嫌がらせ①
短編の内容です。
嫌がらせその1 自然にお昼休みを妨害しちゃおう!
あの女をアーサーから引き剥がすにはどうしたらいいかしら。
とりあえず、毎日の昼休みだけでもあの女を近づけさせないようにしないとね。昼休みは1番長い自由時間だから。
と、言うわけで……。
「ごきげんよう、アリシア様」
「ごきげんよう、ベアトリス様」
「少し、よろしいかしら?」
「まぁ!なんでしょう?」
とりあえず、あの女をお昼に誘うことでアーサーから遠ざけることはできたわ。
よし、お昼を食べましょうか。
ここまでは上手くいっていた。我ながら怪しまれずに遠ざける妙案だと思ってたのよ?でもね、恐ろしいことが起こったの。
数日後、あの女はお弁当を2つ持ってくるようになったの!なんでも、自分で作ったそうだわ。悔しいけど、あの女の料理は美味しいわ。おかずの交換で確認したもの。
さてはあの女、アーサーに、手作り弁当を食べさせる気ね。でも、させないわよ。アーサーの胃袋は私が掴むんだから!
仕方ないわね。そのお弁当、私が奪ってやるわ。
「美味しそうですわね、アリシア様。私にもそのサンドイッチをくださらない?」
あの女は一瞬驚いた顔をしたけど、すぐに笑顔で
「ええ、2人分ありますからこちらをどうぞ」
お弁当をくれた。
ふふん、ちょろいわね。ちょろすぎて、何だか無性に不安になってきたわ……。まさか、アーサーにあげるつもりはなかった、とか……?
何はともあれ、サンドイッチを奪えた。とりあえず、いただきましょうか。
「はむはむ……。あら、この絹のように繊細で柔らかなパンに、瑞々しさとシャキシャキとした歯ごたえを兼ね備えたレタス、そして程よく熟れてサッパリとしながらもちょうど良い酸味を兼ね備えたトマトが絶妙なバランスを……」
予想以上に美味しかったので、思わず感想が……。ふと、顔をあげると、温かい眼差しがいくつも私へ向けられていた。アリシア筆頭に、ほっこりした表情をしている。
……はっ!まままままさか、私が食べ物ごときで懐柔されるなんてありえませんわ!いやでも、食べ物とは私達の命を繋ぐ大切なもの。ごとき、なんて侮っていいものかしら……。
動転のあまり、明後日の方向へ思考していた。
そ、そんなことより!大事なことが1つ分かったわ。
アーサーにあの女の作ったものを食べさせてはならない!もし、もしアーサーがあの女のサンドイッチを食べちゃったら……。
あれ、目から水が……。な、泣いてないもん!えぐっ……ひっぐ……。
ほんとはアーサーの近くで過したいけど、アーサーは球技に夢中だし、気まぐれであの女と一緒に過そうとするからちょっと無理よね……。
ちょっと落ち着いて、涙を隠して顔をあげたら、あの女の幸せそうな顔が目の前にあった。
悔しいことに、私よりも可愛かった。
……そう言えば、どうして貴族令嬢が手作り弁当なのかしら?
嫌がらせその2 こっそりものを隠しちゃうわっ
私は嫌がらせをするのよ!嫌がらせって言ったら相手を困らせることよね。
今日は、定規を隠してやるわ!
……お母様の顔が脳裏によぎる。ううっごめんなさいお母様。でも、でも私はやらなきゃだめなんです!
「べ、ベアトリス様?!お顔が真っ青ですわよ!そんなに罪悪感があるならお止めになってくださいな」
「だだだだ大丈夫ですわよ!ここ、これくらい、どうってことありませんわ!」
ガクガクブルブル。
「ベアトリス様?!カクカクしてらっしゃいますわよ!歩き方がとっても不自然です。やはりお止めになった方が……」
「そそそそんなことありません!やるっていったらやるのです!」
震える手足を無理矢理動かして、標的を目指した。
肝の冷える思いで必死に頑張ったおかげで、なんとか隠せました。
「あら?定規がないわ」
ふふ、あの女、気づいたわ。ちょっと困ってるみたい。
(心理的に)苦労した甲斐があったわね。
よし、この調子であの女をいじめましょうか。
「ごきげんよう、アリシア様。どうかいたしました?」
ちょっと白々しかったかしら?
「ごきげんよう、ベアトリス様。実は、ものを無くしてしまって……」
「あらあら、それはお気の毒に。それで、何をお探しなのかしら?」
「定規がないのですが……、昨日からリコーダーも探していて……」
リ、リコーダー?!まままさかアーサー、間接キスをするために盗んだりしたんじゃないでしょうね。いや、でも、将来の旦那様を疑うなんて良くないことだわ。きっと、何かの間違いよね。
……でも、でももし、アーサーが盗んだのだとしたら……。あぅ……。待ってちょっと泣きそう。
「アリシア様!私もそのお探し物、お手伝いいたしますわ!リコーダーを盗むなんて言語道断ですわよねっ」
みんなが驚いたような表情をした。次の瞬間、優しげに私を見る。
え?どうして?
「ありがとうございます、ベアトリス様」
にっこりとアリシアが笑った。しかし、どこか引っかかる。
……
…………そう言えば。
「アリシア様。どうしてリコーダーをお持ちになってらっしゃるの?“学園”の音楽の授業ではリコーダーはカリキュラム外ですわよね?」
私の指摘に、アリシアは悪戯を成功させた子供のような笑みを浮かべた。
「さすがはベアトリス様。慧眼です。ところでベアトリス様、いつもはいらっしゃらないこの時間帯にどうしてこちらに?」
アリシアの笑顔が怖くなった。もしかして、ばれてたの……?ヒヤヒヤ。
思わず視線を逸らした。
「そ、それは、その……気まぐれと言いますか、何となくアリシア様に会いたくなったので……」
しどろもどろで如何にも怪しい私の返答に、追撃はこなかった。
恐る恐る前を見る。
そこには、心底嬉しそうなアリシアがいた。あぁ、やめて!そんな笑顔を向けないで!貴女が、暴力的に可愛いのは知ってるから!だから篭絡しないで!
追撃もなく、チャイムも鳴ったので私達は教室に戻った。
……リコーダー、答えを聞き損ねたわね。今度、ちゃんと聞かなきゃ。
ちなみに、定規はちゃんと放課後にこっそり返しました。もうこんな心臓に悪いこと、こりごりよ!
嫌がらせその3 もう、貴女なんて知らないんだから!
最近、あの女が馴れ馴れしくなってきたわ。しかも、アーサーは今まで以上にあの女に夢中だし。
もうっ!私、あの女を、突き放してやる!
「ごきげんよう、ベアトリス様」
「……っ!」
あぁ、やめて!そんな捨てられた仔犬みたいな目でこっちを見ないで!
うぅっ、挨拶をしないだけでこんなにも苦しいだなんて。
ふっとお母様のお顔が脳裏に……。
「べ、ベアトリス様?!お顔が真っ青ですわ!手も痙攣してらっしゃいます。保健室にいきましょう!」
心配してくれたお友達がワラワラと私の周りに集まる。
それを見て、私ははっとした。
「あぁ皆さん!列を崩してはなりません。廊下で広がると他の皆さんのご迷惑になりますわ。さぁ、2列に戻って!私は、大丈夫ですから」
反射的にテキパキ動きだした私を見てほっとしたお友達は、列に戻ってくれた。
それにしても、悪いことをした私を心配してくれるなんて、ほんとに素晴らしいお友達ですわね。私はとっても幸せです。
教室に戻ってから気づいた。なんでアリシアまで列に入っているの?!
流れは短編通りですが、やや変えてます。
お付きあいくださり、ありがとうございました。次話から、短編ではカットしていた悪戯に入ります。




