白雪姫の悪い王妃様がある日突然気が付いてしまったようです
「鏡よ鏡、鏡さん、世界で一番美しいのは、だ~ぁれ?」
『それは白雪姫様でございます』
きーーーーーーーつ!!!!
許さないわ!
許さないわ!
世界で一番美しいのはこの私よ!
私を誰だと思ってるのよ!
この国の王妃よ!
今やこの国を治めているのは私!!
この王妃様が世界で一番なのよ!!
なのに!!
世界で一番美しいのは白雪姫などという小娘ですって!!
この鏡が言うことはいつも真実。
私は、いつもこの鏡が言うことに従ってきたわ!
だから
誰よりも美しくなれたわ!!
誰よりも強い魔力という力を手に入れたわ!!
王妃の座も奪い取ったわ!!
国民から財産も奪い取ることができたわ!!
美も力も地位も名誉も財も奪い取ってきたの!!
なのに!なのに!なのにぃぃぃぃぃ!!!!!
きーーーーーーーつ!!!!
何もしてない白雪姫とかいう小娘に!!
私は奪い取ってきたのに!
この鏡のおかげで、色んなものを奪い取ってきたのに!!
・
・
・
・
そう、この鏡のおかげで・・・・
いろんなものを奪い取ってきた・・・
奪い取ってきた・・・?
鏡のおかげで・・・?
なぜ・・・?
幸せになりたいから・・・?
奪い取って幸せになれるの・・・?
待ってるのは破滅じゃない・・・?
私はただ、幸せになりたかっただけなのに・・・?
この鏡が私を美しく強く導いてくれた・・・?
この鏡のおかげで・・・?
この鏡のせいで・・・?
この鏡が・・・・!!!!
王妃は、顔を伏せ、しばらく沈黙する。
やがて静かに顔をあげ
「あなたね、私に協力するふりをして、この私を破滅させようとしてるのは」
と静かに鏡に向かい声をかけた。
『ふふふふ、ふはははははははは』
いつも穏やかな受け答えをしていた鏡が嘲笑するかのような高らかな笑い声を
あげる。
鏡からはいつの間にか禍々しい瘴気が漂いだす。
『そうだ、よくわかったな!お前の中にある欲望を刺激しお前の魂を
堕落させるべく導いてやったのよ!』
王妃は、キッと鏡をにらみ
「あなたは、誰!」
と鏡を指さす。
『我が名は、ベルフェゴール。美と堕落を司る悪魔よ』
「許さない!この私をたぶらかすことなど許さない!」
『許さない?散々私に操られておったお前が、何を許さぬというのだ?
もはや破滅寸前のお前が!』
青筋を立て、充血した目をし引き裂いたような口もと
まるで般若のような表情だった王妃の表情が冷めた表情に変わる。
王妃は背筋をスッと伸ばし、あごをやや上げ鏡を冷ややかに見つめる。
まるで鏡を見下すかのように。
そして口の端をクイッとあげ、ニヤリと笑う。
「アタシを誰だと思ってるの?ベルフェゴールとやら?」
『なにを?』
「あなた、知識はあっても力は無いでしょう?」
王妃はさらにニヤリと笑う。
「アタシを言葉でたぶらかすことはできてもそれだけ。何もできない」
『言葉でたぶらかされる程度の女が何を言い出すっ』
王妃はニヤニヤと笑いながら鏡へと近寄っていく。
やがて鏡の前に立つと懐から小さな小瓶を取り出す。
『な、何をしようとしている!!キサマ!!』
鏡の声は明らかに動揺している。
王妃は小瓶の蓋を開けると素早く中の液体を鏡にかけた。
バシャっと音がして鏡の表面に液体が張り付く。
『キ、キサマ何をした!!』
「お薬よ、白雪姫を1000年眠らせようと思って作ったお薬。
リンゴにでも混ぜて食べさせてやろうと思ったけど、やめたわ
あんたに、使ってあげる」
『ナ、ナニヲ、キサマ・・・』
鏡を斜にみながら王妃は
「アタシをたぶらかそうなんて1000年早いのよ。
だから、アナタ、その薬で1000年眠ってから出直しなさい」
『・・・・』
鏡から放たれていた禍々しい瘴気は消え、ただの美しい鏡へと変わった。
王妃は鏡に背を向け
「アタシを誰だと思ってるの!アタシはこの国の王妃よ!」
王妃になった経緯は色々あるけれど、それでも王妃は王妃よ!
世界中の全てはアタシにひれふしなさい!!
この国の国民は、アタシのために懸命に働きなさい!
そしてこの国を富ませなさい!
そうしたら・・・フッフッフ。
国民どもよ、国の豊かさを享受して幸せになっておしまい!!
そーしてアタシに感謝するのよ!!!
あっはっはっはっ!!
白雪姫?
あ、忘れてたわ。
田舎の小娘は田舎で噂の美しい小娘としてどこぞの国の
王子様にでも見初められて幸せにでもおなり!
7人の小人でも引き連れて盛大な結婚式でもおあげ!
あなたみたいな小娘にはそれがお似合いよ!
あっはっはっはっ!!
アタシはこの国の王妃様!
王妃になった経緯はちょっとアレだけど王妃は王妃よ!
魔法が使えるとこはちょっとアレだけど王妃は王妃よ!
世界中のみなよ!アタシのおかげで幸せにおなり!
そして、アタシに感謝するのよ!!
あっはっはっはっ!!
王妃様の高笑いはいつまでも続いたとさ。
めでたしめでたし