『完全試合』ができるかも？
得体のしれない「工科大付属のAI」に、気味悪さを感じている「架純とエリカ」
だったが・・・・
「ふぁー！楽勝、楽勝！この調子だと『完全試合』を達成するかもね？
ね？エリカ？」
「そんなに甘くはないわよ・・・『野球』は、筋書きのないドラマ、って
言われてるでしょ」
「エリカだってタブレットじゃ野球は出来ない！って言ってたじゃん」
「架純のそういう『脳天気』なところも工科大付属のAIに、蓄積されて
いるのよ」
「何気持ちの悪いこと語っているのよ、エリカは」
架純が、完全試合を達成するかもね？というように工科大付属のバッターは
３回表まで、三振に、内野ゴロ、内野フライの凡打の山を築き、文字通り
朝倉学院に完璧に抑えられていた。
一方、エリカや架純たちの朝倉学院の強力打線は、というと・・・
チャンスは、１回、２回とつくるもののタイムリーに繋がらず『０点』に
抑えられているのだった！
「エリカ、次の打席でホームランで先制してよ！」
「先輩達が、連打できないのに１年生のわたしにホームランなんて
そう簡単に、打てるわけないでしょ」
架純は、薄笑いを浮かべて
「エリカになら打てると思うけどなぁ」
エリカは、架純の『薄ら笑い』が示唆するものをピンと思い当たった。
架純は、エリカにバットに魔法をかければ、魔法界の時と同じように
ホームランを量産できると確信していた。
「キャプテン、エリカって中学時代に４打席連続ホームランという
記録を作っているんですよ」
と架純は、自分の自慢話を語るように小百合キャプテンに言った。
それを聞き、エリカに真偽を問うた。
「エリカ、架純の言ったことホント？」
「架純って・・・こんなところで、喋っちゃダメでしょう！」と小声で
架純を小突きながらささやくと、キャプテンが
「ホントなんだ！すごいよ、うちだって３打席連続ホームランまでしか
打ってないよ」
そんな会話をベンチで、語り合っていると先頭バッターの美咲
さんがホームランを放ち、朝倉学院は先制した。
「ナイス・バッティング！美咲先輩」と架純やエリカが賞賛すると
美咲先輩は
「君たち１年生バッテリーが、０点で抑えてるから援護しないわけには
いけないでしょ」
と応えてくれた。
「１年生バッテリーが抑えて、２年生の美咲がホームラン！それじゃ
わたしも１発狙うかな？」
とキャプテンは奮い立ち、バットを握りしめる。
二死で打席に立った小百合は、誰が見ても一発狙いと
わかるようなフルスイングだったが、工科大付属のエースに
タイミングを外されて空振り三振に、斬って取られた。
１対０とリードをもらった架純とエリカは、注目の工科大付属の
二回り目の打線に『真価』の問われる４回の表の守備に、ついた。
いよいよ試合は、中盤戦！
