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魔女は地上では「魔法」は非常の時にしか使えない!
#001「女子甲子園」
「ねぇ、エリカ」
「何よ、架純?」
「覚えてる?魔法を初めて使った試合」
「・・・・」
エリカは架純の問いかけには答えず、眼前に見える異様なマスコミの
記者たちとあまたのカメラを見据えていた。
「エリカ、緊張してんの?」
「・・・・」
「これぐらいのマスコミの多さにびびってどうすんのよ!」
今日は、女子プロ野球のドラフト会議日だった。
架純とエリカは、女子高校野球で活躍してプロの女子野球界から
注目を集める「ふたり」だった。
【3年前】
「ねぇねぇ、エリカ、あの男子見てよ!」
「野球の試合が、どうしたのよ?」
「あのピッチャーの男の子よ!」
「確かに、架純が好きなタイプね」
「かっこいいよね?」
「ホント架純って、相変わらず『メンクイ』なんだから!」
ふたりの視界には、相手チームのバッターをバッタバッタと
三振に打ち取っている『その男の子』の凛々しい姿が、入っていた。
観戦しているのは、架純とエリカのふたりだけではなかった。
女子学生たちが黄色い歓声をあげていた。