乙女のおでこは繊細?
初投稿です。
一人が「俺」を嘲笑う。もう一人が「俺」に暴力を振るう便乗したかのように一人、また一人と悪意をぶつけてくる。
-お前本当にノリが悪いよなぁ
-助けようと調子乗ったって意味ないんだよ
-あの時に見てみぬ振りをしとけば良かったのになぁ
一人、また一人と布に水が染みるようにヒタヒタと、だけど確実に悪意が染みていく。それと同時に暴力、嘲笑、悪意が増えていく。
何かが凍る音が聞こえる。体は暴力にさらされて燃えるように痛いはずなのに
パキリパキリと聞こえてくる、幻聴かもしれないがこれは自分の心が凍る音だ。そう確信する...
「……ん」
霞む視界の中誰かが呼ぶ声が聞こえる。これはだれの声だろう。薄れた意識の中考える
「…こ……ん」
やっぱりだれかの声が聞こえる。だんだん自分が浮上していく感覚が襲い意識が覚醒していく
「心君」
目を開けるとそこにいたのは看護師の方だった。周囲はすでに明るく「俺」は朝だと認識する
「大丈夫だった?うなされてるような感じだったから起こしたけど」
寝起きのため、重い体と重い瞼を無理矢理に持ち上げて返事をする
「はい、大丈夫です。ありがとうございます」
そう答えると看護師の方はすぐに病室を出て行った。その後俺はあくびをしながらぼんやりと今日の予定を考える。
「そーいや、あいつら今日来るんだっけ」
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「おはようー、こころ。体は大丈夫か?」
「おはよう!こころ!外は相変わらず寒いから鍋が食いたいな!」
「おはよう、こころ。佐愉がうるさくしてごめんね」
三人の挨拶が室温、湿度と調整された病室内に響く。「僕」が心許せる数少ない友達というより幼馴染たちだ。僕の名前は石弥心、口調や一人称が変わるのは理由があるけどこれが僕の素だから気にしないで。誕生日はまだ先だから16歳だね
「こころ、大丈夫か?」
僕を心配そうに見ているのは福沢貴之、僕の男友達であり数少ない理解者だ。
顔は間違いなくI☆KE☆ME☆N、身長も高く、声もイケボだ。僕の顔は至って平凡ダヨ?ドウシタノ
「ウン、大丈夫ダヨ」
全クモッテ嫉妬シテナイヨ?顔面崩壊シテイイヨ?
「何故に片言?」
君のイケメン具合を羨んでるんだよ
「腹減ったせいじゃないか?あたしも腹減ってるしな!」
それは違う。元気いっぱいで的外れな事を言っているのは霧雨佐愉、一に元気、二に食欲で、三に元気がつくとりあえず、いろいろな意味で男勝りの女の子だ。ついでに言うと誰にでも人懐っこいせいか男女共に人気があるらしい。髪の色は茶髪でショートカット、さらに綺麗というよりかわいいの表現が似合う顔、ついでにいうとご近所さんだった。ご近所さんといっても朝は起こしに来てはくれなかった。逆に起こしに行く立場だった。
「的外れな事言ってるわよ、どうせ貴之の顔に嫉妬したんでしょ」
良くぞ言ってくれたというより幼馴染より僕の考え読めてるってあなたエスパーですか
「それなりに読めるわよ。最近」
「つってもこころ限定だろうけど」
「うっさい!」
僕の思考を読んできたのは柊狐羽、成績優秀、才色兼美などいろいろ称号を持つ女の子だ。
頭には髪をくくる大きなリボンがありさらさらの黒髪を背中で括っているポニーテール?ってやつらしい。見惚れてしまうくらい綺麗な美人さんだ。恋愛フラグ?そんなのあるわけないだろ。不器用な奴だけど友達思いで優しい。そのおかげ?か「お姉さま」「姉様」「姉御」など魂の姉妹とかいうファンに呼ばれている。あと何故かその人達に目の敵にされているらしい。貴之は人気なのに……何故だ!!!やっぱり顔面が原因なのか。そうなのか!
「ちょっと!聞いてる?」
「何を?」
「あんたが好きな人は誰かって聞いてるの!」
「いないよ?」
なんでそんなこと聞くんだ?恋バナなんてさっきまでしてなかっただろ。しかも妙に目がキッってなってるしさらには微妙に顔が赤いような…
「あっそ!」
「風邪でも引いた?外は寒いし気をつけないと」
「違うわよ!」
やっぱり若干顔が赤いし心配だなぁ、やっぱり寒いなか来てくれたせいかな?
「貴之、孤羽を家まで送ってやってくれない?顔赤いし熱ありそうだから」
イケメンはこういう時に便利だ、何でかって?そりゃ女子はイケメンと一緒に帰れたらうはうはだろうしな、これで風邪気味ッぽい孤羽を家に返してやれる。
「私は熱出してないわよ、それに風邪も引いてないわ」
ならいいんだけど流石に僕のせいで体調が悪くなるのはまずいし、あの時みたいに無理されたら僕
も心配だしなー
「狐羽、ちょっとこっちに来てもらっていいかな?」
「何よ、本当に私は風邪なんか……」
そう言いながら近づいてくる狐羽、さっきよりは落ち着いた様子だけどやっぱり顔は赤い、僕は彼女のおでこに自分の手の平でそっと触れる……うーん、普通だね。
これで僕も安心だ。おりょ?なんでか孤羽の様子がおかしい、しかもさっきから二人の目線がかなり痛い。なんでか良くわからないけどすごく痛い。
「え?!、ふぇぇ」
なんか狐羽がてんぱってる、僕何かやらかしたかな?孤羽は耳まで真っ赤だ。しかもふぇぇとかかわいすぎんだろ。僕まで顔が赤くなってきたぞ
「ちょっと!!!何乙女のおでこに触ってんのよ!セクハラよ」
おでこに触れたままだった手を荒くを振り払われる。確かにそうだ、狐羽は立派な女性だし、僕の自分勝手な理由で触れるのは駄目だね、「親しき仲にも礼儀あり」っていうし誠心誠意謝らせてもらおう。ここは貴之直伝の特定の相手だけに許してもらえる笑顔で謝ろう。
「ごめん、孤羽、僕のせいで風邪引かれたらと思うと心配だからさ、確認させてもらった」
ポイントは出来るだけ口角を自分の顔に合った角度まで上げること、そして目を少しだけ細める、これだけ出来ればって……いつも通りの笑顔なんだけどこれで許して貰えるのかな?
「そっ、そう、ならいいわよ、今度やったら腹パン決めるからね」
「一応、僕怪我人だからご利用は優しくね?」
「うっさい!今やるわよ!」
「黙ります!!!」
よかった許してはもらえた?まだ孤羽の顔は赤いけど、さっき確認もとれたし大丈夫だね。ん?ならなんで孤羽は顔赤かったんだろう?謎だ、まぁわからんしいいか。僕と狐羽の会話がきりよくなったところで貴之と佐愉が参加して来た
「赤字覚悟の砂糖在庫処分セールってか?末永く爆発しやがれください」
「あたしはそんなことより体が燃えるほど辛い物を食いたい」
おいおい、貴之お前から凄く黒いオーラ出てるんだけど気のせいか?あと不穏な言葉を連発しないでくれませんかねー。ていうか佐愉どんだけ腹減ってんだ。狐羽も狐羽で頭から煙が出てきそうなくらい顔が真っ赤だぞ。
あれ?いつの間にか二人が悪い顔を隠しもしないで浮かべてる。
するといきなり病室のドアが開き、ぴょこっと小さな顔がドアから出た
「お兄ちゃんお見舞いに来たよー?」
「何故、疑問系なんだ妹よ」
「お見舞いと言うより遊びに来た感じしかしないから?」
「確かに納得」
「でしょ?あと何この状況?」
開かれた扉から顔を出し僕の事をお兄ちゃんと呼んだのは、お察しの通り僕の妹である、名前は石弥マリノ、今年で15歳だっけ、容姿は短めの黒髪に若干、眠そうに見える目、総合的に見て可愛い、贔屓無しでかわいい。そんな事より……妹の言っている通り僕も何かと思う。
狐羽の両耳で意地の悪い笑みを浮かべた貴之と佐愉が何かコショコショと言っているのだ。単語を拾うと「僕に」「前もこんな事が」「NDKNDK」と最後の単語以外はよくわからないなぁ。前になんかやらかしたっけ?最後のNDKって悪意しか篭ってないだろ。
孤羽がもう噴火寸前みたいな感じでプルプルと真っ赤な顔で震えてるぞ。もうそろそろやめとけ
「ひとつだけわかってるのが孤羽が二人にいじられてるってことかな」
僕がマリノと話していると、さんざんいじられたせいか病室の隅で、両耳に手を当ててた孤羽がマリノに気づきおそるおそる我が妹に聞く。
「もしかして、今の見てた?」
(スッ)
それを聞きマリノは何かを思いついて我が友人二人に視線を向ける
((スッ))
二人は僕に視線を向けて来てから、生まれたての小動物のように震えている狐羽に視線を移す
(コクコク)
二人が伝えたい事が伝わったのか。僕に少し蔑みを込めた目線を向けた後、二人と目線を合わせ
(((ニタァ)))
意地の悪い笑みを浮かべた。おい、そこの二人組、なに家の妹を仲間だぁって目で見てんだ。目がニタァってなってんぞ。目がニタァって
「はい!ばっちし聞いてましたし見てもいましたよ♪」
あれ?マリノも同じ目してる、、、うん、、、、気のせいだな。家の妹に関してそんなことはそんな事はないだろうから、気にしない、気にしなーぁい(白い目)
「なんで私ばっかこんな目に合うのー!!!こころのばかー!!!」
病室に孤羽の悲痛な声が響き渡った。あれ?孤羽、若干退化してない?もどってこーい孤羽!いつもの大和撫子な孤羽はどこ行ったー?
病室内で孤羽が叫び、その様子を僕の妹や友達がニヤニヤと楽しそうに見ている。
一応、僕、怪我人なんだけどなぁ
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