第3話 ハーフオークだけど友だち100人できるかな
「それで、どうして僕の”母”のことについて知りたいんだい?」
「正確に言うとお前の母親と仲が良かった男のことを知りたくてね。聞いたことはあるだろ?
たった一人で騎士を160人殺し、この王国を半壊させた男のこと。」
「さぁ、詳しいことは知らないな。僕のお母さんは昔のことを話したがらないんだ。昔、フークスに聞いたことがあるけれどあまりそのことについて話すのは良しとしないんだ。ただひとつ答えてくれたのは母さんはその日、王国にはいなかったということだけなんだ。」
エリスにとってはあまり知らない情報を知ってる限りすべて伝えた。
しかし、ネルソンにとって彼女の笑みは情報を包み隠す袋としか思えなかった。
「そうか...また何か聞いたら教えてくれ。」
そういうとネルソンは少し不機嫌な風に席を立ちさっさと学園の食堂へと向かっていってしまった。
ネルソンはその男の反乱で友人や家族を多く失っていた。彼にとっては、エリスの余裕のある態度も
悪意にしか捕らえられなかった。
この女はまだ何か隠している。自分に言ってはいけないことがあるんだ。と
昼が終わり再び授業が再開される。少々昼食後の眠気はあったが何もしないままエリスの学園生活の一日目は終わった。
昇降口をでるとフークスが馬車の前でこちらに笑顔をみせていた。
「お帰りなさいませ。お嬢様。学園生活の一日目はいかがでしたでしょうか。」
「疲れたよ。ただクラスメイトもいい子ばかりだったしとても満足しているよ。少し変わった子もいるみたいだけどね。」
そういうエリスは向こうに止まっている馬車に乗り込もうとするネルソンに視線を向かわせていた。
しかし、昼に聞かれたことを話そうとはしなかった。
「私が見ていた限りではお嬢様はさぞ殿方に人気があるようにお見受けいたしましたわ。休憩時間になるたびに話しかけられていましたし。」
「王族だからものめずらしいだけだと思うけどね... ...帰ろうか。」
「はい、そういたしましょう」
エリスが馬車に乗り込み学園も門にさしかかろうとした時、馬車が急に振動し止まった。
フークスが怪訝そうな顔で馬車からおりる。
「どうしたの。」
馬車を運転する従者が答える。
「あ、あぁの このお嬢様が急に飛び出していらして。」
従者が指差す先には小さな桃色の髪を長くこしらえた少女がしりもちをついて地面に転げていた。
桃色の髪の少女は立ち上がるとすぐさま頭をさげ。
「いててっ。あぁああぁあ。すいません、すいません、すいません。いま、クラブ活動の勧誘の方がたくさん私にいらして。それで怖くなって逃げてて...あぁあのすいませんでした。あのあのご無礼申し訳ございませんでした。」
フークスが口を開く。
「いえ、私めどもの不注意です。こちらこそ深く謝罪申し上げます。」
「どうしたのフークス。」
中から出てきたエリスはその少女が自分と同じ1年生である証の赤い襟章であるのを目にした。
「大変だ、本当にごめんね。大丈夫だったかい?」
少女に言葉をかけるエリス。
エリスに言葉を掛けられた少女は自分の失態だとわかっていながら3人もの人間に謝罪させてしまったこと
もあり挙動不審なほどオロオロしていた。
こんな話をしている間に向こうから少女を追いかけてきたであろう生徒の声が聞こえてきた。
「あぁああぁあの。本当にごめんなさい。あの、私逃げなくちゃ。そ、それじゃあ。あの。ごめんなさい。よいしょっと。 っ!...いててっ。」
見かねたエリスとフークスが目を合わせ同意見であることを確認しあう。
その後フークスが少し笑った風に口を開く
「その様子では逃げられませんね。私どもの責任でもありますのでどうぞお乗りになってください。」
「でも、あの、悪いですよ。」
「早くしないと捕まってしまいますわ。治療もしなくてはなりませんし。私どもと馬車に乗ってお屋敷にいらしてください。さぁ早く。」
そういうと少女をエリスとフークスが藩場強引に馬車にのせる。
少女が罪悪感に満ちた表情で床をみている。
「もう少しすれば屋敷につくよ。怪我の治療したら少し休んで僕たちも君の家にお詫びに行かせてもらうよ。」
少女は少し戸惑った表情にかわりあわて始める。
「いえ、そんな...何度も言うように私がわるいんです... ...でも、きていただけるなら歓迎します・・・」
最後に笑った少女はさっきとは打って変わりとても落ち着いた雰囲気でとても上品にみえた。