくね」
「あなたたちはどんな仕事を?」
「この森の平和を守っているよ」
「あなたは誰なの?」
「白雪姫。帰る場所がなくて…」
「じゃあ、案内するよ」
「こっちにおいで」
「うん」
森の安全をいつも守っている7人の小人たちと出会い、七つの川を越え、木苺色の屋根の小さな家に到着。
「ここが、僕たちの家だよ」
「でも、ここに住むための契約があるんだ」
「どういうことなの?」
「『家の世話をし、料理を調え、ベッドをつくり、洗濯をし、縫い繕い、何もかもきちんと綺麗にしておいてくれる』ことが条件だよ!」
「どう?契約する?」
「そうするわ」
「ありがとう!」
契約を交わした白雪姫は小人たちと生活を共にするようになる。
「じゃあ、掃除して!」
「綺麗にね!」
あるときは掃除をして、
「今日はアップルパイを作って!」
「まず、パイ生地を用意して。簡単でお手軽に市販のパイ生地から挑戦してみてもいいわ。材料はあらかじめ計量しておいてね」
「リンゴは洗って皮をむいて、8等分に切るの。糖度はかなり高め、たっぷりの蜜よ」
「切ったリンゴに砂糖とラム酒を入れて中火で炒めるわ」
「砂糖が溶けたら蓋をして、中火で10分程煮込んで。水分で泡がたくさん出ているわ」
「10分後、蓋をあけて水分を飛ばすの。木べらで、優しく混ぜてね」
「水分かなくなってきたら、無塩バターを入れて水分がなくなるまで炒めて。ツヤが出てくるの。シナモン振り入れてもおいしいよ」
「フライパンの底にシロップがなくなれば、そのまま冷まして。このままでも美味しそう♫」
「打ち粉をした台の上にパイ生地をのせ、綿棒で4ミリメートルの厚さにのばしていくわ」
「パイ型をひっくり返して、パイ型のふちの高さより、1センチメートルの大きいところで切ってね」
「ひっくり返してパイ型にのせ、フォークで穴をあけて」
「りんごを放射状に並べて。ちょうど、ぴったりになったわ」
「残りの生地は、幅1.5センチメートルに切るの。そしてその生地を、格子状に編み込んで。またはクロスして並べるだけでも綺麗でしょう」
「ふちの生地を折り込んで、艶出し用の卵黄を刷毛で軽く塗ってね」
「200度に温めたオーブンで、20分焼いてね。180度に温度を下げて20分焼きます。10分経った位で上にアルミ箔を上にかぶせてね。焦げ防止のために。この段階で既にいい焼き色がついてるんだけど、しっかり20分焼いて。生焼け防止のために」
「クーラーで冷ましたら、アップルパイの出来上がり!」
「おいしそう!」
「いただきます!」
「召し上がれ」
あるときはアップルパイを作り、
「みんなのベッドを作って!」
「大変だけど、作ってみる!」
あるときは小人のベッドを作り、
「じゃあ、僕たちの服を洗って!」
「分かったわ!」
あるときは川で洗濯をして、
「新しい服を作って!」
「やってみるわ!」
あるときは小人の新しい服を縫い繕った。こうやって、白雪姫は小人の親として小人たちに慕われるようになった。
一方、猟師に騙されたと知った女王が真実の鏡に
「世界で一番美しいのは誰ですか?」
と尋ねたところ、
「それは白雪姫です」
との答えが返ってくる。
「腰紐を彼女に売りましょう」
白雪姫がまだ生きている事を知った女王は物売りになりすまし、森を見回っている小人たちの留守を狙って、いろいろな色の絹で編んだ腰紐を白雪姫に売りつける。
「いいものが入りました。さあ、お買い求めください」
「あ、ありがとう…キャー!」
「作戦は成功です!」
そして腰紐を締めてあげる振りをして彼女を締め上げ、息を絶えさせる。
「ただいま!」
やがてずり山で鉱石を掘りに出かけていた小人たちは、事切れている白雪姫に絶句する。
「大変だ!」
「白雪姫が倒れてしまった!」
「でも…」
「みんなで助けよう!」
「じゃあ、ハサミを持ってきて!」
「うん!」
白雪姫を助けようと、小人はハサミを持ってくる。
「切るよ!」
小人は白雪姫に縛られていた腰紐を切って、彼女の息を吹き返させる。一方、女王が再び世界一の美女を真実の鏡に尋ねたことにより、白雪姫が生きている事が発覚してしまう。
「なぜですか…白雪姫がまだ生きているなんて…」
女王は魔術を使ってこしらえた櫛を作り、
「今日という今日こそは」
再び物売りになりすまして白雪姫を訪ねる。
「今日はいい櫛が手に入りました」
「ありがとう!じゃあ、早速使ってみるね…キャー!」
「作戦は成功です!」
何も知らずに櫛を買ってしまった白雪姫は、頭に櫛を突き刺され倒れてしまう。
「さあ、みんなで力を合わせよう!」
「いくぞ!」
「えいっ!」
しかし、小人たちの勇気のある行動で助けられる。
今度こそ白雪姫を始末したと上機嫌の女王。しかし、
「白雪姫はきっと奇跡の力でよみがえるのでしょう」
嘘は絶対つかない真実の鏡の答えで白雪姫の生還を悟る。
「もう絶対に許しません!これが、三度目の正直です!」
女王は、毒を仕込んだ半分赤くて半分黒いリンゴを造る。
「毒が入っているかどうか、彼女の瞳には映っていません。騙されたと思って食べてみてのお楽しみです」
その後、善良なリンゴ売りになりすまして白雪姫を訪ねる。
「召し上がれ」
「いただきます」
何も知らない白雪姫は疑いもなくリンゴを齧り、急に意識不明の重体になってしまう。
「ただいま!」
やがて森の見回りから帰ってきた小人たちは白雪姫が本当に死んでしまったものかの如くショックを受けてしまう。悲しみに暮れる小人もいれば、言葉を失ってしまう小人、泣き出した小人もいた。
「大変だ!」
「白雪姫が死んじゃった!」
「悲しいよ…!」
「うわーん!」
その後、努力も虚しく白雪姫を蘇生できなかったことを悔やんでいる小人は、あまりにも美しくまるで生きているように見えたため白雪姫の遺体を頑丈なガラスの棺に入れ、森の中心部まで持っていく。
「助けられなくてごめんね」
「申し訳ないよ」
そこに森に迷い込み小人たちの家に泊まりに来ていた隣の国の王子が通りかかり、白雪姫を一目見た途端、
「死体でもなんでもいいから、彼女を僕が託す」
と身罷った白雪姫をもらい受ける。しかし、その時だった。
「必ず白雪姫を助けたい」
と王子は決意を固める。その思いには、白雪姫を大切にしたいと思っている強い気持ちが込められていた。
白雪姫の棺を墓地までかついでいた家来のひとりが潅木につまずき転倒し、棺が揺れた拍子に白雪姫は喉に詰まっていたリンゴのかけらを吐き出したが、意識はまだ戻ってきていない。
「だめ…意識がない…」
そんな彼女を助けようと、王子は身を乗り出してまで彼女の元へと近づいてくる。
「今、助けるからね」
王子が白雪姫の頬にそっとキスをすると、白雪姫の意識は奇跡的に回復。
「あ、あなたは誰なの…?」
「王子だ。森に囲まれた国の隣の花畑に囲まれた国の出身だ」
「…私を助けてくれてありがとう」
「どういたしまして」
元気になった白雪姫に王子は喜んだ。そんなとき、白雪姫は勇気を出して王子に求婚を求める。
「あの…私と結婚してください」
「いいよ。助けてくれたのなら」
「ありがとう、とても嬉しいわ」
王子は白雪姫を、王子の国である花畑に囲まれた国に連れ帰って妻として迎える。
それから一週間後、盛大に開かれた白雪姫と王子の結婚披露宴の席。
「あなたたちは一生の愛を誓いますか?」
「誓います」
「そう誓います」
「いいでしょう。では、誓いのキスをお願いします」
白雪姫と王子が誓いのキスをして、結婚披露宴は無事に大成功を収める。
「おめでとう!」
「幸せになってね!」
「僕たちもずっと応援しているよ!」
小人たちも、白雪姫を祝福した。こうして、白雪姫と王子は幸せな生活を送るのであった。
「く、苦しい…」
一方、女王は祝宴の出席者たちの目前で、真っ赤に焼け焦げた鉄の靴を履かされ、死ぬまで一生踊り続けることを余儀なくされた。
「く、苦しい…」
女王はその後、継子である白雪姫が自分よりも美しいことに我慢できなくなり、三度も白雪姫を謀殺しようとしたとして、魔女の裁判に訴えられたのであった。