空間メモ少年
私は正面に座っている男の話に耳を傾けていた。彼は自身の話を聞かせてくれるらしい。メモを取り出し彼の話を書き始めた。すると不思議なことが起こった。今さっきまでいた部屋ではなく椅子とテーブル以外は掻き消えて暗い空間に私はいた。しかし、彼はしっかりと見えるし。私の手や持っているメモも見えないわけではない。彼は話し出した。
「そうだな、私の5才の時の話からしようか。あの頃の私は正しく子供だった。世間ではなく自分の世界を持っていた。」
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空間が霞み村が浮かび上がる。素朴な村で村人達が道を行き交っている。その中で二人の子供が走り回っていた。おそらく彼とその友人だろう。何故か私にはそう直感できた。いや、直感させられた。
「まてー!」
「へへん!またないよー!」
子供の独特な言葉遣い。そして彼らの後ろから膨よかな女性が追いかけてきた。
「コラー!またやりやがったね!クソガキどもー!」
女性とは思えないほどの声量で女性は叫んだ。しかし、彼らは気にせず山に逃げ込んで行った。視点はそこから動かず目の前の彼が言った。
「彼女は近所の商店の女性でな。私達は良く彼女の店の甘味をくすねていたんだ。」
「それは何のためにです?」
私は女性が呆れて戻って行くのを見ながら彼に尋ねた。
「それは私達を追えばわかる。」
視点が動き幼い彼らの後ろ側をつけるように移動した。